この日のスタートはリエージュから北上し、オランダ国境に近いヴィセの街。国境の先に隣りあわせるリンブルグ州はアムステルゴールドレースの舞台となる一帯で、秋には世界選手権も迎える。

ギプスをはめて現れたトニ・マルティン(オメガファーマ・クイックステップ)ギプスをはめて現れたトニ・マルティン(オメガファーマ・クイックステップ) (c)Makoto.AYANOつまりこのあたり一帯はツールの訪問に引き続き、秋にかけてもホットなエリアだ。春のクラシックを入れると冬以外はメジャーレースばかり!

ヴィセのスタート地点。昨日落車したトニ・マルティン(オメガファーマ・クイックステップ)は左手から手首にかけてを石膏で固めないオープン形状のギプスをして補強するという痛々しい姿で現れた。擦過傷には包帯と絆創膏。ギプスにはオメガファーマのロゴステッカーが貼られる(薬品関係の会社なので妙にしっくりくる)。
リタイア説も飛び交ったが、走り続ける決心をしたマルティン。無理する理由はあとに控えるタイムトライアルでステージ優勝ができるから。「まずは1週間後のタイムトライアルまで走り続ける」。
そしてもう一人の落車の犠牲者、ルイス・レオンサンチェス(ラボバンク)も同じく手首にギプスをはめて走る。

ユーロップカーのチームバスを訪れると新城幸也がバイクの準備をしていた。シートピラーのあたりをメカニックに締め直してもらっている。ちょっと神経質になっている感じ。
「今日はスプリンターのためのステージなので逃げたりはしません。2人(ヴォクレールとロラン)から離れないように走って何かあったらサポートするんです。最後にもし脚が残っていて調子がよさそうならスプリントするかもしれませんが、その時の状況次第です。昨日の感じだと身体は良く動いていますよ!」

スタート前にメカニックとバイクの再調整をする新城幸也(ユーロップカー)スタート前にメカニックとバイクの再調整をする新城幸也(ユーロップカー) (c)Makoto.AYANO左手にコルセットをはめるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)左手にコルセットをはめるルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) photo:Kei Tsuji


次に訪問はアルゴス・シマノのチームバス。カヴェンディッシュと対決することになるマルセル・キッテルがいるためメディアが集まる。
ルディ・ケムナ監督にまだ挨拶していなかったので、来年は「ユキヒロ」をツールメンバーに選ぶことを頼み(同じ事を日本人メディア全員に言われたという)、キッテルの調子も聞くと、なぜかしどろもどろで目が泳ぐ。バスの前で待ってもなかなかキッテルがでてこず、トム・フィーラースがインタビューに答えている。「全力でマルセルをサポートするよ」。

キッテルのアシストへの抱負を語るトム・フィーラース(アルゴス・シマノ)だったが、ゴール前はエース交代キッテルのアシストへの抱負を語るトム・フィーラース(アルゴス・シマノ)だったが、ゴール前はエース交代 (c)Makoto.AYANOスプリントを狙いたいオスカル・フレイレ(カチューシャ)スプリントを狙いたいオスカル・フレイレ(カチューシャ) (c)Makoto.AYANO


ペーター・サガンはスペシャルペイントのバイク、「ターミネーター」をペイントしたキャノンデールに乗って現れた。チームメイトからもこのニックネームで呼ばれているようだ(そういえば時代はカニバルでもないか)。ヘッドチューブ脇には眼光鋭いターミネーターのイラスト。そういえばサガンの目付きの鋭さと、クールなイメージともかぶる。

イエローのトレック・ドマーネを駆るファビアン・カンチェラーラ(レディオシャック・ニッサン)イエローのトレック・ドマーネを駆るファビアン・カンチェラーラ(レディオシャック・ニッサン) (c)Makoto.AYANOターミネーター登場ターミネーター登場 photo:Kei Tsuji


スタートは涼しかったが、この日は夏日になった。照りつける太陽のもとで、逃げが決まってからは集団は動きを変えることなく退屈な時間をすごす。
昨ステージが終わっての記者会見でカンチェラーラが訴えたこと「先頭を変わるように頼んだが、どこも協力しようとはしなかった。明日はスプリントステージだから僕らのチーム以外にも仕事をしてもらいたい」。
しかしやはりこの日も組織だって働くのは、マイヨジョーヌを守りたいレディオシャック・ニッサンの選手たちだった。しかし後半になるとロット・ベリソルやオリカ・グリーンエッジが協力。スプリントに向けてペースを作った。

レディオシャック・ニッサンが集団をコントロールレディオシャック・ニッサンが集団をコントロール (c)Makoto.AYANO山岳ジャージを着たミカエル・モルコフ(サクソバンク・ティンコフバンク)が率いる3人の逃げ山岳ジャージを着たミカエル・モルコフ(サクソバンク・ティンコフバンク)が率いる3人の逃げ (c)Makoto.AYANO


逃げる山岳賞ジャージのミカエル・モルコフ(サクソバンク・ティンコフ)はジャパンカップとトラックパーティの来日で日本人にお馴染みの選手。マイヨアポアを着たデンマーク人はチームのリース監督とミカエル・ラスムッセンを含めて史上3人めとのこと。モルコフが逃げ始めたのは春のレースから。以来出場するレースのほとんどでトラック競技出身の脚を生かして逃げに出ている。UCIプロチームランキング最下位が揶揄されるなど、コンタドール不在の間に低空飛行を続けるチームのいいアピール役だ。もっともマイヨアポアよりもスーパー敢闘賞を狙える予感だ。

