「27.5 IS the future of Off-Road」つまり27.5インチこそがMTBの未来だと、ジャイアントは言い放った。まだ27.5インチの投入に慎重となるブランドがある一方で、世界最大級の自転車メーカー、つまりジャイアントは、XCとAMの主力モデルを一挙に27.5インチ化した。その理由とは、その真意とは。

「MTBのメッカ」ユタ州で開催されたプレスキャンプ

アメリカ・ユタ州で初披露されたジャイアントの27.5インチMTBアメリカ・ユタ州で初披露されたジャイアントの27.5インチMTB
7月、ジャイアントが世界中のサイクリングメディアを招き、MTBの新作モデル発表プレスキャンプを開催した。舞台はアメリカ・ユタ州。乾燥した砂漠や、松林に覆われた山岳地帯まで多種多様な自然を持ち、マウンテンバイカーのメッカとも言われる場所だ。新作バイクをテストするには絶好の環境。ここで各ジャーナリスト達は、フルモデルチェンジを経た27.5インチMTBの性能を試すこととなった。

26インチから29インチからの移行を経て僅かな期間で台頭してきた27.5インチ(650B規格)。多くのブランドがこの規格へと参入している中、ジャイアントも例外ではなかった。レースの現場では既に27.5インチのプロトタイプが積極的に導入されていたため、同社がこの新規格を取り入れたバイクをデビューさせるのは、多くのジャーナリストらが予想していたことだ。

しかし、ジャイアントは発表会にて、「27.5 IS the future of Off-Road」つまり27.5インチこそがMTBの未来だと、ジャイアントは言い放ってしまった。フルサスからリアリジッド、さらには女性用モデルに至るまで、ほとんどの主力モデルが27.5インチ化されたのだ。

会場となったユタ州パークシティのモンタージュ・ディアバレーホテル会場となったユタ州パークシティのモンタージュ・ディアバレーホテル ずらりと並んだテスト用バイクずらりと並んだテスト用バイク

テストライド前には1台ずつ細かくセッティングが行われたテストライド前には1台ずつ細かくセッティングが行われた 機材を運んできたバンの大きさにアメリカを感じる機材を運んできたバンの大きさにアメリカを感じる

ジャイアントが27.5インチを全面的に採用した理由は、「軽さ」「効率」「コントロール性」という3つの大きな理由に依る。広範囲にわたる調査と検証を繰り返したその末に、総合的なバランスに長けていたからだ。それに加え、「操る楽しさ」や、ルックスのまとまりなど、マウンテンバイク本来の楽しさ、そして美しさなど、総合的な事柄にも配慮した結果だという。

レースの現場で磨き上げられた技術


ロードのイメージが強いジャイアントだが、MTBにも同様に、大きな技術力を注いできた。1990年台初頭からトップアスリートへのサポートを開始し、フルカーボンモデル「monex TCM-1」や、ルノーとの共同開発によって生まれたフルサスXCモデル「XtC-990」など、歴史的な名車を世に送り出してきた。ルーン・ホイダル(ノルウェー)によるMTBワールドカップ5勝を筆頭に、数々の耀かしい戦歴も忘れてはならない。

27.5インチのテストに参加したマリアンヌ・フォス(オランダ)27.5インチのテストに参加したマリアンヌ・フォス(オランダ)
27.5インチのプロトタイプで軽快に下るファビアン・ギーガー(スイス)27.5インチのプロトタイプで軽快に下るファビアン・ギーガー(スイス) Liv/ジャイアントのフルサスモデルをテストするケリー・エメット(アメリカ)Liv/ジャイアントのフルサスモデルをテストするケリー・エメット(アメリカ)


27.5インチモデル製品化の裏側には、度重なる実戦でのテストが行われている。2013年シーズン初頭よりジャイアント・ファクトリー・オフロードチームに所属するアダム・クレイグ(アメリカ)や史上最強の女子自転車選手と呼ばれるマリアンヌ・フォス(オランダ、ラボバンク-Liv/ジャイアント)らが駆り、ワールドカップ優勝や、4カ国でのナショナルタイトル獲得など、好成績を残してきた。

フォスは「プロトタイプに2日乗り込んで、すぐに自分の走りにアジャストできるほど乗りやすかった」と語り、27.5インチでの初レースとなったアメリカのシーオッタークラシックにおいて即座に2連勝を達成。日本人男性の平均身長に近い168cmのフォスの活躍はつまり、27.5インチは多くの日本人ライダーにとってもメリットがあると言って過言ではないはずだ。

3種類のホイールサイズを比較した1例、障害乗り越え性は29インチに近いと結論付けている3種類のホイールサイズを比較した1例、障害乗り越え性は29インチに近いと結論付けている (c)ジャイアント

