2016/08/08(月) - 09:22
昨年フルモデルチェンジを果たした「SUPERSIX EVO Hi-MOD」。キャノンデールが誇る旗艦モデルが、その最たる特徴である優れた剛性バランスをそのままにディスク化。そして、弟分の「SUPERSIX EVO CARBON」もフルモデルチェンジを果たした。
シマノ新型DURA-ACEの登場によって諸規格が統一に向かっていることから、右へ倣えと多くのメーカーがディスクブレーキ仕様のロードレーサーを発表する2016年の夏。キャノンデールもフラッグシップモデル「SUPERSIX EVO Hi-MOD」をディスクブレーキ化した。しかし、「なんだお前もか」と思った方も少なくなかろうが、やっぱりキャノンデールは一味違うのだ。
レギュレーションの関係で叶わなかったものの、ツール・ド・フランスでの実戦投入に向けて開発された「SUPERSIX EVO Hi-MOD DISC」には、キャノンデールプロサイクリングチームのフィードバックが多く取り入れられている。その最たる箇所がハブだ。フロントは12x100mmのスルーアクスル仕様とした一方で、リアは9x135mmのクイックリリース仕様としている。
前後共にスルーアクスルのバイクが増えており、ホイールの選択肢が少なくなることも懸念されるが「『ホイ―ル交換時間が増えることは避けたい』というチームの要望に基づいたもの」とキャノンデールは説明する。リアブレーキによる負荷はフロントよりも小さく、ブレーキ台座を一体化した鍛造アルミ製リアエンドを新たに開発することで対応し、ローターとパッドの擦れを防止した。ブレーキ台座にはフラットマウントを採用。ローター径は前後とも160mmのケースが多い中で、前160mm/後140mmを標準とした。
走りの面で「SUPERSIX EVO Hi-MOD」が目指したのは、リムブレーキモデルが持つ優れた剛性バランスを継承すること。一見するとディスクブレーキ台座が加わったのみで、その変化は極めて小さいように思えるが、実はフレーム全体のレイアップを刷新。補強のためにカーボンシートを側面に貼り増しする「バリステックカーボン構造」は、ディスクブレーキ仕様でももちろん適用される。
そして、変速性能に万全を期しながらもリムブレーキ仕様と同じく405mmとしたショートチェーンステーや、継続採用されるシートステーブリッジは剛性の確保に貢献。左右非対称設計の「BB30A」やBB付近で急激に拡幅する「DELTAシートチューブ」などとあわせて、細部に渡って剛性をコントロール。フレームが変形してから元の形状に戻るまでの「返し」のタイミングを最適化した。
快適性もリムブレーキ同様を目指した。リアトライアングルは面積を大きくとることで過剛性を防止。扁平を効かせたシートステーおよびチェーンステー、25.4mm径のシートポスト、細身のシートチューブ及びフロントフォークにより、縦方向の柔軟性を向上。ディスクブレーキ化と共に乗り心地が悪くなるロードレーサーは少なくないが、SUPERSIX EVO Hi-MOD DISCについてディスクブレーキによるデメリットはほとんど存在しない。
リムブレーキモデルに対する重量増は、フレームとフォークを合わせて150g以下に抑えられている。登りだけを考えればハンデになるが、下りを含めたロードレース全体で考えれば、操作力が低く、コントロール性にも長けるというディスクブレーキの恩恵が勝るはずだ。以下のインプレでは、シマノULTEGRAにマヴィックAKSIUM DISCを組み合わせた「SUPERSIX EVO Hi-MOD DISC ULTEGRA」をテストライドした。
下りのハードブレーキングでも車体が暴れることが無く、つまりは制動力の増加分にフレームがしっかり対応できているということでなのしょう。また、コーナリング中にスピードコントロールする際の安定性が高さも評価できるポイントです。リムブレーキだと、コーナーの進入前にきっちり減速してコーナリング中はブレーキ操作を極力避けたいところ。しかし、SUPERSIX EVO Hi-MOD DISCならコーナーの途中でブレーキを触っても暴れないため、安心してスピードを調整することができますね。