補給のサコッシュを手渡すFDJの女性ソワニエ補給のサコッシュを手渡すFDJの女性ソワニエ (c)Makoto.AYANO補給を受け取った新城幸也。カメラを見つけてニッコリ補給を受け取った新城幸也。カメラを見つけてニッコリ (c)Makoto.AYANO


ひとりでも勝てることを証明したカヴ

期待のキッテルが遅れた。お腹の調子を崩してスプリント出来る状態じゃないことがTVで伝えられる。キッテルの症状はウイルス性胃腸炎。カヴェンディッシュ打倒の急先鋒はこの日スプリントしないことを決め、なす術なく集団後方に着いて行くことになる。

アルカンシェルを着て第2ステージに勝利したマーク・カヴェンディッシュ(チームスカイ)アルカンシェルを着て第2ステージに勝利したマーク・カヴェンディッシュ(チームスカイ) (c)Makoto.AYANO

15位でゴールする新城幸也(ユーロップカー)悔しさがにじみ出る15位でゴールする新城幸也(ユーロップカー)悔しさがにじみ出る (c)Makoto.AYANOスプリントまでのチームプレイをもっとも発揮できたのはロット・ベリソル。ゴール前にツール初出場のグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)の強力なアシストでグライペルが飛び出すが、単身のカヴはグライペルを利用して、いつもより遅いタイミングで飛び出して勝利した。
しかも2010年も2011年もツールで最初のステージ優勝を挙げるまでに第5ステージまで待たなければならなかったカヴだが、今年は早くも勝利して表彰台では安堵の表情。

「アイゼルがポジションまで連れて行ってくれた後は僕は完全に一人ぼっちだった。ひとりでやらなきゃいけなかった。でもレースにはプレッシャー無しで臨んだ。勇敢に立ち向かったよ」とカヴ。しかも「数が足りないなら不要」とばかり、ボアッソンハーゲンにはラスト5kmで「アシストしなくていい」と告げ、ひとりの闘いをあえて選んだという。
「エディとはトレインを組んだ経験が少ないし、だったらひとりで闘ったほうがシンプルでよかったんだ。細かく計算したり支持を出したりせずに済むからね」。

平坦スプリントの絶対優勝候補、カヴの今年の状況が違うのは、チームメイトに総合優勝候補ウィギンズが居ること。昨年の大人数を誇ったHTCハイロードが分解し、カヴ自身もチームスカイに移籍した。ウィギンズのマイヨジョーヌ狙いはチームスカイの最優先事項だ。カヴには今年、隊列を組んでゴール前までアシストしてくれるスプリント列車がなく、手伝ってくれるのは恋女房のベルンハルト・アイゼルとエドヴァルド・ボアッソンハーゲンのふたりぐらい。つまり「列車のないカヴェンデュッシュは打倒のチャンス」。
そしてカヴに立った噂が「身体を絞りすぎてスプリント力がなくなった」というもの。
ロンドン五輪ロードの勝負どころであるボックス・ヒルを他の有力候補に遅れずに越えられるように、トレーニングを積んできた。クライミング能力と引換えにスプリント力を犠牲にしているとも言われた。チームはカヴの身体データが落ちていないことまで主張した。しかしそれらの雑音もこの勝利が吹き飛ばした。どころかカヴは列車なしで一人きりでも勝てる。

アイゼルがゴール後にTwitterでつぶやいた「カヴは列車が必要なかった!僕は失業しちゃった!この先どうしていいの?他に仕事のオファーないかな?」

お腹を壊したキッテルがスプリントできなかったことで期待の新対決はおあずけ。そしてもうひとり、勝利の期待が膨らんだ”ターミネーター”サガンは経験不足が出たのか、ツールのスプリントに困惑気味だ。それでもポイント賞首位は獲得。78ポイントはカヴを15ポイント、カンチェラーラを8ポイント上回っている。カンチェラーラからの借り物のマイヨ・ヴェールを本物に着替えた。
「ツール・ド・フランスのスプリントは今までに経験した他のレースと全く違う。位置取り争いはよりハードで、とても危険だ。グライペルの後ろにうまくつけたんだけど、気がついたらずっと後ろに下がっていたんだ。
あの状況でもっとアグレッシブに行かなきゃいけないことを学んだ。でもこのジャージはいいね。パリまで着続けたい」。

ステージ15位でゴールした新城幸也(日本、ユーロップカー)ステージ15位でゴールした新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsujiユキヤの15位は復調の証

15位でフィニッシュに飛び込んできたユキヤ。世界のトップスプリンターじゃないが、今年も幸先のいいステージ上位だ。しかしゴールを切る表情は悔しさいっぱいだった。
残り20kmまでアシストを続けたピエール・ロランがユキヤに「ヴァンサン・ジェロームに引き継ぐからスプリントしていいよ」のOKを出したという。ゴール前1kmまでカヴの後ろにつけたが、その後の位置取りがうまく行かなかったことを悔しがる。しかし次につながる順位だ。しかし人数の絞られたスプリントで有利な脚があることは証明済み。逃げに乗り、チャンスさえ噛み合えばステージ優勝を挙げられる可能性は大きい。そしてこの順位は4月に骨折した手首への不安を取り払ってくれた。ユキヤの左腕は筋肉が落ちてまだ右腕よりも細いままだ。スプリントで力んだ時のバランスの悪さという不安も片付いた。なによりツールで闘える調子があることが証明できた。


photo&text : Makoto.AYANO
photo:Kei.Tsuji
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