15年に及ぶ研究開発を経て誕生した新レンズ「PRIZM」

オークリーがNo.1アイウェアブランドたる大きな理由の1つに「高性能なレンズ」が挙げられる。そんな同社が15年もの月日を費やして完成させたという新型レンズが「PRIZM(プリズム)」だ。各スポーツにおける周辺光を、これまで以上に綿密に分析し最適化することで、より鮮明な視界を実現したオークリー入魂のレンズにフィーチャーすると同時に、サポートライダーによるインプレッションを紹介しよう。



それぞれの環境において『視たいもの』は何かを探求


今年のツアー・オブ・ターキーでの一コマ。同じエティックス・クイックステップのライダーでもレンズの種類は様々今年のツアー・オブ・ターキーでの一コマ。同じエティックス・クイックステップのライダーでもレンズの種類は様々 photo:Kei Tsujiハイパースペクトルカメラを用いて、あらゆるシチュエーションで周辺光を分析ハイパースペクトルカメラを用いて、あらゆるシチュエーションで周辺光を分析 アイウェアに求められる様々な性能の中でも、特に重要とされるものの1つが、「眼に飛び込んでくる光のコントロール」である。オークリーが誇る豊富なレンズバリエーションは様々なシチュエーションに対応し、天候や路面状況など、他のスポーツと比較して環境の変化が大きな自転車競技においては特に重宝されてきた。

一般的にレンズの性能指標は色と明るさ(可視光線透過率)の2つがメインとされ、レンズの選択は着用者の感覚的な好みに委ねられていた部分が多い。そして、自転車競技用に適したレンズは複数あれど、最適化されたモデルはこれまでオークリーのラインアップにも存在していなかった。

そんなオークリーが研究開発に15年もの歳月を費やし、各スポーツの使用環境へ最適化を図ったレンズが「PRIZM」シリーズだ。その開発コンセプトは「それぞれの環境において『視たいもの』が何かを深く理解し、可能な限りそれらを明確にみせること」。

既存のレンズテクノロジーを改善するのではなく、独自に生み出した画期的な新技術を用いることで、これまでにないほど鮮明な視界を実現したことが特徴である。

Good lightとBad light ハイパースペクトルカメラによってこれまでに無い鮮明な視界を実現


眼が非常に敏感に捉えられることが可能な色「Good light(上)」と人の色彩感覚を弱くする色「Bad light(下)」眼が非常に敏感に捉えられることが可能な色「Good light(上)」と人の色彩感覚を弱くする色「Bad light(下)」 素材の調合を細かく変えることで、用途ごとに最適化している素材の調合を細かく変えることで、用途ごとに最適化している 開発過程でキーとなったのが「ハイパースペクトルカメラ」。これは、人間の目や一般的なデジタルカメラが赤・緑・青(RGB)の3色を用いる一方、数十種類以上の色の情報を用いて1つの色を分析できるという機器であり、軍事衛星にも搭載されているという。

これを用いて、オークリーではあらゆるシチュエーションや場所における光波長の分析を実施。結果、眼が非常に敏感に捉えられることが可能な色「Good light」をより多く通過させ、人の色彩感覚を弱くする色「Bad light」のほぼ全てを取り除くレンズの開発に成功する。

加えて、多くのサポートアスリートからのフィードバックを投入。それぞれの使用環境で「視たいもの」を強調させるため、用途に合わせて素材の配合を調整することで、これまでになく非常に鮮明な視界を実現するレンズ設計を完成させたのである。「PRIZM」シリーズでは用途別に5種類のバリエーションが用意され、その中でも特に自転車競技に最適なのが「ROAD」「TRAIL」の2種類である。

ロードレーサーに最適な「PRIZM ROAD」は舗装路や影、黄色のセンターライン、信号機の視認性を向上。特に路面自体のコントラストを強化することにより、落石やくぼみなどの障害物を素早くを見つけ出すことを可能とし、安全性の向上に寄与する。一方で、マウンテンバイクやシクロクロスなどオフロードユースに最適なのが「PRIZM TRAIL」。土や泥の状態、石、芝、木々の枝葉などの視認性を向上させている。

