丘陵地帯に広がるブドウ畑を貫く真っ白の未舗装路。そんな「ストラーデ・ビアンケ(白い道)」を走る第6回ストラーデ・ビアンケ(UCI1.1)が、2012年3月3日、トスカーナ州シエナ近郊で開催された。得意の独走パターンに持ち込んだファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)が自身2度目の優勝を飾った。

ストラーデ・ビアンケ2012コースプロフィール(グレー部分が未舗装区間)ストラーデ・ビアンケ2012コースプロフィール(グレー部分が未舗装区間) image:RCS SPORT本格的なクラシックシーズンを前に、イタリア・トスカーナ州で開催されるストラーデ・ビアンケ(直訳する白い道)。その名の通り未舗装路を走る特異なクラシックレースだ。

トスカーナ州の「白い道」を進む選手たちトスカーナ州の「白い道」を進む選手たち photo:RCS SPORT全長190kmのコースには、未舗装区間が全8セクター・合計57.2km詰め込まれている。中には全長13.5kmの長い区間や、最大勾配が18%に達する未舗装区間も登場。パリ〜ルーベと同様、パンクやメカトラ、落車が多発する過酷な闘いが繰り広げられる。

ゴール地点のシエナは、街全体が世界遺産に登録されているイタリアきっての観光地。丘の上に位置するシエナに向かって急坂を上り、中世の面影を色濃く残す街に見下ろされた石畳とテクニカルなコーナーを抜け、世界一美しいと称されるカンポ広場にゴールする。

パンクで大会連覇のチャンスを失ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)パンクで大会連覇のチャンスを失ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferlaワインの産地として世界的に知られ、ブドウ畑が広がるキアンティ地方のガイオーレ・イン・キアンティをスタート。プロトンの中から、レース序盤に12名が抜け出した。

逃げたのはマルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム)やボルト・ボジッチ(スロベニア、アスタナ)、ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)ら。先頭12名は砂埃を巻き上げながら4つの未舗装セクターをクリアしていく。

ゴール13km手前の第8セクターでアタックするフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)ゴール13km手前の第8セクターでアタックするフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferlaメイン集団とのタイム差が2分に満たないままレースは進行し、やがてガーミン・バラクーダやBMCレーシングチームがメイン集団のペースを上げるとタイム差は縮小。132km地点から始まる長さ11.5kmの第5セクターで、逃げは早くも吸収される。

起伏に富んだテクニカルなこの第5セクターで集団は分裂し、約20名が先行する。優勝候補のファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)やヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)、アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)がこの動きに乗り、強者揃いの第1グループが形成された。

ゴール13km手前の第8セクターで一気にペースを上げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)ゴール13km手前の第8セクターで一気にペースを上げるファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Riccardo Scanferla大会連覇を狙うフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)はパンクで脱落。ゴールまで40kmを残して、ジルベールを含む第2グループは40秒遅れ。結局最後まで第1グループに追いつくことはなかった。

第1グループからはダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)が飛び出し、後続を1分引き離して第6セクターを通過する。

追走するオスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)追走するオスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)やフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Riccardo Scanferla急勾配の登りを含む第7セクターで、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)の執拗なペースアップによって第1グループは12名に縮小。淡々と独走を続けていたベンナーティはラスト16kmで捉えられた。

ゴール13km手前の第8セクターでファンアフェルマートが再び強力なアタックを仕掛け、カンチェラーラが落ち着いてこれに合流。カンチェラーラはそのまま急勾配の未舗装路を踏み倒し、後続を引き離して未舗装路をクリア。このカウンターアタックが決まった。

すぐさまバッラン、ファンアフェルマート、クロイツィゲル、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)、オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)が追走グループを形成。しかしスイッチが入ったカンチェラーラのペースは緩まず、1分のタイム差でラスト1kmのアーチを通過する。

シエナに至る急坂をダンシングでこなし、大歓声に包まれた街中を駆け抜けたカンチェラーラが、カンポ広場に独走でゴール。2008年に続く自身2度目のストラーデ・ビアンケ制覇。今シーズン初勝利を飾った。

独走でカンポ広場にゴールするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)独走でカンポ広場にゴールするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:RCS SPORT

カンポ広場の表彰台で再び頂点に立ったカンチェラーラは「昨シーズン結果が伴わなかっただけに、こうして再び勝利を手にすることが出来て嬉しい。数日前に亡くなった叔父にこの勝利を捧げたい」とコメント。

ストラーデ・ビアンケ2012表彰台ストラーデ・ビアンケ2012表彰台 photo:RCS SPORT「ベンナーティがアタックしたとき、周りの選手が誰も動かないのを見て、みんな疲れているのだと判断した。ベンナーティにはとても感謝している。未舗装の第8セクターでライバルたちが苦しんでいるのを見てアタック。そこから頭のスイッチをオンにして、自分のペースで追い込んだ。冷静さが勝利の鍵だったと思う。まだ100%のコンディションではなく、これから更にコンディションは上がると信じている」。

2008年、カンチェラーラはこのストラーデ・ビアンケの勝利を皮切りに、ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝、ミラノ〜サンレモ制覇という成績を残している。今シーズンも同レースでの活躍、そして「北のクラシック」での活躍に期待がかかる。

42秒遅れの後続グループは2010年大会覇者のイグリンスキー、ガットの順にゴール。終始積極的にレースを進めたBMCレーシングチームは表彰台を逃している。

レース内容はストリーミング映像より。

ストラーデ・ビアンケ2012結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) 4h44'59"
2位 マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)           +42"
3位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
4位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)       +46"
5位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)     +48"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)              +1'03"
7位 フランチェスコ・レーダ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)      +1'45"
8位 フランチェスコ・ジナンニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)     +1'47"
9位 エリア・ファヴィッリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
10位 ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・バラクーダ)     +1'57"

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla
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