2018/06/11(月) - 18:00
ディスクロードのパイオニア的存在として業界をリードしてきたスペシャライズド。本編ではディスクブレーキを長年使用してきた、日本MTB界の第一人者である鈴木雷太氏と竹谷賢二氏の対談を通してその歴史や動向を振り返りつつ、今春よりデビューした最新モデル「S-Works Tarmac Disc」にスポットを当てる。
スペシャライズドのロードバイクと言えば、ご存知の通りオールラウンドモデルの「Tarmac(ターマック)」、エアロロードの「Venge(ヴェンジ)」、エンデュランスロードの「Roubaix(ルーベ)」という、それぞれの性能に特化させた3本柱のラインアップ。
現在いずれの車種においてもディスクブレーキモデルが展開されているが、その中でも最も早い登場となったのが2013年に発表されたS-Works Roubaix SL4 Discだ。悪路や天候に関係なくライドを楽しむRoubaixの利便性を高める機材として、ディスクブレーキを採用したことはごく自然な流れと言えるだろう。
それに対し2014年にはSL5世代のS-Works Tarmac Discがデビュー。ピュアレーシングバイクの、しかもフラッグシップモデルへのディスクブレーキ搭載はマスプロメーカーではこれが初の試みであった。いずれもディスクブレーキがUCIレースでテスト解禁される2016年よりも前の話であり、いかにスペシャライズドが時代の最先端を行っていたかが分かるというもの。
その後2017年1月にトム・ボーネン(ベルギー)がUCIロードレース初となるディスクロードでの勝利を上げたことは記憶に新しいだろう。その時に使用したバイクがVenge ViAS Discであり、歴史的な1台はまたもスペシャライズドによるものとなった。
同年のツール・ド・フランスではマルセル・キッテル(ドイツ)もVenge ViAS Discを駆りステージ5勝を記録。2018シリーズもエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア)が同バイクを積極的に使用し勝利を量産しており、ディスクロード情勢はスペシャライズドが他社に一歩抜きん出た成績を挙げていることは間違いないだろう。
そんな中、ディスクロードの開発に力を入れるスペシャライズドが放つ最新作が、S-Works Tarmac Discである。昨年フルモデルチェンジを果たしたS-Works Tarmac(登場時の記事はこちら)のディスクブレーキモデルであり、UCI女子チームの強豪ブールス・ドルマンスもメインバイクとして使用している1台だ。
一般的にディスクブレーキの搭載によって車重は重く、フレームはより硬く、エアロ性能も阻害されるというデメリットが聞かれるが、スペシャライズド曰くそれはリムブレーキバイクをベースにディスクブレーキ化しようとするから起こってしまう弊害なのだとか。そのため同社は最新のライダーファーストエンジニアードを駆使し、正真正銘ディスクブレーキに最適化されたディスクロードを一から作り出した。
500枚にも上るカーボンプリプレグを用い、リムブレーキモデルと同じ乗り味を実現するようレイアップやジオメトリーを細かく調整。ディスクブレーキに対応した剛性を持たせつつも、ハンドリング特性はリムブレーキモデルと変わらないフィーリングを実現している。研究され尽くしたカーボンテクノロジーによってサイズごとの乗り味の違いも修正されるとともに、フレーム重量もリムブレーキモデルから微増に収まった800g(56サイズ)と軽量に仕上がっている。
また自社の風洞実験施設Win Tunnelで徹底的なエアロダイナミクスの試験を重ねることで、ディスクブレーキが空力特性に悪影響を及ぼすことない高いエアロ性能を実現。コンパクトなリア三角や各所に盛り込まれたD型のチューブ形状、後輪に沿ってカットオフされたシートチューブや、しなりを生み出すエアロシートポストなど、新型Tarmac特有のデザインもそれぞれ各性能向上に貢献している。
ディスクブレーキは前後フラットマウントで、エンドは12mmスルーアクスル仕様。フレームセットは45万円(税抜)、完成車は110万円(税抜)にて販売される。
今回S-Works Tarmac Discを語っていただくのは、ディスクブレーキを長年使用してきた日本MTB界のレジェンド、クロスカントリー種目シドニー五輪日本代表の鈴木雷太氏と、同アテネ五輪日本代表の竹谷賢二氏だ。MTBのレース機材としてディスクブレーキを熟知するお二人が見る、最新のディスクロードの実力とは。
1998年に自分が国内の誰よりも早くディスクブレーキを導入して、2000年のシドニー五輪でも使用しましたが、当時はまだ少数派の機材で海外選手からバカにされたのを覚えていますよ。その後2,3年ほどしたらヨーロッパで一気に広がりましたね。でもそこから国内で普及し始めるのに10年ほどは要したでしょうか。MTBでもディスクブレーキが定着したのはここ数年の話なんです。
