ノヴェ・コッリの前日イベント、スタート前の大混雑、レーススピードの速さ、途切れない集団に圧倒されたCWの藤原。まだ1つ目の峠の頂上にいるが、先はまだ長いので、急いでダウンヒルすることに。果たして完走することができたのか、挑戦を終えたとき何を感じたのか。



2つ目の登りは白い岸壁が露出した丘を眺めながらこなしていく2つ目の登りは白い岸壁が露出した丘を眺めながらこなしていく
とにかく周りのライダー達のスピードが速く、私もそれなりに良い速度で下っていたにもかかわらず、一瞬で視界から消えていってしまう。しかし、コーナー途中の無理な追い越しはなく、ストレートで抜いていってくれるため、安心して走ることができている。が、下りの最終盤に差し掛かったところで、何故かコース脇の茂みからサイクリストが顔を出しており、不意の出来事にギョッとしてしまった。

下りで脇見運転できるほどスキルフルではないため、彼が一体何をしていたのかその場で判断することはできなかったが、その理由はすぐにわかることに。なぜなら同じように茂みに入っていたライダーが沢山いて、一様にホイール作業を行っていたから。彼らはパンクに見舞われた模様。茂みに隠れていた人たちは高速でやってくる後続集団と事故を起こさないために退避していてくれたのだ。

中には、シューズを脱ぎ、少し先に構えられたメカニックブースを目指してトボトボ歩いている人も。高速で下っていたためイメージの話でしかないが、第1峠のダウンヒルは非常にパンクトラブルが多かった。路面状況が悪かった訳では無いのだが、何故だろうか。自分にも起こりうることではあるが、パンク修理が非常にめんどくさいので、路面状況を把握してパンクしないようにと心に強く思ったのだった。

所々斜度が厳しく、参加者の顔を歪めさせる所々斜度が厳しく、参加者の顔を歪めさせる
山頂にはゲートがあるため登りきった達成感はひとしおだ山頂にはゲートがあるため登りきった達成感はひとしおだ
ノヴェ・コッリのいやらしいところだが、下りか登り基調のどちらかしか道がない。ペダリングしないとスピードが出ない区間もあり、もう少し頑張れば前に追いつきそうという距離でも中々追いつくことができなく、無駄足を使ってしまうこともしばしば。そういえば、頑張ってペダリングするのは自分だけは?と疑問に思いはじめたのはここの頃から。

ペースの速い集団には既に置いていかれてしまっているため、周りにいるのは比較的落ち着いた速度で走行する人ばかり。小集団でゆるい登り坂を登っていき、本格的なヒルクライムになるとバラバラになる。後ろからものすごい勢いで追い抜いていくフレッシュな人も偶にいて、抜かれるたびに速度差に驚かされるのだ。

ヒルクライム区間に入ると現地の人たちは、フロントギアをあっという間にインナーに落とすことに気がついた。軽いギアでクルクル回すことは体力温存に繋がることは知っているが、私はどうしても速く走りたくなりアウターギアで引っ張りがちなので、意識が徹底しているなと感心。

エイドステーションの物量はとんでもないことになっていたエイドステーションの物量はとんでもないことになっていた 斜度18%の下り坂は冷や汗をかいた斜度18%の下り坂は冷や汗をかいた

気持ちよく下れるが、路面には注意したい気持ちよく下れるが、路面には注意したい
ノヴェ・コッリに登場する上り坂は毎年同じで、48年という歴史を感じさせる看板も立っているノヴェ・コッリに登場する上り坂は毎年同じで、48年という歴史を感じさせる看板も立っている 途切れることのない集団で走る経験は非常に貴重だろう途切れることのない集団で走る経験は非常に貴重だろう


2つ目の峠は既に市街から離れており、風景は田舎に変わっている。前編でも記したかもしれないが、ノヴェ・コッリは一つ一つの登坂距離は長くなく、標高もそれほど高くならない。しかし、少し登るだけで視界が開け、遠景まで目に入れることが出来るので、気分的に満足感が非常に高い。

深い緑に覆われた森林だけではなく、若草の草原のような色合いとのコントラストが美しい。加えて、2つ目の峠には白い岩壁も露出しており、自然の素晴らしさを否が応でも感じざるを得ない。地形もうねるように大地が盛り上がり、海原のよう。やはり首都圏にいるだけでは見渡すことができない光景だ。なんと貴重な体験をしているのだろうか。

