国内最後のUCIレースとなるツール・ド・おきなわチャンピオンレース第2ステージは、89年よりの開催で初めてとなる14人の集団ゴールスプリントに持ち込まれ、畑中勇介(シマノレーシング)が制した。土曜の個人TTとの合計タイムの総合は盛一大(愛三工業レーシングチーム)が手にした。

リーダージャージを着るトーマス・パルマーとホワイトジャージを着るアダム・ヘレン(ドラパック・ポルシェ)リーダージャージを着るトーマス・パルマーとホワイトジャージを着るアダム・ヘレン(ドラパック・ポルシェ) (c)Makoto.AYANO近年のテーマを「まちなか開催」に掲げるツール・ド・おきなわ。2010年からメイン会場も名護市の中心部に設けられ、今年も商店街のメインストリートがスタート・ゴール地点に設定された。

チャンピオンレースは6時45分のスタートで、集団はまだ暗い中、名護十字路からスタートしていく。名護市街をパレード走行し、本部半島を経て一路北部のヤンバル地方を目指す。昨年に引き続きリーダージャージを着るのは第1ステージのTTを制したトーマス・パルマー(ドラパック・ポルシェ)。


序盤から150km近く逃げ続けた村上純平(シマノレーシング)序盤から150km近く逃げ続けた村上純平(シマノレーシング) (c)Makoto.AYANO序盤の本部半島から逃げたのは村上純平(シマノレーシング)と加地邦彦(なるしまフレンド)。加地は今帰仁と大宜味村のスプリント賞をとったが、その後村上のひとり旅が始まった。
このレースを最後に選手活動からの引退を決めている村上は、普久川ダム頂上の2度の山頂・照首山を先頭通過。山岳賞を決める。

集団からは真鍋和幸と山下貴宏(ともにマトリックス)が追走する。村上は2人に高江で捕まるまで結局150km近くを逃げたことになる。
真鍋と山下は村上を振り切ると、2人で交替を繰り返しながら集団との差を保って逃げ続ける。

真鍋和幸と山下貴宏(マトリックスパワータグ)が2人でアタックを決める真鍋和幸と山下貴宏(マトリックスパワータグ)が2人でアタックを決める (c)Makoto.AYANOきびしいヤンバルのアップダウンが続くが、後続のメイン集団は約40人ほどと、例年になく選手の数が多い大集団。マトリックスの二人を追って中根英登(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、鈴木譲(シマノレーシング)、盛一大(愛三工業レーシングチーム)が追走。慶佐次で追いつく。しかし後方集団も活性化し、集団は再びひとまとまりになった。

リーダージャージを着るトーマス・パルマーとアダム・ヘレン(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)は、この集団内に残ってゴールまで行ければ総合優勝が待っている。

中根英登(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、鈴木譲(シマノレーシング)、盛一大(愛三工業レーシングチーム)中根英登(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、鈴木譲(シマノレーシング)、盛一大(愛三工業レーシングチーム) (c)Makoto.AYANOここから先は2010年大会からコース変更を受けて長く・より厳しくなった新コースへ。今年はここからの区間が工事中の箇所があり、車線規制を行って狭い1車線になっている区間が長く続いた。

大浦湾からはコース最後の難所である羽後ダムへの登りが始まる。ワン・カンポ(香港ナショナルチーム)が積極的に仕掛け、集団が長く伸びる。そこからアタックして飛び出したのは清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)だ。

清水は力強いペダリングで先行。これを追った佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)に、井上和郎(チームブリヂストン・アンカー)がぴったりとマーク。
清水を追うのは2人だが、引かなくてはならないのは佐野のみ。佐野は清水まであと50mまで迫りながら、追ダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPOが代わる代わるアタックを掛けるダンジェロ&アンティヌッチィ・NIPPOが代わる代わるアタックを掛ける (c)Makoto.AYANOいついても不利な状況に変わりがないことで追うのをやめて集団に戻った。

清水は国道56号線へ下り、ひとり名護へ向かうが、後続の人数が揃ったメイン集団はこれをやすやすと飲み込んでしまった。

生き残った先頭集団にはトーマス・パルマーの姿はなく、平坦路が続くなか、残り10km地点の植物園付近にある軽い坂でアダム・ヘレン(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)も遅れを喫する。これでドラパックの総合優勝は消えた。