竹谷:当時はまだ各メーカーが探り探りで開発を進めていましたから、レース機材として安定した性能になるまで時間がかかりましたね。その年その年でメリットデメリットを考慮して、使用するバイクもディスクブレーキとVブレーキを行ったり来たりしたものです。そういった意味では、今のロード用ディスクブレーキは、MTBからのフィードバックも経てすでに完成されたレベルと言えると思います。
鈴木:今までにロックショックス・ホープ・ヘイズ・シマノ・マグラ・スラムと様々なメーカーのディスクブレーキを使用してきましたよ。いずれもMTBレースで重要なストッピングパワーの強化を図って進化してきました。それに伴ってサスペンションのストロークはより長くなり、フレームやフォークもブレーキのパワーに対応できるよう剛性を高めてきました。
当時はブレーキングによってチェーンステーやダウンチューブが割れるなんてこともありましたからね。そこはフレームメーカーもコンポーネントメーカーも互いに改良を加えていって、洗練されていった背景があります。MTBで蓄積されたノウハウがロードにも反映されている訳で、ディスクロードフレームに関しても現状ハイエンドモデルの完成度は非常に高いところまで来ていますね。個人的にはホイール、特に熱の影響を考えなくてよいリム周りはさらに改良されたり、構造自体もアップデートが加わる余地がありそうだと思っています。
竹谷:そもそもディスクブレーキは路面状況や天候に左右されない制動力とコントロールのし易さ、レバーの軽い引きというメリットがありますよね。MTBではブレーキングがレースを分けるくらい重要になってきますから、より性能の良いディスクブレーキをみんなこぞって使い始めた訳です。手が疲れないというのもポイントで、より繊細な操作を長時間キープできますし、腕の力が温存できれば勝負どころでパワーが発揮できますよね。
これらの恩恵はロードでも同じことが言えるでしょう。特にブレーキングに慣れていない初心者や、握力の弱い女性にこそディスクブレーキを使って欲しいですね。リムブレーキと機材的に互換性がないことで敬遠する人もいるのは分かりますが、一般のライダーが使う上ではスピードの速い遅いに関係なく誰にでも等しくメリットとなるはずです。
鈴木:S-Works Tarmac Discを試乗して感じたのは、ディスクブレーキを搭載してもなお変わらない走りの軽さと全体のバランスの良さですね。SL5の世代ではディスクブレーキ仕様でもエンドはクイックタイプでしたが、今作ではスルーアクスルになりました。これによってブレーキパワーを正しくフレームが受け止めてくれる印象で乗りやすくなりましたし、リムブレーキモデルに対しても乗り味はマイルドになったと感じました。
ディスクロードは乗り味が硬くなりがちとイメージが先行している人も少なからずいると思いますが、それは単純にメーカーのカーボンテクノロジーが追いついていないせいかも知れませんね。確かにディスクブレーキの制動力に対応させるため剛性は必要ですが、それがライダーに伝わらないバランスの良さをフレーム全体で作り出すんです。その点に関してスペシャライズドは、他ブランドに対して一歩先を行っている感はありますよね。
竹谷:そうですね。バイクの下部に装着されたディスクキャリパーと太い軸で固定するスルーアクスルによって、前後ハブとBBの3点がキッチリ揃っている感覚で、より低重心で安定感のある走りを獲得しています。バイクの下側に存在感は感じながらも上側には何もないようなフィーリングで、足元がシャキシャキ反応してくれますしそのおかげで路面もトレースしやすい、そしてバイクを振りやすいような印象です。
また身体から遠いフレームの先端でブレーキされるので、その衝撃がフォークブレードを伝わりながら上手く逃がされているような感じもします。スルーアクスルのおかげでフレームとホイールの一体感も高く、今まで感じていた微妙なねじれ感も是正されています。重量もエアロダイナミクスもリムブレーキモデルと遜色ないレベルに仕上がっているとのことで、走り心地を考慮してもディスクブレーキ化はメリットしかないと言っていいでしょう。
鈴木:ディスクブレーキが効きすぎるという声もありましたが、それはコントロールする乗り手の問題で結局は慣れの範囲だと思います。効かないブレーキをどうこうするより遥かに安全です。リムブレーキよりも制動力のミニマムとマックスの幅が広いため、優しく指先でコントロールしてあげる必要があります。何も考えずにレバーを握ってしまうと、急に強いストッピングパワーがかかってしまうんです。そこを認識してもらう必要がありますね。
MTBであればサスペンションや低圧のタイヤがパワーを逃がすように、ディスクブレーキの制動を助ける働きをしてくれますが、ロードにはそれがないので少々シビアなのかもしれません。そういった意味では、近年主流となったワイドリムや幅広のタイヤは、エアボリュームがサスペンションのように働いてくれるのでディスクロードと相性が良いのでしょうね。
