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ピナレロのロードラインアップに復活を果たした新作のエンデュランスエアロロード「PARIS」をインプレッション。ハイエンドモデル譲りの洗練されたデザインと新設計のコンフォートジオメトリーを採用。ライドを楽しむという新しいコンセプトが与えられた注目の1台を徹底解説していこう。

キーワードは"コンフォート" 生まれ変わった新世代PARIS

ピナレロ PARIS DISK(グレースティール)ピナレロ PARIS DISK(グレースティール) photo:Makoto.AYANO
DOGMAやPRINCEとともに、ピナレロのレーシングブランドとしての歴史を作ってきた名車「PARIS(パリ)」。ツール・ド・フランス総合優勝を成し遂げるほどのピュアレーシングバイクとして生み出され、以降その時代の最先端テクノロジーを盛り込みつつ、約20年間にも渡りピナレロのラインアップを支えてきたモデルだ。2014モデルを最後に姿を消していたPARISだが、今回実に7年ぶりとなる復活を果たした。

往年のファンからすればPARISは由緒正しきレーシングモデルというイメージをお持ちのことだろう。しかし、今作は従来の位置付けとは異なり「ライドの楽しさを伝える」というピナレロの中でも全く新しいスタイルのエアロロードとして誕生している。レースユースはDOGMAやPRINCEに任せ、PARISはさらにライドの裾野を広げる役割を担うこととなる。

路面からの突き上げを緩和する弓なりのシートステー路面からの突き上げを緩和する弓なりのシートステー photo:Makoto.AYANO素材にはT600 UDカーボンを使用し優れた強度と程よい剛性感に仕上がる素材にはT600 UDカーボンを使用し優れた強度と程よい剛性感に仕上がる photo:Makoto.AYANO美しいカーブを描いたONDAフォークも健在。整流効果を生み出すフォークフラップも備わっている美しいカーブを描いたONDAフォークも健在。整流効果を生み出すフォークフラップも備わっている photo:Makoto.AYANO

大まかな分類で言えばエンデュランスエアロロードという立ち位置となった今作で最も注目すべきは、新設計の「ニューコンフォートジオメトリー」を採用したこと。上位グレードとは異なりショートリーチ&ハイスタックとすることで、あらゆるサイクリストが無理のないポジションを取ることができ、長時間のライドでもストレスが少なく快適に走れるよう設計されている。

新型PRINCEシリーズが採用するニューレーシングジオメトリーと比較して、大きな違いとなるのはヘッドアングルが1°ほど寝かされていること。さらにヘッドチューブ長は10~20mmほど長く、チェーンステーもわずかに延長されており、コンフォートな乗車姿勢と高い直進安定性を実現していることが分かる。また、ポジションの自由度も増しているといい、適切なフィッティングを受ければどんなライダーにも最適なポジションを実現できるとピナレロは説明する。

直線基調なトップチューブはピナレロの中でもPARIS特有のデザインだ直線基調なトップチューブはピナレロの中でもPARIS特有のデザインだ photo:Makoto.AYANO上位モデルとは異なりケーブルフル内装システムは採用されていない上位モデルとは異なりケーブルフル内装システムは採用されていない photo:Makoto.AYANO

横方向に扁平させたチェーンステーが振動吸収性を高める横方向に扁平させたチェーンステーが振動吸収性を高める photo:Makoto.AYANOBBはピナレロ伝統のイタリアンスレッド式を採用しているBBはピナレロ伝統のイタリアンスレッド式を採用している photo:Makoto.AYANO

PARIS専用にジオメトリーを刷新した一方、代々継承してきた安定性と操作性に優れたハンドリング特性はそのまま受け継がれているという。同じ510サイズのDOGMA F12と比較すると、PARISはヘッドアングルが0.5°寝かされる一方で、フォークオフセットを4mm増加させることでトレイル値を調整している。さらに、470サイズ以下は52mm、495サイズ以上は47mmと2種類のオフセット量をもったフォークを用意。スモールサイズでも「ピナレロ・ハンドリング」を味わうことができ、ライダーのスキルに関係なく安定したコーナリングやダウンヒルを楽しめる運動性能を煮詰めている。