オークリーが15年もの月日を掛けて開発したPRIZMレンズ(写真はPRIZM ROAD)オークリーが15年もの月日を掛けて開発したPRIZMレンズ(写真はPRIZM ROAD) 標準レンズ(左)とPRIZM ROAD(右)の比較。視界が鮮明になったことがお分かり頂けよう標準レンズ(左)とPRIZM ROAD(右)の比較。視界が鮮明になったことがお分かり頂けよう

PRIZM ROAD搭載のRader EVを使用するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)PRIZM ROAD搭載のRader EVを使用するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele
PRIZM TRAILを装着したRacing JacketPRIZM TRAILを装着したRacing Jacket PRIZM TRAILは緑を濃く映し出し、草や葉の揺れをしっかりと捉えることができるPRIZM TRAILは緑を濃く映し出し、草や葉の揺れをしっかりと捉えることができる


引き続きレンズ素材にはアイウェア用として最高峰の光学純度を誇る「PLUTONITE」を使用。透明度を高める「HDO」テクノロジーとあわせてクリアかつ歪みのない視界を実現した。また、耐衝撃性にもすぐれ、目に有害な紫外線及び青色光を100%カットするなど、プロテクション性能に優れることも特徴である。

サポートライダーによるインプレッション

サイクリングに最適化したオークリー入魂のレンズ「PRIZM ROAD」と「PRIZM TRAIL」。国内のオークリーサポートライダーの中から内間康平(ブリヂストンアンカー)によるPRIZM ROADの、山本幸平(トレックファクトリーレーシング)と松本駿(TEAM SCOTT)によるPRIZM TRAILのインプレッションを紹介しよう。

「海や景色がよりいっそう綺麗に見える 競技者だけではなくサイクリング派にも」
内間康平(ブリヂストンアンカー)

オークリーのサポートを受けるブリヂストンアンカー勢。その先頭を走る内間康平オークリーのサポートを受けるブリヂストンアンカー勢。その先頭を走る内間康平 photo:Makoto.AYANO
「度付きでないにも関わらず、多くの情報を伝えてきてくれる」「度付きでないにも関わらず、多くの情報を伝えてきてくれる」 これまで使ってきたレンズたちと比較して、格段に路面コンディションが把握しやすく、アスファルトの影をしっかりと眼に捉えさせてくれます。実は普段度付きレンズを使用しているのですが、PRIZM ROADについては度付きでないにも関わらず、多くの情報を伝えてきてくれますね。とても驚かされました。

赤に加えて、緑と青が程よく強調されるため、地元沖縄の海や景色がより一層綺麗に見えました。特にロングライド派の方であったり、景色を楽しみながらゆっくりと走るという方にとっては凄く嬉しいことですよね。購入を検討している方は、是非試着の際には屋外に出てみて下さい。そうすることで、よりPRIZM ROADの良さを体感できると思います。

「凹凸が自然と眼に入ってくる オンロードライドに対応する万能性も」
松本駿(TEAM SCOTT)

松本駿(TEAM SCOTT)松本駿(TEAM SCOTT) photo:Makoto.AYANO
「注視せずとも凹凸が自然と眼に入ってきてくれる」「注視せずとも凹凸が自然と眼に入ってきてくれる」 明るさはパーシモン(下)に近しい明るさはパーシモン(下)に近しい 使いはじめは視界が明るくなったということに加え、蛍光色でないものが蛍光色として発色しているように見えるといった印象がありました。ただ、慣れてくると凹凸がはっきりと見えてきます。冬のゲレンデで、日中は見なかった雪の凹凸が、夜になって見えてくるという風に例えるとわかり易いかもしれません。

