ガーミンから登場した世界初となる自転車用リヤビューレーダーモニター「Varia J」。取り付けから、使用時に至るまでのインプレッションをお届けしよう。朝倉誠さん(Bicicletta Di Mattino)によるレポートで紹介します。



まずは概要からお伝えしよう。「Varia J リアビューレーダー」は後方から接近する車両(車、オートバイ、自転車)をレーダーにより感知し、その様子をライダーに伝える画期的なデバイスだ。対象が車である場合は最大140m後方に迫ると、Varia Jのディスプレイユニットもしくはサイクルコンピューター(EDGEシリーズ)が音や光で知らせてくれる。また同時に8台までの車両を検知することができ、後方に迫る状況を把握することができるレーダーである。製品紹介記事は登場時のレビューにて。

ガーミン Varia J リアビューレーダーセットガーミン Varia J リアビューレーダーセット
―取り付け
レーダーとディスプレイユニット本体にある取り付け部分は、ガーミンのEDGEシリーズで見慣れた形状。マウントもEDGEシリーズのそれに近い。普段からガーミンの製品を使用しているユーザーならば、90度捻って取り付けるのだろうと推測できるはずだ。

レーダー部分はシートピラーに、ディスプレイユニットはハンドルバーやステムに取り付ける。レーダーをシートピラー以外の部分、例えばシートステイなどに取り付けることはレーダーのサイズを考えると難しい。なお、写真のようにエアロ形状のシートポストであっても対応するマウントが同梱されているので取り付けは可能だ。

Varia J取り付け時のイメージVaria J取り付け時のイメージ 翼断面形状のシートピラーにも対応する翼断面形状のシートピラーにも対応する EDGEシリーズ(25Jを除く)よりも小さく、取り付け位置の自由度は高いEDGEシリーズ(25Jを除く)よりも小さく、取り付け位置の自由度は高い (c)Makoto.Asakura今回は丸形状のシートピラーに対応するマウントを使用した。シートピラー外径により2種類のアダプタを使い分けて、レーダーをバイクに装着する。取り付けはゴムバンドでピラーに括りつけるだけで非常に容易だ。取付角度は一定だが、レーダーの照射範囲から実際の使用にはそれほど問題無いだろう。

ただし、付属しているマウントでは上下方向の角度を調整することができないため、シートピラーが地面に対して垂直に立ったようなタイプのTTバイクでは上手く角度が出ない可能性があるので注意が必要だ。

レーダーをバイクに取り付けいざ走行してみると、レーダー本体が幅広く出っ張っており、わずかながら太ももの内側に接触してしまうことがあった。レーダーの取り付け位置が下方になると当たりやすいと考えられる。サドルバッグと併用する場合には比較的下方に位置せざるを得ないため、やや接触が起きる方もいるだろう。ただし、これは個人差があるはずだ。筆者の個人的な感想ではペダリングしていると、5分後には接触に気が付かなくなった。ただ、最初は気になってしまうので、今後のモデルではよりスマートなボディになっていることを期待したい。

ディスプレイユニットは非常にコンパクトサイズという印象を受けた。しかし、的確な情報量と視認性を得ることができ、この大きさで不自由なく使用可能だ。写真で見るとEDGE810Jくらいあるのではないかとイメージしていたが、実際にはEDGE500Jより小さいくらい。実測値は6.0×3.4×1.9cmというサイズ。消しゴムと同じくらいの大きさと言えばわかりやすいだろうか。

―ディスプレイは専用ユニットか、EDGEか

Varia J本体(右)と、EDGE520J(中央)、ユニットディスプレー(左)とのサイズ比較Varia J本体(右)と、EDGE520J(中央)、ユニットディスプレー(左)とのサイズ比較 ディスプレーユニットセットの付属品内容ディスプレーユニットセットの付属品内容 Varia Jでは専用のディスプレイユニットもしくは、サイクルコンピューターEDGEシリーズをモニターとして使用することができる。