フレームの形状に目を移せば、滑らかな曲線を各所に取り入れたピナレロらしさを今作でも見て取ることができる。DOGMA F12の面影を感じさせる洗練されたイタリアンデザインを纏い、ハイエンドモデルさながらの所有欲を掻き立てるレーシーなシルエットに仕上がる。ピナレロのアイコンとも言えるONDAフォークも健在だ。

MOSTのショートノーズサドルを標準装備。クッション性もあり快適な乗り心地に貢献するMOSTのショートノーズサドルを標準装備。クッション性もあり快適な乗り心地に貢献する photo:Makoto.AYANOPRINCEなどと同じ内蔵式のフロントシートクランプを採用PRINCEなどと同じ内蔵式のフロントシートクランプを採用 photo:Makoto.AYANO

全体的に空力性能を高めるエアロフォルムを採用しており、スムーズな風抜けを実現するチューブ形状はもちろん、フィン状の突起により整流効果を生み出すフォークフラップも搭載。その上で、弓なりのシートステーや後方に向かうにつれて丸みを帯びるトップチューブ、横方向に扁平させたチェーンステーなどが快適性の強化に一役買っている。

新型PARISはディスクブレーキ専用設計であり、ディスクブレーキの特性に合わせた左右非対称デザインや剛性バランスへ最適化されている。タイヤクリアランスもレーシングモデルより広い30C対応へと拡張されており、より乗り心地の良いワイドなタイヤを装着することが可能だ。30Cもあればやや荒れた路面にも対応できるため、使い方を限定しないマルチな乗り方を楽しむことができるだろう。

PRINCEと共通形状のエアロシートポストを搭載PRINCEと共通形状のエアロシートポストを搭載 photo:Makoto.AYANODOGMAやPRINCEとも共通するエアロフォルムを纏ったチューブデザインDOGMAやPRINCEとも共通するエアロフォルムを纏ったチューブデザイン photo:Makoto.AYANOボリュームあるヘッドチューブ。ケーブル類はダウンチューブ脇からフレーム内にアクセスするボリュームあるヘッドチューブ。ケーブル類はダウンチューブ脇からフレーム内にアクセスする photo:Makoto.AYANO

上位モデルとは違ってケーブルフル内装システムは採用されておらず、ブレーキのオイルラインやシフトケーブルはダウンチューブ脇からフレーム内にアクセスする。完成車は機械式シフトだが、ダウンチューブにジャンクションを配置できるE-Linkシステムにも対応しているため、電動式コンポーネントへのアップグレードも容易だ。

フレーム素材はミドルグレードのT600 UDカーボンを採用し、優れた強度と疲労が溜まりにくい硬すぎない剛性感を獲得している。販売パッケージはシマノ105MIX完成車のみで、ブルースティール、レッド、グレースティールの3カラー展開だ。

イメージを一新したPARIS 当時のモデルを知る二人のライダーが試す

レーシングバイク並みの運動性能に快適なポジションがプラスされた1台

エンデュランスエアロロードとして復活を果たしたPARISをインプレッションエンデュランスエアロロードとして復活を果たしたPARISをインプレッション photo:Makoto.AYANO
小西:エンデュランスエアロロードという触れ込みで登場した今回のPARISですが、乗ってみると十分に運動性能は高くて、むしろ乗り味はレーシングバイクに近い感覚でしたね。「バイクがしなって快適」といった方向性のエンデュランスではありません。もがいてみてもフレームのたわみ感は抑えられていて、非常に気持ち良く進んでくれました。