第2峠をクリアするとこの日初めてのエイドステーションが現れる。この先にも峠ごとにエイドが現れるが内容はほぼ同じ。サイクリストの味方コカコーラとスポーツドリンク、バナナとオレンジ、選り取り見取りの菓子パンが振舞われる。グルメが充実している訳ではないが、カロリーをしっかり補給できる定番のものが用意されているため、安心して利用できるのは嬉しい。ひとかけの黒糖などよりはマシだ。

私設エイドも出ており、女の子がお水をボトルに入れてくれる私設エイドも出ており、女の子がお水をボトルに入れてくれる 4つ目の峠はタイム計測区間であり、立て看板も豪華4つ目の峠はタイム計測区間であり、立て看板も豪華

レース中にも関わらず「イタリアの田舎町でボーっとしたいなー」なんて思ってしまったレース中にも関わらず「イタリアの田舎町でボーっとしたいなー」なんて思ってしまった 空が広く、気持ちよくヒルクライムを楽しむことができる空が広く、気持ちよくヒルクライムを楽しむことができる


このあたりから路面の状況が悪化してくる。下り勾配18%にも関わらず、割れている路面は恐ろしすぎる。普段使用している25cに慣れすぎたため、ノヴェ・コッリのために用意してもらったバイクに装着されていた20cのタイヤの細さと路面の悪さでは及び腰になってしまうのは仕方がない。そこをかっ飛ばしていくイタリアンサイクリストたち。

しかし、実際に20cという細さのタイヤで状況の悪い路面を走ってみると、この状況ではワイドタイヤが必要であることは如実に感じる。タイヤのグリップとクッションにここまで頼っていたのかとも実感した瞬間でもあった。

3つ目の登りでは私設エイドが大活躍。可愛らしい女の子が「アクアー!アクアー!」と叫び、ボトルに水を補給してくれたり、オッチャンがランニングしながら補給食を手渡ししてくれたりと、非常に充実していた。ヘアピンカーブの外側で色々なものを配布していたため、内側を走行していた私は何も受け取ることができず、残念。

最大斜度18%の案内が…ここに至るまでも10%超えは当たり前だったのですが…?最大斜度18%の案内が…ここに至るまでも10%超えは当たり前だったのですが…?
低地から一気に上がってきたかのように見える斜度18%の坂低地から一気に上がってきたかのように見える斜度18%の坂
3つ目をクリアすると久々に街「メルカート・サラチェーノ」を通過してから「バルボット」へ向かう4つ目の山に入っていく。ここは最大斜度18%が待ち受けながら、タイム計測区間という意地悪な設定がされている。私も気合を入れてペダルを踏み込んだら、チェーンがスプロケットとスポークの間に落ちてしまった。

「こんなことある〜?」と思いながらガシャガシャとメカをいじっていると、通りがかりのお姉さんが汚れた手のために、ウェットティッシュを分け与えてくれた。グラッツェ〜と言ってジェントルマン風に装ってみたけれど、内心それどころではない。チェーンはビクともせず、異国の地でトラブルで動揺。

数十メートル前にメカニックサービスがあったことを思い出し、トボトボと歩いて向かうことに。非常に寂しい。ブースに詰めていたメカニックたちは忙しなく働いていたのでゴム手袋を貰い、ガシャガシャとチェーンと再び格闘。そうこうしていると、手が空いたメカニックのお姉さんが私のバイクを引ったくり、物凄い力でチェーンを救出してくれた。安堵に包まれた顔でグラッツェと言ってみたけれど、屈強なお姉さんには無視される。辛い。ともあれ、再スタートできることに感謝だ。

ハードな上り坂のピークではMCが大きな声でサイクリストたちを迎え入れたハードな上り坂のピークではMCが大きな声でサイクリストたちを迎え入れた 4つ目の峠は、TV撮影も行われるほどだったので、ハイライトとなる場所だったのだろう4つ目の峠は、TV撮影も行われるほどだったので、ハイライトとなる場所だったのだろう

エイドステーションではコーラ、スポドリ、水、食べ物が沢山振る舞われるため、補給食を持つ必要ないのでは?と思ってしまうエイドステーションではコーラ、スポドリ、水、食べ物が沢山振る舞われるため、補給食を持つ必要ないのでは?と思ってしまう ノヴェ・コッリは走行中に130kmコースと205kmコースを選ぶことができるノヴェ・コッリは走行中に130kmコースと205kmコースを選ぶことができる

