標高1850mの1級山岳ゴグベリにゴールするツアー・オブ・ターキー(UCI2.HC)第3ステージ。大会最難関のこの山岳ステージでエリトリア出身のナタナエル・ベルハネ(ユーロップカー)が登坂力で他を圧倒した。22歳のルーキーは、リーダージャージを着てターキー後半戦に挑む。




前日に逃げた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)前日に逃げた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji毎年1000万人以上の観光客が訪れ、世界有数のリゾート地として知られるアンタルヤで第3ステージは動き出す。前日までは地中海に沿う平坦路が舞台だったが、第3ステージは内陸部へと足を踏み入れる。合計4つのカテゴリー山岳が登場し、獲得標高差が3000mを超えるクイーンステージ(最難関ステージ)だ。

アンタルヤを離れてしばらくすると、大地をえぐるように作られた幹線道路が内陸へと導く。カテゴリー2級と1級の峠を2つ越えたところで、コースは標高1000m前後の高地に出る。この高地に至る登りでアタック合戦が繰り広げられた。

スタート地点で寛ぐ宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)と別府史之(オリカ・グリーンエッジ)スタート地点で寛ぐ宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)と別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji別府史之(オリカ・グリーンエッジ)らが集団前方で走る別府史之(オリカ・グリーンエッジ)らが集団前方で走る photo:Kei Tsuji

昨年ジャパンカップのクリテリウムで優勝しているヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)らがアタック昨年ジャパンカップのクリテリウムで優勝しているヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)らがアタック photo:Kei Tsuji「今日もアタックに反応して逃げに乗るように言われました。昨日の逃げで大きなダメージは受けてませんが、さすがに脚は疲れてます」と話す佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)や、宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)、別府史之(オリカ・グリーンエッジ)、つまり日本人選手3名全員が集団前方でアタックに反応する。

ティモシー・ダッガン(アメリカ、サクソ・ティンコフ)やマウロ・フィネット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が逃げるティモシー・ダッガン(アメリカ、サクソ・ティンコフ)やマウロ・フィネット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)が逃げる photo:Kei Tsujiアタックに次ぐアタックの末に、集団から抜け出したのはビョルン・トゥラウ(ドイツ、ユーロップカー)とクレマン・コレツキー(フランス、ブルターニュ・セシェ)の2人。

昨年ジャパンカップのクリテリウムを制したヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)や、ツアー・ダウンアンダーでの鎖骨骨折から復帰したティモシー・ダッガン(アメリカ、サクソ・ティンコフ)、セルゲイ・グレトチン(ウクライナ、トルクセケルスポール)、マウロ・フィネット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)もここに入った。

海岸線に沿う国際色豊かなリゾート地を離れ、トルコの原風景の中を走る選手たち。息を飲むダイナミックな景色の中、逃げグループはメイン集団に対して5分のリードを稼ぎ出した。

連続する山岳で最も積極的にポイントを稼いだのは、かつてリクイガスに所属し、2009年のツアー・オブ・ターキーでステージ2勝を飾っているフィネット。しかし最後の1級山岳ゴグベリに向けてフランスのブルターニュ・セシェやソジャサンがペースを上げるメイン集団とのタイム差は縮まって行く。

高地の平坦路を行くプロトン高地の平坦路を行くプロトン photo:Kei Tsuji
内陸部の雄大な景色の中を走る内陸部の雄大な景色の中を走る photo:Kei Tsujiオリカ・グリーンエッジがメイン集団のコントロールを開始オリカ・グリーンエッジがメイン集団のコントロールを開始 photo:Kei Tsuji

標高1850mの1級山岳ゴグベリを目指す先頭の選手たち標高1850mの1級山岳ゴグベリを目指す先頭の選手たち photo:Kei Tsuji登坂距離10km・標高差700mの登りが始まると先頭はユーロップカーのトゥラウの独走に。1979年にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝、ツール・ド・フランスでステージ通算6勝を飾っているディートリヒ・トゥラウの息子ビョルンが健闘したが、ラスト7kmで吸収された。

ガッツポーズでゴールするナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー)ガッツポーズでゴールするナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji総合優勝をかけて真っ先に動いたのはセルジュ・パウエルス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)。しばらく独走したパウエルスにはケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、アスタナ)とナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー)、マキリム・メドレル(フランス、ソジャサン)、そして山岳賞ジャージを着るムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)が合流する。ここからパウエルスとメドレルが脱落し、シールドライヤースとベルハネ、サヤルの3人が先行してラスト1km。最も余裕を見せていたベルハネがラスト200mで仕掛けると、他の2人に追撃する力は残っていなかった。

1級山岳ゴグベリの頂上に集まった観客たち1級山岳ゴグベリの頂上に集まった観客たち photo:Kei Tsujiアフリカのエリトリア出身の22歳が、ツアー・オブ・ターキーのクイーンステージ制覇。この日のステージ順位がそのまま総合順位となり、ボーナスタイムを獲得したベルハネが10秒リードでリーダージャージを着る。

「今日のような登りで自分がどれぐらいの走りが出来るのか、正直言って分からなかった。だから今日の勝利は予想していなかったし、フィニッシュラインを越える時に泣いてしまった。プロ1年目なのでこれ以上の結果は望めないよ」と、嬉しさと驚きを隠せないベルハネ。

翌日からはUCIプロチームや、連日積極的な走りを見せる地元トルコのトルクセケルスポールを相手に、総合を守る立場で走る。「チームとして逃げに選手を送り込んで、最後の登りではチームメイトが自分をサポートしてくれた。これからはリーダージャージを守るための闘いが始まるよ」。

名産品のリンゴが表彰台に並ぶ名産品のリンゴが表彰台に並ぶ photo:Kei Tsuji総合リーダーの座についたナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー)総合リーダーの座についたナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji


その他のレース写真はフォトギャラリーにて!



ツアー・オブ・ターキー2013第3ステージ結果
1位 ナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー)          4h16'06"       
2位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、アスタナ)             +06"
3位 ムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)
4位 マキリム・メドレル(フランス、ソジャサン)                 +16"
5位 ヨアン・バゴ(フランス、コフィディス)                   +24"
6位 ローリー・スザーランド(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 フロリアン・ギロー(フランス、ブルターニュシュレー)            +28"
9位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、コロンビア)               +30"
10位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                   +33"
80位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)                    +12'54"
111位 佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)                   +13'13"
126位 宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)                     +13'44"

個人総合成績
1位 ナタナエル・ベルハネ(エリトリア、ユーロップカー)          10h48'27"       
2位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、アスタナ)             +10"
3位 ムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)             +12"
4位 マキリム・メドレル(フランス、ソジャサン)                 +26"
5位 ローリー・スザーランド(オーストラリア、サクソ・ティンコフ)        +34"
6位 ヨアン・バゴ(フランス、コフィディス)            
7位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 フロリアン・ギロー(フランス、ブルターニュシュレー)            +38"
9位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、コロンビア)               +40"
10位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                   +43"

ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

山岳賞
マウロ・フィネット(イタリア、ヴィーニファンティーニ)

ターキッシュビューティースプリント賞
アフメット・オルケン(チュニジア、トルクセケルスポール)

チーム総合成績
コフィディス

text&photo:Kei Tsuji in Elmali, Turkey