質実剛健な作りで日本でもファンが増えつつあるコラテック。このFORCIA(フォルシア) CARBON ALLOYは、そんなコラテックのラインナップの中でも異色の存在だ。見た目はフルカーボンフレームなのだが、何と中にはアルミフレームが……。いったい、どんな特性を持ったバイクなのだろうか?

コラテック FORCIA CARBON ALLOYコラテック FORCIA CARBON ALLOY photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp

マイスターの国・ドイツのブランドらしく、コラテックのバイクはどれも非常に凝った作り込みが施されている。中でも、このFORCIA CARBON ALLOYは最も作り込まれたバイクであると言っても過言ではない。

FORCIA CARBON ALLOYは見た目は普通のフルカーボンフレームのようだ。しかし、そのカーボン層の下には、極薄のアルミチューブで丁寧に組み上げられたアルミフレームが隠れているのだ。羊の皮を被った狼ならぬ、「カーボンの皮を被ったアルミフレーム」なのである。

このフレームの製作には、非常に手が掛かかっている。まずは極薄のアルミチューブを溶接してフレームを組み上げる。そして、最後の仕上がりを美しくするために、溶接部をヤスリ掛けしてスムースに仕上げる。ここまでの工程だけでも、通常のアルミフレームよりもはるかに手が掛かるということがおわかり頂けるだろう。

スムースな仕上がりのヘッドまわりスムースな仕上がりのヘッドまわり チェーンステーは横方向に曲げ加工がほどこされるチェーンステーは横方向に曲げ加工がほどこされる


そして、こんどはそのアルミフレームの各チューブにカーボンシートを巻き付け、全体に圧力をかける。こうして、アルミフレーム全体にカーボン層をコーティングさせるのである。下地のアルミが見えているのは、リアエンドの部分だけだ。

なぜ、ここまで手の込んだフレーム作りをするのであろうか? 答えはご想像の通りだ。アルミフレームの剛性感とカーボンフレームの振動吸収性を「イイとこ取り」するためである。

フルカーボンフレームの台頭によって、今ではトップモデルにほとんど採用されなくなったアルミフレームだが、そのアルミ独特の剛性感の高さには捨てがたい魅力がある。プロ選手の中にも、今でもアルミフレームに乗りたがる人がいるのはそのためだ。

美しい仕上がりのヘッドまわり美しい仕上がりのヘッドまわり シートステーは横方向に曲げ加工がほどこされており、ショック吸収性が高いシートステーは横方向に曲げ加工がほどこされており、ショック吸収性が高い フォークはカーボンだフォークはカーボンだ


一方、その素材の特性から、アルミは振動吸収が苦手だ。そこでフレーム全体にカーボンをコーディングすることにより、振動吸収性を上げるという発想が生まれた訳である。もちろん、カーボン層を形成することによって剛性もアップするから、中のアルミフレームは極薄チューブで十分。結果として、軽くて振動吸収性が良く、さらに芯のある乗り味のバイクが完成したのである。



― インプレッション ―


「ハンドリングがとても素直で扱いやすい」

西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)

「ハンドリングがとても素直で扱いやすい」西谷雅史「ハンドリングがとても素直で扱いやすい」西谷雅史 まさにアルミの乗り味という感じのバイクで、とてもカッチリとした印象だった。そのくせ、ある程度の振動吸収性のよさも感じられるのは、カーボンを巻いてある恩恵なのだろう。わざわざ手の込んだ作りをしただけのことはある。

踏み出しの加速感は、なかなかものだ。ペダルにパワーをかけると、グイグイと加速していく。アルミらしいキビキビ感が感じられる部分だ。

ハンドリングはとても素直で扱いやすい。コーナリング時の安定感が抜群で、とてもコントローラブルなバイクだ。フレームの設計が良いのだろう。さすがヨーロッパのバイクだと思わせる安定感がある。

上りでもとても良い感じでリズムに乗せることができた。特にダンシング時の走行感が絶妙だ。バイクを左右に振りやすく、乗っていて「ああ、これはとても良いバイクだな」とヒシヒシと感じられるのだ。

振動吸収性はフルカーボンフレームには劣るが、フルアルミフレームよりはずっと良いというレベル。路面の良い日本では振動吸収性はそれほど重要なファクターにならないから、そういった意味では日本向けのバイクであるとも言える。