レオナルド・ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図をそのまま具現化したモニュメントもレオナルド・ダ・ヴィンチのウィトルウィウス的人体図をそのまま具現化したモニュメントも ジャージを脱いでのんびり過ごす人も。レースだが、楽しみ方は人それぞれジャージを脱いでのんびり過ごす人も。レースだが、楽しみ方は人それぞれ


第4の峠はというと距離は約4kmと長くないものの、斜度は平均8%、最大は18%ということもあり、私はハエが止まるほどの速度しか出せない。90km程度走ってくると流石にフレッシュな状態とは言えなくなっており、ピークを表すゲートが目に飛び込んできたときの安堵は忘れられない。頂上には大勢のギャラリーと、爆音の音楽とMCの声が響いていたからかもしれないが。とりあえず約半分の行程は完了した。

ノヴェ・コッリの特徴的なポイントのひとつとしてあげられるのが、205kmコースと131kmコースを走っている最中に決められること。第4峠後のダウンヒルを終えたところで分岐点が現れ、その場で決断する。131kmコースに向かう方も多く、見栄をはる必要は無さそう。それでも私は見栄のために205kmを完走する選択をした。

残る峠は5つ、距離は102km。ここまでの所要時間はほぼ5時間。時刻は11時を回り、気温も徐々に上がってきており、アームウォーマーが邪魔に感ずる場面も。しかし、下りではまだまだ必要なのでポケットに入れてしまう決断はまだ早い。登りの際は手首までまくり、下りはしっかりと風を防ごうという作戦とすることに。

レース後半になってもサイクリストが途切れることはないレース後半になってもサイクリストが途切れることはない
最高の景色を眺め、己の限界に挑戦する最高のグランフォンドだ最高の景色を眺め、己の限界に挑戦する最高のグランフォンドだ
ヒルクライムを4回も続けて入れば、それなりに飽きはじめの時間が訪れてしまい、私は気がついてしまった。登った先に見える景色は波打つ大地がほぼ全てであることに。同じ光景では?なんて贅沢な疑問を持ってしまうなんて恐ろしいことではあるが、実際同じように“美しい”景色なのだから仕方ない。この境地に至ったのだから走りに集中できるはず。そもそもノヴェ・コッリはレースであり、己との競争なのだから、景色なんてなりふり構わず走るべきなのである。

6つ目の峠を登り終えたところにあるエイドステーションでは、作りたてのラビオリが振舞われている。口に入れたパスタは非常に美味で、ボ〜ノ〜とほっぺを指先でグリグリする典型的なポーズをとってしまった。周りは誰もそんなことしていないので、だいぶ恥ずかしさはあるが、後悔はない。このエイドのコカコーラは0キロカロリーだったことを、恨みをこめて記しておこう。

最も登坂距離が長い7つ目の峠をこなした後のダウンヒルでちょっとした問題が発生。悪い路面の下りにも関わらず、スピードが乗るレイアウトだったため、ブレーキを握る手が痺れだしてしまったのだ。恐らく体が強張り、ハンドルとブレーキを強く握ってしまったためだろう。

自然豊かなエリアを走っているかと思ったら、突然街が現れたりする自然豊かなエリアを走っているかと思ったら、突然街が現れたりする なんと作りたてのラビオリを振る舞うエイドステーションも!なんと作りたてのラビオリを振る舞うエイドステーションも!

最高の景色が連続するため、気分は上々のままサイクリングを楽しめる(レースですが)最高の景色が連続するため、気分は上々のままサイクリングを楽しめる(レースですが)
天気にも恵まれ、青空に向かってヒルクライムしているような感覚になる天気にも恵まれ、青空に向かってヒルクライムしているような感覚になる 最後のヒルクライムがやってきた……最後のヒルクライムがやってきた……


ダウンヒルの終盤は、ワイドタイヤとディスクブレーキ搭載バイクを選び機材面で安全性を確保することは、気持ちを落ち着かせるためにも有効かも…なんて思い始めていた。そんなこともあり、帰国後はメーカーカタログとお財布の中身を確認する作業が続いている。