このバイクの「ミソ」は、リアをスルーアクスル化せずQRレバーのままとした点にあり、剛性バランスの高さに繋がっていると感じました。ディスクを意識させるような感触がなく、リムブレーキ仕様と遜色ない剛性感に仕上がっています。逆にフロントは過剛性気味で、リムブレーキ仕様と比較して、路面からの突き上げがやや多いのが唯一気になるポイントでした。
ペダリング剛性についても、リムブレーキ仕様と比較してやや上がっているようです。BB周りの剛性はリムブレーキ仕様に近く、ダッシュのかかりが良いのは変わりません。しかし、リムブレーキ仕様に感じる良い意味での登りのひらひら感が、ディスク仕様では薄れてしまって、少しガチッとしています。ブレーキの性格的にも言えることですが、登りで選ぶならリムブレーキ、下りで選ぶならディスクブレーキですね。
読者の皆さんの中にもディスクロードについて懐疑的な方は少なくないでしょうし、私もその1人でした。しかし、今回試乗してみて、印象が良い方向に変わりました。ディスク仕様にあっても乗り心地と反応性を高いレベルで両立できるのだなと。ただ単にディスク化するだけではなく、快適性や走行性能を高めるというモディファイに今後はメーカー間の差が出てくると考えられますが、MTBやCXも得意とするキャノンデールの経験が存分に活かされていると感じられました。
フロントのスルーアクスルと前160mm/後140mmという標準ローター径の組み合わせが、ブレーキのコントロール性を高めているのでしょう。ディスクだけどハブ軸はクイック仕様のSYNAPSEや、一緒に試乗したSUPERSIX EVO CARBONのリムブレーキ仕様と比較しても、大きな差異がありました。
細かくスピードを調整できるため、無駄に速度を落とし過ぎることがなく、体力の温存に繋げることができます。一方で、リアがクイック仕様であることによる不安はなく、制動力を受け止めきれています。
総じて、ストイックなレーサーにこそオススメな1台です。雨の日でも外で練習したいというライダーに抜群の安心をもたらせてくれますし、リムブレーキのようにシューの削りかすで汚れることもないので、メンテナンスを素早く終えることができます。ディスク化によって重量増が発生していますが、走りに悪影響を及ぼしているという印象は希薄。むしろディスク化による恩恵のほうが大きいというのが結論です。
プロユースの「SUPERSIX EVO Hi-MOD」に遅れること僅か1年。弟分的位置づけの「SUPERSIX EVO CARBON」もフルモデルチェンジを果たした。そのフォルムは一卵性双生児と言って良いほど似通っており、ペイント以外で見分ける術はなさそう。2017年モデルでは、リムブレーキ仕様での展開となる。
SUPERSIX EVO CARBONが目標とするのは、Hi-MODと遜色ない性能。低価格化するためにカーボン素材を変更しながらも、キャノンデールが誇るべきテクノロジー「バリステックカーボン構造」を導入し、カーボンシートを側面に貼り増しすることで剛性を強化。フレーム単体で200g強という重量増の替わりに、ヘッドチューブで95N/deg、BBで61N/mmとHi-MODを数%上回る剛性値をマーク。走りにおいても、一卵性双生児と言って良いほどの性能を実現したのだ。
従来型のSUPERSIX EVO CARBONとフレーム重量を比較しても、軽量になるどころか、やや重くなっている。しかし、キャノンデールのバイクを重量だけで見るのは禁物だ。現行型Hi-MODとほぼ共通のフレーム形状により、同社が最重要視する剛性バランスは着実な向上を遂げており、更なる走りの軽さを手に入れている。また、Di2ケーブルの内装が可能となった点も大きなポイントであり、将来のグレードアップを見据えて購入するユーザーにとっては嬉しいところ。
