渡良瀬遊水地で開催された全日本選手権タイムトライアル。男子エリートは今村駿介(ワンティNIPPリユーズ)、女子エリート+U23は水谷彩奈(チーム楽天Kドリームス)、男子U23は橋川丈(愛三工業レーシングチーム)がそれぞれ優勝した。詳報をレポート。

3県に跨がる広大な渡良瀬遊水地 photo:Satoru Kato
修善寺の日本サイクルスポーツセンターで行われた全日本選手権ロードレースから1週間、タイムトライアルの全日本選手権は渡良瀬遊水地に舞台を移して開催された。
栃木県、群馬県、埼玉県に跨がる渡良瀬遊水地では、2019年までJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)が主催するJプロツアーのタイムトライアル大会が開催されていた。今回の全日本選手権では、JBCF大会で使用していた1周5.3kmのコースを7.3kmに延長して使用する。

コース後半は遊水地の中を進む photo:Satoru Kato
遊水地に沿って走るコースは、アップダウンのない「ド平坦」。遮蔽物が無いため風が強まるとコースの性格が大きく変わるが、この日はレースに影響するような風は無く、代わりに最高気温35℃を超える6月としては異例の暑さが選手を苦しめた。
男子エリート

スタートゲートから等間隔で出走 photo:Satoru Kato
午後から行われた男子エリートは6周43.8kmのタイムアタックに19名が出走。スタートは二つのウェーブ(グループ)に分られ、ウェーブ1は45秒間隔で11名がスタート、昨年上位勢を含むウェーブ2は1分間隔で8名がスタートした。

4位 林原聖真(群馬グリフィンレーシングチーム)53分7秒21 photo:Satoru Kato
ウェーブ1最速タイムは、53分7秒をマークした林原聖真(群馬グリフィンレーシングチーム)。昨年はU23で3位に入った林原は、1周平均9分を切るラップタイムでエリートでも遜色ないタイムを出し、ウェーブ2のターゲットタイムとなる。

3位 小石祐馬(JCL TEAM UKYO)52分46秒25 photo:Satoru Kato
ウェーブ2最初のスタートは、2023年優勝の小石祐馬(JCL TEAM UKYO)。「暑いので体が元気なうちにタイムを稼いでしまおうと思った」と言う言葉通り、1周目から8分30秒台のハイペースで周回していく。続いてスタートした今村駿介(ワンティNIPPOリユーズ)も、9分を切るラップタイムで周回し、小石に続く。

終盤もペースを緩めず走る今村駿介(ワンティNIPPOリユーズ) photo:Satoru Kato
後半に入ると、それまで中間計測最速をマークしてきた小石が8分50秒台後半までペースを落とし、8分40秒台を維持する今村が逆転。今村が52分33秒でフィニッシュして暫定トップに立ち、13秒遅れの小石が暫定2位につけた。

2位 金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)52分42秒98 photo:Satoru Kato
一方、ウェーブ2最後にスタートした前年覇者の金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)は、「1周目のラップタイムがゆっくりしすぎた」と振り返るように8分52秒で1周目を終えるも、その後は8分40秒台を維持して周回。最終周回は8分40秒を切るまでペースアップし、小石を3秒上回る52分42秒でフィニッシュ。しかし連覇には9秒足りず、今村の優勝が決まった。
今村駿介は富士スピードウェイで開催された2019年の全日本選手権U23のタイムトライアルで優勝。今回はそれ以来の全日本タイムトライアル出場で、エリートでの初優勝となった。

男子エリート表彰式 左から2位金子宗平、優勝今村駿介、3位小石祐馬 photo:Satoru Kato
今村駿介コメント
「先週の全日本ロードに出場しなかった分、他の皆さんよりも体力が残っていたかなと。このために帰ってきて少しは力をつけたところを見せられたとも思います。

