483gの新SiSL2クランクにオリジナルヘルメット　「これぞキャノンデール！」な逸品たち

ロード、MTBとユニークで独自視点の2013年製品をリリースするキャノンデール。今回はちょっと細かな視点で見た、これまたキャノンデールらしい新製品群をいくつか紹介していこう。

日本MTBナショナルチームの監督も務めた小笠原崇裕さん、MTBの試乗を率いて華麗な走りを魅せる ブランドキャンプを盛り上げてくれた鈴木真理選手（キャノンデール・スペースゼロポイント）。現在ケガにより療養中


チェーンリング全てを一体成形、変速精度をアップした新SiSL2

話題の一体型チェーンリング、SiSL2。キャノンデールの独立独歩を象徴する13年の逸品

まずは、ちょっと前にネット上でも話題になった、キャノンデールの新型クランクセット、『SiSL2』の紹介からだ。
「とある有名パーツメーカーは、クランクのアーム数を５本から４本に減らしましたが、キャノンデールはその反対、倍に増やして進化させました」という前口上で紹介された、新型のクランク＋チェーンリングのセット『SiSL2』。その言葉どおり、10本のアームで構成されるスパイダー状のチェーンリングである。

中空になっている軽量なBBスピンドル部とも噛み合う一体型チェーンリング 10本あるスパイダーアーム、その裏は削られ、剛性と軽さの最適なバランスを追求している


SiSL2の大きな特徴は、2枚のチェーンリングが1つのアルミピースで成形された一体構造であること。しかも、クランクはこれまでの削り出し方式ではなく、より強度と剛性を上げられる3次元鍛造での成形を行っている。
そして、スパイダー状のアームはクランクではなくチェーンリング側に付く。これらスパイダーアームの裏側は細かく削られ軽量加工を施している。これも一体成形だから可能になる、アイディアと技術力の賜物だ。

2枚のチェーンリングからスパイダーまで全てを一体にした理由は、全体の構成精度を上げることで変速性能やパワー伝達性も上げるため。Di2との組み合わせでは、スパスパとした小気味好い変速性能が報告されている。もちろんフィキシングボルトなどを使わないので、軽量化にも大幅に貢献。チェーンホイールセットとBBスピンドルの合計重量は483g。超軽量である。

鍛造一体整形を使用した新SiSL2クランク。高剛性と軽量化に特化できた 全てのパーツをBBスピンドル周辺の一つの嵌合で組み合わせるというシステム


また、チェーンリングは、クランクにではなく、BBスピンドルそのものと組合わさる仕組みになっている。これはそれぞれの部位に必要な機能を特化させるためのものだ。
つまり、こういうことである。通常の、クランクにチェーンリングを取り付けるタイプは、たとえばクランクがしなるとチェーンリング自体も動いてしまい、変速性能に影響が出る。
それに比べ、BBスピンドル部で結合するこのホログラムSiSL2クランクとチェーンリングの組み合わせは、クランクの剛性に左右されない変速精度を持たせられる。チェーンリングは変速のために、クランクはパワー伝達のために、それぞれの特性を極められるのである。

このSiSL2のクランクセットを装備するのは、スーパーシックスEVOシリーズの最上級完成車、『スーパーシックスEVO ハイモッド デュラエース』（税別価格：749,000円）だ。歯数は、標準で53/39Tが装備され、50/34Tのコンパクトタイプも用意されている。ちなみにデザインの源となったのは、クルマのF1・マクラーレンのマシンに装着されたホイールだったのだそうだ。

より安全に、軽量に。キャノンデールオリジナルのヘルメットが発売

アメリカでは昨年より発売されていたキャノンデールブランドのヘルメットが、2013年より日本でも発売されることとなった。そのコンセプトは、「より安全に、軽量に」。

新型ヘルメット「サイファー」。同クラスの他社製ヘルメットよりも軽い重量を誇る

サイファーを上から見る。空気の流れを最大限に配慮した穴の位置と数だ ヘルメット界ではさまざまな技術で安全への気配りを形にするが、キャノンデールは2種類の固さの発泡スチロールを、一方をコーン状にして組み合わせる仕組みを採用。

