「九州シクロクロス、はじまります」そんな大会ウェブサイトのメッセージに、ぐっときたクロッサーも少なくないと思う。「気になるなら、行ってみようよ、九州へ(字余り)」ということで、1月15日(日)に開催された第2戦原鶴へと弾丸ツアーで参加してきた。そんな一日のレポート。



筑後川と原鶴温泉すぐの会場。スピーディーでコンパクトなフラットコースだった筑後川と原鶴温泉すぐの会場。スピーディーでコンパクトなフラットコースだった (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com
会場への橋はアイスバーン。「九州イコール暖かい」というイメージを持っていたけれど...会場への橋はアイスバーン。「九州イコール暖かい」というイメージを持っていたけれど... (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.comうっすらと雪に包まれた会場うっすらと雪に包まれた会場 (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com


福岡空港からクルマで1時間と少し。鳥栖ジャンクションから大分道を日田方面に向かい、遠くに見えていた山並みが迫ってくると、カーナビがセットした原鶴温泉はすぐそこと教えてくれた。誰かが「福岡の良いところは、中心街から走りやすい山まで近いところ」と言っていたが、本当にその通りだ。一応東京(の端っこ)に住んでいる自分としても、この環境はとても羨ましい。

会場は九州第一の大河、筑後川に面した「美人の湯」原鶴温泉の目と鼻の先。つまりレース後の(最高な)ひとっ風呂は約束されていて、それだけでも気分が上がるというもの。そもそも羽田から福岡までは1時間半+会場まで1時間なのだから、関東から東北、もしくは中京地区までクルマ移動するよりも、体力的な遠征のハードルはずっと低かった。

朝一の飛行機に乗り、福岡空港から自走してきた方。「一番スタイルあったで賞」を進呈したい朝一の飛行機に乗り、福岡空港から自走してきた方。「一番スタイルあったで賞」を進呈したい (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com女子レースで優勝した和間さん。普段はブルベに没頭しているそう女子レースで優勝した和間さん。普段はブルベに没頭しているそう (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com

時間が経つにつれてコースの雪も溶けてきた。重たい泥がレースを難しくする時間が経つにつれてコースの雪も溶けてきた。重たい泥がレースを難しくする (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com
なんとなく「九州=暖かい」というイメージを持っていたものの、会場一体は福岡県内で一番冷え込む場所だそう。各地に大雪を降らせた低気圧もぶつかり、朝一番の会場はうっすらと雪化粧するほど、そして福岡から自走してきた人のスポークが氷でぶっとくなるほどに寒かった。けれど、寒かったり雪が降ったりするほどに楽しめるのは、全国共通でクロッサーのお約束(笑)。

会場に到着して受付をすると、初めましてにも関わらず「わざわざ東京からありがとうございます!」という声を有難くも頂戴してしまった。もちろん取材の旨を伝えていたこともあるけれど、それ以上の温かさで迎えてもらえたし、それは他に九州以外から参加した人も同様に感じたようだ。

AJOCCレースではないものの、それに準じた8カテゴリーで毎戦行われる九州シクロクロス。カテゴリー縛りが無いので、脚に自信があればC1に出ても良いし、その逆だってしかりだ。9時の第一レース(C3、レディース)に始まり、C2、C1、そしてキッズと4レースに凝縮されているため、最後まで応援しても13時半。遠征してきた身からすれば、その後の時間を観光に回せるのが嬉しい。

晴れ間がのぞく中、C2レースがスタート晴れ間がのぞく中、C2レースがスタート
C1に出場して撃沈した私。次回はもう少し走れるようにしておきます...C1に出場して撃沈した私。次回はもう少し走れるようにしておきます... (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.comC1で優勝した柴田健太郎さん。速かったですC1で優勝した柴田健太郎さん。速かったです (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com