フィニッシュした今村駿介(ワンティNIPPOリユーズ)は勝ったと思っていなかったと言う photo:Satoru Kato ペースは抑えているつもりだったけれど、最初からけっこう突っ込んで(速いペースで)入ってしまいちょっとまずいなと思っていました。無線が聞こえていなかったので他の選手の情報が分からなかったけれど、前を走っていた小石(祐馬)さんに勝ってないと優勝は無いと思い、最後の2周は小石さんとの距離とタイム差を確認しました。ゴールした時は会場があまり盛り上がってなく、シャペロン(ドーピング管理の係員)が来ないので『負けたか』と思いました。
タイムトライアルチャンピオンはU23以来。出場したのもそれ以来なので、2/2の勝率ですね。ヨーロッパでもチャンピオンジャージを着て走る機会はあまり無いけど、無いよりはマシかなと思ってます」
女子エリート+U23

女子 U23の水谷彩奈(チーム楽天Kドリームス)が全体トップの40分0秒71で優勝 photo:Satoru Kato

女子2位 梶原悠未(TEAM Yumi)40分35秒69 photo:Satoru Kato 
女子3位 阿部花梨(イナーメ信濃山形)41分1秒11 photo:Satoru Kato
4周29.2kmで行われた女子エリート+U23は8名が出走。エントリーリストには與那嶺恵理の名前があったが、スタートリストには無かった。

女子 先発の阿部花梨(イナーメ信濃山形)を水谷彩奈(チーム楽天Kドリームス)が追い抜く photo:Satoru Kato 前半は東京五輪銀メダリストの梶原悠未(TEAM Yumi)が中間計測で最速をマーク。僅差で水谷彩奈(チーム楽天Kドリームス)が続く。しかし後半の3周目に入ると梶原が失速し、それまで10分を着るラップタイムをマークしていたが10分20秒台までペースが落ちる。
対して水谷は後半もペースを崩さず周回。終盤には1分前にスタートした阿部花梨(イナーメ信濃山形)を抜き、梶原より35秒速い40分0秒でフィニッシュ。U23の水谷がエリートも合わせて全体トップタイムとなり優勝を決めた。

女子エリート+U23表彰式 左から2位梶原悠未、優勝水谷彩奈、3位阿部花梨 photo:Satoru Kato
男子U23

男子U23優勝 橋川丈(愛三工業レーシングチーム)44分49秒18 photo:Satoru Kato

男子U23 2位 望月蓮(TEAM BUFFAZ GESTION DE PATRIMOINE)45分0秒68 photo:Satoru Kato 
男子U23 3位 梅澤幹太(チームブリヂストンサイクリング)45分25秒55 photo:Satoru Kato
16名が出走した男子U23は5周36.5kmで行われ、男子エリート同様に二つのウェーブに分けて1分間隔でスタートした。
ウェーブ1で最速タイムをマークしたのは望月蓮(TEAM BUFFAZ GESTION DE PATRIMOINE)。後半にかけてペースを上げ、45分0秒をマークして暫定トップに立つ。
ウェーブ2最初にスタートした梅澤幹太(チームブリヂストンサイクリング)は、望月を上回るペースでスタートするも、後半はペースを落として望月のタイムを上回れない。対してウェーブ2最後から2番目にスタートした橋川丈は、「ペーシングは完璧だった」と言う通り終始一定したペースで周回。終盤になってもペースを崩すことなく45分を切るタイムでまとめ上げ、U23優勝を決めた。

