優勝経験者2名を擁するランプレ・ISDや、好調のイヴァン・バッソ(イタリア)擁するリクイガス・キャノンデールなど、今年も世界トップチームがジャパンカップに出場する。迎え撃つのは日本を代表する選手たち。新城幸也を始めとする日本の精鋭を集めたジャパンナショナルチームの活躍に期待したい。

ジャパンカップ制圧を目論む世界のトップチーム

ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsuji第20回ジャパンカップに出場するのは合計14チーム。内訳は、世界トップカテゴリーであるUCIワールドツアーのプロ4チームと、海外コンチネンタル4チーム、国内コンチネンタル5チーム、そしてナショナルチームが1チーム。各チーム5名ずつの出場となる。

優勝候補の筆頭は、2005年と2008年にジャパンカップで優勝している「ピッコロプリンチペ(小さな王子)」ことダミアーノ・クネゴ(イタリア)と、2007年大会の覇者マヌエーレ・モーリ(イタリア)を擁するイタリアのランプレ・ISDだ。

イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiクネゴ=モーリの最強タッグは、様々な展開に対応できるのが強み。ジャパンカップ優勝経験者2名の他にも、スペイン有数のワンデーレースであるクラシカ・サンセバスティアンで勝っているレオナルド・ベルタニョッリ、2007年のツール・ド・ロマンディで一緒に逃げた別府史之を僅差で敗ってステージ優勝したマッテーオ・ボーノ、今年ジロ・ディ・レッジョカラブリアで総合優勝し、トロフェオ・ライグエリアでも勝ったダニエーレ・ピエトロポッリが揃う。まさに「本気で勝ちを狙うメンバー」であると言える。

ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) photo:Sonoko.TANAKAイタリアのもう一つのUCIプロチーム、リクイガス・キャノンデールは、昨年2度目のジロ・デ・イタリア制覇を果たしたイヴァン・バッソイヴァン・バッソ(イタリア)がエース。出場停止処分からの復帰戦として注目を集めた2008年大会で3位に入ったバッソにとって、2年ぶりのジャパンカップ出場となる。

バッソは1週間前のジロ・ディ・ロンバルディアで4位。好調なのは本人も認めるところで、チームとして展開を作っていきたいと意気込む。昨年TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)で総合優勝を果たしたクリスティアーノ・サレルノ(イタリア)らの強力なバックアップを得て、バッソが2011年シーズンの締めくくりにかかる。

グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク・サンガード)グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク・サンガード) photo:Kei Tsuji今年ジロ・デ・イタリアで新人賞を獲得したロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)は、ジャパンカップのような起伏に富んだワンデーレースが得意。しかしツール・ド・フランス第7ステージの落車で骨折した左手首の回復が遅れており、良いコンディションでレースに挑めるとは言えない。

「アシストの鏡」として知られ、今年のジロ・デ・イタリアで念願のプロ初勝利を飾ったベテランのパオロ・ティラロンゴ(イタリア)やカザフスタンチャンピオンのアンドレイ・ミズロフ(カザフスタン)らが代役としてアスタナのエースを担う可能性もある。

ネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)ネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) photo:Veeral Patel2009年大会の優勝チームであるサクソバンク・サンガードは、イスラエル、ポーランド、イタリア、オーストラリア、スウェーデンという多国籍な編成。3年連続出場となる長身のグスタフエリック・ラーション(スウェーデン)がエースを担うことになるだろう。ラーションは昨年のクリテリウムで3位に入っている。

UCIコンチネンタルチームのジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズは、ネイサン・ハース(オーストラリア)をエースに据える。まだ22歳と若いライダーだが、直前にオーストラリアで開催されたヘラルドサン・ツアーでは、トップレーサーを抑えて総合優勝を飾っている。

フォルトゥナート・バリアーニ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)フォルトゥナート・バリアーニ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Hideaki.TAKAGIキャンディーがあしらわれたポップなチームジャージが特徴のジェリーベリー・ケンダは、ブラッド・ハフ(アメリカ)やケン・ハンソン(アメリカ)を中心にレースに挑む。スピードのある選手が揃っているため、土曜日のクリテリウムでは注目の存在だ。

2011年シーズンのUCIアジアツアーでチームランキング2位に入ったアザド・ユニヴァーシティは、メンバー全員がイラン人選手。登坂力のある選手が揃っている。6月のツール・ド・シンカラでステージ3勝し総合優勝を飾ったアミル・ザルガリと、現イランナショナルチャンピオンのアッバス・サエディタナに注目したい。

イタリアのダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOは、日本人選手3名を揃えた布陣。エースはジロ・デ・イタリアを7回完走(最高位は2008年の総合12位)し、今年ツール・ド・熊野で総合優勝を飾った37歳のフォルトゥナート・バリアーニ(イタリア)。国内屈指の実力を持つ佐野淳哉や、今年イタリアをベースに活動した内間康平と小森亮平が出場する。


日本の精鋭たちがヨーロッパ勢に立ち向かう

新城幸也(ユーロップカー)新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji海外チームを迎え撃つのが、日本を代表する選手たち。特に今年は海外組の実力者を揃えたジャパンナショナルチームが注目すべき存在となる。

土井雪広(スキル・シマノ)土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji2度のツール・ド・フランス完走、ジロ・デ・イタリア完走と、ロード世界選手権9位の実力を誇る新城幸也(ユーロップカー)、ブエルタ・ア・エスパーニャを日本人として初出場・初完走を遂げた土井雪広(スキル・シマノ)、ベルギーのレースで今シーズンプロ初勝利を上げ、サクソバンク・サンガードへの移籍を決めた宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)、そしてツール・ド・ブルネイで総合優勝&直前のツール・ド・インドネシアでステージ2勝を飾った福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)が揃う。この屈強な4名に加わる吉田隼人(鹿屋体育大学)はU23全日本TTチャンピオンであり、2週間前の国体ロードを制したばかりだ。

「日本代表」を名乗るに相応しいメンバー構成であり、チーム力ではUCIプロチームをも凌駕する。阿部良之が優勝した1997年のジャパンカップからはや14年。今年こそ日本人選手がジャパンカップの表彰台の頂点に立つ姿を見たい。

宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ) photo:Kei Tsuji出場する日本のUCIコンチネンタルチームは5チーム。宇都宮に本拠地を置く宇都宮ブリッツェンにとって、このジャパンカップはホームレース。栗村修監督率いる赤い軍団は、士気高くレースに挑む。

しかしそんな宇都宮ブリッツェンに暗いニュースが飛び込んで来た。今年のJサイクルツアーランキングでトップを走り続けた増田成幸が、ジャパンカップ1週間前のJプロツアー最終戦の輪島大会で落車し、右鎖骨、肩甲骨、肋骨の骨折。直前になって期待のエースの欠場が決まった。

福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)と佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)福島晋一(トレンガヌ・プロアジア)と佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Kei Tsujiエースを失ったチームの中で期待したいのは、。直前のヘラルドサン・ツアーでチーム内トップの総合33位という成績を残した初山翔。なお、経験豊かなベテランで、これまでチームを引っ張って来た柿沼章はこのジャパンカップを最後に引退する。

昨年のジャパンカップで3位に食い込んだ畑中勇介は、Jサイクルツアーの年間総合優勝に輝いたばかり。昨年大会で9位に入っているベテランの鈴木真理の他、プロ入り1年目から目覚ましい活躍を見せる西薗良太や、アシストながら誰もが地力を認める鈴木譲と青柳憲輝が出場。日本を引っ張るシマノレーシングが再び表彰台を目指す。

畑中勇介(シマノレーシング)畑中勇介(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGIUCIアジアツアーのチームランキング1位を目標に、アジアレースを転戦する愛三工業レーシングチームは、現在中国で開催中のツアー・オブ・ハイナンとチームを分けての参戦。2009年の全日本チャンピオンで昨年のジャパンカップ4位の西谷泰治を中心に、クライマーとして調子を上げている鈴木謙一や若手選手を含めた構成でジャパンカップに挑む。

若手育成にも積極的なチームブリヂストン・アンカーは、海外レースでの経験も豊富な選手を揃えて来た。国内屈指のヒルクライマーである狩野智也や、2008年のツール・ド・熊野とパリ〜コレーズ覇者で、昨年ツール・ド・北海道で総合優勝を果たした清水都貴、そして2005年から国体ロードで3連覇した井上和郎らが揃う。

今年UCIコンチネンタル登録してジャパンカップに戻ってくるマトリックス・パワータグは、日本レースに精通するマリウス・ヴィズィアックとヴィンチェンツォ・ガロッファロを擁する。ガロッファロは9月に伊豆市の日本CSCで行われたJプロツアー第14戦経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップで優勝。山下貴宏がツール・ド・北海道第2ステージで優勝。チームとして、シーズン終盤にかけて勢いに乗っている。

また、土曜日に宇都宮市内で行なわれるクリテリウムには、上記の14チームに加えて、特別編成のスペシャルチームが出場する。昨年の大会で逃げて会場を沸かせた全日本チャンピオンの別府史之(レディオシャック)と、競輪のトッププロである村上義弘、深谷知広、新田祐大の3人がこの日だけの特別タッグを組む。

text:Kei Tsuji