大会名物の激坂「ケロック44」が組み込まれた大会のクイーンステージを制したのはジョン・エブソン(デンマーク、CCN)。総合リーダーの伊藤雅和(愛三工業レーシング)は遅れてしまい、ジェイ・クロフォード(オーストラリア、ジェネシス)が新しいレースリーダーとなった。

海沿いのパリヤマンの街を駆け抜ける選手たち海沿いのパリヤマンの街を駆け抜ける選手たち (c) Sonoko Tanaka
スタート前に並んだ各賞ジャージ着用選手スタート前に並んだ各賞ジャージ着用選手 (c) Sonoko Tanakaパダン・パリアマンからブキティンギまで、大会最長距離となる157.7kmで開催された第4ステージは、レースの終盤に3級、1級、2級の山岳ポイントが設置された大会のクイーンステージだった。なかでも、1級山岳の「ケロック44」という44のスイッチバックが連続する登坂区間がこの日のハイライト。その厳しい登坂区間は、毎年、総合順位に大きく影響を与えている。

伊藤雅和「リーダージャージを守りたい!」

朝、スタートラインの最前列に並んだリーダージャージを着る伊藤雅和(愛三工業レーシング)。昨日、第3平坦区間でレースをコントロールする愛三工業レーシングチーム平坦区間でレースをコントロールする愛三工業レーシングチーム (c) Sonoko Tanakaステージまでのチームの目標は、第3ステージまで総合首位を守ることだったが、「いざ、リーダージャージを着てみると、手放したくないという気持ちが強く沸いてきた」と話すとおり、厳しい山岳ステージになるが、可能ならこの日もジャージを守ること、また調子のいい鈴木謙一を含めて、彼らがステージ上位でフィニッシュすることを目標にして挑んだレースだった。

スタートから100km程度走ると登坂区間が始まる。それまでの平坦区間で4選手の逃げが決まっていたが、「ケロック44」の上り口までに吸収され、上り口で昨日のステージ勝者、ポイントリーダーのオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)がアタックをかける。彼に続いツール・ド・シンカラ名物「ケロック44」が選手たちを苦しめるツール・ド・シンカラ名物「ケロック44」が選手たちを苦しめる (c) Sonoko Tanakaたのはジョン・エブソン(デンマーク、CCN)。2選手は後続を引き離しながら、山頂をめざしてタイム差を稼ぐ。彼らを追うのはレースリーダーの伊藤を含む約30名ほどのメイン集団だ。

エブソンが逃げ切り優勝、総合首位はクロフォードに

メイン集団をコントロールするのは伊藤と6秒差の総合2位につけるジェイ・クロフォード(オーストラリア)擁するジェネシス。総合順位を逆転させる最大のチャンスとあって、伊藤を振り落とすべくグングンと加速しながら走り、登坂区間の中盤にして、伊藤は遅れてしまった。

その後、プジョルとエブソンの2選手は快調にペースを保ちながらゴールをめざし、ゴールスプリントでエプソンがプジョルを下した。そして彼らのすぐ後ろ、4秒差で総合上位の選手を含んだ6選手がゴール、伊藤はトップから1分56秒差でフィニッシュラインを越え、リーダージャージはクロフォードの手に渡った。

ジョン・エブソン(デンマーク、CCN)がオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)とのスプリントを制するジョン・エブソン(デンマーク、CCN)がオスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)とのスプリントを制する (c) Sonoko Tanaka

ジャージを失った悔しさを滲ませる伊藤雅和

伊藤雅和(愛三工業レーシング)がメイン集団から遅れる伊藤雅和(愛三工業レーシング)がメイン集団から遅れる (c) Sonoko Tanaka伊藤はレース後にこうコメントする。
「ケロックの前ではいい位置をキープしていたが、上り始めでリズムを掴めず、集団から遅れてしまいました。後半、謙一さんのアシストもあり、最後の2級山岳は調子がよく、前の集団からこぼれた選手を抜きながらゴールをめざしました」

「ジェネシスのコントロールは去年のイラン勢のものと比べたら、さほど厳しくありませんでした。もっと調子が良ければ付いていけたと思う。そう思うだけに、またチームが自分のために動いてくれていたので、いまは悔しい気持ちです」

新しくレースリーダーになったジェイ・クラウフォード(オーストラリア、ジェネシス)新しくレースリーダーになったジェイ・クラウフォード(オーストラリア、ジェネシス) (c) Sonoko Tanaka「チームは第3ステージまでジャージを守るという目標を立てていましたが、それを最終ステージまで守る、と言えるように、またもっと余裕をもって守れるようになりたいと実感しました」

「明日からのステージは気持ちを切り替えて、1つ1つのステージでステージ優勝をめざして走りたいと思います」

第5ステージは途中に1級山岳を越える149kmで開催される。第4ステージで、タイム差をつけて逃げ切り、リーダージャージを獲得したかったオスカル・プジョルは「登坂は厳しいものだけど、フィニッシュまで50km以上もの下り区間があるため、総合順位を逆転させるチャンスは少ない」と残念そうに話すが、第6、第7ステージとフラットなコースとなるため、総合順位逆転を狙うなら、第5ステージが最後のチャンスとなるだろう。


ツール・ド・シンカラ2012第4ステージ結果
1位 ジョン・エブソン(デンマーク、CCN) 4h14'30"
2位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
3位 サウヒ・マットセナン(マレーシア、トレンガヌ)+04"
4位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション)
5位 ジェイ・クロフォード(オーストラリア、ジェネシス)
6位 トントン・スサント(インドネシア、プトラペルジャンガン)
14位 寺崎武郎(日本ナショナル)+1'56"
15位 山本元喜(日本ナショナル)
18位 伊藤雅和(愛三工業)
26位 鈴木謙一(愛三工業)+3'58"
27位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+4'54"
69位 清水太己(日本ナショナル)+15'48"
70位 平井栄一(日本ナショナル)
71位 六峰亘(日本ナショナル)
82位 中島康晴(愛三工業)+16'55"
97位 木守望(愛三工業)+20'42"
103位 綾部勇成(愛三工業)+27'17"

個人総合順位
1位 ジェイ・クラウフォード(オーストラリア、ジェネシス) 11h52'18"
2位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション)+08"
3位 ダディ・スラディ(インドネシア、プトラペルジャンガン)+18"
4位 アレクサンドル・クレメンツ(オーストラリア、オーストラリアナショナル)+20"
5位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)+46"
6位 サウヒ・マットセナン(マレーシア、トレンガヌ)+1'17"
9位 伊藤雅和(愛三工業) +1'46"
10位 山本元喜(日本ナショナル) +2'08"
11位 寺崎武郎(日本ナショナル)+3'21"
21位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+6'15"
32位 鈴木謙一(愛三工業)+8'30"
68位 中島康晴(愛三工業)+28'01"
70位 平井栄一(日本ナショナル)+29'04"
74位 六峰亘(日本ナショナル)+32'29"
82位 木守望(愛三工業)+36'35"
95位 清水太己(日本ナショナル)+47'17"
99位 綾部勇成(愛三工業)+58'03"

ポイント賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)

山岳賞
オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)

チーム総合首位
プトラペルジャンガン


photo & text : Sonoko Tanaka

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