新R9200系デュラエースに搭載されたワイヤレスとは? 12スピード化して驚異的な速さになった変速や扱いやすくなったディスクブレーキシステムなど、発表された製品概要とインプレッションを経て浮かんだ疑問を解消すべく、シマノ担当者に「根掘り葉掘り」インタビューを行った。

質問に答えてくれたのはデュラエースの広報担当、シマノセールス株式会社バイシクルコンポーネンツ営業部販売促進課の鞍谷融紀(くらたにゆうき)さん。テクニカルな質問についてはシマノの技術者にオンラインやメールで質問を届けてもらい、鞍谷さんを通して答えてもらっている。

12速化を果たしたドライブトレイン。ギア構成、変速性能、駆動剛性など各項目が見直された12速化を果たしたドライブトレイン。ギア構成、変速性能、駆動剛性など各項目が見直された photo:Makoto AYANO
Q :旧9100系と比較してコンポの総重量はどうですか? また価格は?

シマノセールス株式会社バイシクルコンポーネンツ営業部販売促進課の鞍谷融紀さんシマノセールス株式会社バイシクルコンポーネンツ営業部販売促進課の鞍谷融紀さん photo:MakotoAYANOA :総重量はざっくり言って「ほぼ同じ」です。ギアが1枚増えていますが、最小限の重量増にとどめています。チェーンホイールに54×40T、カセットに34Tの大きな歯数のものを選べば重くなるなど組み合わせによりますが、それでもケースによって約10g程度の微増です。コンポの値段はR9170フルセットが36万円程度だったのがR9200は40万円強と、10%程度アップしています。

Q :今までのデュラエースは元プロ選手が開発に関わってきました。6月にチームDSMがベルギーのレースで使用していたスクープもありましたが、プロチームや選手などとの開発の取り組みはどのようなものだったのでしょうか。またいつ頃から開発に取り組んだのですか?

A :もちろん今回の開発にあたっても海外プロ選手、プロチーム、国内のシマノレーシングの選手たちとの共同作業を行っています。プロチームに試作品を投入するのは昨今の事情で難しいのですが、一線級の現役を退いたばかりの選手などを専属の契約ライダーとして、個々人に渡してテストしてもらい、フィードバックを受けるという作業を重ねてきました。彼らが何を感じたかを聞き取ることから始めています。

2018年にはすでにブレーキの試作品のテストに取り掛かっています。そうした長期サイクルで取り組んでいますので、今年の8月にチームDSMの選手が使用していたスクープはすでにほぼ製品版をレースで使用するという最終確認の段階でした。

新型コンポーネントを搭載したヨリス・ニューエンハイス(オランダ、チームDSM)のスコットADDICT RC新型コンポーネントを搭載したヨリス・ニューエンハイス(オランダ、チームDSM)のスコットADDICT RC (c)CorVos国内で開発テストを担った木村圭佑選手(シマノレーシング)国内で開発テストを担った木村圭佑選手(シマノレーシング) photo:MakotoAYANO

Q :無線を採用した理由は何でしょうか?

A :デュラエースは10代目、DI2は7970から数えて4代目です。すでに信頼性が積み重なっていますが、今回のテーマは「サイエンス・オブ・スピード」。すべてはスピード向上のために何をすればいいか、その答えが無線化でした。最速の変速を実現するためです。STIレバーから発信した信号を受信したディレイラーが素早く作動する。通信の速さ、電気的な速さ。それらを求めたとき、その答えは無線化に尽きるんです。

無線を搭載したSTIレバー。変速スイッチ操作により無線信号を発してディレイラーと通信する無線を搭載したSTIレバー。変速スイッチ操作により無線信号を発してディレイラーと通信する photo:MakotoAYANOSTIレバー側と通信していることを示す緑のランプ点滅STIレバー側と通信していることを示す緑のランプ点滅 photo:MakotoAYANO

無線化において変速の速さを決定づける要は高機能化したリアディレイラーです。無線通信のデバイスに加えてこれまで有線式で使用していたジャンクションAや充電器などすべてをオールインワンでまとめた機能をRDボディに搭載しています。「連絡系統」が直結しているため、変速スイッチの信号を受けたRDがほとんど脊髄反射のように変速するんです。

