2017/06/12(月) - 14:33
キナンサイクリングチームやNIPPOヴィーニファンティーニの選手らも絶賛するIRCのロード用クリンチャータイヤ「ASPITE」。本章ではより一般のサイクリストに近いお二人のライダーに、このASPITEを語っていただいた。日本屈指の"走れる店長"として知られる西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)と、強豪ホビーレーサーの落合友樹さん(Rueda Nagoya)によるインプレッションを紹介しよう。
西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。ツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝経験を持ち、2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たすなど、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
落合友樹さん(Rueda Nagoya)
自身が立ち上げた自転車チーム「Team Rueda Nagoya」の選手兼代表。自転車のジャンルにとらわれず幅広くその楽しみを共有することを目的としているチームで、活動はロードレースを始めシクロクロスやMTB、BMXと多岐にわたる。AJOCCではトップカテゴリーのC1で走る実力者。
IRCのロードタイヤは私自身も結構昔から使っていました。十何年前にタイヤをドライ、ウェットという2つのジャンルに分けてリリースした一番最初のブランドがIRCだったのではないかと記憶しています。その時のウェットタイヤが選手間で評判がよく、雨の日にはあのタイヤを使うべきだと言うくらい、IRCのグリップ力の高さは当時から有名でした。
その後に登場したIRCの「レッドストーム」という、コンパウンドに米ぬか由来の素材を配合したハイグリップタイヤがウェットコンディションで強烈に効くとウワサになり、雨の日は絶対にIRCと言われていましたね。レッドストームがモデルチェンジとともにラインアップから消えてしまった時はとても残念で、RBCコンパウンドを採用したASPITE PRO WETが出てきた時には、やっと戻ってきたという気持ちになりましたよ。
WETという名前ですが、レインタイヤというよりは純粋にグリップ力を重視したタイヤという考え方ですね。自分はタイヤには転がりよりもグリップの良さを求めるタイプなので、WETを好んで使っています。スリップしない安心感はもちろん、ドライコンディションでもウェットコンディションでも感触が大きく変わらず、安定した性能を発揮してくれます。雨が降ると急に性格が変わるタイヤもありますが、そういった不安感がないのは大きなポイントですね。
対してノーマルなASPITEはとてもニュートラルな走りを見せてくれます。晴れている時のグリップと転がりのバランスが非常に良い。万人受けする挙動の軽さ、走りの軽さがあるので、レースなどで極限までコーナーを攻めるような走りをしない人には断然ノーマルのASPITEがオススメですね。
どちらも共通して言えるのは基本的なグリップの良さが光るタイヤだということ。そこに耐パンクや耐摩耗といった耐久性の部分も上手くプラスされ、トータルで非常にバランスのとれた性能となっています。サイドウォールもしっかりしているので扱いやすいですし、明確な弱点を感じることはまずありませんね。乗ってみるとつくりの良さを体感できるので、ぜひ一度は使ってみてほしいタイヤです。
個人的に2つのタイプでどちらが良いかと聞かれたら、WETと答えます。ただ、お店に並んでいても「WET」という名前に雨の日専用という印象を持たれてしまい、敬遠されがちなのかなと感じることは多いですね。モデル名で抵抗感を抱く人もいるかもしれませんが、純粋に性能を見れば本当に良いタイヤですので多くの人に知ってもらいたいですね。このタイヤの良さを知らないのは正直もったいないと感じるほどです。
初めてこのASPITEを使用した時はカッチリとした乗り心地が印象的なタイヤでした。サイドまで延長された耐パンクガードのためにタイヤ自体も硬く、そのおかげでたわみやねじれも少なく路面からのインフォメーションを明確に感じ取ることができますね。アスファルトの粗さや砂利の浮き具合などを把握しやすく安心感があります。硬いといっても乗り心地の悪さはなく、適度にコシのある安定感がダンシング時にロスなく路面へ推進力を伝えますし、タイヤの変形しづらさはコーナリング時の挙動の安定感にもつながっています。