竹谷:フレームもそうですが、ホイール・タイヤ・コンポーネント全てのパッケージで見て、ディスクロードが高い完成度に近づいていることは間違いありません。ましてやスペシャライズドの最上級モデルであるS-Works Tarmac Discとなれば、現状で不満になるような要素はありませんね。ここからテクノロジーがトップダウンしていき、ディスクロードでもよりエントリーなモデルまでその質を高めていけば、リムブレーキとの世代交代もそう遠くはないでしょうね。
今回紹介したS-Works Tarmac Disc始め、VengeやRoubaix、アドベンチャーロードのDiverge(ディヴァージュ)、シクロクロスバイクのCrux(クラックス)等、スペシャライズドのディスクブレーキ搭載バイクは全国80以上のショップで試乗が可能だ。ぜひ近くのテストセンターにて同社のディスクロードを体験してみて欲しい(試乗可能なショップ一覧はスペシャライズド公式ブログのページより参照のこと)。
他社に先駆けたディスクロードの開発 まさに”Disc Road Pioneer”
スペシャライズドのロードバイクと言えば、ご存知の通りオールラウンドモデルの「Tarmac(ターマック)」、エアロロードの「Venge(ヴェンジ)」、エンデュランスロードの「Roubaix(ルーベ)」という、それぞれの性能に特化させた3本柱のラインアップ。
現在いずれの車種においてもディスクブレーキモデルが展開されているが、その中でも最も早い登場となったのが2013年に発表されたS-Works Roubaix SL4 Discだ。悪路や天候に関係なくライドを楽しむRoubaixの利便性を高める機材として、ディスクブレーキを採用したことはごく自然な流れと言えるだろう。
それに対し2014年にはSL5世代のS-Works Tarmac Discがデビュー。ピュアレーシングバイクの、しかもフラッグシップモデルへのディスクブレーキ搭載はマスプロメーカーではこれが初の試みであった。いずれもディスクブレーキがUCIレースでテスト解禁される2016年よりも前の話であり、いかにスペシャライズドが時代の最先端を行っていたかが分かるというもの。
その後2017年1月にトム・ボーネン(ベルギー)がUCIロードレース初となるディスクロードでの勝利を上げたことは記憶に新しいだろう。その時に使用したバイクがVenge ViAS Discであり、歴史的な1台はまたもスペシャライズドによるものとなった。
同年のツール・ド・フランスではマルセル・キッテル(ドイツ)もVenge ViAS Discを駆りステージ5勝を記録。2018シリーズもエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア)が同バイクを積極的に使用し勝利を量産しており、ディスクロード情勢はスペシャライズドが他社に一歩抜きん出た成績を挙げていることは間違いないだろう。
フラッグシップディスクロードの最新版「S-Works Tarmac Disc」
そんな中、ディスクロードの開発に力を入れるスペシャライズドが放つ最新作が、S-Works Tarmac Discである。昨年フルモデルチェンジを果たしたS-Works Tarmac(登場時の記事はこちら)のディスクブレーキモデルであり、UCI女子チームの強豪ブールス・ドルマンスもメインバイクとして使用している1台だ。
一般的にディスクブレーキの搭載によって車重は重く、フレームはより硬く、エアロ性能も阻害されるというデメリットが聞かれるが、スペシャライズド曰くそれはリムブレーキバイクをベースにディスクブレーキ化しようとするから起こってしまう弊害なのだとか。そのため同社は最新のライダーファーストエンジニアードを駆使し、正真正銘ディスクブレーキに最適化されたディスクロードを一から作り出した。
500枚にも上るカーボンプリプレグを用い、リムブレーキモデルと同じ乗り味を実現するようレイアップやジオメトリーを細かく調整。ディスクブレーキに対応した剛性を持たせつつも、ハンドリング特性はリムブレーキモデルと変わらないフィーリングを実現している。研究され尽くしたカーボンテクノロジーによってサイズごとの乗り味の違いも修正されるとともに、フレーム重量もリムブレーキモデルから微増に収まった800g(56サイズ)と軽量に仕上がっている。
また自社の風洞実験施設Win Tunnelで徹底的なエアロダイナミクスの試験を重ねることで、ディスクブレーキが空力特性に悪影響を及ぼすことない高いエアロ性能を実現。コンパクトなリア三角や各所に盛り込まれたD型のチューブ形状、後輪に沿ってカットオフされたシートチューブや、しなりを生み出すエアロシートポストなど、新型Tarmac特有のデザインもそれぞれ各性能向上に貢献している。
ディスクブレーキは前後フラットマウントで、エンドは12mmスルーアクスル仕様。フレームセットは45万円(税抜)、完成車は110万円(税抜)にて販売される。
鈴木雷太×竹谷賢二 MTB界のレジェンドが語るディスクブレーキとTarmac Disc