通信機能を搭載することで脊髄反射のように素早く動作するリアディレイラー通信機能を搭載することで脊髄反射のように素早く動作するリアディレイラー photo:MakotoAYANO
デュラエースの広報担当の鞍谷融紀さんからテクノロジーの詳細説明を受けるデュラエースの広報担当の鞍谷融紀さんからテクノロジーの詳細説明を受ける Q :インターネットや携帯電話などモバイル通信が盛んな世の中で、様々な電波が身の回りに飛び交っている状況で混信の心配はないのでしょうか? また導入した無線はどういった種類のものですか?

A :混信しないこと自体を証明することが難しいのですが、限りなく混信しない仕様です。そのためにシマノ独自の通信チップを開発して汎用の無線通信とは使っている周波数帯を意図的にずらしています。妨害電波のテストなど、ありとあらゆるテストを行いました。

無線としてはwi-fiやbluetoothに近い種類のものですが、周波数帯として使われていない帯域のもので、シマノが独自に作ったシステムです。細かくて言えない部分がありますが、混信などの間違いなく変速するために開発しています。

Q :無線通信などの重要なパーツをリアディレイラーに凝縮していますが、落車の際にいちばん壊れやすい所だと考えるとちょっと心配になります。その点はどうでしょうか?

ジャンクションAや充電器などすべてをオールインワンでまとめた機能をRDに搭載ジャンクションAや充電器などすべてをオールインワンでまとめた機能をRDに搭載 photo:MakotoAYANO
A :もちろん開発陣でも議論はありましたし、転倒等の外的要因によるトラブル発生テストも行っています。そもそも91から採用しているシャドーデザインは外側への張り出し量が少なく、モーターユニットはフレームの内側に隠れるようになっています。転倒しても地面に直接ぶつからないように設計しています。そして衝撃を受けた場合にユニットを守るために意図的に機構が外れるセイバー(脱臼)機構も備わっていますから、DI2のRDはご想像よりすっとダメージに強いと考えています。

リアディレイラー本体に無線受信部や充電ポートを備えるリアディレイラー本体に無線受信部や充電ポートを備える スマホアプリでスイッチ割当などディレイラーセッティングが行えるスマホアプリでスイッチ割当などディレイラーセッティングが行える


Q :フロントディレイラー周辺なら落車の影響は受けにくいと思いますが。

A :FDに通信機能をもたせる場合、タイヤ太さやフレームとの干渉もでてくるため、それは筋の悪いことでした。タイヤはこの先さらにワイド化する可能性もあります。なによりRDに機能を集約したほうが変速のスピードが速くなるため、この構成がベストだったのです。

フロントディレイラーは大幅な小型化に成功。96gと非常に軽いフロントディレイラーは大幅な小型化に成功。96gと非常に軽い photo:Makoto AYANO
「無線であることを感じることはないが、変速の速さは明らかにメリットが大きい」「無線であることを感じることはないが、変速の速さは明らかにメリットが大きい」 photo:Kenta.OnoguchiQ :無線のトラブルを避けるために、強い電磁波を発する機器や通信機器の近くに置くなど、しないほうが良いことはありますか? 

A :どんな無線機器でも強い電磁波の発生する機器の近くに置けば電波の不具合が起こりやすくなるのは自明ですので、避けたほうがいいかというならば、そのほうが良いというのが回答です。通常の自転車での使用下であれば基本的に心配はありません。通常の使用下とは、大量の無線変速の自転車が並走する集団、テレビ、放送系の電波が飛ぶ状況など、自転車に乗る際に想定される状況です。

Q :もしレバーと変速器の無線接続が切れたとして、標準的なリカバリ手順を教えてください。  

A :接続が切れるというという状況が、他の製品とペアリングしたとか、バッテリーが切れて動かないという状況以外は考えにくいのですが、接続が切れた場合は、充電をしたのちにペアリングをし直してください。

Q :レバー側の発信用電池はコイン電池が用いられていますが、どれぐらいもつ想定ですか?また交換時期がわかるサインはありますか?

