初めてスポーツアイウェアをリリースしてから30年の節目を経て、オークリーは新たなフェーズへと突入した。その最大のトピックスが、ブランドとして初めてスポーツサイクルに特化し開発された「Jawbreaker」だ。本ページでは世界最高峰のスプリンター、マーク・カヴェンディッシュにインスパイアされ誕生した話題のアイウェアにスポットをあてる。

マーク・カヴェンディッシュにインスパイアされ生まれたJawbreaker(ジョウブレイカー)

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)のアイデアとフィードバックを多く取り入れ開発されたJawbreakerマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)のアイデアとフィードバックを多く取り入れ開発されたJawbreaker (c)オークリージャパンゴルフ、野球、陸上競技、XCスキー、スピードスケートなどアイウェアが必要とされるスポーツは多々あるが、自転車競技ほど必須とされている競技は他に存在しないだろう。

ときに100kmを越えるスピードでのダウンヒルをこなし、ときに顔が泥や砂埃にまみれ、ときに目をめがけて様々なものが飛んでくるこのスポーツにおいて、アイウェアには様々な性能について完璧が求められる。

現在のプロサイクリング界におけるアイコン的ライダーであり、機材に対して強いこだわりを持つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)はアイウェアについて次の様に語っている。

「99%の出来では、ダメなんだ。常に100%でなければならない。あらゆる状況において準備しておかないといけないんだ」

そんなカヴェンディッシュの声に耳を傾け、オークリーは「RADARLOCK」と「Racing Jacket」に継ぐ新型モデルの開発に着手。共にプロアマ問わず多くのサイクリストから厚い信頼を得てきたプロダクツだけに開発には多くの困難が伴ったが、そうして生み出されたのが「Jawbreaker」。開発段階から注目を集め、2014年のツール・ド・フランスでカヴェンディッシュがプロトタイプを着用した際には大きな話題となった。

デビューして日が浅いながらも、多くのプロライダーがJawbreakerを使用しているデビューして日が浅いながらも、多くのプロライダーがJawbreakerを使用している
そして、この春に正式なデビューを迎えたJawbreakerは、雨、強烈な風とそれに巻き上げられた砂や埃、石畳による振動がライダーに襲いかかる過酷な春のクラシックシーズンで早くも結果を残す。クールネ~ブリュッセル~クールネではカヴェンディッシュが、パリ~ルーベではジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)がそれぞれJawbreakerを着用して優勝を飾った。

ジロ・デ・イタリアに参加中の別府史之(トレックファクトリーレーシング)もJawbreakerを使用するジロ・デ・イタリアに参加中の別府史之(トレックファクトリーレーシング)もJawbreakerを使用する photo:Kei Tsuji
続くツアー・オブ・ターキーでもカヴェンディッシュがステージ3勝を獲得。トレックファクトリーレーシングの別府史之や、オフロード界では山本幸平(トレックファクトリーレーシング)やニノ・シューター(スイス、スコット・オドロ)らも使用し始めている。ジロ・デ・イタリア、そしてツール・ド・フランスとこれから益々加速するレースシーンにおいて、Jawbreakerはより多くの勝利に貢献することだろう。

ワイドでクリアな視界、より高いプロテクション性能、優れたベンチレーションを求めて

9,600時間にも及ぶ屋内及びフィールドでの実走テストを経て誕生したJawbreaker9,600時間にも及ぶ屋内及びフィールドでの実走テストを経て誕生したJawbreaker (c)オークリージャパン
Jawbreakerの誕生までには100ものデザイン案が生まれては消えていったというJawbreakerの誕生までには100ものデザイン案が生まれては消えていったという (c)オークリージャパンJawbreaker初期のデザイン案。様々な点が製品版とは異なるJawbreaker初期のデザイン案。様々な点が製品版とは異なる (c)オークリージャパン

登場から日が浅いながらも、プロレース界において大きな存在感をみせている「Jawbreaker」。その誕生までには100ものデザイン案が生まれては消え、2年という開発期間の間に9,600時間にも及ぶ屋内及びフィールドでの実走テストを実施。それらは全て完璧を求めるプロフェッショナルライダーのためであり、製品開発に一切の妥協を許さないオークリーの姿勢の現れでもある。