転倒時の衝撃を、まずは柔らかなスチロール自体で受け止め、さらに内側にある固い層のコーン形状が変形しながら受け止める。加えて、ナイロンとアルミのフレームを内蔵することで、粉砕を防ぎ全体強度を上げている。

それら安全性能を、キャノンデールが得意とする『軽量性』で実現したのが、2013年の新作ヘルメット「サイファー」（価格：19,950円）だ。重量240gと、同程度に安全な他社のヘルメットに比べても軽さと放熱性はかなりの高レベルにある。

ヘルメットのコーン状の2層構造が外部からの衝撃を吸収する

他には、ロングライドに適した「テラモ」（11,550円）、流線型がスタイリッシュな「ライカー」（8,925円）、後頭部までしっかり包む「ラディウス」（6,300円）、街乗りライドにうってつけの「クイック」（4,935円）、そしてハイクオリティな子供用「クイック キッズ」3,900円という、すべてのライドに対応する全6種類のラインナップとなる。

内部のパッドを交換することでさまざまな頭の形状にも無理なくフィットする 後頭部を巻くベルトは、ヘルメット内部にもその角度を奥行きを調整できる機構が備わる


後ろのベルトで後頭部を大きく包み込むホールドシステムで、優しくしっかりとフィット。内部の汗とりパッドを交換すれば、多くの頭の形にしっくりくる。キャノンデール・ロゴも落ち着いた風情で主張しすぎないため、キャノンデールファンならずとも、高機能なヘルメットとして選べる製品となっている。


女性モデルの充実、キッズバイクだってキャノンデール！

キャノンデールの2013年は、自分のためだけでなく、家族にもうれしいラインアップが登場した。女性用モデルの充実と、キッズバイクの発売だ。
女性用モデルは、ロードではスーパーシックスを筆頭に、CAAD10、シナプス・カーボン／アルミモデルまでをラインアップ。キャノンデールの走りを、女性用の設計、カラーリングで実現している。

女性用CAAD10。シマノ105をメインコンポとし、女性専用のジオメトリーとパーツを採用。サイズは44と48cm、199,000円。カラーは写真のホワイトと、レッドでの登場

本格的なキッズバイクが登場。ホイール径は16～24インチまで、幅広い年齢層に対応する また、初のお目見えとなるキッズモデルは、キャノンデールの『カッコ良さ』を存分にアピールしたもの。24速の24インチモデルから16インチのシングルスピードまで、男の子／女の子用、共に合計全10モデルが発表された。

素材には6061 T6カスタムアルミチューブを使用、リアブレーキワイヤーをフレーム内に内蔵したり、レフティ・ソロ・フォークを使用したりと、そのスペックとカッコ良さには抜かりない。
パパなら気になる価格であるが、24インチ／24段変速のモデルが52,000円で、写真の16インチ・シングルモデルが33,000円。結構なお手頃価格なので、今度のクリスマス・プレゼントに、いかがでしょう。


新女性用29er "タンゴ"　女性だけなんてもったいない？

さて、ここで新たに発売される女性用29er「タンゴ」に注目だ。その注目ポイントは、背の高くない日本の女性でも十分に取回せるフレームサイズと、29erらしからぬ、細かく動きやすいコントロール性である。

小さな女性でもフレームを跨いで足が地面に付きやすいよう、トップチューブを特殊なデザインにした女 性用29er「タンゴ。その細やかなコントロール性も特長だ

日本女性が日本の山で使いやすい「タンゴ」の性能には理由があった。それが、女性用モデルを本国で開発する、身長160cmほどのプロダクト・マネージャー、リリエル・ジョーダンさんだ。

チャーミングな女性向けプロダクトマネージャー、リリエル・ジョーダンさんが開発に尽力した 「29erには29erの乗り味があって、その乗り味を、私の身長でもしっかり楽しめるようにしたかった」（ジョーダンさん談）と、本社裏にある山のトレールで数々のテストを行ったそうだ。