レバー頭部に無線通信部と電池が内蔵されるレバー頭部に無線通信部と電池が内蔵される photo:MakotoAYANO無線通信に使用するコイン電池CR1632を内蔵無線通信に使用するコイン電池CR1632を内蔵 photo:MakotoAYANO

A :電池残量は2つのレバーの先端を長押しするとレバー上部のインジケーターが緑色に光ります。これが赤く光れば交換時期です。電池は1.5〜2年間を目安に交換してください。コイン電池CR1632は軽くて小型な省エネ電池で、コンビニや電器店、世界中で入手が容易ということで採用しています。

Q :DI2電圧低下の際に、通信不良と作動不良(トルク不足)のどちらが先に現れますか?

A :従来のDI2と同様に、まずはFDが動作しなくなります。その後RDが動作を止めればバッテリーの残量無しです。無線通信の動作電力はものすごく小さいので、モーターを動作させるそれとは比になりませんので通信不良は変速機の動作停止前に起こることは考えにくいです。

リアディレイラー後部に用意された充電ポートリアディレイラー後部に用意された充電ポート photo:Makoto AYANOまた、リアディレイラーから本体バッテリーへの充電は従来はACアダプターを備えたケーブルを用いましたが、その機能はRDに内蔵されたため、専用USBケーブルをジャックにつなぐだけです。

Q :これからは設定変更や管理上、スマホアプリを使うようになりますか?

A :対象となるユーザーによると思います。PCの場合はSMPCE02(DI2機能設定・診断ツール)が必要になりますが、大量に自転車を裁くお客様にとってはプリセット機能など有用なものも多いですが、一般のディーラーのお客様にとってはアプリを用意すればコネクトできる利点がありますので、アプリの登場機会は多くなると思います。

Q :有線接続も可能で、その場合もしコネクタ等が外れるなどした際には(最初にペアリングしてあれば)自動で無線で繋がるとのことですが、有線接続の可能性を残したり、バックアップのような機能をつけたのはなぜでしょうか。

STIレバーのブラケットには有線ポートも用意されるSTIレバーのブラケットには有線ポートも用意される photo:MakotoAYANOA :STIレバーはワイヤレスでもワイヤードでも対応できるようになっています。E-Bikeで使用される場合、有線接続が必要とされるケースも想定されます。そして市場に現存する様々な形状のフレームに対して「すべて対応している」とは言い難いのです。

これからのユーザーの希望ではほぼ100%ワイヤレスを選ぶだろうというリサーチ結果もありますが、両方に対応できるレバーの内部構造であるなら、片方をあえてブロックすることは無いだろうということで両対応としています。少数の方が希望する使い方にでも対応する可能性を残す意味で、現状を過渡期として両方を残しています。

Q :変速が速くなったことが性能的にはもっとも印象的です。リアの変速は速く、スムーズです。今まで足の力を抜いていたことに気付かされ、それが必要無いくらい変速ショックが少ないですね。ガチッとこない。HYPERGRIDE+とは、どういうテクノロジーでしょうか。

HYPERGRIDE+はXTRからあったが、クロスレシオになることでさらに開発は難しかったHYPERGRIDE+はXTRからあったが、クロスレシオになることでさらに開発は難しかった photo:MakotoAYANO
A :スプロケットの1枚1枚に変速させるための「ゲート」と呼ばれる段差や波打つような加工がしてあり、そのゲートを適切に配置することでチェーンがローからトップ側にスムーズに落ちていくよう詰めて設計しています。トップからロー側へもチェーンを拾うきっかけとなるポイントを計算して設けています。

スプロケット1枚1枚が意図的な形状を持つHYPERGRIDE+スプロケット1枚1枚が意図的な形状を持つHYPERGRIDE+ photo:MakotoAYANO
歯先に段がついているギア、欠けたようなギア、尖ったギア、角の張ったギアそれぞれに役割があり、リアディレイラーが動いたときにチェーンを脱線させる、次の歯へと送る、拾う、と、すべてのギアが違う役割をもっています。HYPERGRIDE+はMTBですでに持っていた技術ですが、歯数差の小さなクロスレシオになるほど設計が難しかったのです。

