いよいよ開幕を間近に控えたツール・ド・フランス2009。ツール観戦においてひとつ重要なポイントとなるのが4つの各カテゴリーでトップの選手が着用する4賞ジャージだ。この4枚の栄光のジャージに注目すると、ツール観戦はぐっと面白くなる。

『マイヨ・ジョーヌ』-全ての自転車選手の憧れにして頂点

ツール・ド・フランス総合リーダーの証マイヨジョーヌツール・ド・フランス総合リーダーの証マイヨジョーヌ photo:Yufta Omataフランス語で黄色いジャージを意味するマイヨ・ジョーヌは、総合成績で1位の選手に与えられる。つまり最終ステージのパリ・シャンゼリゼの表彰台でマイヨ・ジョーヌを着ることは、ツール・ド・フランスの総合優勝者として歴史に名を刻むことである。

ツール・ド・フランスの最高栄誉のこのジャージの色から、ツールのイメージカラーはイエローとなっている。もっともこの黄色はツールを創設したスポーツ新聞「ロト」の紙面の色が黄色かったことに由来する。現在はクレディ・リヨネ銀行がメインスポンサー。この銀行のイメージカラーもイエローである。

パリにおける総合優勝者の証としてはもちろん、たった1日だけでも着用することがあれば、その選手は世界中の注目を一挙に集めることになる栄光のジャージ。それだけにこのジャージを着ると選手にミラクルな力をもたらすことも数知れず、「イエロージャージマジック」という言葉があるほど。ツールのシンボルかつ頂点として栄光の色、黄色に輝くのがマイヨジョーヌだ。

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『マイヨ・ヴェール』-山を越えたスプリンターを讃える

ポイント賞ジャージは緑色のマイヨ・ヴェールポイント賞ジャージは緑色のマイヨ・ヴェール photo:Yufta Omataフランス語で緑色のジャージを意味する。文字通り緑色だったが、昨年からライトグリーンへと色調が明るくなり視認性が増した。ポイント賞トップの選手に与えられるジャージで、トップスプリンターの代名詞となるジャージだ。スポンサーは場外馬券運営会社のPMU。

このジャージを獲得するには平坦ステージのゴール勝負に関わるだけでなく、厳しい山岳を乗り越えなくてパリまでたどり着くサイクリストとしてのタフさも問われる。序盤の平坦ステージで荒勝ちしても山岳でリタイヤするスプリンターではなく、3週間を通じて真に強かったスプリンターを讃える。

オーガナイザーの絶妙なポイント配分か、トップスプリンターたちの均衡した力からか、ジャージ争いは最終パリ・シャンゼリゼまで持ち込まれることも多い。最後の最後まで緊張感に満ちたスリリングなマイヨ・ヴェール争いはツールの見どころのひとつだ。

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『マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ』-山岳王は赤い水玉を身にまとう

白地に赤い水玉の山岳賞ジャージ、マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ白地に赤い水玉の山岳賞ジャージ、マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ photo:Yufta Omata白地に赤い水玉のジャージを意味するこのジャージは山岳賞ジャージ。4賞中最もポップなデザインだ。赤と白のド派手なデザインは、フランスのスーパーマーケットチェーン、シャンピオンのコーポレートカラーに由来する。今年からシャンピオンの親会社カルフールがスポンサーにつくが、デザインに変更は無し。マイヨ・ア・ポワと略すことも。

加えてこのジャージを着る選手は、ツールの勝負どころとなる山岳ステージでマイヨジョーヌやその他の総合争いの選手たちに混じって走ることが多いため目立ち、注目度も高い。山岳という苦しみを克服するタフな選手が着るマイヨ・ア・ポワが人気なのもうなずける話だろう。

マイヨ・ア・ポワが山岳で独走を始める時、総合争いとは別のツールのハイライトが始まるときだと言っても過言は無い。

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『マイヨ・ブラン』-ジャージの純白は将来の栄光を書き入れるための余白

新人賞ジャージは純白のマイヨ・ブラン新人賞ジャージは純白のマイヨ・ブラン photo:Yufta Omata白いジャージ、の意味どおり純白のこのジャージは新人賞トップの選手に与えられる。新人賞の対象となるのは25才以下の選手。将来のグランツールレーサーの登竜門とも言えるジャージで、現在活躍する多くの選手がマイヨ・ブランを獲得している。

時にマイヨ・ブランのみならずマイヨ・ジョーヌを獲得してしまう「飛び級」の選手もいるが、多くの場合総合で10位前後を狙う若い選手たちによって争われる。若い選手を対象とする宿命か、ジャージを着ながら大崩れする選手も多く、劇的にマイヨが新リーダーへ移ることもしばしば。注目してみると面白いカテゴリーだ。

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その他にも、毎ステージのチーム上位3名のタイムを積算した「チーム総合時間賞」や、その日積極的な走りを見せた選手に与えられる「敢闘賞」もある。


以上に見てきた4つのジャージ。ツール・ド・フランスを彩るこの4枚のジャージを巡って各カテゴリーのスペシャリストたちがぶつかり合う。この「特別な」ジャージをパリ・シャンゼリゼで着ることができるのは当然ながら、たった4名だけなのだ。

photo&text:Yufta Omata