永井:そうですね。自分程度のパワーではフレームのしなりは感じられないほど、しっかりとした剛性感がありました。これはピナレロバイク全般的に言えることなんですけど、ペダリング時にBB周りに体重がかかったとき、左右から踏むような力がかかったときに、どのモデルも共通してBBがあまり動かない印象があるんです。普段乗っているDOGMA F10と比べても、その辺りの感触はあまり変わらないほどです。パワーを逃さず効率的な走りができる要因になっていると思います。

「特にエンデュランスというイメージではなく、十分にレースでも使えるような性能を感じた」「特にエンデュランスというイメージではなく、十分にレースでも使えるような性能を感じた」 photo:Makoto.AYANO
「快適なライドポジションが取れるため、ゆったり景色を楽しむようなライドにぴったり」「快適なライドポジションが取れるため、ゆったり景色を楽しむようなライドにぴったり」 photo:Makoto.AYANO
小西:剛性感という面ではフロントフォークの出来も好印象でした。ハードなブレーキングをしても変な挙動もなく、安心して下ったり曲がったりできるのは、このグレード帯のターゲットとなる初中級者には大きなメリットになります。作業台の上では問題なくても、いざダンシングするとディスクローターがパッドと擦れるというバイクも少なくありません。その点、このPARISはフォークの剛性も十分に確保されていて、ローターが擦れるような音鳴りストレスもありませんでした。

じゃあ、何がエンデュランスなのかと言われたら、そこはやはり乗車姿勢になるでしょうね。コンフォートジオメトリーとあってやっぱりポジションが楽なんですよ。ゆったり景色を見ながらライドを楽しむというシーンには最高だと思います。欧米人に比べて手足が短いと言われる我々日本人からすると、より多くの人がレーシングモデルより快適だと感じるはずです。

ロングライドって言わば長距離の個人タイムトライアルみたいなものなので、より楽に巡航できればそれだけもう少し距離を伸ばせたり、今までより余力を残して帰ってこれたりすると思うんです。スピードを追求しないのであれば、ハイエンドのレースバイクを無理して乗るよりも、PARISを選んで確実に快適なライドを楽しみたいですね。

「エンデュランスさはポジションだけ、至って優れた運動性能を見てくれた」「エンデュランスさはポジションだけ、至って優れた運動性能を見てくれた」 photo:Makoto.AYANO
永井:ヘッドが長めなので、ハンドル高めのポジションでもコラムスペーサーを減らせる点も良いですよね。スペーサーが積み上がって見た目がカッコ悪いということもなくなります。逆にステムを伸ばして角度をつければ十分レーシーなポジションにも対応できるでしょう。ポジションの対応幅は広く、相棒として長く寄り添ってくれそうな想像ができますね。

エンデュランスモデルと聞くとふわっと優しい乗り心地なのかと先入観がありましたが、乗ってみるとそのイメージは大きく覆されました。もちろんリアの大きな突き上げ感はなく快適ですが、ムチみたいなしなり感はなく、フレームを可動させて振動吸収するアメリカンブランドのような考え方ではないんだなと。ピナレロらしい味付けですよね。

あと、PARISは下りの印象もすごく良かったですね。コーナーに差し掛かった時に路面が荒れているとか段差があるとか、そういったシーンでも慌てずに済む安定感がありました。ONDAフォークしかり、ヘッド角やトレイル値などジオメトリーが煮詰められていて、さらにフレームの剛性を上手くバランスしているのでしょう。歴代のピナレロバイクでも同様のフィーリングがあるので、ブランドが蓄積してきた特別なノウハウがあるんだと思います。

「フレームのしなり感もなくしっかりと剛性が確保されているイメージ」「フレームのしなり感もなくしっかりと剛性が確保されているイメージ」 photo:Makoto.AYANO
「ビギナーでも操作しやすい安定感のあるハンドリングはピナレロバイクに共通の良さ」「ビギナーでも操作しやすい安定感のあるハンドリングはピナレロバイクに共通の良さ」 photo:Makoto.AYANO
小西:ハンドリング性能の良さは確かに感じました。例えばハンドリングが軽すぎるものだと、スピードが出ているときに路面の石や穴を避けるような急な横の動きで行き過ぎてしまうことが多いんですよね。とっさの反応でもクイック過ぎないし、逆に安定感を出しすぎると挙動がもったりするので、PARISはそのバランスが上手く取れているなと思います。