今回S-Works Tarmac Discを語っていただくのは、ディスクブレーキを長年使用してきた日本MTB界のレジェンド、クロスカントリー種目シドニー五輪日本代表の鈴木雷太氏と、同アテネ五輪日本代表の竹谷賢二氏だ。MTBのレース機材としてディスクブレーキを熟知するお二人が見る、最新のディスクロードの実力とは。
機材遷移の時代を走った元全日本王者2人が見てきたディスクブレーキのあれこれ
鈴木:今でこそマウンテンバイクはディスクブレーキが当たり前となりましたが、ここに至るまでにはやはり紆余曲折がありました。カンチブレーキに始まり、Uブレーキ、Vブレーキと経てディスクブレーキに到達しましたが、出始めの頃は機材として未熟な部分も多く、完全に普及するまでには相応の時間を要しましたね。1998年に自分が国内の誰よりも早くディスクブレーキを導入して、2000年のシドニー五輪でも使用しましたが、当時はまだ少数派の機材で海外選手からバカにされたのを覚えていますよ。その後2,3年ほどしたらヨーロッパで一気に広がりましたね。でもそこから国内で普及し始めるのに10年ほどは要したでしょうか。MTBでもディスクブレーキが定着したのはここ数年の話なんです。
竹谷:当時はまだ各メーカーが探り探りで開発を進めていましたから、レース機材として安定した性能になるまで時間がかかりましたね。その年その年でメリットデメリットを考慮して、使用するバイクもディスクブレーキとVブレーキを行ったり来たりしたものです。そういった意味では、今のロード用ディスクブレーキは、MTBからのフィードバックも経てすでに完成されたレベルと言えると思います。
鈴木:今までにロックショックス・ホープ・ヘイズ・シマノ・マグラ・スラムと様々なメーカーのディスクブレーキを使用してきましたよ。いずれもMTBレースで重要なストッピングパワーの強化を図って進化してきました。それに伴ってサスペンションのストロークはより長くなり、フレームやフォークもブレーキのパワーに対応できるよう剛性を高めてきました。
当時はブレーキングによってチェーンステーやダウンチューブが割れるなんてこともありましたからね。そこはフレームメーカーもコンポーネントメーカーも互いに改良を加えていって、洗練されていった背景があります。MTBで蓄積されたノウハウがロードにも反映されている訳で、ディスクロードフレームに関しても現状ハイエンドモデルの完成度は非常に高いところまで来ていますね。個人的にはホイール、特に熱の影響を考えなくてよいリム周りはさらに改良されたり、構造自体もアップデートが加わる余地がありそうだと思っています。
竹谷:そもそもディスクブレーキは路面状況や天候に左右されない制動力とコントロールのし易さ、レバーの軽い引きというメリットがありますよね。MTBではブレーキングがレースを分けるくらい重要になってきますから、より性能の良いディスクブレーキをみんなこぞって使い始めた訳です。手が疲れないというのもポイントで、より繊細な操作を長時間キープできますし、腕の力が温存できれば勝負どころでパワーが発揮できますよね。
これらの恩恵はロードでも同じことが言えるでしょう。特にブレーキングに慣れていない初心者や、握力の弱い女性にこそディスクブレーキを使って欲しいですね。リムブレーキと機材的に互換性がないことで敬遠する人もいるのは分かりますが、一般のライダーが使う上ではスピードの速い遅いに関係なく誰にでも等しくメリットとなるはずです。
S-Works Tarmac Discインプレッション
「ディスクブレーキがメリットにしかならないバランスの良さと優れた安定感」
鈴木:S-Works Tarmac Discを試乗して感じたのは、ディスクブレーキを搭載してもなお変わらない走りの軽さと全体のバランスの良さですね。SL5の世代ではディスクブレーキ仕様でもエンドはクイックタイプでしたが、今作ではスルーアクスルになりました。これによってブレーキパワーを正しくフレームが受け止めてくれる印象で乗りやすくなりましたし、リムブレーキモデルに対しても乗り味はマイルドになったと感じました。
ディスクロードは乗り味が硬くなりがちとイメージが先行している人も少なからずいると思いますが、それは単純にメーカーのカーボンテクノロジーが追いついていないせいかも知れませんね。確かにディスクブレーキの制動力に対応させるため剛性は必要ですが、それがライダーに伝わらないバランスの良さをフレーム全体で作り出すんです。その点に関してスペシャライズドは、他ブランドに対して一歩先を行っている感はありますよね。
竹谷:そうですね。バイクの下部に装着されたディスクキャリパーと太い軸で固定するスルーアクスルによって、前後ハブとBBの3点がキッチリ揃っている感覚で、より低重心で安定感のある走りを獲得しています。バイクの下側に存在感は感じながらも上側には何もないようなフィーリングで、足元がシャキシャキ反応してくれますしそのおかげで路面もトレースしやすい、そしてバイクを振りやすいような印象です。