Varia Jのディスプレイユニットは、LEDが鮮明に光り、液晶パネルでは表現できない明るさに発光するため、非常に見やすい。加えて、ディスプレイはVaria Jからの情報のみを簡潔に表示するので、サイコンのように他の情報と見間違える心配はない。このメリットは捨てがたいだろう。

EDGEシリーズをディスプレイユニットとして使用した場合は、レーダーが車を感知するとEGDEからビープ音が鳴る機能が備えられており、非常に便利。トンネル走行時にビープ音で車列が迫るかどうかを確認できるということは、大きなメリットだろう。EDGEシリーズをお持ちの場合にはレーダーのみの導入が良いだろう。

上記どちらを選択するにしても、取り付け位置はアウトフロントマウントを利用することがオススメである。ハンドルバーから突き出た場所に装着されていれば、視線移動だけでディスプレイを確認しやすいからだ。実際に後方を見るまでは体を動かさなくて良くなることは大きなメリットだろう。

―インプレッション

早速、Varia J(レーダー)の電源をオンにする。スタンバイができ次第、レーダーには次々とLEDが点灯し、後方から迫る車両を知らせてくれる。初めてのことに少々感動を覚えた。ディスプレイユニットとのペアリング作業が必要なのではないか?と思っていたが、ディスプレイユニットの電源オンから数秒後には、自動的に連携し使用可能な状態となった。

EDGEシリーズと連携させる際には、EDGE側のセンサー追加設定より”レーダー”という項目が追加されているのでそこで行う。一度追加して以降、レーダーとの接続が行われていない場合に”レーダー未検知”と表示もされる。

専用のディスプレイユニットはLED発光によって、EDGEシリーズは右端にディスプレイユニットのような表示によって、車両接近を知らせてくれる専用のディスプレイユニットはLED発光によって、EDGEシリーズは右端にディスプレイユニットのような表示によって、車両接近を知らせてくれる (c)Makoto.Asakura
Di2やスピード/ケイデンスセンサーとペアリングする際と似た作業で、連携を行うDi2やスピード/ケイデンスセンサーとペアリングする際と似た作業で、連携を行う (c)Makoto.AsakuraEDGEがレーダーと連携していない時は未接続であることを知らせてくれるEDGEがレーダーと連携していない時は未接続であることを知らせてくれる (c)Makoto.Asakura


各機器のペアリングを確認した後、いよいよ走り出す。リアレーダーというものを初めて体験するので、実際に活用できるものなのだろうか?と疑問を持っていた。走り始めた当初は、前方後方などの状況の把握に加えて、ディスプレイユニットから得られる複合した情報に少々混乱したのは事実。

走行に慣れてくると、情報を頭のなかで整理し、実際の状況把握の動作を行いながら非常にスムーズに走行できるようになってくる。素晴らしさをジワリジワリと感じることとなった。

後方から迫る車両を検知することが可能だ後方から迫る車両を検知することが可能だ ※写真はイメージプレッシャーが大きいトンネル走行時は心強い味方となるだろうプレッシャーが大きいトンネル走行時は心強い味方となるだろう

交通量、路上駐車が多い都市圏といったシチュエーションで活躍するだろう交通量、路上駐車が多い都市圏といったシチュエーションで活躍するだろう 追い越し時は前方と後方ともに注意が必要だ追い越し時は前方と後方ともに注意が必要だ


ツーリング中のトンネル通過でも便利と感じる。通常、公道を走行している際、後方から何らかの物体が迫ってくると、物体が発する音や空気の波、風切り音などを聞き分け、その物体がどのような大きさであり、どのくらいの速度で近づくかを類推するだろう。そして、次にどのような行動を起こすか判断する。

しかし、トンネルは勾配が付いていることも多い。その場合には車との速度差が大きくなり、後方から車が急速に迫るため、対処する時間が短く危険性も高くなる。万が一、衝突した際には大きな衝撃を受けることになる。トンネルを走行する場合のプレッシャーは大きいはずだ。最大限の注意を払うことになるトンネルだが、車のエンジン音はトンネル内で共鳴してしまい、前方からの接近なのか後方からなのかを聴覚で理解することが難しい。