スプロケット裏にもHYPERGRIDE+の溝や切り欠きがあるスプロケット裏にもHYPERGRIDE+の溝や切り欠きがある photo:MakotoAYANOチェーンリングの裏の加工やスパイクピンもHYPERGRIDE+の構成要素だチェーンリングの裏の加工やスパイクピンもHYPERGRIDE+の構成要素だ photo:MakotoAYANO

Q :フロントディレイラーはサイズが小さく、軽く、驚くほど変速が速くなりました。いったいどうやって成し遂げたのでしょうか。

小型化してなお速い変速が可能になったフロントディレイラー小型化してなお速い変速が可能になったフロントディレイラー photo:MakotoAYANO
A :R9170比較で今までよりトルクのあるモーターを使い、パンタグラフのリンク構造を根本から見直すことで45%速い変速を実現しました。小型化できたのは構造的に可動部を1リンク減らして直押ししているイメージです。

構造の見直しにより著しい小型化を果たしたフロントディレイラー構造の見直しにより著しい小型化を果たしたフロントディレイラー photo:MakotoAYANO
Q :ディスクブレーキはガツッと効かず、コントローラブルでスピード調整がしやすいと感じました。とても扱いやすくなっています。この変化はどういった設計が効いているのでしょうか。

A :ディスクブレーキはシマノとしても自信のあるところで、デュラエースの製品ハイライトだと自負しています。それまでのタイヤがロックするほどの強力な制動力をコントロール性にふったという設計イメージです。最大制動力は依然としてパワフルですが、スピードをいかに殺さずにコントロールして速くコーナーを曲がるかにフォーカスして開発しています。サーボウェーブ機構のコントロール域を調整したのが新ブレーキシステムの要になります。一気に効くという感覚から、当て効きする領域が広がったことを体感できるはずです。結果として速い状態でコーナーに入っていけます。

ワンピース構造による小型軽量化を遂げたブレーキキャリパー。小型軽量化と共にブリーディング方法も見直された ワンピース構造による小型軽量化を遂げたブレーキキャリパー。小型軽量化と共にブリーディング方法も見直された photo:MakotoAYANO
Q :油圧ブレーキのサーボウェーブ機構とはどんなものでしょうか?

A :ブレーキング途中からストロークに対するブレーキ力の上昇カーブが早まる機構です。MTBなどではMaxパワーへ早く到達させるために使っているのですが、ロードSTIレバーでは必要なパワーまでのストロークマージンとしてその機構を利用し、パーシャル域を広くしています。リムブレーキでいう当て効きのようなイメージです。

セラミックからレジンに素材変更したピストン。割れにも強くなったセラミックからレジンに素材変更したピストン。割れにも強くなった photo:MakotoAYANOブリーダーを見直し、エア抜きやオイル交換が容易になったブリーダーを見直し、エア抜きやオイル交換が容易になった photo:MakotoAYANO

キャリパーのワンピースモノコック構造も効いています。すでにXTRで基礎はあった鍛造の技術ですが、キャリパー本体を小さく、軽く、しかし剛性も上げるという造りで、コストもかかりますが、他のものとは違います。新たなレジンピストンも熱に強い特性があります。パッドクリアランスが広がったことで、ローターが接触する「シャンシャン」音がしなくなりました。

Q :STIレバーのブラケット部が少し大きくなったようです。それによってしっかり握り込めます。レバーはやや内側に向けた取り付け方も想定され、エアロポジションが取りやすくなっています。形状についての考え方を教えて下さい。

エアロトレンドに対応し、使い勝手を両立させたSTIレバーエアロトレンドに対応し、使い勝手を両立させたSTIレバー photo:Kenta.Onoguchi
A :今回の開発にあたって「洗練されたインターフェイス」と呼んでいる部分です。エルゴノミクスを追求した結果、上から見てレバーの頭が少し内側に入る「ハの字」になる形状がデフォルトの取り付け状態です。