ブレーキングは特に印象に残らなかったが、フォークのビビり感もなく普通に止まることができるので、まったく問題になる部分ではない。

今はフルカーボンフレーム全盛の時代だ。しかし、このバイクに乗ってみて「アルミも悪くないな」と改めて思った。アルミのキビキビ感が楽しめて、振動吸収性もそこそこ高いのであるのだから、これはレーシングバイクのひとつの理想型である。

使用用途としては、やはりレースが一番似つかわしいと思う。アルミのキビキビ感は、距離の短いホビーレースでとてもアドバンテージになるだろう。反面、のんびりとロングライドするのには向いていないかもしれない。ハイスピードでガンガン走る人には良いが、私ならのんびり派にはもっとしなやかなフレームを勧めるだろう。


「手の込んだ作りは伊達ではない」

仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)

「手の込んだ作りは伊達ではない」仲沢 隆「手の込んだ作りは伊達ではない」仲沢 隆 アルミ合金は軽くて硬いので、レーシングバイクにはとても向いている素材だと言える。しかし、欠点がないわけでもない。一番の欠点は振動減衰特性の悪さだ。アルミはいったん振動すると、なかなかそれが収まらないのだ。この辺が、アルミブームが去り、カーボンブームがやってきたひとつの要因でもある。

しかし、今でもアルミのシャキッとした乗り味を好む人は多い。プロ選手の中にもわざわざアルミフレームをチョイスする人がいるほどだ。しかし、今では各社ともハイエンドモデルはほとんどがフルカーボンで、アルミは廉価版ばかりになってしまった。ちょっと良いアルミフレームというのは、選択肢が非常に少ないのが現状なのだ。

そういった意味で、このFORCIA CARBON ALLOYはとても貴重な存在であると言えるだろう。カーボン層の中に隠れるアルミフレームは、紛れもなくハイエンドモデルのそれだ。さらに、カーボンを巻くことにより振動減衰特性を飛躍的にアップさせているので、アルミのネガティブな部分もほとんどうち消されている。このバイクはアルミフレームの理想型であるとも言えるのだ。わざわざ手の込んだ作りをしている理由がよくわかる。

乗り味はとても不思議だ。踏み込んだときの加速感が鋭く、「ああ、さすがアルミフレームだな」と思わされるのだが、いざ路面の悪いところを走ってみるとカーボンフレームのような振動吸収性の良さがあるのだ。しなやかなフルカーボンフレームにはかなわないものの、硬いカーボンフレームより振動吸収性は良い印象だ。

コーナリング時の安定感やブレーキング時の挙動もとても良く、とてもコントロール性に優れたバイクだ。上級者はもちろんのこと、初心者がでも、とても安心して乗ることができるだろう。この辺の設計の良さは、さすがにプロに供給してきた実績のあるバイクだと思った。

マニア的には見た目の風情もとてもそそられる。中のアルミフレームは溶接部のビードをキレイに仕上げているので、チューブ接合部のカーボン層が非常にスムースなのである。このフレームの成り立ちを知らなければ、恐らく誰もがフルカーボンフレームだと思ってしまうだろう。眺めていても、飽きのこないバイクだ。

コラテック FORCIA CARBON ALLOYコラテック FORCIA CARBON ALLOY photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp


<コラテック・FORCIA CARBON ALLOY スペック>

フレーム コラテック・アルミニウム-カーボンコンポジットラップテクノロジー
フォーク コラテック・カーボンアロイコンポジット
ヘッドセット ケーンクリーク・インテグラルヘッド
カラー ホワイト、レッド
サイズ 46, 48, 50, 53, 55, 57

希望小売価格(税込み) 
フレームセット ¥177,450円
アルテグラ完成車¥302,400
アルテグラコンパクト仕様完成車 ¥304,500
105仕様完成車 ¥266,700
105コンパクト仕様完成車 ¥267,750


インプレライダーのプロフィール

西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)西谷雅史(サイクルポイント オーベスト) 西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)


東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。チームオーベストを率い、自らも積極的にレースに参戦。主なリザルトはツール・ド・おきなわ市民200km優勝、ジャパンカップアマチュアレース優勝など。2007年の実業団小川大会では、シマノの野寺秀徳、狩野智也を抑えて優勝している。まさに「日本最速の店長」だ!
www.o-vest.com



仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)仲沢 隆(自転車ジャーナリスト) 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)


ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。



ウェア協力:カステリ(インターマックス)カンパニョーロ


edit:仲沢 隆
photo:綾野 真