男子U23表彰式 左から2位望月連、優勝橋川丈、3位梅澤幹太 photo:Satoru Kato

男子U23 フィニッシュした橋川丈(愛三工業レーシングチーム)この直後、勝利を確信してガッツポーズ photo:Satoru Kato 橋川丈コメント
「ウェーブ1で望月選手が9分台で走っていて速いなと思ったが、そこは意識せず自分のパワーとスピードに自信はあったので、無理してタイムを合わせるようなことはせずに完璧に出し切れば悔いることは無いと考えて走りました。チームのサポートもあり、優勝することができました。
ロードとダブルチャンピオンになれなかったのは悔しいが、自分にとっての本当の目標はシーズン後半戦にあります。自分の自転車選手としての道はまだ途中で始まってさえいない段階なので、もっと上を目指していきたい。たった1ヶ月くらいの準備でこれだけ走れたので、TTに関してはまだ成長できるという自信があるし、もっと良い走りができると思っています」
text&photo:Satoru Kato
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修善寺の日本サイクルスポーツセンターで行われた全日本選手権ロードレースから1週間、タイムトライアルの全日本選手権は渡良瀬遊水地に舞台を移して開催された。
栃木県、群馬県、埼玉県に跨がる渡良瀬遊水地では、2019年までJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)が主催するJプロツアーのタイムトライアル大会が開催されていた。今回の全日本選手権では、JBCF大会で使用していた1周5.3kmのコースを7.3kmに延長して使用する。

遊水地に沿って走るコースは、アップダウンのない「ド平坦」。遮蔽物が無いため風が強まるとコースの性格が大きく変わるが、この日はレースに影響するような風は無く、代わりに最高気温35℃を超える6月としては異例の暑さが選手を苦しめた。
男子エリート

午後から行われた男子エリートは6周43.8kmのタイムアタックに19名が出走。スタートは二つのウェーブ(グループ)に分られ、ウェーブ1は45秒間隔で11名がスタート、昨年上位勢を含むウェーブ2は1分間隔で8名がスタートした。

ウェーブ1最速タイムは、53分7秒をマークした林原聖真(群馬グリフィンレーシングチーム)。昨年はU23で3位に入った林原は、1周平均9分を切るラップタイムでエリートでも遜色ないタイムを出し、ウェーブ2のターゲットタイムとなる。

ウェーブ2最初のスタートは、2023年優勝の小石祐馬(JCL TEAM UKYO)。「暑いので体が元気なうちにタイムを稼いでしまおうと思った」と言う言葉通り、1周目から8分30秒台のハイペースで周回していく。続いてスタートした今村駿介(ワンティNIPPOリユーズ)も、9分を切るラップタイムで周回し、小石に続く。

後半に入ると、それまで中間計測最速をマークしてきた小石が8分50秒台後半までペースを落とし、8分40秒台を維持する今村が逆転。今村が52分33秒でフィニッシュして暫定トップに立ち、13秒遅れの小石が暫定2位につけた。

一方、ウェーブ2最後にスタートした前年覇者の金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)は、「1周目のラップタイムがゆっくりしすぎた」と振り返るように8分52秒で1周目を終えるも、その後は8分40秒台を維持して周回。最終周回は8分40秒を切るまでペースアップし、小石を3秒上回る52分42秒でフィニッシュ。しかし連覇には9秒足りず、今村の優勝が決まった。
今村駿介は富士スピードウェイで開催された2019年の全日本選手権U23のタイムトライアルで優勝。今回はそれ以来の全日本タイムトライアル出場で、エリートでの初優勝となった。

今村駿介コメント
「先週の全日本ロードに出場しなかった分、他の皆さんよりも体力が残っていたかなと。このために帰ってきて少しは力をつけたところを見せられたとも思います。

タイムトライアルチャンピオンはU23以来。出場したのもそれ以来なので、2/2の勝率ですね。ヨーロッパでもチャンピオンジャージを着て走る機会はあまり無いけど、無いよりはマシかなと思ってます」
女子エリート+U23



4周29.2kmで行われた女子エリート+U23は8名が出走。エントリーリストには與那嶺恵理の名前があったが、スタートリストには無かった。

対して水谷は後半もペースを崩さず周回。終盤には1分前にスタートした阿部花梨(イナーメ信濃山形)を抜き、梶原より35秒速い40分0秒でフィニッシュ。U23の水谷がエリートも合わせて全体トップタイムとなり優勝を決めた。

