BMCが本社を置くグレンヒェンの周辺には、テストライドに打ってつけの環境が整っている。北に目を向ければ「ジュラ紀」の語源にもなったジュラ山脈が横たわり、南に脚を進めると緩やかな曲線を描く丘陵地帯が延々と続いている。

世界各国から集まったジャーナリストたちは、発表されたばかりのimpecを駆り、BMC社のスタッフに先導されて様々なコースを駆け巡った。普段からテストバイクを乗り込んでいるだけに、スタッフたちの速さはピカイチ!ライド後半にかけてスピードはグングンと上がった。

ここでは、テストライドに参加した星野知大と辻啓のインプレッションをお伝えする。

BMC本社周辺は美しい風景とテストライドに最適な環境が整っているBMC本社周辺は美しい風景とテストライドに最適な環境が整っている photo:Kei Tsuji BMCの健脚たちに引き連れられタフなコースでテストライドを行なったBMCの健脚たちに引き連れられタフなコースでテストライドを行なった photo:Kei Tsuji

テストライドに用意されたimpecがズラリと並ぶテストライドに用意されたimpecがズラリと並ぶ photo:Kei Tsuji

インプレッションby星野知大

「バイク全体が自然に進んでいくイメージ」「バイク全体が自然に進んでいくイメージ」 photo:Kei Tsuji

「自然に走る」
上等レーシングバイク

走り出して巡航走行した瞬間「え?」と、ギアに目を落としてしまった。結構重めのギアに入れているのだが、無理に踏み込まなくても不思議なほど自然に走っていくのだ。この試乗の前に、BMCスタッフの「前・中央・後ろの剛性バランスが最適」という説明を受けたからだろうか、ペダルにパワーを加えて進んでいるというより、バイク全体が自然に進んでいくイメージを受ける。

重量1790gと、昨年のトップモデル“teammachine SLR01”(重量1595g)よりも増えてはいるが、その走行感は軽い。むしろ総合的に性能がアップされているので、レースはもちろんのこと、ロングライドなどにも使いやすいだろう。

デザイン的には人それぞれ好みがあると思うが、流線的なフォルムの多い現在のカーボンバイクの中で、この剛毅な雰囲気は異彩を放つ。個人的には好みだ。(星野)

インプレッションby辻啓

「全ての動作に対してスムーズにバイクが反応してくれる」「全ての動作に対してスムーズにバイクが反応してくれる」 photo:BMC

「とにかくスムーズ」
素行の良いハイスペックマシン

ガンダムを彷彿とさせるスパルタンな外見から、尖った乗り味を期待(警戒)してテストライドをスタート。すぐにその期待は裏切られた。バイクの印象を簡潔に表すなら「スムーズ」の一言に尽きる。ダンシングでもがこうがシッティングで回そうが、ハイスピードでコーナーに突っ込もうが、全ての動作に対してスムーズにバイクが反応し、乗り手に服従の姿勢を見せてくれる。

高い振動吸収性はもちろんのこと、各パーツがそれぞれの長所を主張し合うようなバランスの悪さは皆無。フォークを含め、フレーム全体が一つの構造体としてまとまりを見せた。ライド途中に登場した荒い石畳にも怯むことなく突っ込める安心感。まるで長年乗り込んだ相棒バイクのような素行の良さに驚いた。

プロ使用のハイスペックマシンだけに、剛性の高さは言うまでもない。特にBBからチェーンステーにかけての剛性の高さから、自分の脚力ではフレームを“しならせる”には至らず。とは言っても持て余すような過度な剛性ではなく、レース使用を前提に考えると適切な味付けだと感じた。(辻)

impec ツール・ド・フランス2010でデビュー!!

カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)のマイヨジョーヌに合わせて投入されたイエローカラーのimpecカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)のマイヨジョーヌに合わせて投入されたイエローカラーのimpec photo:BMC
遂にベールを脱いだimpecのプレゼンテーションが行なわれたのは、ツール・ド・フランスの開幕直前。世界で初めてジャーナリストに披露されたばかりのimpecを、早速BMCレーシングチーム所属のカデル・エヴァンス(オーストラリア)とジョージ・ヒンカピー(アメリカ)の2人が駆った。

なかでも第9ステージに用意されたイエローカラーのimpecほどドラマチックなマシンはないだろう。第8ステージでマイヨジョーヌを獲得したエヴァンスだが、じつはステージ序盤の事故で左肘を骨折。しかし世界チャンピオンでもある彼はエースとしての誇りを賭けて、ライバルたちに骨折を隠したままレースを続行し、チームも一丸となって臨んだ。

しかし運命は過酷だ。エヴァンスは超級山岳を含む過酷なアップダウンで先頭から大きく遅れてしまう。マイヨジョーヌを失ったエヴァンスはゴール後に号泣し、骨折を隠していたことを明らかにするが、最後まで諦めない不屈の走りに多くの人の感動を呼んだ。impecはその後も彼の走りを支え、その誇り高きアルカンシェルをシャンゼリゼまで送り届けたのだ。第9ステージのみの活躍で終わったイエローカラーimpecだが、その存在は多くのロードレースファンの心に強い印象を残しただろう。

全米チャンピオンのジョージ・ヒンカピーもimpecを駆った全米チャンピオンのジョージ・ヒンカピーもimpecを駆った photo:BMC マイヨジョーヌカラーのimpecで下りを攻めるエヴァンスマイヨジョーヌカラーのimpecで下りを攻めるエヴァンス photo:Cor Vos

左肘を骨折しながらエヴァンスはツール・ド・フランスを見事に走り切った左肘を骨折しながらエヴァンスはツール・ド・フランスを見事に走り切った photo:Makoto Ayano


最後にBMCの2011年のロードモデルラインナップを紹介する。どれもBMCの特徴的かつ機能的なデザインがなされた魅力あるマシンが揃っている。

取材協力:フタバ商店 企画/制作:シクロワイアード テキスト:星野知大 写真:辻啓