開発にあたっては前モデルを引き合いに、まずレバー各部の役割を改めて明確にしました。ブラケット部はしっかり握れること、レバーは引く操作がしやすいことなど。フードトップがカバーが付いたような構造になっているのは、前モデルは握り込んだときにレバーが動いてしまうことがあったためです。レバーの動きを気にすること無くしっかり握れると思います。変速スイッチも押し間違えないように1.5mm外側にし、極限のなかでのひと押しという状況でも確実に変速するように設計しました。 

レバーブラケットは強く握り込んでもレバー動作に影響がないレバーブラケットは強く握り込んでもレバー動作に影響がない photo:MakotoAYANOブラケット裏にも痛くなる溝などがないスリークな構造ブラケット裏にも痛くなる溝などがないスリークな構造 photo:MakotoAYANO

ブラケット上部を握りしめてのグリップは安心感があるブラケット上部を握りしめてのグリップは安心感がある photo:MakotoAYANO
Q :UCIによるスーパータックポジション禁止は2021年のこと。それが新しいレバー形状を煮詰めるきっかけになったのでしょうか?

A :いいえ。21年で形状が決まっていないようなものは製品としては成立しません。概形は3年前以上前にすでに見えておりました。市場の観察から幅の狭いハンドルや少々極端なブラケット角度の選手がそれを使う理由を考えた結果です。スーパータックはDHポジションなのでブラケットとは関係ないですね。おそらくハンドルに前腕を置く姿勢のことかと思います。

スピード調整しやすいブレーキのおかげでコーナリングが安心だスピード調整しやすいブレーキのおかげでコーナリングが安心だ photo:Kenta.Onoguchi
「新レバーは握りかたのバリエーションが増えてマルチポジションが可能になった」「新レバーは握りかたのバリエーションが増えてマルチポジションが可能になった」 Q :極端なエアロフォームが禁止になった代わりに、選手たちはレバーやハンドルでなんとかエアロポジションをとろうと苦心していますよね。新たなレバーフード形状のグリップポイントは、実質何mmか遠くなっているように感じますが?

A :傾斜や軸の構成も違うので、単純比較がしにくい寸法なのですが、レバーフード部はおよそ4㎜長くなっています。ポジションの変更はプロユースでは話題になっていませんが、小柄な方だと影響があるかもしれません。手や身体の大きさによっても感じ方は変わるかもしれません。

Q :ブレーキのコントロール性能の向上には様々な要因が絡み合っていると考えられますが、フィーリング向上のために煮詰めた要素はありますか?

制動力の強さはそのままにコントロールしやすくなったディスクブレーキ制動力の強さはそのままにコントロールしやすくなったディスクブレーキ photo:MakotoAYANO
A :STIレバーの効率と、それにともなうブレーキのピストン選定を行いました。単純にレバー効率を高めるだけなら他社のように入力を重くしてバネを強くすればいい。ユーザーは重いレバーを引っ張るがシステムとしては成立する。しかしそれでは本末転倒なので、軽い入力で効率だけを引き上げる機構の見直しを行いました。またそれにともなうBR側のシールとピストン構造のマッチングを煮詰めることで従来のものから明らかに違うディスクブレーキができたと思っております。

Q :カセット(スプロケット)は11−30、11−34Tの2種に絞られました。その根拠はなんでしょうか。

A :特殊な例を除いて現在スポンサードしているプロ選手の9割ほどが11スピードの11ー30Tカセットを使用しているという調査結果が出ています。レースのハイスピード化やバイクの性能向上でスピードが上がるなかで、アウターに(本来TT用の)54Tを使っている選手が多いというのも。12スピードになってカセットに16Tが入ることで、ギアステップが増えたぶん54Tが活かせる面もあります。そしてアマチュアライダーを含めると11ー34Tがこれからのスタンダードになると思います。

Q :プロ選手が平坦路やTTで、もっとロー側のクロスレシオを望む可能性は無いのでしょうか?