男子U23



16名が出走した男子U23は5周36.5kmで行われ、男子エリート同様に二つのウェーブに分けて1分間隔でスタートした。
ウェーブ1で最速タイムをマークしたのは望月蓮(TEAM BUFFAZ GESTION DE PATRIMOINE)。後半にかけてペースを上げ、45分0秒をマークして暫定トップに立つ。
ウェーブ2最初にスタートした梅澤幹太(チームブリヂストンサイクリング)は、望月を上回るペースでスタートするも、後半はペースを落として望月のタイムを上回れない。対してウェーブ2最後から2番目にスタートした橋川丈は、「ペーシングは完璧だった」と言う通り終始一定したペースで周回。終盤になってもペースを崩すことなく45分を切るタイムでまとめ上げ、U23優勝を決めた。


「ウェーブ1で望月選手が9分台で走っていて速いなと思ったが、そこは意識せず自分のパワーとスピードに自信はあったので、無理してタイムを合わせるようなことはせずに完璧に出し切れば悔いることは無いと考えて走りました。チームのサポートもあり、優勝することができました。
ロードとダブルチャンピオンになれなかったのは悔しいが、自分にとっての本当の目標はシーズン後半戦にあります。自分の自転車選手としての道はまだ途中で始まってさえいない段階なので、もっと上を目指していきたい。たった1ヶ月くらいの準備でこれだけ走れたので、TTに関してはまだ成長できるという自信があるし、もっと良い走りができると思っています」
text&photo:Satoru Kato
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全日本選手権タイムトライアル 結果
男子エリート | ||
1位 | 今村 駿介(ワンティNIPPOリユーズ) | 52分33秒81 |
2位 | 金子 宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) | +9秒16 |
3位 | 小石 祐馬(JCL TEAM UKYO) | +12秒43 |
4位 | 林原 聖真(群馬グリフィンレーシングチーム) | +33秒39 |
5位 | 岡 篤志(宇都宮ブリッツェン) | +55秒92 |
6位 | 寺田 吉騎(Bahrain Victorious Development team) | +58秒05 |
7位 | 山本 大喜(JCL TEAM UKYO) | +1分2秒31 |
8位 | 新城 幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) | +1分14秒31 |
9位 | 宮崎 泰史(キナンレーシングチーム) | +1分26秒98 |
10位 | 風間 翔眞(シマノレーシング) | +1分47秒16 |
女子エリート+U23 | ||
1位 | 水谷 彩奈(チーム楽天Kドリームス)※U23 | 40分0秒71 |
2位 | 梶原 悠未(TEAM Yumi) | +34秒98 |
3位 | 阿部 花梨(イナーメ信濃山形) | +1分0秒39 |
4位 | 山下 歩希(弱虫ペダルサイクリングチーム)※U23 | +2分2秒79 |
5位 | 森本 保乃花(近畿大学) | +2分20秒74 |
6位 | 古谷 桜子(内房レーシングクラブ) | +2分31秒34 |
7位 | 石田 唯(TRKWorks) | +2分40秒 |
8位 | 渡部 春雅(Liv Racing Japan)※U23 | +2分41秒 |
男子U23 | ||
1位 | 橋川 丈(愛三工業レーシングチーム) | 44分49秒18 |
2位 | 望月 蓮(TEAM BUFFAZ GESTION DE PATRIMOINE) | +11秒50 |
3位 | 梅澤 幹太(チームブリヂストンサイクリング) | +36秒36 |
4位 | 山里 一心( 早稲田大学) | +40秒48 |
5位 | 大室 佑(群馬グリフィンレーシングチーム) | +46秒55 |
6位 | 森田 叶夢(京都産業大学) | +52秒56 |
7位 | 神谷 啓人(京都産業大学) | +1分6秒64 |
8位 | 三浦 一真(チームブリヂストンサイクリング) | +1分15秒69 |
9位 | 三宅 太生(群馬グリフィン) | +1分48秒89 |
10位 | 永井 健太(ヴィクトワール広島) | +2分30秒91 |
text&photo:Satoru Kato
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