そのような状況で”身構える”時間を作れるVaria Jは、ビギナーからエキスパートまで幅広いライダーにとって”あったら便利”な商品だと感じる。加えて、聴覚障害を持つ方に新たな交通情報を提供できるのではないだろうかと期待する。

加えて、前方の路面が荒れているケース、片側一車線道路、あるいは工事中などの相互通行に際して追い抜かれるケースでは大変に便利だろう。

気持ちよく走れる場合は気が緩んでしまいがち。そんな時こそVaria Jが役立つ場面だ気持ちよく走れる場合は気が緩んでしまいがち。そんな時こそVaria Jが役立つ場面だ
郊外の道路では一段と活躍するだろう。車両が沢山走っている交通状況よりも、殆ど通らないような状況でのほうが便利とも感じる。気持ちの良く走れる道路ではついつい気が緩んでしまう。景色に気を取られている時に、Varia Jは後方から近づいてくる車両をいち早く察知し、音で知らせてくれるため、再び気をつけることができるのだ。

昨今は車の環境対策もしっかりされており、ハイブリッド車のエンジン音はとても小さい。エンジン音の大きな車や大型車でない限り、接近していることを察知できないケースもしばしば起こる。

130m後方の状況は度々振り返って見続けないかぎり把握できない。自分の身体、バイクによって発生する風切り音によって、周囲の音が聞き取りにくいという可能性もある。特に、峠の下りでは周囲の音が聞こえにくいケースが多い。筆者は、車が真後ろに近づいているけれど、振り返らないと気が付かなかったことは何度となくあり、ヒヤリとした経験もある。そんな時、Varia Jはバックミラーとなり、ライダーに変わって常に後方へ目を光らせてくれる。これならば、自分のペースで落ち着いて峠道を下ることが下れるのではないだろうか。

―レーダーの精度をチェック

Varia Jのレーダーは40°の角度で後方へ照射されるVaria Jのレーダーは40°の角度で後方へ照射される (c)いいよねっと本体からレーダーは40度の角度で照射されるため、複数の通行帯がある道路では追い越し車線の車両も概ね検知する。自分が車線の左端へ極端に寄っている場合は、レーダーが追い越し車線まで届かないことがあったが不便とは感じない。

Varia Jは信号待ちでも非常に役に立ってくれる。信号待ちで自転車が先頭で待つ場合、後方に車両が連なるケースがある。幹線道路では特に多いだろう。こちらが停止していても、後方から迫る車両はディスプレイユニットに表示されるので、何台くらいの車両が連なっているのか把握することが可能だ。信号が青になった後、どのようにして走行をすべきかをおおよそ計画することができる。

―最後に総括

全く新しい物を初めて見るとき、疑いの目を向けてしまうというのは少なからずあるだろう。大きさは?重さは?便利なの?電池はどのくらい持つの?などとついつい粗探しをしてしまいがち。今回も例外ではなかったのだが、実際に使用してみると、とにかく使用上のメリットを感じさせられた。

ディスプレイユニット、レーダーともに満充電から自然にスイッチが切れるまで、5時間以上使用することができるので、通常のライドであれば問題ない範囲だろう。それ以上の時間に渡って走行する場合は、河川敷など後方から迫る車両に気を使わなくていい場所では電源をオフにしたり、途中で充電することも可能だ。また、レーダーと連携して使用しているEDGE側の電池消耗に関しては、通常時と大きな違いがある様子はない。

実際に使用してみて驚いたことに加えて、”外して感じる不安”にも驚かされた。余りにも機械に依存することは良くないが、安全を維持するために大きなメリットがあるし、ビギナーが公道を走行する際に感じる恐怖を少しでも緩和する効果があると言える。走り慣れているライダーにとっては、より安全走行を可能にしてくれるだろう。

text:Makoto.Asakura(Bicicletta Di Mattino
リンク