コンポーネントの進化はある意味当たり前。今回のR9200系デュラエースの白眉は、もしかしたら、いや、あるいは確実にホイールなのかもしれない。3種類のリムハイトと2種類のブレーキ対応、そしてチューブレスとチューブラーと2種類のタイヤに対応する秀作揃いのデュラエースホイールたちを試した。

秀作揃いの新型デュラエースホイール群

R9200デュラエースのラインナップに登場したC36、C50、そしてC60という3種の新型ホイールたち。税込23万円台という、誰もが驚くコストパフォーマンスをひっさげデビューするデュラエースホイールは、数多くのブランド製品を試してきた編集スタッフメンバー2人をも驚かせる走りを秘めていた。レース界の勢力図をひっくり返しかねない、秘めたるポテンシャルを紹介していく。

R9200系デュラエースにラインナップされる、3種類のリムハイトを持つホイールたちR9200系デュラエースにラインナップされる、3種類のリムハイトを持つホイールたち photo:Kenta.Onoguchi
従来デュラエースホイールにはC40とC60と2種類のリムハイトが用意されていたが、R9200シリーズへのアップデートに伴い、先述の通りC36(mm)、C50、そしてC60と、よりエアロを意識したラインナップに変貌。超級山岳の登りからスプリント、そして平坦レースの高速巡航やタイムトライアルまであらゆるシチュエーションをカバーできるよう幅を広げている。

C36、C50、C60のリムプロファイル C36、C50、C60のリムプロファイル
チューブレス/WOモデルはリム内幅を21mm(R9100は17mm)、外幅を28mmに拡幅してワイドタイヤに対応しつつ、リム素材のアップデートによってペア重量はオールラウンド用のC50で1,461g、C36で1,350g、C60でも1,609gと大幅な軽量化を達成。リムブレーキモデルはプロやハイアマチュアユースを想定したことでチューブラーオンリーだが、C36は1,154g(R9100のC40で100g近い軽量化)とその数値はヒルクライマーの武器になるレベルまで達している。

軽量化のための切削が施されたハブフランジ軽量化のための切削が施されたハブフランジ photo:Makoto AYANOニップルは外出しでメンテナンス性に優れるニップルは外出しでメンテナンス性に優れる photo:Makoto AYANO

スポークは独特のエアロバテッド形状となるスポークは独特のエアロバテッド形状となる photo:Makoto AYANOダイレクトエンゲージメント構造と新形状のスプラインが採用されたフリーハブダイレクトエンゲージメント構造と新形状のスプラインが採用されたフリーハブ photo:Makoto AYANO


3種類のホイールのフリーハブは共に従来の3つ爪ではなく、MTB用コンポーネントのXTRと同じくダイレクトエンゲージメントシステムを採用することで駆動剛性、そして伝達効率の向上に努めた。フェイスラチェット式(従来換算では50ノッチ相当)とすることで空走状態からいち早くラチェットが噛み合うことで、R9100よりも瞬発的なレスポンスが可能になった。なお注意点としてカセットの新スプライン採用により、新デュラエースホイール群は12スピード専用となる(アルテグラホイールは11Sにも対応)。


今回試したのは、ともにチューブレス/WO・ディスクブレーキモデルの3種類のリムハイト。タイヤはヴィットリアのCORSAだが、末恐ろしいのは全て28c(実測30mm近い!)が装着され、C36に装備されていたのはエンデュランスモデルのCORSA CONTROLだったこと。それなのに、それなのに、新型デュラエースホイールの走りは目覚しいものがあったのだ。

「従来のイメージを刷新」

CW編集スタッフの磯部、そして高木が3種類のデュラエースホイールを試したCW編集スタッフの磯部、そして高木が3種類のデュラエースホイールを試した photo:Kenta.Onoguchi
高木:従来のデュラエースのホイールのイメージが刷新されましたね。すごく良くなった。イメージが変わりましたね。