販売は完成車にて行われ、シマノULTEGRA仕様、105仕様、TIAGRA仕様の3グレードで展開。ULTEGRA仕様は、ほぼ同スペックのCAAD12と比較しても僅かに10,000円(税抜)高いだけ。末弟グレードのTIAGRA仕様は200,000円を切るプライスタグをつけるなど、その高いコストパフォーマンスも見逃せない。今回はシマノULTEGRAにマヴィックAKSIUMを組み合わせた「SUPERSIX EVO CARBON ULTEGRA」をテスト車両に用いた。
個人的にも現行のHi-MODを所有しており、時速35km/h以上の巡航や高速域での加速のキレはHi-MODに軍配が上がります。だた、実際に高速域でのレース性能が必要な方はほんの一握り。対して、CARBONはビギナーから中級者にとって馴染みやすいバイクに仕上がっています。適度に剛性が落ちているような印象で、率直にHi-MODよりも乗りやすいと感じました。疲労に繋がる反発が小さく、踏みやすいのです。
多少の重量増はありますが、SUPERSIXシリーズならではの登りの軽快さは健在。他社のミドルグレードでは感じられないような気持ちよさがあります。ただ、完成車付属のホイールはやや重めですので、軽量なものに変えてあげて、フレームの持つ軽快感がさらに引き出してあげたいですね。
走行性能のバランスが高いということは、乗り方や楽しみ方もオールマイティーで、ホイールを始めとした各パーツで調整してあげれば、それぞれの用途に適した1台に仕立てられます。レースもツーリングも1台でこなしたいという欲張りなサイクリストにこそ、おすすめですね。
フレームが大きくたわんでいる気配はありませんが、適度なバネ感があります。ダンシングした時にパンパンパンとリズムよく反発して、気持よく進んでくれるのは、カーボンフレームならでは。腰砕けになることはありませんから、登りコーナーで踏み込みながらのアタックしたら、ライバルに大きく差をつけられることでしょう。そして、Hi-MODの真骨頂である優れた登り性能はそのまま。緩斜面から、7~8%以上が続く長距離のヒルクライムまで、登りならプロファイルを問いません。
平坦で30km/h台から40km/h台に加速する際に必要な力も、他社のエアロバイクと比べて低く抑えられています。極端にエアロに配慮した設計ではないのですが、巡航性能も充分に高く、エアロロードって本当に必要なのかと考えさせられてしまいます。下りでは、テーパーヘッドと、華奢な見た目に反してしっかりとしたフロントフォークが、荷重をきっちりと受けて止めてくれます。ですから、下りコーナーで少し無理なライン取りでも思い通りに曲がってくれます。
従来モデルのCARBONと比較すると、まったりとした漕ぎの重さが無くなったような印象を受けました。従来モデルのHi-MODとCARBONの間にあった差は小さくなったどころか、低速域の軽快さを考えれば、現行のHi-MODよりも乗り味が好みという方がいてもおかしくはないほどの完成度です。総じて、バランスが良く、誰が乗ってもクセを感じにくい、疲れにくいけど速いバイクに仕上がっています。このバイクが持つ扱いやすさは、長距離のロードレースやロングライド、ヒルクライムとあらゆるシーンで頼りになりますね。
理想の剛性バランスを継承 SUPERSIX EVO Hi-MODがディスクブレーキ化
シマノ新型DURA-ACEの登場によって諸規格が統一に向かっていることから、右へ倣えと多くのメーカーがディスクブレーキ仕様のロードレーサーを発表する2016年の夏。キャノンデールもフラッグシップモデル「SUPERSIX EVO Hi-MOD」をディスクブレーキ化した。しかし、「なんだお前もか」と思った方も少なくなかろうが、やっぱりキャノンデールは一味違うのだ。
レギュレーションの関係で叶わなかったものの、ツール・ド・フランスでの実戦投入に向けて開発された「SUPERSIX EVO Hi-MOD DISC」には、キャノンデールプロサイクリングチームのフィードバックが多く取り入れられている。その最たる箇所がハブだ。フロントは12x100mmのスルーアクスル仕様とした一方で、リアは9x135mmのクイックリリース仕様としている。
