いよいよ今週日曜日、滋賀県高島市マキノ高原でシクロクロス全日本選手権が開催される。果たして辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と豊岡英子(パナソニックレディース)は連勝記録を伸ばすことができるか?降雨&低温が予想されるスキー場で、今シーズンのシクロクロス日本一が決まる。

レース会場となるマキノ高原スキー場レース会場となるマキノ高原スキー場 photo:Kei Tsuji滋賀県北西部、琵琶湖から内陸に入った福井県境の山の麓に、マキノ高原スキー場はある。標高は約200m。大阪からクルマで約2時間というロケーションだ。

コースの大半はスキー場の緩やかな斜面で、草や砂利に覆われているため路面は重い。「休み所の無いタフなコース」というのが専らの感想で、緩い登りを踏み抜くパワーと下りのコーナリングテクニックで差がつく。もちろんシケインや階段、短い急坂も設定されている。

昨年同会場で行なわれた関西シクロクロスのスタートの様子昨年同会場で行なわれた関西シクロクロスのスタートの様子 photo:Kei Tsuji現地は今週木曜日から天候が崩れ、雪混じりの雨が降っている状態。天気予報によるとレース当日は曇り時々雨で降水確率50%、最高気温は8度だ。

日曜日に開催されるのは、JCF(日本自転車競技連盟)主催のエリート男子、エリート女子、ジュニアの3レースと、AJOCC(日本シクロクロス競技主催者協会)主催のマスター、ならびに学生・年齢別レース。エリート男子にはU23選手も含めて78名、エリート女子とジュニアにはそれぞれ11名がエントリーした。

UCI(国際自転車競技連合)規約に則り、優勝者と同一周回でフィニッシュした上位10名にはUCIポイントが与えられる。また国内のUCIレース同様「80%ルール」が適用。80%ルールとは、トップ選手のラップタイムの+80%のタイムを経過して周回を終えた選手は、降車が指示されるというもの。例えばトップのラップタイムが8分の場合、トップから6分24秒遅れの時点で降車となる。


12月11日(日)レーススケジュール
9:00〜9:40 ジュニアレース
10:00〜10:40 マスターレース(AJOCC開催)
11:00〜11:40 エリート女子レース
13:00〜14:00 エリート男子レース
14:30〜15:00 学生・年齢別レース(AJOCC開催)

辻浦の10連覇なるか?竹之内や山本幸平が立ちはだかる

辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)は、2002年以降、一度も全日本選手権で負けていない。昨年辻浦は全日本選手権の連勝を「9」まで伸ばした。当然今年は大会10連覇の偉業を狙ってマキノ高原に向かう。

今シーズン辻浦は前半からコンディションを上げきれず、例年のような好調の波に乗れずにいたが、UCI公認レースの関西シクロクロス第3戦ビワコマイアミランドで勝利。目標に掲げる世界選手権のセレクションレースで2勝している。

竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) photo:Kei Tsuji「今年はトレーニングに重点をおいて、自分のペースで調整していきたい。全日本に向けてしっかりとしたプランができている」という言葉通り、順調にコンディションを上げている。1週間前の信州シクロクロス第5戦で勝利し、そのコンディションを確認済みだ。

2週間前の信州シクロクロス第4戦野辺山でその辻浦を振り切って勝利したのは、昨年の全日本選手権2位の竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)。辻浦に「力負けだった」と言わしめた竹之内は、ベルギーを拠点に活動し、選手としての質を一段上げた感がある。

山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji「全日本で勝つ」と言い切る23歳は、1週間前の関西シクロクロス第4戦由良川で後続を5分以上引き離す圧勝を飾り、「厳しいトレーニングを積んできたことの確認になった。回復すれば、野辺山以上の走りはできる」と語っている。

そして今年、MTB界のチャンピオンがシクロクロス界に殴り込みをかけた。MTBクロスカントリーで4年連続で日本チャンピオンに輝き、アジア選手権でも3連覇を飾っている山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)がシクロクロスに本格参戦。2012年のロンドン五輪MTBクロスカントリーを見据えながら、このシクロクロス全日本選手権、そして世界選手権にも目を向ける。

小坂正則(スワコレーシングチーム)小坂正則(スワコレーシングチーム) photo:Kei Tsuji山本は信州シクロクロス第4戦野辺山で竹之内と辻浦に次いで3位。1週間前のGPミストラル第3戦で優勝。シクロクロスバイクに徐々に慣れ、抜群の走力にテクニックをプラスした。今大会最大のダークホースとして注目を集める存在。兄の山本和弘選手(キャノンデール・レーシングチーム)も上位に絡む走りを見せてくれるだろう。

ロードレース界からも畑中勇介(シマノレーシング)や辻善光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)らが参戦し、上位を狙う。日本トップクラスの力を誇る2選手の走りに注目したい。

辻善光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)辻善光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン) photo:Kei Tsuji1ヶ月前に同じマキノ高原で開催された関西シクロクロス第2戦でメカトラで失速した辻浦に代わってワンツー勝利したのが、小坂正則(スワコレーシングチーム)と小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)の親子だ。

48歳の誕生日を迎えたばかりの父・小坂正則は今なお日本のトップシーンで走り続けるベテラン。昨年の関西シクロクロスマキノ大会でも最後まで辻浦を苦しめた。父の背中を追う息子・小坂光も近年トップレーサーの仲間入りを果たしている。

昨年日本代表として世界選手権に出場した丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)や池本真也(和光機器・AUTHOR)、山本聖吾(スワコレーシング)らも上位の常連。日本各地のシクロクロスシリーズで活躍する選手たちが一堂に会し、チャンピオンジャージをかけて闘う。


7連覇を狙う豊岡に宮内と福本が挑む

豊岡英子(パナソニックレディース)豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Kei Tsujiエリート女子もディフェンディングチャンピオンの走りに注目。6年連続で全日本選手権を制している豊岡英子(パナソニックレディース)は連勝記録を伸ばせるか。

UCIレースの関西シクロクロス第3戦ビワコマイアミランドではメカトラの影響で勝利を落としたが、その後のレースでは敵無しの強さで連勝。1週間前の関西シクロクロス第4戦由良川ではライバルたちを3分以上引き離す勝利をおさめている。「ようやくバイクに馴染んできて、今は踏めている。全日本ではミスなく走ることが一番重要です」とディフェンディングチャンピオンは語る。

ビワコマイアミランドで豊岡を敗った宮内佐季子(CLUB viento)や、膝の故障を克服し、調子を上げながら2週間前の野辺山シクロクロスで2位に入った福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)らがライバルになるだろう。

昨年世界選手権ジュニア16位の沢田の連覇なるか?

沢田時(ENDLESS/ ProRide)沢田時(ENDLESS/ ProRide) photo:Kei Tsuji今年JCF開催として2年目を迎えるジュニアカテゴリー。今年は1994年と1995年生まれの選手が対象となる。

日本のシクロクロスレースでエリート選手に混ざって走り、先頭争いに絡んでいる沢田時(ENDLESS/ProRide)がジュニアカテゴリー連覇を狙う。昨年沢田は世界選手権ジュニアで日本人歴代最高位の16位。勢いある17歳は、今年も世界選手権を見据える。

MTBのエキスパートクラスで活躍し、ロード全日本選手権U17レースで優勝した横山航太(快レーシング)や、沢田のチームメイト前田公平(ENDLESS/ProRide)、沢田と同じ地元滋賀県出身の中井路雅(瀬田工業高校自転車競技部)らが優勝争いに加わるだろう。

text&photo:Kei Tsuji