スタート後30分で衝撃が走った。「ブリッツェン落車」の情報が駆け巡る。リーダージャージを着る増田成幸だった。それからのシマノは力づくの勝負に出て阿部嵩之と畑中勇介がワン・ツーフィニッシュ。畑中が年間チャンピオンになった。

5周目、メイン集団、福島晋一(ボンシャンス飯田JPT)の姿も5周目、メイン集団、福島晋一(ボンシャンス飯田JPT)の姿も photo:Hideaki.TAKAGI

F 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)が優勝F 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIE1 リーダージャージの岡泰誠(spacebikes.com)が優勝E1 リーダージャージの岡泰誠(spacebikes.com)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI増田VS畑中の最終戦

Jプロツアー最終戦の輪島大会が10月16日(日)、石川県輪島市門前町で行われた。ここ輪島での大会は今年で4回目。今年の注目は何と言っても個人年間総合優勝の行方だ。

リーダーの増田はここまでで10000点。2位につける畑中は9825点で175点差。畑中優勝なら総合優勝。2位ならば増田を6位以下にしないとならない。増田のこのコースでの適性を考えると、畑中が逆転するには実質優勝しかない。

宇都宮ブリッツェンはヘラルドサンツアーと掛け持ちのためメンバーを2つに分けて臨んだ。エースの増田と、地元の中村誠、小坂光そして今大会でブラウブリッツェンから昇格した堀孝明の4名だ。

シマノレーシングはオランダから帰国した阿部嵩之と平塚吉光を加えた8名のフルメンバー。ブリヂストンもエスポワール勢も加わってほぼフルメンバー。ブリッツェン対シマノの戦いに割ってはいるブリヂストンの構図にスタート地点は盛り上がる。

ここでシマノレーシング村上純平の今シーズン限りでの引退のアナウンスが流れる。山形県出身の村上は、鹿屋体育大学4年次の全日本選手権ロードU23で優勝、シマノ入り後はオランダで修行してきた。今年はツール・ド・おきなわが最終戦となる。

門前町内をパレード門前町内をパレード photo:Hideaki.TAKAGI2周目、メイン集団のシマノ、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ら2周目、メイン集団のシマノ、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ら photo:Hideaki.TAKAGI6周目、先頭の4人6周目、先頭の4人 photo:Hideaki.TAKAGI6周目、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)ら追走の4人6周目、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)ら追走の4人 photo:Hideaki.TAKAGI1周目で逃げができる

それぞれの思いを胸に、レースはスタート。門前町内をパレード走行する。
コースは大きな上り2箇所を含む厳しい12.8kmで、これを7周する。
1周目、スタートアタックは伊藤翔吾(京都MASSA-FOCUS-SUPER B)。これに才田直人(ボンシャンス飯田JPT)らが反応し集団はひとつのまま2つ目の上りへ。この頂上手前で普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)と池部壮太(チーム・エスポワール・ブリヂストン)がアタック、これに阿部嵩之(シマノレーシング)と青柳憲輝(シマノレーシング)が合流する。さらに後方から小坂光(宇都宮ブリッツェン)、平井栄一(チーム・エスポワール・ブリヂストン)、小畑郁(なるしまフレンドレーシングチーム八王子)が合流して先頭は7人に。

2周目に増田が落車

2周目、先頭は普久原、池部、阿部、青柳の4名になり、ブリヂストンの2名が先頭を引く。シマノは畑中で優勝を狙うため先頭には出ない。メイン集団はシマノ勢がコントロールする。その後にはブリヂストン、ブリッツェンらが続く。
一つ目の上りを終えて下りに入って増田が単独で落車。路外に横たわる。チームメイトの中村誠、小坂も寄り添う。
増田のいたメイン集団では、増田が落車して復帰していない状況が伝わり、鈴木真理の指示でシマノ勢がペースを下げる。

4周目、先頭の4人は変わらず逃げ続け、ペースの下がったメイン集団から五十嵐丈士(Fuji-Cyclingtime.com Japon)が抜け出す。

中盤から仕切り直したシマノ

5周目、先頭の4人へも増田の復帰が不可能になったことが伝わり、シマノ2人が先頭に立って、今度は逃げ切りの意志でペースを上げる。そしてメイン集団からは狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)、清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)、畑中勇介(シマノレーシング)、鈴木譲(シマノレーシング)、平塚吉光(シマノレーシング)の5人が抜け出し先頭4人を追う。さらにこれを井上和郎(チームブリヂストン・アンカー)、マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)が追う。

7周目、一つ目の上りでついに追走4人が逃げる4人を捕らえる。ここで平塚と清水が下がっていく。そしてすぐに畑中がアタック。差をつけるがこれを狩野が追って吸収、下り区間を経て畑中、阿部、狩野の3人に。ここで阿部がアタックして独走に。2つ目の上り、後方グループの畑中が単独アタックして、前を行く阿部を追い合流。シマノ2人でゴールを目指す。
昨年と同じ展開だ。昨年はもう1周早く2人になり畑中が単独ゴールしたが、今年は2人並んで阿部先着でゴール。見事にシマノのワン・ツー勝利だ。