8つ目の峠は距離4km、平均斜度4.1%と、この日現れるヒルクライムの中では緩やかなプロフィール。ここまで150km走り続けてきたにも関わらず、意外と踏めるもので最も気持ちよくヒルクライムできたというイメージはある。実際のデータをみるとタレているので、アドレナリンの力は強いと感じざるを得ない。

しかし、アドレナリンの力をもってしても9つ目の峠は辛いものだった。距離は約7km、平均斜度は3.9%なのだが、ごく僅かな平坦と下り区間のせいで、8〜12%の斜度が隠されてしまっている。私を含め周りのライダーはただ前を進むだけの生物のようで、足を止めそうになりながらピークへと転がりこむ。しかし、最後の峠をクリアした周りのライダーたちは喜びに満ちていた。

斜度15%はあるんじゃないかと思うほど厳しい上り坂でした斜度15%はあるんじゃないかと思うほど厳しい上り坂でした
登りを全て制覇したときの充足感は非常に高い登りを全て制覇したときの充足感は非常に高い フラムルージュも用意されており「最後のひともがきしなければ…!」と思ってしまうあたりミーハーなレースオタクなのだろうフラムルージュも用意されており「最後のひともがきしなければ…!」と思ってしまうあたりミーハーなレースオタクなのだろう

全員でまとまって走るチームが多い印象全員でまとまって走るチームが多い印象
完走賞はメダル。一生の思い出になることは間違いない完走賞はメダル。一生の思い出になることは間違いない レース後は大盛りパスタを頂き、体力を回復させるレース後は大盛りパスタを頂き、体力を回復させる


ラスト20kmの下り基調の平坦路は、メンバーが多いチームのトレインにお邪魔させて貰い、快速楽々ペースでチェゼナーティコまでワープ。海岸脇に設置されたフィニッシュゲートが現れたときの安堵感と達成感はこの上ない経験で、私の記憶に深く刻まれた。

渾身のガッツポーズでフィニッシュした後は、美女にメダルを掛けて貰えるなんて天国かここは。加えてパスタパーティーというアフターエイドが用意されており、大盛りパスタとパニーニ、アイス、ビール、ワインを頂くことができるのだ。至れり尽くせりとはこのことだ……。フィニッシュした幸せを感じるイベントはそう無い。

ちなみに走行時間は、自前のサイコン読みで10時間57分。なんじゃこりゃというタイムだが、伸び代はたっぷりあるということにしておこう。ノヴェ・コッリはあくまでレースであり、タイムを競うもの。身近な例で例えるとフルマラソンだろうか。完走することもまず目標となるし、タイムを縮めることももちろんそう。強くなればトップ集団で争ってもいいだろう。どのレベルの人でも己との闘いに挑めるチャレンジングな大会だ。

レース翌日はパンターニの聖地巡りは鉄板だろうレース翌日はパンターニの聖地巡りは鉄板だろう
パンターニ博物館もイベント会場の近くなので、チェゼナーティコに訪れた際はぜひパンターニ博物館もイベント会場の近くなので、チェゼナーティコに訪れた際はぜひ
そして、今回走ってタイムアップできる要素はいくつか見つけた。コースが毎年同じであること、経験を積むことでタイムアップしやすいはずだ。そして、エイドステーションでダラダラ過ごさない。この経験を持って再び挑みたい。

さて、レース翌日はチェゼナーティコの観光は必須だ。なんていってもここはマルコ・パンターニが生まれた地であるため、聖地巡礼は欠かせない行事といっても良いだろう。ノヴェ・コッリのフィニッシュ地点レヴァンテ公園近くにマルコ・パンターニ像が天に向かってペダリングしているため、是非見に行こう。サイクリストが記念撮影をしているため、すぐに見つけられるはずだ。

パンターニとの記念撮影を終えたら、チェゼナーティコ駅付近にあるパンターニ博物館に行ってみるのも良いかもしれない。5ユーロでチケットとポストカードが貰えるのでお得だ。幼少期に使用していた自転車やジャージ、全盛期の機材、パンターニを描いた絵画など沢山展示されており、パンターニファン垂涎の空間となっている。ノヴェ・コッリに参戦した場合は是非訪れてほしい。

前編はこちら→リンク

Text & photo : Gakuto Fujiwara
Special Thanks : Selle Italia , Nichinao Shokai
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