羽後ダムへの上りで飛び出した清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)羽後ダムへの上りで飛び出した清水都貴(チームブリヂストン・アンカー) (c)Makoto.AYANOアンカー勢が攻撃の手を緩めないが、レースは残り4kmで名護市街・ゴールの設置された大通りへと入っていく。昨年覇者・福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)が残り1kmでアタックを敢行。しかしこの動きを小森亮平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)がチェックする。そして勝負はゴールスプリントへ。

ゴールまで距離を残して早いスプリントに入ったのはマリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)。伸びを見せるが、ヴィズィアックの脚がゴールを目前に攣ってしまう。鈴木真理と並ぶようにスピードを伸ばしたのが畑中勇介(シマノレーシング)。ヴィズィアックを交わした畑中・鈴木のワン・ツーフィニッシュという結果になった。

右から伸びた畑中勇介(シマノレーシング)がチャンピオンレースを制する右から伸びた畑中勇介(シマノレーシング)がチャンピオンレースを制する (c)Makoto.AYANO

ツール・ド・おきなわ23回の歴史で、シマノレーシングはこれがおきなわ初勝利。相性の悪かったおきなわで、村上の山岳賞と第2ステージの1・2位を獲得し、シマノにとって良い結果を残した。

2日間の合計時間による総合優勝は先頭集団13位でフィニッシュしている盛一大(愛三工業レーシングチーム)が獲得。2位も西谷泰治が入り、愛三工業がチーム総合優勝を飾った。

チャンピオン 第2ステージ表彰チャンピオン 第2ステージ表彰 photo:Hideaki.TAKAGIチャンピオン 個人総合表彰チャンピオン 個人総合表彰 photo:Hideaki.TAKAGI

優勝の畑中勇介(シマノレーシング)のコメント

「思ったより力がなかったので、スプリントは(鈴木)真理さんに少し任せる面がありました。勝ったと思ったのは、スプリントしてゴールまで届いてから。
ステージ優勝ではあるけれど、僕の中ではツール・ド・おきなわに勝ったという思いが強い。とても嬉しいですね。
今日が最後のレースの村上も、調子が良くて総合でいい位置につける青柳もアシストに使ったから、勝たなきゃいけないと強く思っていたんです。シマノレーシングはおきなわに勝ったことがなかったから、これで嫌なジンクスをひとつ吹っ飛ばしました」。


個人総合優勝の盛一大(愛三工業レーシングチーム)のコメント

「2ステージのどちらも勝っていないから、総合優勝したという実感はまったくないですね。
タイムトライアルでも差を付けられていたので、やはり最低でもどちらかに勝って総合優勝したいですね。ドラパックのアダム・ヘレンが名護市街の軽い登りで千切れたのには気がついていなかったので、最後のスプリントをしながら、『2位・3位でも仕方ない』と思っていたんです」。



ツール・ド・おきなわ2011チャンピオンレース第2ステージ210km 結果
1位 畑中勇介(シマノレーシング)5時間30分58秒
2位 鈴木真理(シマノレーシング)
3位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)
4位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
5位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
6位 清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)
7位 内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
8位 中村誠(宇都宮ブリッツェン)
9位 井上和郎(チームブリヂストン・アンカー)
10位 ヴィンチェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)

個人総合時間賞
1位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)5時間33分10秒
2位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+02秒
3位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+02秒
4位 福島晋一(トレンガヌ・プロ・アジア)+03秒
5位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)+03秒
6位 畑中勇介(シマノレーシング)+04秒
7位 内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+04秒
8位 品川真寛(愛三工業レーシングチーム)+05秒
9位 普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)+07秒
10位 ヴィンチェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)+08秒

チャンピオン 山岳賞の村上純平(シマノレーシング)、このレースで引退するチャンピオン 山岳賞の村上純平(シマノレーシング)、このレースで引退する photo:Hideaki.TAKAGI個人総合山岳賞
村上純平(シマノレーシング)

チーム総合成績
愛三工業レーシングチーム

photo&text:Makoto.AYANO,Hideaki.Takagi