磯部:いやあ、これはいいなあと思った。新型デュラエース最初の試乗の時、実は真っ先に目についたのはホイール(C50)の素晴らしさだった。今までコンポはデュラだけど、ホイールはロヴァールあるいはマヴィックと、別ブランドを選ぶ人が大多数だったけれど、これは良い。「R9200デュラエースにはデュラエースのホイールを」って人がすごく増えるはず。

高木:JCL(ジャパンサイクルリーグ:高木が出場中)のレース会場では広島ラウンドの時点で小石祐馬選手(チーム右京)しか使ってなかったんですが、やっぱり注目度はすごかったですよ。それと増田成幸選手(宇都宮ブリッツェン)も前C50、後R9100のC40という組み合わせでした。その2台だけだったにも関わらず、現場の話題性は高かった。やっぱりみんな、気になりますもんね(笑)。

磯部:今までのデュラエースホイールって全体的にマイルドな乗り味だったけれど、R9200になってロヴァールとかボントレガー、DTスイスのような「軽く乾いたホイール」、つまりとても現代らしい乗り味になった。それでいてさらに淀みが無いというか、とても洗練されたように思うね。

高木:それなのに硬すぎない、絶妙なバランスだなと思いました。C36、C50、C60とハイトが高くなるにつれて剛性が増すんですが、すごく走りやすい。もちろん剛性不足とかそういう意味ではなくて、良い意味で。脚に疲れが溜まらないようにうまくテンション調整されているな、と。

「本当に、良いホイール」

「洗練されていて、現代的で、硬すぎず、乗りやすく、武器になるホイール」「洗練されていて、現代的で、硬すぎず、乗りやすく、武器になるホイール」 photo:Kenta.Onoguchi
磯部:3種類ともに「掛かりが良い」ホイールだと思った。C60のゼロ発進を除いて、低速域から高速域までスピードを問わず速度を足すことができる。

高木:そうですね。そう思いました。加速力はC36ですが、中〜高速域になるとC50のトルクフルな加速力がいい感じ。50km/hを超えてくるとC36は少し辛いな、と感じますが、そもそも登りに特化したホイールと聞いています。C60は少しホイール外周部が重たいのか、最初の1歩、2歩でパワーを食われますが、そのあとのモリモリ感はC50の比じゃないですね。すごくいい。

中でも一番好みなのはC50でした。謳い文句通りなのですが、レーサーとして見たとき、どこを走っても対応してくれる万能さが良いですね。巡航能力も高いし、スプリントも掛かるし、横風にも強い。弱点を探す方が難しいと思います。

磯部:確かにレーサーや、レーサーばりに乗る人が一番使いやすいのはC50。C36はとにかく俊敏なホイールだよね。登りでも平地でも速度域を問わず、細やかなスピードの上げ下げに余分な力を使わずすぐ反応してくれる。

「速度域を問わず、C60の巡行能力はものすごい」「速度域を問わず、C60の巡行能力はものすごい」 photo:Kenta.Onoguchi
高木:そうですね。でも例えば、平地で50km/hを超えたり、1500Wオーバーでスプリントするにはちょっと物足りなさがありましたが、そもそもその領域はC50かC60の得意とするところだと思います。C36はヒルクライムはもちろん、週末に山をたくさん走るようなユーザーにはバッチリだと思います。

磯部:今回は全部タイヤが28cで、しかもクリンチャーで、C36にはCORSA CONTROLっていうエンデュランス系のタイヤがついていた。それにも関わらず転がりはものすごく軽く感じたし、C36に関して言えばクリンチャーとは思えないくらい。これがチューブレスやチューブラーになったら凄い走りになりそう。カタログの数値以上に走りの軽さは凄い。

C50は登り下りを問わず非常に扱いやすいC50は登り下りを問わず非常に扱いやすい photo:Kenta.Onoguchi
25mmタイヤを基準にエアロダイナミクスを最適化している25mmタイヤを基準にエアロダイナミクスを最適化している photo:Makoto AYANOWO/TL兼用でチューブレステープがセットされているのがデフォルト状態WO/TL兼用でチューブレステープがセットされているのがデフォルト状態 photo:Makoto AYANO


高木:未だヒルクライムではリムブレーキバイクが幅を利かせてますが、C36はディスクブレーキユーザーにとって武器になると思います。内幅が広いので、例えば25mmタイヤをつけても実測+1mmくらい増えるでしょうか。C60はどうでした?

