9つの峠という言葉がそのまま大会名となっているグランフォンド「ノヴェ・コッリ」。今年で48回目、世界最古の歴史を誇る長距離ロードレースにシクロワイアード編集部の藤原が挑んできました。距離205km、獲得標高3840mというハードコースを完走することはできたのでしょうか。



レース前日は大規模イベントのような大混雑具合。写真は若干空いている瞬間を狙っているが、ピークは人がいすぎてこのような写真は撮れないレース前日は大規模イベントのような大混雑具合。写真は若干空いている瞬間を狙っているが、ピークは人がいすぎてこのような写真は撮れない
様々なブランドの出展ブースが並ぶ街路を埋め尽くす人、人、人。日本であれば新宿や渋谷、原宿の竹下通りほどの混雑。もしくはサイクルモードのピークタイムぐらいといえば想像できるだろうか。押しくら饅頭状態ではないにしろ、開いてるスペースを見つけながら歩かなければ先へは進めない状態だ。

ここはイタリア・チェゼナティコのある街路。CW編集部員のフジワラは、混雑状況を目の当たりにし頭をハンマーで殴られたかような強い衝撃を受けていた。曲がりなりにも東京都民であるため、ただの混雑ならばどうってことはない。

ただ、この街路にいる人のほぼ100%がグランフォンド「Nove Colli Selle Itaria(以下、ノヴェ・コッリ)」に参加するサイクリストだということ。日本のイベントで、しかも高い前日の受付のために、これほどの人数が集まっているところを見たことがない。サイクルスポーツの本場であるヨーロッパの大規模大会がこれほどとは…と驚いている。

大会のタイトルスポンサーであるセッレイタリアのブースではidmatchを開発したバルトリ博士の姿も大会のタイトルスポンサーであるセッレイタリアのブースではidmatchを開発したバルトリ博士の姿も 美人なキャンペーンガールたちもいて、まさに大イベントのよう美人なキャンペーンガールたちもいて、まさに大イベントのよう

ジロ中継を観賞するためにカフェの前で足を止めるサイクリスト達ジロ中継を観賞するためにカフェの前で足を止めるサイクリスト達
ノヴェ・コッリとは、サイクルスポーツの本場であるヨーロッパに於いても「クイーン・オブ・グランフォンド」と呼ばれるほど、最も歴史があり、開催規模が大きく、高い人気を誇る長距離ロードレースだ。もちろん成績を争う先頭集団以外はサイクリングペースだが、走行時間と順位が付けられるため、己のエンデュランス能力を発揮するための本番レースであることは間違いない。

具体的な数字で表現すると、参加人数は1万2千人、最も早く定員が埋まってしまった時のタイムは4分。これだけで超人気大会であることはわかるはずだ。今年で48回目というヨーロッパで最も古い大会であり、毎年ほぼ変わらない走行距離205km、獲得標高約3800mというハードなコース設計が特徴。このレースで勝利することがステータスとなるほど格式が高い。

日本では見たことのない補給食ブランドがブースを出しており、興味本位でついついノヴェ・コッリ用スペシャルパッケージなるものを購入してしまった。カフェ/バーのテレビにはジロが放送されており、街路にあふれるほどの人がジロの行方を見守っている。私も人垣の一部となってみる。

ノヴェ・コッリともなると新聞調のフリーペーパーも用意されるノヴェ・コッリともなると新聞調のフリーペーパーも用意される
オフィシャルガイドブックには1万2千人の参加者全員の名前が記されている。自分の名前を見つけた時の嬉しさは中々言い表せられないオフィシャルガイドブックには1万2千人の参加者全員の名前が記されている。自分の名前を見つけた時の嬉しさは中々言い表せられない 日本では見たことのないブランドの補給食を一通り以上揃えてみた。味はフルーツのやつが非常に好印象日本では見たことのないブランドの補給食を一通り以上揃えてみた。味はフルーツのやつが非常に好印象


