ツール・ド・フランス開幕を翌日に控えた6月29日、ユーロップカーの新城幸也が記者会見を行なった。手首の骨折から復帰し、レースで結果を残して掴んだツールの切符。3度目のツールでユキヤが目指すものとは。

新城幸也(ユーロップカー)新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsujiベルノドー監督から送られてきた出場決定メッセージの内容を教えて下さい
『ツール出場OK。でも(チームが発表する)11時まで言っちゃダメ』という内容でした。実はルート・ドゥ・スッドが終わってから、他の監督に『たぶんユキヤはツールに行けると思う』と告げられていましたが、さすがに嬉しかったです。

骨折、復帰、そしてツール出場までの経緯は?
春先からUCIワールドツアーレースを中心に沢山のレースに出場させてもらって、チームから期待されていました。でも手首を骨折してレースから1ヶ月離脱。全治2ヶ月と言われた時は監督も諦めたと思うけど、コンディションを上げて戻ったことが評価されたのだと思います。レースでしっかり走れたことが評価された。復帰直後のフランス2レースではまだレース向きの踏み脚が出来てなかったけど、ルクセンブルクとルート・ドゥ・スッドではしっかり前に残ることが出来た。そこで良い印象を与えられたのだと思います。

そこまでコンディションを戻すのは大変でしたか?
実質自転車に乗らなかったのは2週間だけ。ペダリングを戻すためにローラーに乗りました。目標がしっかりあれば、どうにかなるもんですね(笑)『このレースを頑張らなければツールに出れない』という状況だったので、追い込まれた受験勉強のように、出場するレースでひたすら頑張りました。

やはりレースで結果を残さないと選ばれない?
最初のフランスレースで走れなければルクセンブルク出場が無かったし、ルクセンブルクで走れなければルート・ドゥ・スッドも無かった。全てが上手くツールに繋がりました。ユーロップカーには特にツールのためのセレクションレースがなく、春先からの大きなレースで結果を残した選手が選ばれる。他の選手のコンディションが下がり始めたタイミングで、僕のコンディションが上がって行ったので、フレッシュな選手として選ばれたという部分も有ります。

このツールでチームから期待されていることは?
チームのミーティングがまだなのでハッキリしていませんが、総合を狙えるトマ(ヴォクレール)とピエール(ロラン)、そしてクリストフ(ケルヌ)の3人を守ることが第一の仕事になると思います。

ツールのコースの研究は済ませましたか?
これからです。ルーアンからサン・カンタンまでの第5ステージは兄ちゃん(福島晋一)と昔住んでいた場所を通るのでここは頑張らないといけない(笑)第4ステージのスタート地点アブヴィルの近くで、初めてフランスのリージョナルレースを勝ちました。コース的には第17ステージが一番大変だと思います。後でしっかりコースを研究します。

3度目のツールに挑む新城幸也(ユーロップカー)3度目のツールに挑む新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji自分のために走るチャンスは有る?
有ると思います。距離の長い第5〜7ステージあたりは逃げ切りが決まる可能性がある。でも逃げが決まりやすいのは平坦ステージではなくて山岳ステージ。問題は山を登れるかどうかです(笑)スプリントになればヨアン・ジェーヌと2人で狙います。

左右の腕の太さの違いを見せる新城幸也(ユーロップカー)左右の腕の太さの違いを見せる新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji第1ステージを試走した印象は?
(ラスト2km〜1kmの)登りは道が狭くて石畳で、最大15%ぐらいある。かなりキツいのでエヴァンスやサガンのような選手向きです。ジルベールの調子が良ければ彼向き。ラスト6kmまでの道の広い区間で前に位置していないと、そこからはもう前に出れない。ラスト1kmからほぼ平坦ですけど、登りで集団が伸びてキンキンの状態になるともう追いつけない。

骨折した左手はもう問題なし?
最初は握力が0まで落ちましたが、握力はもう戻っています。まだもがいてないから分からないけど、痛みも無くなったので問題ないです。

ツール直後にロンドン五輪がありますが?
ロンドン五輪を考えながらツールを走るということは無いです。ツール閉幕からロンドン五輪まで6日間。ツールの後すぐに家に帰って3日間大人しく走って、4日目にちょっとペースを上げて走る。250kmの長いレースですけど、レース前日に一回アクセルを吹かしておけば大丈夫。レース前半は平坦だし、心配していません。ベルギー並にごちゃごちゃしたコースなので、ここ(ツール)で位置取りしていれば五輪の位置取りが簡単になる。今はこの3週間に集中します。



text&photo:Kei Tsuji
interview:Makoto.AYANO