前後共にスルーアクスルのバイクが増えており、ホイールの選択肢が少なくなることも懸念されるが「『ホイ―ル交換時間が増えることは避けたい』というチームの要望に基づいたもの」とキャノンデールは説明する。リアブレーキによる負荷はフロントよりも小さく、ブレーキ台座を一体化した鍛造アルミ製リアエンドを新たに開発することで対応し、ローターとパッドの擦れを防止した。ブレーキ台座にはフラットマウントを採用。ローター径は前後とも160mmのケースが多い中で、前160mm/後140mmを標準とした。
走りの面で「SUPERSIX EVO Hi-MOD」が目指したのは、リムブレーキモデルが持つ優れた剛性バランスを継承すること。一見するとディスクブレーキ台座が加わったのみで、その変化は極めて小さいように思えるが、実はフレーム全体のレイアップを刷新。補強のためにカーボンシートを側面に貼り増しする「バリステックカーボン構造」は、ディスクブレーキ仕様でももちろん適用される。
そして、変速性能に万全を期しながらもリムブレーキ仕様と同じく405mmとしたショートチェーンステーや、継続採用されるシートステーブリッジは剛性の確保に貢献。左右非対称設計の「BB30A」やBB付近で急激に拡幅する「DELTAシートチューブ」などとあわせて、細部に渡って剛性をコントロール。フレームが変形してから元の形状に戻るまでの「返し」のタイミングを最適化した。
快適性もリムブレーキ同様を目指した。リアトライアングルは面積を大きくとることで過剛性を防止。扁平を効かせたシートステーおよびチェーンステー、25.4mm径のシートポスト、細身のシートチューブ及びフロントフォークにより、縦方向の柔軟性を向上。ディスクブレーキ化と共に乗り心地が悪くなるロードレーサーは少なくないが、SUPERSIX EVO Hi-MOD DISCについてディスクブレーキによるデメリットはほとんど存在しない。
リムブレーキモデルに対する重量増は、フレームとフォークを合わせて150g以下に抑えられている。登りだけを考えればハンデになるが、下りを含めたロードレース全体で考えれば、操作力が低く、コントロール性にも長けるというディスクブレーキの恩恵が勝るはずだ。以下のインプレでは、シマノULTEGRAにマヴィックAKSIUM DISCを組み合わせた「SUPERSIX EVO Hi-MOD DISC ULTEGRA」をテストライドした。
インプレッション
「高い安心感にロードレーサーの未来を感じた」恒次智(サイクルショップフリーダム)
強く印象に残ったのは、ディスクブレーキによる高い安心感。SUPERSIX EVO Hi-MODのリムブレーキ仕様は個人的にも所有していますが、「より安全な乗り物に乗っているな」という感覚がディスク仕様にはありますね。ロードレーサーはまだまだ進化していくんだなと、思わされました。ディスクブレーキロードはエンデュランス系のモデルが多く、ロードレースやハイペースなロングライドを好む方にとってはいまいち食指の伸びるものではなかったのですが、SUPERSIX EVO Hi-MOD DISCならお眼鏡にかなうはずです。下りのハードブレーキングでも車体が暴れることが無く、つまりは制動力の増加分にフレームがしっかり対応できているということでなのしょう。また、コーナリング中にスピードコントロールする際の安定性が高さも評価できるポイントです。リムブレーキだと、コーナーの進入前にきっちり減速してコーナリング中はブレーキ操作を極力避けたいところ。しかし、SUPERSIX EVO Hi-MOD DISCならコーナーの途中でブレーキを触っても暴れないため、安心してスピードを調整することができますね。
このバイクの「ミソ」は、リアをスルーアクスル化せずQRレバーのままとした点にあり、剛性バランスの高さに繋がっていると感じました。ディスクを意識させるような感触がなく、リムブレーキ仕様と遜色ない剛性感に仕上がっています。逆にフロントは過剛性気味で、リムブレーキ仕様と比較して、路面からの突き上げがやや多いのが唯一気になるポイントでした。