Jawbreakerの開発におけるキーワードは3つ。その1つ目が「ワイドでクリアな視界」である。オークリーはスポーツアイウェアにおけるこの永遠の課題を解決するために、Racing JacketやRadarlockを「視線追跡装置」にて解析。今まで感覚で語られてきた視界をデータ化することに成功する。

その結果、スポーツバイクの前傾した乗車姿勢では、ライディングスタイルやライダーの体格に関わらず、視線がレンズの上半分に集中していることが判明した。

Jawbreakerではノーズ部の上側をより高くし、一般的には不利とされるフルリムデザインながら、オークリー史上最も広く、平均的なスポーツアイウェアと比較して44%もワイドな視野を実現したのである。

コンセプト開発部長のライアン・カリラング氏コンセプト開発部長のライアン・カリラング氏 (c)オークリージャパン昨年のツール第1ステージでJawbreakerのプロトタイプを着用したマーク・カヴェンディッシュ昨年のツール第1ステージでJawbreakerのプロトタイプを着用したマーク・カヴェンディッシュ photo:Kei Tsuji

もちろん設計寸法を決定する際には、あらゆるサイクリストに対するフィッティングテストから得られたデータを考慮。頬などにレンズやリムが接触してしまい、これまでオークリーのアイウェアを諦めていたという方でも非常に高いフィット感とそれに由来する広い視野が得られるようになっているという。

また、視界という意味ではJawbreakerでも標準搭載モデルが設定されている「Prizm Road」レンズもトピックスだ。ライダーの目が最も敏感に感じる色で視界を微調整することにより、路面の微妙な質感の変化を正確に把握することが可能になり、ライダーの安全性向上に貢献するというものだ(詳細は後日公開の続編にて解説する)。

Radarlockを用いた視線追跡装置による解析の様子Radarlockを用いた視線追跡装置による解析の様子 (c)オークリージャパン視線追跡装置による解析の結果、スポーツバイクの前傾した乗車姿勢視線がレンズの上半分に集中していることが判明視線追跡装置による解析の結果、スポーツバイクの前傾した乗車姿勢視線がレンズの上半分に集中していることが判明 (c)オークリージャパン

風洞実験を繰り返すことでベンチレーション効果を追求した風洞実験を繰り返すことでベンチレーション効果を追求した (c)オークリージャパン高速の鉄球を弾くほどレンズは高い強度を持つ高速の鉄球を弾くほどレンズは高い強度を持つ (c)オークリージャパン

2つ目のキーワードはプロテクション性能で、Racing Jacket同様にフルリムデザインを採用する点が最重要ポイント。高い耐衝撃性を持ちながらも、アイウェア用として最高峰の光学純度を誇り、紫外光を100%遮蔽するレンズ素材「Plutonite」や、ワイドなレンズ設計とあわせて、あらゆる障害から眼を保護してくれる。

そして、最後のキーワードが「ベンチレーション」である。これはカヴェンディッシュの意見をもとに改良を進めた点で、レンズ上縁及び下縁のベンチレーションホールが標準仕様となった。アイコン付近に設けられたサージサポートとあわせて、レンズと顔の間にこもる熱を効果的に放出することが可能に。元々オークリーのレンズは曇りづらいものの、このアップデートにより、ヒルクライムなど走行風が取り込みにくい低速時がより快適になった。

SWITCHLOCKとADJUSTABLE STEMS 新ギミックにより使い勝手が向上

オークリー Jawbreaker(左:Cavendish Polished Black/Prizm Road、右:Uranium/Prizm Road)オークリー Jawbreaker(左:Cavendish Polished Black/Prizm Road、右:Uranium/Prizm Road) (c)Makoto.AYANO
視界の広さ、プロテクション性能、優れたベンチレーションに加え、使い勝手をも向上させているJawbreaker。進化したSWITCHLOCKシステムと、ヘルメットとの相性問題を解決するADJUSTABLE STEMSを紹介しよう。