タイヤの硬さは高い真円度にもつながっているのでしょうか、転がり抵抗も少ないと感じます。特に3本ローラーを回していると実感できるのですが、普段の練習タイヤより重いギアが踏めるなと感じますし、ローラーから嫌な振動がしないのはタイヤの精度の高さを表しているのかなと思います。その辺りの性能は確実に実走でも活きてくる部分でもあります。
私は通常モデルのASPITE PROの26cを使用しているのですが、太さの割に軽量で実際に装着してみるとその数字以上に細く感じるほど軽く走ってくれますね。ワイドタイヤ特有の走りの重さは全くありませんし、むしろシャープな走行感と言っていいでしょう。
使い込む中でコンパウンド性能の良さからくるグリップ力の高さは感じます。足元から路面とタイヤ以外の不必要な情報が入ってこない分、コーナリング時に路面とのグリップを感じやすく、狙ったラインを容易にトレースしてくれます。グリップ力はWETモデルのほうが高いと聞きますが、通常モデルでも必要十二分にグリップしますね。これまでのコーナリングスピードをもう一段階上げてくれるほどで、レースであればコーナーでのアドバンテージとなりますし、普段のライドでも安全面で大きく貢献する性能ですね。
また、ハイグリップタイヤにありがちなねっとりとした転がりの重さもなく、立ち上がりの軽さや高速域での伸び、そして速度維持もクリンチャータイヤとは思えないような性能を発揮します。体感で判断することはできませんでしたが、走行ドラッグを低減するエアロフィンも効果を生んでいるのかもしれません。ただ、個人的にはこういった小さいながらも開発者の苦労が感じ取れるテクノロジーは好印象ですね。
グリップの限界点が高いためコーナリング速度も上がるのですが、それと同時に滑り出しの挙動が突然現れるピーキーさも持ち合わせています。タイヤのコシがしっかりとしているが故に、滑り出し直前の流れ出しそうなたわみが感じとりづらいんですね。この点はハイグリップかつ高剛性であるASPITEのデメリットでしょうね。ただ、その領域まで攻める場面というのもそうありませんし、めったに感じることはないでしょう。
まとめると、高速域での転がり抵抗の少なさと、コーナリング時でのグリップという相反する性能を高次元で両立しているのがASPITEではないでしょうか。レースや普段使いにおける性能は折り紙つきで文句なしですし、なによりバイクをライダーのコントロール下に置ける自在な操舵性と安心感、安全性はこのタイヤがもたらす大きな効果だと思います。
インプレッションライダープロフィール
西谷雅史さん(サイクルポイント オーベスト)
東京都調布市にある「サイクルポイント オーベスト」店長。ツール・ド・おきなわ市民200kmや、ジャパンカップオープンレースなどの国内ビックレースにて優勝経験を持ち、2016年にはニセコクラシック年代別優勝も果たすなど、今なお衰えを知らない”最速店長”の一人である。
落合友樹さん(Rueda Nagoya)
自身が立ち上げた自転車チーム「Team Rueda Nagoya」の選手兼代表。自転車のジャンルにとらわれず幅広くその楽しみを共有することを目的としているチームで、活動はロードレースを始めシクロクロスやMTB、BMXと多岐にわたる。AJOCCではトップカテゴリーのC1で走る実力者。
西谷雅史(サイクルポイント オーベスト)
「グリップの良さが光る中に耐久性が上手くバランスした性能」
IRCのロードタイヤは私自身も結構昔から使っていました。十何年前にタイヤをドライ、ウェットという2つのジャンルに分けてリリースした一番最初のブランドがIRCだったのではないかと記憶しています。その時のウェットタイヤが選手間で評判がよく、雨の日にはあのタイヤを使うべきだと言うくらい、IRCのグリップ力の高さは当時から有名でした。
その後に登場したIRCの「レッドストーム」という、コンパウンドに米ぬか由来の素材を配合したハイグリップタイヤがウェットコンディションで強烈に効くとウワサになり、雨の日は絶対にIRCと言われていましたね。レッドストームがモデルチェンジとともにラインアップから消えてしまった時はとても残念で、RBCコンパウンドを採用したASPITE PRO WETが出てきた時には、やっと戻ってきたという気持ちになりましたよ。
WETという名前ですが、レインタイヤというよりは純粋にグリップ力を重視したタイヤという考え方ですね。自分はタイヤには転がりよりもグリップの良さを求めるタイプなので、WETを好んで使っています。スリップしない安心感はもちろん、ドライコンディションでもウェットコンディションでも感触が大きく変わらず、安定した性能を発揮してくれます。雨が降ると急に性格が変わるタイヤもありますが、そういった不安感がないのは大きなポイントですね。