ちなみにノヴェ・コッリ前日受付の日は、モンテ・ゾンコランを登る第14ステージが行われた日。結果はレースレポートでお伝えの通り、クリストファー・フルームが渾身のアタックを決め独走優勝を果たしている。

フルームがアタックした瞬間の反応は様々。行け!行け!と応援する人がいる傍らため息をつく人も。最終盤にサイモン・イェーツが追い上げてきた時は、歓声を上げる人もいれば、固唾をのんで展開を追う人も。意外にもパブリックビューリングの熱量は日本も変わらないし、面白い展開になればみんなソワソワしだすところも同じ。

ホテルに戻り、ゼッケンとチップが入っているナップザックをひっくり返してみると、これでもか!と思うほどの参加賞が沢山出てくる。夕方に購入した補給食セット、ジャージ用洗剤、ツナ、ノヴェ・コッリ雑誌…!参加賞のスケールが大きすぎるのも異国情緒ということで…。それにしても20ユーロ分の補給食を買ってしまったんだが?

サイクリストの朝は早い。この日駆るマイバイクの写真を1枚…宿泊したホテルにてサイクリストの朝は早い。この日駆るマイバイクの写真を1枚…宿泊したホテルにて
雑誌も非常に内容が充実しており、コンタドールやバッソ、ダニエル・オスら有名選手のコメントやインタビューが掲載されている。ノヴェ・コッリに関わる数字、参加人数や国別参加人数などがレポートされていたり、参加者全員の名前が記載されていたりと、読み応えバッチリ。

ちなみに日本からは4名。1万2千人の中から自分の名前を見つけたときは、一人でニヤリとしてしまったことを白状しておこう。確かにノヴェ・コッリに参加するんだという実感はここから湧いてきたかもしれない。

さて、いよいよノヴェ・コッリ当日。朝6時の出走時間に間に合わせるため、1万2千人がスタート地点へと移動するため、周辺道路はサイクリストで埋め尽くされている。ペースはのんびりであるが密集度的には既にスタートしてしまったかのよう。交差点ごとにサイクリストたちが右から左から集合してくるため、集団の密度は上昇していく一方。私のテンションもどんどんと上がっていく。

チェゼナーティコは運河がある港町。様々な帆船が展示されているチェゼナーティコは運河がある港町。様々な帆船が展示されている
自分に割り振られたスタートカテゴリーに位置にたどり着いても、スタート地点は100m以上先。MCが先頭付近で盛り上げてくれているが、遠すぎてよくわからない。後ろを振り返ると無数の人。恐らく最後尾がスタートするまで1時間以上かかることは簡単に想像できるほど。上を見上げるとヘリコプターが低空飛行を続け、我々の頭上を飛び続ける。なんとノヴェ・コッリはRaiの中継が入るというのだ。目の当たりにする物全てが想像を超えるスケールで、開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。

スタート時刻は6時なのだが、号砲が鳴らされたのは5時58分。イタリアでスケジュールが押すことは当然のように語られるものだが、まさかの前倒しとは。こんなこともあるんだ。クリートをペダルに固定した途端から集団はレースペース。集団の圧に気圧されてしまったら、取り残される気がして必至にグループに食らいつく。

いきなり40km/hの世界。1%もない下り勾配では50km/hにも上るハイペースにも関わらず、空いたスペースから続々と選手たちが集団前方に上がってくる。「どんだけ強いのよ、もう」なんて思ってたら、コーナーの立ち上がりで千切られ、「まあ、そうなるわな」と思いながら向かい風の中一人旅に。

スタートゲートは遠くに見える赤いバルーンの先。非常に遠いスタートゲートは遠くに見える赤いバルーンの先。非常に遠い
さすがは1万2千人規模の大会、あっという間に後続が追いついてきてくれて、ダメージは最小限に留められた。この先200km以上走らなければならないのだから、テンションだけで突っ込んでしまうと後々が悲惨なことになってしまうのは明らか。次に乗ったトレインは40km/hには達しない速度で運行されていたので、なんとか食らいついていくことができる。