シマノセールス株式会社バイシクルコンポーネンツ営業部販売促進課の鞍谷融紀さんシマノセールス株式会社バイシクルコンポーネンツ営業部販売促進課の鞍谷融紀さん photo:MakotoAYANOA :TTにおいてはそのギアをフルレンジで使うことはなく、コースのプロファイルからなるフロントギアとその直線チェーンラインで得られるギア比のみが重要になります。よって2つのカセットでカバーできると考えています。カセットは今後バリエーションを増やしていくことは可能です。

Q :チェーンホイールに使用可能な最小アウター歯数、最大アウター歯数は何Tでしょう? シクロクロスではアウター46T、下りの速いタイムトライアルでは58Tといった規定外のギアも使用する可能性があると思うのですが。

A :あくまで設計上のスペックは最小は50T、最大は54Tです。現在のところそれ以外の歯数の使用は保証できません。しかし今後のギア展開によって検証が終わればこの範囲は改訂されることがあります。

Q :カンパニョーロやスラムの12スピードカセットとはギアピッチや位置は同じでしょうか? 11Sではほぼ共通で、使用することが可能でした。

A :何をもって同じと見なせるのかわかりませんので回答できません。我々の扱う寸法でいえば11Sですら3社まったく違うものです。たまたま動いただけではないでしょうか。競合他社のコンポで動くかどうかはシマノとして検証の必要がないことです。

Q :ブレーキホースやオイルのアップデートはありますか?

ブリーダーを見直し、エア抜きやオイル交換が容易になったブリーダーを見直し、エア抜きやオイル交換が容易になった (c)シマノA :それらは変更ありません。ミネラルオイルも今までと同じものを使用します。なおブリーディングの方式は変わりました。ブリードスクリューがよりアクセスしやすい構造になり、ブリーディング作業がしやすくなりました。

Q :XTRのローターであるRT-MT900がDURA-ACEに組み込まれて標準仕様となりましたが、プロチームも先がけてレースで使用していました。どんなフィードバックあったのでしょう。

A :RT-MT900はロードモデルの2年後に出たローターです。フィンが小さい理由はドロはけのためで、MTB用とは謳っていたものの、フィンの大きさだけで放熱効率が変わるというわけではなく、アームの部分までトータルとしてみたとき、RT-MT900は高温になった際の熱ブレ(歪み)が少なく、「でき」が良かったんです。

XTRグレードのRT-MT900ローターが標準となるXTRグレードのRT-MT900ローターが標準となる photo:MakotoAYANOICEテクノロジーによる冷却フィンとアルミサンドイッチ構造によるRT-MT900ローターICEテクノロジーによる冷却フィンとアルミサンドイッチ構造によるRT-MT900ローター photo:MakotoAYANO

プロの間で先に使われていたのは、意図的にシマノから仕込んで使えるかどうかテストしていた部分もあるんです。RT-MT900ローターは熱振れに対する耐性が高いので、ダウンヒルなどで熱で変形してまた戻るときの変化が少ないんです。その結果、放熱やブレーキ特性を良くするために、それがいいローターなら、システムとして良いものになるならそれを使いましょうという判断をしました。もし今後もっと良いローターができたなら躊躇なくラインナップに組み込むつもりでいます。

剛性をアップさせたクランクと再構成されたギアテーブル。チェーンはXTRと共通の12S用を使用する剛性をアップさせたクランクと再構成されたギアテーブル。チェーンはXTRと共通の12S用を使用する photo:MakotoAYANO
Q :12Sチェーンの寿命はどれぐらいでしょうか。薄くなったことで短くなっているのでしょうか?

A :チェーンの寿命は使用条件によりますが、大きな差は出ていません。チェーンにはすでにXTR用としてラインナップしていた12Sのものを使います。MTBでの使用条件はチェーンリングがシングルで小さく、リアが51Tのビッグギアでテンションが高く、条件が非常に厳しいなかで使うもの。ロードでも寿命や交換頻度に差が出るほどのものではありません。なおMTBと同じくクイックリンクを使用して繋ぎます。



「DURA-ACE R9200シリーズ 発表記念生配信トークライブ」においてもシマノ技術者が開発上の質問に答えているため参考にしてほしい。



――次回は「SCIENCE of SPEED」5本柱のひとつ、再定義されたホイールシステムについて掘り下げます。