一挙に7車種をモデルチェンジ

ジャイアント ANTHEM ADVANCED 27.5 2ジャイアント ANTHEM ADVANCED 27.5 2 2014年ラインップでは7車種がモデルチェンジ。昨年まで26インチと29インチを共にラインナップしていた4モデル、そして26インチのみがラインナップされていたLiv/ジャイアントの3車種が27.5インチに生まれ変わっている。今回のスペシャルコンテンツでは、オールマウンテンモデルのTRANCEとフルサスXCバイクのANTHEM、リアリジッドXCモデルのXTCという3車種の解説とインプレッションを通じ、ジャイアントが考える27.5インチMTBを考察していく。

ジャイアント P-XCR0 27.5ジャイアント P-XCR0 27.5 (c)ジャイアントTRANCE(トランス)シリーズはXCバイクに匹敵する登坂性能と、DHバイクに迫る下り性能を兼ね備えたオールマウンテンバイク。27.5インチホイールに合わせて定評のあるリアサスペンションシステム「マエストロ」を5.5インチ(140mm)トラベルとし、新たなジオメトリーを採用したことが従来モデルとの変更点だ。

新作モデルについてプレゼンテーションを行うケビン・ダナ氏新作モデルについてプレゼンテーションを行うケビン・ダナ氏 リアドロップアウトは142×12mmと135×5mmの両規格に対応するため様々なホイールを装着可能とし、内蔵ケーブルやISCG-05規格のチェーンデバイスマウント、フレームプロテクターを装備しトラブル発生の可能性を最小限に留めている。

4インチトラベルのフルサスXCバイク、ANTHEM 27.5インチは、軽さとマエストロシステムによるシルキーな路面追従性が特徴のフルサスXCバイク。27.5インチホイールになったことで、XSとSサイズでは95mm、MとLサイズでは100mmというショートヘッドチューブを実現したため、身長が170cm以下のライダーでも最適なポジションを出すことが可能となった。

フレームには高い操作性を実現する大口径ヘッドチューブ「OVER DRIVE2」や、様々なホイールが装着可能な142×12mmと135×5mmの両規格対応リアドロップアウトなど最新の規格を多用する。

XTCシリーズはクロスカントリーレースに適したハンドリング特性と、ロードバイクに迫る軽量性を兼ね備えたリアリジットのレーシングXCバイク。比較的短いヘッドチューブ長など、身長が170cm以下のライダーでも最適なポジションが実現出来るジオメトリーを採用している。フロントフォークのトラベル量は100mmだ。

ジャイアント TRANCE ADVANCED 27.5 0 TEAM

フレームAdvanced-Grade Composite, ALUXX SL-Grade Rear Swingarm 5.5" Maestro Suspension OLD135/142mm
フォークROCKSHOX Revelation RLT3 OverDrive 2 Column 120-140mm Travel 15mm Axle
RショックROCKSHOX Monarch RT3
コンポーネントスラム XX1
ブレーキローター径フロント170mm、リア160mm
ホイールジャイアント P-TRX0
タイヤシュワルベ NOBBY NIC EVO TL-READY 27.5x2.25
サイズ370mm(XS)、380mm(S)、431mm(M)
重 量N.A.
価 格国内未発売

ジャイアント ANTHEM ADVANCED 27.5 0 TEAM

フレームAdvanced-Grade Composite, ALUXX SL-Grade Rear Swingarm 4.0" Maestro Suspension OLD135/142mm
フォークROCKSHOX SID XX W/XLoc OverDrive 2 Column 100mm Travel 15mm Axle
RショックROCKSHOX MONARCH RL L:6.5、T:1.5
コンポーネントスラム XX1
ブレーキローター径前後160mm
ホイールジャイアント P-XCR0 Carbon
タイヤシュワルベ RALPH EVO TL-READY 27.5x2.25
サイズ370mm(XS)、390mm(S)、440mm(M)、490mm(L)
重 量10.0kg(390mm)
価 格730,000円(税抜)

ジャイアント XTC ADVANCED 27.5 0 TEAM

フレームAdvanced-Grade Composite OLD135/142mm
フォークROCKSHOX SID XX W/XLoc
コンポーネントスラム XX1
ブレーキローター径フロント160mm、リア140mm
ホイールジャイアント P-XCR0 Carbon
タイヤシュワルベ RACING THUNDER BURT EVO TL-READY 27.5x2.1
サイズ350mm(XS)、390mm(S)、440mm(M)、490mm(L)
重 量8.7kg(390mm)
価 格660,000円(税抜)
提供:ジャイアント text:シクロワイアード編集部