また身体から遠いフレームの先端でブレーキされるので、その衝撃がフォークブレードを伝わりながら上手く逃がされているような感じもします。スルーアクスルのおかげでフレームとホイールの一体感も高く、今まで感じていた微妙なねじれ感も是正されています。重量もエアロダイナミクスもリムブレーキモデルと遜色ないレベルに仕上がっているとのことで、走り心地を考慮してもディスクブレーキ化はメリットしかないと言っていいでしょう。
鈴木:ディスクブレーキが効きすぎるという声もありましたが、それはコントロールする乗り手の問題で結局は慣れの範囲だと思います。効かないブレーキをどうこうするより遥かに安全です。リムブレーキよりも制動力のミニマムとマックスの幅が広いため、優しく指先でコントロールしてあげる必要があります。何も考えずにレバーを握ってしまうと、急に強いストッピングパワーがかかってしまうんです。そこを認識してもらう必要がありますね。
MTBであればサスペンションや低圧のタイヤがパワーを逃がすように、ディスクブレーキの制動を助ける働きをしてくれますが、ロードにはそれがないので少々シビアなのかもしれません。そういった意味では、近年主流となったワイドリムや幅広のタイヤは、エアボリュームがサスペンションのように働いてくれるのでディスクロードと相性が良いのでしょうね。
竹谷:フレームもそうですが、ホイール・タイヤ・コンポーネント全てのパッケージで見て、ディスクロードが高い完成度に近づいていることは間違いありません。ましてやスペシャライズドの最上級モデルであるS-Works Tarmac Discとなれば、現状で不満になるような要素はありませんね。ここからテクノロジーがトップダウンしていき、ディスクロードでもよりエントリーなモデルまでその質を高めていけば、リムブレーキとの世代交代もそう遠くはないでしょうね。
スペシャライズド S-Works Tarmac Disc 完成車
フレーム | S-Works Tarmac SL6, FACT 12r carbon, Rider-First Engineered™, OSBB, clean routing, Di2 specific, internally integrated seat clamp, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc |
フォーク | S-Works FACT carbon, 12x100mm, thru-axle |
コンポーネント | Shimano Dura-Ace Di2 |
ブレーキ | Shimano Dura-Ace Di2 9170 hydraulic disc |
クランクセット | S-Works Power Cranks, dual-sided power measurement, +/- 1% accuracy |
ホイール | Roval CLX 50 Disc, carbon, tubeless-ready, Win Tunnel Engineered, 50mm depth, CeramicSpeed bearings |
タイヤ | Turbo Cotton, 700x26mm, 320 TPI |
サドル | S-Works Toupé, Body Geometry shape, 143mm width, carbon rails |
価格 | 1,188,000円(税込) |
スペシャライズド S-Works Tarmac Disc フレームセット
フレーム | S-Works Tarmac SL6, FACT 12r carbon, Rider-First Engineered™, OSBB, clean routing, Di2 specific, internally integrated seat clamp, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc |
フォーク | S-Works FACT carbon, 12x100mm, thru-axle |
シートポスト | S-Works FACT Carbon Tarmac seatpost, 20mm offset |
ボトムブラケット | OSBB, CeramicSpeed bearings |
サイズ | 44、49、52、54、56 |
価格 | 486,000円(税込)、507,600円(税込、Ultralight) |
今回紹介したS-Works Tarmac Disc始め、VengeやRoubaix、アドベンチャーロードのDiverge(ディヴァージュ)、シクロクロスバイクのCrux(クラックス)等、スペシャライズドのディスクブレーキ搭載バイクは全国80以上のショップで試乗が可能だ。ぜひ近くのテストセンターにて同社のディスクロードを体験してみて欲しい(試乗可能なショップ一覧はスペシャライズド公式ブログのページより参照のこと)。
提供:スペシャライズド・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部