30Cタイヤで未舗装を楽しんでも良し、遊べる幅の広さも魅力

永井:リラックスしたポジションという点を除けば、バイクの走り自体は特にエンデュランスとかツーリングとか、そういった雰囲気では全く無いですね。なにせバリバリのレースシーンで活躍した"あの"PARISなんですから。当時を知るものとしては、「エンデュランスエアロロード」と聞いた時には驚きましたよ。

「ヘッドが長めなのでハンドルを高めにセットする時もスペーサーを減らせます」と永井さん「ヘッドが長めなのでハンドルを高めにセットする時もスペーサーを減らせます」と永井さん photo:Makoto.AYANO
「当時のPARISは本当に憧れのバイクだった、その名を与えられたんだから悪いわけないよね」と小西さん「当時のPARISは本当に憧れのバイクだった、その名を与えられたんだから悪いわけないよね」と小西さん photo:Makoto.AYANO「30Cタイヤを履いて林道とか軽いグラベルに走りに行っても面白そうだよね」と語る「30Cタイヤを履いて林道とか軽いグラベルに走りに行っても面白そうだよね」と語る photo:Makoto.AYANO

小西:アルミのPARISは本当に憧れのバイクでしたね。性能もとんでもなく良かったですよ。人気があり過ぎて納期が1年待ちとかでしたもんね。そこからするとちょっとイメージが変わる今作ですが、現代のバイクとしてかなり満足度の高い1台になりそうですね。30Cタイヤを入れて木の枝とかが散乱している林道に行ってみたり、軽い未舗装路に行ったりしても面白いと思います。普通のロードバイクより楽しみの幅が広いという点は非常に魅力的ではないでしょうか。

ラフな路面を楽しむなら断然チューブレスタイヤがおすすめです。ホイールアップグレードプログラムも用意されているので、チューブレス対応のものを最初から選んでもいいと思います。また、上位モデルと違ってケーブルフル内装ではないので、ポジションの調整がしやすい点も嬉しいですね。特にビギナーの方だと、乗り込んでいくうちにポジションもガラッと変わっていきますから。

「コンフォートジオメトリーは多くの日本人にマッチするはず、無理してレーシングバイクを選ぶ必要はない」「コンフォートジオメトリーは多くの日本人にマッチするはず、無理してレーシングバイクを選ぶ必要はない」 photo:Makoto.AYANO
永井:普通にオンロードを走りたいけど、今流行りのグラベルも気になっている、そんな人にもぜひチェックしてほしい1台です。30Cもあればかなり行動範囲が広がるでしょうし、オン/オフロードどっちも楽しめるお得感もあるかと。もちろんレースに出ても全く問題ない走行性能でしたし、エントリーグレードから一段上のモデルが欲しいという人には最適なバイクだと思いますよ。

WUP(ホイールアップグレードプログラム)に対応

ピナレロ完成車のホイールをお得にアップグレードできる「WUP」システムピナレロ完成車のホイールをお得にアップグレードできる「WUP」システム (c)ピナレロジャパン
PRINCEシリーズと同様に、PARISも予算に応じて好みのホイールをセレクトできるWUP(ホイールアップグレードプログラム)を利用可能だ。カンパニョーロとフルクラムの各種ホイールが選択肢として用意され、完成車購入時から高性能なホイールで乗り出すことができる。基本パッケージのホイールからお得にアップグレードすることができる特別プログラムをぜひ活用してみては。

WUP(ホイールアップグレードプログラム)の詳細はこちら
提供:ピナレロジャパン 制作:シクロワイアード編集部 ウェア協力:DOTOUT