これまでは路面を注視しながら凹凸を探すのが普通でしたが、PRIZM TRAILの場合には、それらが自然と眼に入ってきてくれます。特にレースにおいては、心拍数が上がりきった状態で路面を注視して状況を見極めなければず、多くの体力を要しますから、PRIZM TRAILか否かで消耗度合いが大きく違ってきますね。

表面上は全く異なる色合いなのですが、これまでのレンズラインアップでいうところの「パーシモン」の明るさに近く、個人的によく使用している「G30」よりは暗めでピンク掛かっていますね。周辺光に対する許容度が大きく、調光機能が備わっているかの様な印象すら受けます。

また、舗装路での使用にも対応する万能性があり、はじめのうちはやや明るすぎるという印象でしたが、慣れてくると視界が鮮明になってくれました。加えて、悪天候時のほうが視界がクッキリとするため、晴天時よりもアドバンテージが大きいですね。

「裸眼よりも視力が良くなったかと思える程の鮮鋭感 薄暗いシーンにも対応してくれる」
山本幸平(トレックファクトリーレーシング)

PRIZM TRAIL搭載のRaderLockを使用する山本幸平(トレックファクトリーレーシング)PRIZM TRAIL搭載のRaderLockを使用する山本幸平(トレックファクトリーレーシング)
「PRIZM TRAIL」レンズのサングラスを装着した瞬間に、今まで見えていた視界が、より鮮明かつハッキリ・クッキリと見える様になりました。裸眼よりも視力が良くなったか?と思えるほどの鮮鋭感がありました。

晴天時の使用は「少し明るすぎるかな?」と一瞬思うこともありましたが、それもすぐに慣れてしまいました。そして、日差しの中からトレイルに入り、日陰になった瞬間でも、確実に路面を把握できます。明暗差の大きなオフロードユースではとても大きな強みですね。

夕暮れ時のライドでも明るく視界を映し出してくれることから、薄暗い中でのトレイルライドでもサングラスを装着したままで走り続けられます。総じてオールラウンドに自然環境に対応出来るという印象で、レースにおいては強い味方になってくれるといっても過言ではないですね。今シーズンは多くのレースで使用する予定です。

「明暗差の激しい環境で真価を発揮 影の路面状況もしっかりと捉えることができる」
永田隼也(AKI FACTORY TEAM)

永田隼也(AKI FACTORY TEAM)永田隼也(AKI FACTORY TEAM) photo:Makoto.AYANO
まず、晴れた日の開けたトレイルでは、とにかく明るく眩しいというイメージを受けました。しかし小石や凹凸等の細かい路面状況が掴みやすく、好みは分かれるかもしれないですが、好きな人はかなりビビッとくるでしょう。同じ様なコースで曇っている日にはかなり威力を発揮してくれそうな印象です。

そして、実際に山のトレイルで使用してみるとかなり調子がいい。冬の時期だと落ち葉が白く光ってしまい路面状況が分かり辛いものですが、白い照り返しが抑えられ、はっきりと路面を見る事が出来ました。また木漏れ日と陰の明暗差がトレイルライド中の路面状況を把握しづらくするものですが、PRIZM TRAILであれば、そういったシチュエーションにも問題なく対応してくれます。陰の部分を明るく見る事ができ、一方で強い木漏れ日を眩しいと感じることは、そう多くありません。

これまで、トレイルライドでは朝~昼過ぎはグレーベースレンズ、夕方はクリアかパーシモン系レンズと時間に応じて使い分けていました。もしくは1日変えずに乗るという日がクリア/ブラックの調光レンズを使用していましたが、トレイルのように明暗差の激しい環境だと影で暗さを感じて、ラインを外してしまう事もありました。しかし、PRIZM TRAILであれば、朝~夕方までこのレンズ1枚でライドでき、途中で交換する必要はないですね。非常に優れもので重宝しています。
提供:オークリージャパン 制作:シクロワイアード