対してノーマルなASPITEはとてもニュートラルな走りを見せてくれます。晴れている時のグリップと転がりのバランスが非常に良い。万人受けする挙動の軽さ、走りの軽さがあるので、レースなどで極限までコーナーを攻めるような走りをしない人には断然ノーマルのASPITEがオススメですね。
どちらも共通して言えるのは基本的なグリップの良さが光るタイヤだということ。そこに耐パンクや耐摩耗といった耐久性の部分も上手くプラスされ、トータルで非常にバランスのとれた性能となっています。サイドウォールもしっかりしているので扱いやすいですし、明確な弱点を感じることはまずありませんね。乗ってみるとつくりの良さを体感できるので、ぜひ一度は使ってみてほしいタイヤです。
個人的に2つのタイプでどちらが良いかと聞かれたら、WETと答えます。ただ、お店に並んでいても「WET」という名前に雨の日専用という印象を持たれてしまい、敬遠されがちなのかなと感じることは多いですね。モデル名で抵抗感を抱く人もいるかもしれませんが、純粋に性能を見れば本当に良いタイヤですので多くの人に知ってもらいたいですね。このタイヤの良さを知らないのは正直もったいないと感じるほどです。
落合友樹(Rueda Nagoya)
「高速域での転がりの良さとコーナリング時のグリップの高さを高次元で両立」
初めてこのASPITEを使用した時はカッチリとした乗り心地が印象的なタイヤでした。サイドまで延長された耐パンクガードのためにタイヤ自体も硬く、そのおかげでたわみやねじれも少なく路面からのインフォメーションを明確に感じ取ることができますね。アスファルトの粗さや砂利の浮き具合などを把握しやすく安心感があります。硬いといっても乗り心地の悪さはなく、適度にコシのある安定感がダンシング時にロスなく路面へ推進力を伝えますし、タイヤの変形しづらさはコーナリング時の挙動の安定感にもつながっています。
タイヤの硬さは高い真円度にもつながっているのでしょうか、転がり抵抗も少ないと感じます。特に3本ローラーを回していると実感できるのですが、普段の練習タイヤより重いギアが踏めるなと感じますし、ローラーから嫌な振動がしないのはタイヤの精度の高さを表しているのかなと思います。その辺りの性能は確実に実走でも活きてくる部分でもあります。
私は通常モデルのASPITE PROの26cを使用しているのですが、太さの割に軽量で実際に装着してみるとその数字以上に細く感じるほど軽く走ってくれますね。ワイドタイヤ特有の走りの重さは全くありませんし、むしろシャープな走行感と言っていいでしょう。
使い込む中でコンパウンド性能の良さからくるグリップ力の高さは感じます。足元から路面とタイヤ以外の不必要な情報が入ってこない分、コーナリング時に路面とのグリップを感じやすく、狙ったラインを容易にトレースしてくれます。グリップ力はWETモデルのほうが高いと聞きますが、通常モデルでも必要十二分にグリップしますね。これまでのコーナリングスピードをもう一段階上げてくれるほどで、レースであればコーナーでのアドバンテージとなりますし、普段のライドでも安全面で大きく貢献する性能ですね。
また、ハイグリップタイヤにありがちなねっとりとした転がりの重さもなく、立ち上がりの軽さや高速域での伸び、そして速度維持もクリンチャータイヤとは思えないような性能を発揮します。体感で判断することはできませんでしたが、走行ドラッグを低減するエアロフィンも効果を生んでいるのかもしれません。ただ、個人的にはこういった小さいながらも開発者の苦労が感じ取れるテクノロジーは好印象ですね。
グリップの限界点が高いためコーナリング速度も上がるのですが、それと同時に滑り出しの挙動が突然現れるピーキーさも持ち合わせています。タイヤのコシがしっかりとしているが故に、滑り出し直前の流れ出しそうなたわみが感じとりづらいんですね。この点はハイグリップかつ高剛性であるASPITEのデメリットでしょうね。ただ、その領域まで攻める場面というのもそうありませんし、めったに感じることはないでしょう。
まとめると、高速域での転がり抵抗の少なさと、コーナリング時でのグリップという相反する性能を高次元で両立しているのがASPITEではないでしょうか。レースや普段使いにおける性能は折り紙つきで文句なしですし、なによりバイクをライダーのコントロール下に置ける自在な操舵性と安心感、安全性はこのタイヤがもたらす大きな効果だと思います。
提供:IRC 制作:シクロワイアード編集部 photo:Makoto.AYANO