ペダリング剛性についても、リムブレーキ仕様と比較してやや上がっているようです。BB周りの剛性はリムブレーキ仕様に近く、ダッシュのかかりが良いのは変わりません。しかし、リムブレーキ仕様に感じる良い意味での登りのひらひら感が、ディスク仕様では薄れてしまって、少しガチッとしています。ブレーキの性格的にも言えることですが、登りで選ぶならリムブレーキ、下りで選ぶならディスクブレーキですね。
「ディスク化の恩恵は多大 剛性バランスにも優れる」高野浩平(B-shop OCHI)
ディスク化によって振動吸収性が悪化してしまうのでは?という懸念は杞憂でした。正直なことを言うと、個人的にはリムブレーキ仕様の乗り味が好みです。しかし、ディスク仕様も路面にくまなく追従しようという雰囲気を感じることができます。振動が上半身に伝わらないように、サドルから腰を上げるといった動作はあまり必要ありません。荒れた路面の上でもサドルに腰を据えてペダリングに集中できますから、レースを考える上では大きなメリットになるでしょう。読者の皆さんの中にもディスクロードについて懐疑的な方は少なくないでしょうし、私もその1人でした。しかし、今回試乗してみて、印象が良い方向に変わりました。ディスク仕様にあっても乗り心地と反応性を高いレベルで両立できるのだなと。ただ単にディスク化するだけではなく、快適性や走行性能を高めるというモディファイに今後はメーカー間の差が出てくると考えられますが、MTBやCXも得意とするキャノンデールの経験が存分に活かされていると感じられました。
フロントのスルーアクスルと前160mm/後140mmという標準ローター径の組み合わせが、ブレーキのコントロール性を高めているのでしょう。ディスクだけどハブ軸はクイック仕様のSYNAPSEや、一緒に試乗したSUPERSIX EVO CARBONのリムブレーキ仕様と比較しても、大きな差異がありました。
細かくスピードを調整できるため、無駄に速度を落とし過ぎることがなく、体力の温存に繋げることができます。一方で、リアがクイック仕様であることによる不安はなく、制動力を受け止めきれています。
総じて、ストイックなレーサーにこそオススメな1台です。雨の日でも外で練習したいというライダーに抜群の安心をもたらせてくれますし、リムブレーキのようにシューの削りかすで汚れることもないので、メンテナンスを素早く終えることができます。ディスク化によって重量増が発生していますが、走りに悪影響を及ぼしているという印象は希薄。むしろディスク化による恩恵のほうが大きいというのが結論です。
プロユースの性能を多くのライダーに 弟分SUPERSIX EVO CARBONが刷新
プロユースの「SUPERSIX EVO Hi-MOD」に遅れること僅か1年。弟分的位置づけの「SUPERSIX EVO CARBON」もフルモデルチェンジを果たした。そのフォルムは一卵性双生児と言って良いほど似通っており、ペイント以外で見分ける術はなさそう。2017年モデルでは、リムブレーキ仕様での展開となる。
SUPERSIX EVO CARBONが目標とするのは、Hi-MODと遜色ない性能。低価格化するためにカーボン素材を変更しながらも、キャノンデールが誇るべきテクノロジー「バリステックカーボン構造」を導入し、カーボンシートを側面に貼り増しすることで剛性を強化。フレーム単体で200g強という重量増の替わりに、ヘッドチューブで95N/deg、BBで61N/mmとHi-MODを数%上回る剛性値をマーク。走りにおいても、一卵性双生児と言って良いほどの性能を実現したのだ。
従来型のSUPERSIX EVO CARBONとフレーム重量を比較しても、軽量になるどころか、やや重くなっている。しかし、キャノンデールのバイクを重量だけで見るのは禁物だ。現行型Hi-MODとほぼ共通のフレーム形状により、同社が最重要視する剛性バランスは着実な向上を遂げており、更なる走りの軽さを手に入れている。また、Di2ケーブルの内装が可能となった点も大きなポイントであり、将来のグレードアップを見据えて購入するユーザーにとっては嬉しいところ。