よりレンズ交換を簡単に 進化したSWITCHLOCKシステム

2008年に登場したJawbone(後のRacing Jacket)で初めて採用され、それまでは常に破損の不安を伴っていたレンズ交換を容易としたのが「SWITCHLOCK」システムだ。様々なシチュエーションにマッチする豊富なカラーとコーティングが用意されるオークリーのレンズバリエーションを最大限に活かすためのギミックであり、Jawbreakerでは更に作業が用意となっている。そのレンズ交換方法は以下のとおりだ。

  1. ノーズピースの下端をつまみながら弧を描く様に上方へと持ち上げる
  2. フレームに引っ掛けられているメタルクラスプを外し、ノーズピースを元の位置に下げる
  3. レンズとフレーム上部を持ちながらジョウ(フレーム下部)を下げる
  4. レンズを交換してジョウを元の位置に戻す
  5. ノーズピースを上方へ持ち上げ、メタルクラスプをフレームに引っ掛け、ノーズピースを元の位置に下げる
ノーズピースの下端をつまみながら弧を描く様に上方へと持ち上げることで、レンズの固定を解除するノーズピースの下端をつまみながら弧を描く様に上方へと持ち上げることで、レンズの固定を解除する ジョウ(フレーム下部)を下げ、レンズを取り出すジョウ(フレーム下部)を下げ、レンズを取り出す


実際に交換作業を行ってみると、レンズやフレームに無理な力がかかっている感触がなく、従来モデルの様な不安を感じることが無い。また、指紋でレンズを汚しにくいことが分かる。これであれば天候や路面などのコンディションに素早くレンズを交換できるだろう。

ヘルメットとの干渉を防ぎ、フィット感を高めるADJUSTABLE STEMS

そして、進化したSWITCHLOCKシステムと並んでトピックスといえるのが、オークリーのアイウェアとしては初めて可変機構を搭載した「ADJUSTABLE STEMS」だ。とあるオークリーのサポートライダーからのフィードバックによって開発されたもので、長さを3段階で調節することができる。

ヘルメットとの干渉を防ぎ、フィット感を高めるADJUSTABLE STEMSヘルメットとの干渉を防ぎ、フィット感を高めるADJUSTABLE STEMS 従来モデルであればクロージャーと干渉を起こしていたヘルメットも、Jawbreakerであれば干渉しない従来モデルであればクロージャーと干渉を起こしていたヘルメットも、Jawbreakerであれば干渉しない

これにより、ヘルメットのシェル本体やアジャスターとの干渉が無くなり、どんなヘルメットにおいても適切なフィット感を得ることが可能になった。また、設計どおりの位置にアイウェアが保持されるため、理想どおりの視界を得ることができる。調整はクラスプ部を持ち上げて、ステム本体をずらすだけとこちらも容易だ。

Jawbreakerのテクノロジーを取り入れたRadar EVとFlak 2.0も同時デビュー

Radar EVを使用するホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)Radar EVを使用するホアキン・ロドリゲス(カチューシャ) photo:Kei Tsuji
Radarlockと比較してレンズのノーズ部より上が拡張されているRadar EV(左)Radarlockと比較してレンズのノーズ部より上が拡張されているRadar EV(左) オークリー Flak 2.0オークリー Flak 2.0 (c)オークリージャパン

Jawbreakerの登場と同時に、オークリーはスポーツアイウェアのラインアップを刷新し、オークリー伝統の1眼式モデル「Radar EV」とよりシンプルになった2眼式モデル「Flak 2.0」という2つの新モデルをデビューさせている。製品名からも分かるとおり、それぞれ「Radar」と「Flak Jacket」の後継モデルだ。

共通する特徴は、Jawbreakerと同じくレンズを上方向に拡張し、より広い視界を実現したこと。共に特化はしていないものの、サイクルスポーツにおいても優れた性能を発揮する。特にEnhanced View(=拡張された視野)の頭文字が製品名に冠されている「Radar EV」は、Jawbreakerと並んで多くのプロライダーに使用され始めている。なお、国内販売モデルはアジアンフィットを採用している。

提供:オークリー・ジャパン 制作:シクロワイアード