スタートウェーブが分けられているかのように集団が綺麗に分裂している。速い集団に乗れない脚力の人たちが揃いペースも安定しているため、自分にあったトレインを見つければ、序盤28kmの平坦区間を快適に過ごすことができる。30秒ほど前には別の集団がいるが、追いつけると思って集団を抜け出してはいけない。私みたいにどうせ後ろの集団に引き戻されるだけなのだから。結構、消耗した。

もし集団のペースに満足できなくても問題はない。後方スタートの剛脚ライダー率いる特急列車が1、2回は追い越してくれるため、タイミングを合わせて飛び乗り乗車をしてしまえば良い。が、これは簡単にできる脚力の話があれば、の話。馬鹿みたいに前を追ってしまった私が乗り換えることはできず、快速列車に乗ったままで登りへと差し掛かる。ここまで距離約29km、平均速度37.8km/h。レースにはほぼ出場しない私には異次元のペースだった。ちなみにStravaのKOMは平均速度46.2km/h。

最初の上り坂で写真撮影をしていたら、コース復帰できないほど大きな集団がやってきた最初の上り坂で写真撮影をしていたら、コース復帰できないほど大きな集団がやってきた
ノヴェ・コッリというイタリア語は「9つの峠」という意味を持ち、コース上に9つの峠が現れるレイアウトとなっている。数に含まれれないピークがいくつもあることについては見て見ぬふりしておこう。

1つ目に設定された峠はベルティノーロとポレンタへの登り2段構え。合計で7.5kmの距離だが、途中3kmの下りを挟むため4.5kmがヒルクライムという計算となる。斜度は全体で2.9%だが、これは下りを含めての数値。所々10%を超える場所もあり、1発目からハード。

ふと後ろを振り返ると見たこともない絶景が待ち受けていた。緩やかな斜面に広がるぶどう畑とその先の平野部に広がる市街地。標高が200mにも満たない高さで、開けた視野を得られる自然と市街地のコントラストをひと目に入れられる場所は首都圏では殆ど無いのではないだろうか。ヨーロッパの自然というとアルプスやドロミテのような壮大な山々をイメージしがちだが、都市生活の近くにある自然でも十分に美しい。

市街地を抜けていくと住民たちが応援してくれる市街地を抜けていくと住民たちが応援してくれる
さて、ここで問題が発生。気持ち良い速度で走れている集団からドロップし仕事のために写真撮影するか、そのまま楽しく乗り続けるかの2択を迫られている。「止まれるような場所もないし」と誤魔化しながら走行を続けてきたが、退避できる場所を見つけてしまい、残念ながら仕事としてしまった。いつかは気持ちよく走り続けるライドができる状態で参加したいとここで決意した。

いざライドに復帰しようとすると集団が途切れない。1分、2分と待ってみれども、人の波は引くことをしらず次々と押し寄せてくる。「これが参加人数1万2千人のリアルか…どうやら一人旅になることはなさそうだ…」。人の行列が少し途切れたところですかさずライドに戻る。

強い日差しを受け最初の峠をクリアする強い日差しを受け最初の峠をクリアする
ベルティノーロの町中を走る登りでは、既に7時となっていたこともあり住民の方たちが沿道に出て応援してくれるので、気分はグランツールレーサー。序盤で元気が有り余っているため、集団のスピードも速く、上り坂にも関わらず20km/hほどでぐんぐんと丘を登っていく。気持ちよく走っていると、あっという間に1つ目のピークへとたどり着いてしまった。これがアドレナリンというものか。

ピークには、プロレースのKOMさながらのスポンサーロゴが掲載された立派なゲートが待ち構えており、さらにテンションが上昇していく。「今、イタリアを、格式高いレースを走っている!」という実感が強く植え付けられ、下りへと差し掛かっていく。前編はここまで。残り8つの峠は後半に持ち越し。お楽しみに。


Text & photo : Gakuto Fujiwara
Special Thanks : Selle Italia , Nichinao Shokai
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