原鶴のコースは誰でも走りやすい平坦路ながら、微妙なキャンバーやライン選びがキモになる泥区間など、攻略しがいがあって楽しいスピードコースだった。距離が短く周回数が多くなるので、ギャラリーにとっては応援しやすいのも◎だ。私はC1に参加させてもらったものの、日頃の練習不足が祟って撃沈。しかしそれでも九州の自転車仲間はもちろん、初対面の方々からも応援してもらい、60分間をとても楽しいものにすることができた(次はもう少し走れるようにしたい…)。

会場で気づいたことは、参加人数60名ほどとこれから伸び盛りのイベントにも関わらず、ちゃんとMCがいて、卑弥呼さま(邪馬台国がこの地にあった説から)もいて、すぐにリザルトが出て、応援やカフェ、メーカーのブースもあって、女性とキッズレーサーの走りが熱く、そして各レースのゴール後には健闘を讃える握手があったこと。規模そのものは関東や関西に及ばないけれど、参加者目線で言えば違いはそれくらい。一つのカルチャーとして根付くために、無いものは無い。

発起人である岩崎正史さん(正屋)発起人である岩崎正史さん(正屋) 会場には朝倉市の第34代卑弥呼さまが来場会場には朝倉市の第34代卑弥呼さまが来場

MTBシューズが豊富なノースウェーブがブースを出展MTBシューズが豊富なノースウェーブがブースを出展 初心者にもわかりやすい解説で会場を盛り上げてくれたMC初心者にもわかりやすい解説で会場を盛り上げてくれたMC


さて、今シーズンから本格的に動き出した九州シクロクロス。その第一歩は昨年2月にここ原鶴で開催されたプレ大会で、そこから一気に4戦まで増強し正式スタートにこぎつけたという。その仕掛け人は福岡の有名ショップ「正屋」を率いる岩崎正史さん。ここに仲間や、MTBレースを開催している「オフロードバイシクル九州」などがコラボレーションし、今年のキックオフに繋げた。

「きっかけは”冬場に仲間と自転車で遊ぶ場所が欲しいよね”と話したこと。今関東や関西で盛り上がっているシクロクロスを一つの文化として九州に根付かせたくて始めました」と岩崎さん。実は15年ほど前にも「九州シクロパーティー」という名称でレースを開催しており、今年JCXレースが行われた下関もそう遠くない。そのため開催に至る下地はあったという。今後はあくまでローカルレースとして地道に育て、機が熟せばAJOCCレースにしていく考えもあるそうだ。

走り終えて満足げな将来のエリートレーサー(になってほしいな)走り終えて満足げな将来のエリートレーサー(になってほしいな) キッズの笑顔、最高ですキッズの笑顔、最高です (c)Atsushi Tanno/atsushitanno.com

地元の「tas coffee」。美味しいコーヒーや自家製小豆のお汁粉で暖めてくれた地元の「tas coffee」。美味しいコーヒーや自家製小豆のお汁粉で暖めてくれた 朝倉の一部地域で江戸時代から続くそうな郷土料理「蒸し雑煮」朝倉の一部地域で江戸時代から続くそうな郷土料理「蒸し雑煮」

これからの発展に期待してポーズ!お疲れ様でしたこれからの発展に期待してポーズ!お疲れ様でした
東京や大阪と違い、まだまだ各ショップ間の垣根が高く、ユーザー同士の交流が少ないという九州。#KCX(九州シクロクロスのハッシュタグ)はそうした壁を取り払う要素に十分なり得る存在だ。これから2月12日(日)には芦屋で、それ以降には新興著しい福岡アイランドシティで第4戦が予定されており、特に第4戦はシクロクロス東京にも似たロケーションでの都市型レースとなるそうで、大いに期待したい。

遠征の魅力はレースを楽しむことはもちろん、知らない土地の空気や食、人に触れること。いざ参加を決めてしまえば、関東関西からの参加ハードルも驚くほど低い九州シクロクロス。この記事が参加への後押しとなれば良いなと思いつつ、レポートを締めくくりたい。

text:So.Isobe
photo:Atsushi Tanno/atsushitanno.com,So.Isobe