キャノンデール本社裏の開発トレールは、日本の山のようにスイッチバック（つづら折り）の続く、テクニカルなトレールが多い。その山を、160cmほどのジョーダンさんがバリバリ楽しく走るよう作られた29erだから、日本の女性でもコントロール性はバッチリ。
試乗した日本の方々からも「女性用として定義しまうのはもったいない」なんていう声も多く聞かれたほどだった。


「アゲアゲ」のアーバンモデル フーリガン・ロードと29erシングルスピード

これまで2013年新モデルをザザッとご紹介してきたが、最後にひとつ「ワン・モア・シング」をご紹介しよう。といっても本当は２つ、ツー・モア・シングだが。
バリバリのレーシング・スペックを極めるのもキャノンデールのキャノンデールらしいところだが、実は、街で乗りたいアーバンモデルにもキャノンデールらしさが存分に現れている。

小気味よい走りっぷりに、今度は前2枚ギア＋ドロップバーで高速化。小径車フーリガンの進化系「フーリガン・ロード」。レフティ・フォークも搭載する

その「らしさ」とは、「アップ・ライジング！」。すなわち気持ちを「アップ＝上げて」＆「ライジング＝上げ続ける」、楽しいステキなコンセプト・バイクというところ。
この新発表「フーリガン・ロード」（119,000円）がそのひとつ。３つの要素がおり混ざった、大変ステキなバイクなのである。

フーリガン・ロードに込められた3つの要素

要素1 フーリガンの小気味好さ
日本では当たり前な小径車だが、世界シーンではほとんど見られない。だが、小径車の利点である『街に適切なスピードで走れる』のと『街中で細かな動きができる』のは、街で乗る自転車として最適なもの。しかもギア比をわざと軽めにして、小径車の利点をさらに強化。それを体現するフーリガンは、キャノンデール・スピリットの現れそのもの。

要素2 レフティの空間感
レフティの存在感、いや「あるべきところに、なにもない」という空間感（？）は、いつ見ても感動する。真横からの写真では分かりにくいが、このフーリガン・ロードにもレフティのリジッドフォーク、ソロが採用されている。実際に走っていると、この「なにもない感」に気がつくたびに、ああ、なるほど、こっち側はないんだよなあ、と感慨深し。

要素3　ロードバイクとしての存在感
小径車であり、しかもレフティを装備したフーリガンなのに、それでもロードバイクであると謳ところが好印象。装着されるメインパーツはシマノ・ソラであるが、ドロップバー＋ディスクブレーキと、ロードバイクの最先端のあり方だとは言えないか！（言えないか）

ヘッドバッジはネジ式で取り外せ、その取り外した後のネジ穴に、フロントバスケットを装着できる 別カラーのホワイトを斜めから、レフティの空間感が見えるように撮ってみた


さらにつけ加えると、前にはバスケットが付けられ、後ろにはキャリアが付けられるネジ穴があること。これで「荷物も運べる、小径で、ディスクブレーキ装備のロードバイク」という、他のメジャーブランドには見られない、街に最強のユーティリティバイクに乗ることができる。いいね！

シングルスピードの29er　トレイルSL 29'ER 3 SS
29erの真打ち登場？　軽量アルミ／レースジオメトリーフレームをシングルスピード化した

そして今度こそ最後のこれ。「トレイルSL 29'ER 3 SS」。シングルスピードの29erだ。何がいいって、その色がいい。フロントのエキセントリックBBと、リジッドフォークがかっこいい。見た目のシンプルさとそのカワイさがいい。89,000円という手頃な価格もいいね！

よく見るとディレーラーエンドも付く。気が変わって変速機を付けてもOKだ 29er用のリジッドフォークを装備。このフォークの形もなかなかいい チェーンの引きは、エキセントリック（偏心）BBで調整するタイプだ


というキャノンデール2013年新製品群。どれもキャノンデールらしさに溢れたプロダクツばかり。あなたの目にかなうものはあったかな？　
さらに詳しくは、キャノンデール・ジャパンのオフィシャルウェブサイト（ http://www.cannondale.com/jpn/ ）で確認を。




text: Pandasonic Nakamura
photo: Kei Tsuji / Koichiro Nakamura