磯部:C60は例え10km/hでも50km/hでも速度の維持が素晴らしくて、少しペダルを回すだけでずっと速度を保っていてくれるイメージ。ストップ&ゴーでなければすごく良いよね。縦にも横にも剛性感溢れるホイールだから慣性モーメントが強くて、ひらひら曲がるようなシチュエーションにはベストではないけれど、そのぶん「踏みしろ」が広くてギュッとスピードを載せられる。自分だったら踏み負けちゃうので自ら選ぶことはないけど…。

高木:C60はスプリンターとかルーラー用のホイールだと思うんです。3種類の中で飛び抜けて剛性が高いので一般ユーザーが導入するならよほど脚力に自信がある人向けかな、と。1500〜1600ワットでもがいても負けないで加速に繋げてくれる。同じ60mmハイトクラスのホイールと比べても走りの軽さがあるし、履けば間違いなく今までより速く走れるかな、と。

「C36はもちろん、C50も登りでオールラウンドに使える」「C36はもちろん、C50も登りでオールラウンドに使える」 photo:Kenta.Onoguchi
磯部:3種類それぞれはもちろん、それぞれの前後を掛け合わせても試乗してみたんだけど、実は一番フィーリングが好みだったのが前C36、後C50っていう組み合わせだった。もちろん組み合わせるバイクのリズムによっても変わってくるはずだけど、今回の試乗バイクと自分の走り方にはその組み合わせが良かった。前で走りの軽量感を出して、後ろは加速を重視してC50。とても良かったな。

「こんなに安くて良いんですか?」

磯部:忘れちゃならないのが前後23万円っていう価格。これは凄いことだと思うんだけど、どう?

「リーズナブルな値段なのに、走りは超トップクラス」「リーズナブルな値段なのに、走りは超トップクラス」 photo:Kenta.Onoguchi
高木:いや、コストパフォーマンスは半端じゃありませんよね。30万円台後半って言われても納得できますよ。今ロヴァールのハイエンドで29万円とハイエンドのホイール価格って若干下降傾向にありますが、その中でも競争力はすごい。カンパニョーロのBORAはまだまだ高いし、ボントレガーのアイオロスは30万円。デュラエースの23万円っていう価格は...こんなに安くていいのかな、と心配になります(笑)。

磯部:ホイールそのものの性能しかり、コストパフォーマンス然り、市場競争力はもうダントツだと思う。シマノというブランドがデュラエースでこれをやるっていう事実はかなりセンセーショナル。すごく人気が出そうだし、機会があればぜひ一度乗って欲しい。自分も1セット欲しい(笑)。

高木:今後12速が普及し始めたら、自分のバイクにデュラエースホイールをセットできる試乗会が開催されたら評価はぐっと上がると思うんですよ。ホイールは12速専用なので、コンポーネントを載せ替えるならぜひセットで選びたいですよね。今後デュラエースのホイールも「カンパニョーロにはBORA」のように、セットで使うものとして認識されると思います。今の国内レース界ってロヴァールのワンメイクかな? みたいな感じで勢力が増しているのですが、そこに一石を投ずる存在になりますね。現代のロードバイクとの相性がすごく良いホイールだと思いますので、一気に普及しそうです。