販売は完成車にて行われ、シマノULTEGRA仕様、105仕様、TIAGRA仕様の3グレードで展開。ULTEGRA仕様は、ほぼ同スペックのCAAD12と比較しても僅かに10,000円(税抜)高いだけ。末弟グレードのTIAGRA仕様は200,000円を切るプライスタグをつけるなど、その高いコストパフォーマンスも見逃せない。今回はシマノULTEGRAにマヴィックAKSIUMを組み合わせた「SUPERSIX EVO CARBON ULTEGRA」をテスト車両に用いた。
インプレッション
「大多数にとって適度な剛性感を持つ」恒次智(サイクルショップフリーダム)
SUPERSIXシリーズを始め、キャノンデールのバイクはバランスを最重要視していますが、その意図をはっきり感じられるオールラウンドさが魅力です。平地、登り、下り、コーナリング、スプリントとあらゆる性能に優れており、シチュエーションを問わず軽快。Hi-MODを差し置いて、キャノンデールのロードラインアップの中で、個人的に最もおすすめなモデルですね。個人的にも現行のHi-MODを所有しており、時速35km/h以上の巡航や高速域での加速のキレはHi-MODに軍配が上がります。だた、実際に高速域でのレース性能が必要な方はほんの一握り。対して、CARBONはビギナーから中級者にとって馴染みやすいバイクに仕上がっています。適度に剛性が落ちているような印象で、率直にHi-MODよりも乗りやすいと感じました。疲労に繋がる反発が小さく、踏みやすいのです。
多少の重量増はありますが、SUPERSIXシリーズならではの登りの軽快さは健在。他社のミドルグレードでは感じられないような気持ちよさがあります。ただ、完成車付属のホイールはやや重めですので、軽量なものに変えてあげて、フレームの持つ軽快感がさらに引き出してあげたいですね。
走行性能のバランスが高いということは、乗り方や楽しみ方もオールマイティーで、ホイールを始めとした各パーツで調整してあげれば、それぞれの用途に適した1台に仕立てられます。レースもツーリングも1台でこなしたいという欲張りなサイクリストにこそ、おすすめですね。
「Hi-MODを凌ぐ低速域の軽快さ」高野浩平(B-shop OCHI)
ひとこぎ目から「軽いっ!」と声が出てしまうほど、軽快な乗り味に仕上がっています。時速30km/h台まで加速するのに掛かる時間が、Hi-MODと比較しても短いように感じました。芯のある踏み味で、トルクをかけても、ケイデンスを上げてもしっかりと反応してくれるのに、疲労に繋がる嫌な突き上げが少ないため、ロードレースに加えてロングライドにもピッタリです。フレームが大きくたわんでいる気配はありませんが、適度なバネ感があります。ダンシングした時にパンパンパンとリズムよく反発して、気持よく進んでくれるのは、カーボンフレームならでは。腰砕けになることはありませんから、登りコーナーで踏み込みながらのアタックしたら、ライバルに大きく差をつけられることでしょう。そして、Hi-MODの真骨頂である優れた登り性能はそのまま。緩斜面から、7~8%以上が続く長距離のヒルクライムまで、登りならプロファイルを問いません。
平坦で30km/h台から40km/h台に加速する際に必要な力も、他社のエアロバイクと比べて低く抑えられています。極端にエアロに配慮した設計ではないのですが、巡航性能も充分に高く、エアロロードって本当に必要なのかと考えさせられてしまいます。下りでは、テーパーヘッドと、華奢な見た目に反してしっかりとしたフロントフォークが、荷重をきっちりと受けて止めてくれます。ですから、下りコーナーで少し無理なライン取りでも思い通りに曲がってくれます。
従来モデルのCARBONと比較すると、まったりとした漕ぎの重さが無くなったような印象を受けました。従来モデルのHi-MODとCARBONの間にあった差は小さくなったどころか、低速域の軽快さを考えれば、現行のHi-MODよりも乗り味が好みという方がいてもおかしくはないほどの完成度です。総じて、バランスが良く、誰が乗ってもクセを感じにくい、疲れにくいけど速いバイクに仕上がっています。このバイクが持つ扱いやすさは、長距離のロードレースやロングライド、ヒルクライムとあらゆるシーンで頼りになりますね。
提供:キャノンデール・ジャパン 製作:シクロワイアード編集部