「カンパにはBORA、のようにデュラエースにはデュラエースホイールを、ってなる」「カンパにはBORA、のようにデュラエースにはデュラエースホイールを、ってなる」 photo:Kenta.Onoguchi
磯部:逆に、C36をこだわりのスチールバイクに組み合わせても良さそうだよね。質量が軽いから、重さというスチールバイクのネックな部分も打ち消してくれるし、走りもぐっと良くなるはず。

それにヨーロッパプロレースを見渡すと、特に今年はシマノのグローバルサポートチームであっても契約外ホイールを使っているケースが見受けられたけれど、新型デュラエースに切り替わるタイミングでホイールもデュラエースに戻るだろうと思う。

高木:本当ですね。逆に戻らないとおかしいと思えるほどです。

「瞬間的な掛かりはレースの"一瞬"に効く」

磯部:後はラチェット音も心地よくて好きだったな。やたら大きな音で悪目立ちするのではなくて、精密機械が動作している感じが強くて。

高木:いい意味でシマノっぽくないですよね。少し大きめかな、と思いますがいい音です。従来よりも掛かりも早いし、新しいフリーハブ機構もいいなと思いました。例えばレース中って一瞬の判断遅れで勝ち逃げを逃したり、スプリントで負けたりするので、反応の良さってすごく大事なんですよね。そういう場面でも新しいハブに期待できますよ。

最近「良い」と評されるホイールって、全体的なバランスが良くて、さらにスーッと走る「抜け感」があるんですよね。そしてこの新型デュラエースのホイール3種類にはそれがある。リーズナブルな値段なのに、走りは超トップクラス。素晴らしいホイールだと思いました。

「今後、あっという間に市場に浸透する、秀作ホイール」「今後、あっという間に市場に浸透する、秀作ホイール」 photo:Kenta.Onoguchi
磯部:ここまでデュラエースの出来が良いと、楽しみなのはアルテグラのホイール。今回試すことはできなかったけれど、ホイールの性格を大きく左右するリムがほぼ同じ形状って言うからそちらも期待できるよね。試乗用ホイールを借りることができたらすぐにレポートしたいね。

DURA-ACE R9200系ディスクブレーキホイール

DURA-ACE C60

シマノ DURA-ACE C60シマノ DURA-ACE C60 photo:Makoto AYANO
リムハイト60mm
リム内幅(TL)21mm
リム外幅28mm
スポーク前後24本、OPTBAL
ブレーキセンターロックディスクブレーキ
アクスル12 mm E-THRU
O.L.D. 100mm(フロント)、142mm(リア)
チューブレス平均重量751g (フロント)/858g (リア)、合計1,609g
チューブラー平均重量667g (フロント)/770g (リア)、合計1,437g
希望小売価格(税込)フロント:107,690円 / リア:125,840円、合計233,530円

DURA-ACE C50

シマノ DURA-ACE C50シマノ DURA-ACE C50 photo:Makoto AYANO
リムハイト50mm
リム内幅(TL)21mm
リム外幅28mm
スポーク前後24本、OPTBAL(リアのみ)
ブレーキセンターロックディスクブレーキ
アクスル12 mm E-THRU
O.L.D. 100mm(フロント)、142mm(リア)
チューブレス平均重量674g (フロント)/787g (リア)、合計1,461g
チューブラー平均重量610g (フロント)/723g (リア)、合計1,333g
希望小売価格(税込)フロント:107,690円 / リア:125,840円、合計233,530円

DURA-ACE C36

シマノ DURA-ACE C36シマノ DURA-ACE C36 photo:Makoto AYANO
リムハイト36mm
リム内幅(TL)21mm
リム外幅28mm
スポーク前後24本、OPTBAL(リアのみ)
ブレーキセンターロックディスクブレーキ
アクスル12 mm E-THRU
O.L.D. 100mm(フロント)、142mm(リア)
チューブレス平均重量620g (フロント)/730g (リア)、合計1,350g
チューブラー平均重量522g (フロント)/632g (リア)、合計1,154g
希望小売価格(税込)フロント:107,690円 / リア:125,840円、合計233,530円