7周目、ゴールを目指す2人7周目、ゴールを目指す2人 photo:Hideaki.TAKAGI阿部嵩之(シマノレーシング)と畑中勇介(シマノレーシング)がワン・ツーフィニッシュ阿部嵩之(シマノレーシング)と畑中勇介(シマノレーシング)がワン・ツーフィニッシュ photo:Hideaki.TAKAGI
衝撃だった増田の落車
2周目、落車直後の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)2周目、落車直後の増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGI現場に下り急カーブで落車発生の報が入る。通過するとき見えたのはブリッツェンジャージ3名。中村が立っている。横たわっているのはルビーレッドジャージに見えた。カメラのモニターでそれが増田と確認できた。小坂もいる。やがて救急車がコースへ入り増田の手当てをする。意識はしっかりしているが苦痛の表情が見える。右上半身が特に痛いようで(のちに右鎖骨、肩甲骨、肋骨骨折と判明)、担架に載せるのにも時間がかかる。現場は小坂が片付ける。中村は地元での大会を棄て、傷ついた旧友とともに救急車へ乗り込み病院へ向かう。

増田は今大会の、間違いなく主役だった。リーダージャージを着たままのリタイアは衝撃だった。増田は昨年の10月に腰椎を圧迫骨折し、その後のリハビリで不死鳥のごとくよみがえり今年の国内ロードレース界を席巻した。選手間では、以前よりも強くなったと言われるほどだった。増田はふたたび療養期間を過ごす。しかし来シーズンはもっと強くなってレース界に戻ってくるだろう。


中盤以降、作戦通りの展開で勝利のシマノ

衝撃的な増田のリタイアだったが、誰にでも起こり得ることだし、大局的に見ればそれもレースだ。増田が復帰不可能となった時点でシマノレーシングはレースを仕切りなおし、現場は通常のレースに戻った。畑中にとっては、20位でゴールしても年間チャンピオンだった。

シマノの当初の作戦は、厳しい展開にしてゴール前でスプリント力のある選手を入れないことだった。シマノにとってはそこに増田がいてもかまわなかった。この厳しいコースで最後まで先頭に残れる選手でスプリント力が最もあるのは畑中なのだ。

ルビーレッドジャージに最終戦で袖を通した畑中は「自分が10位でゴールしてもこのジャージがもらえた。でもそれはしたくなかった。いつもの走りでワン・ツーで終えたので、胸を張って着ることができる」という。全力で戦い勝つことが、リタイアした最大のライバル増田やブリッツェンに対する、シマノの考える礼儀だった。

個人年間総合優勝の畑中勇介(シマノレーシング)個人年間総合優勝の畑中勇介(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI団体総合優勝のシマノレーシング団体総合優勝のシマノレーシング photo:Hideaki.TAKAGI
結果
P1 88.6km
1位 阿部嵩之(シマノレーシング)2時間36分48秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)
3位 狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)+33秒
4位 鈴木譲(シマノレーシング)+52秒
5位 普久原奨(チームブリヂストン・アンカー)+55秒
6位 青柳憲輝(シマノレーシング)+1分22秒
7位 池部壮太(チーム・エスポワール・ブリヂストン)
8位 鈴木真理(シマノレーシング)+1分45秒
9位 清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)+2分36秒
10位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)+2分57秒

F1/2 25.6km
1位 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)53分09秒
2位 星川恵利奈(湘南ベルマーレクラブ)+1分01秒
3位 橋本みどり(なるしまフレンド)+1分54秒

E1 50.8km
1位 岡泰誠(spacebikes.com)1時間30分08秒
2位 若杉圭祐(BREZZAカミハギRT)+1分16秒
3位 海藤稜馬(EQADS)+1分27秒
4位 奥田瑛史(クラブシルベスト)+1分51秒
5位 田崎友康(F(t)麒麟山Racing)
6位 田端伸行(spacebikes.com)

E2 38.2km
1位 橋詰丈(EQADS)1時間10分29秒
2位 畠山和也(エルドラード・エスペランサ)
3位 津崎忠弘(HEART BEAT Racing但馬)+35秒
4位 岡部健太郎(なるしまフレンド)+52秒
5位 稲津祐哉(HEART BEAT Racing但馬)+1分40秒
6位 桑山和也(シマノドリンキング)+1分55秒

E3 38.2km
1位 岡篤志(spacebikes.com)1時間09分32秒
2位 鶴岡慶太(BREZZAカミハギRT)+05秒
3位 山田俊紀(チームオーベスト)+07秒
4位 小濱健二(Team Speed)+1分31秒
5位 山口啓介(チームCB+)+2分07秒
6位 大野国寿(F(t)麒麟山Racing)

JPT団体年間総合成績
1位 シマノレーシング 28975
2位 宇都宮ブリッツェン 24330
3位 マトリックスパワータグ 13451
4位 愛三工業レーシングチーム 10556
5位 湘南ベルマーレ 9064
6位 なるしまフレンドレーシングチーム八王子 7266

JPT個人年間総合成績
1位 畑中勇介(シマノレーシング)10525
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)10001
3位 鈴木譲(シマノレーシング)7600
4位 西薗良太(シマノレーシング)6551
5位 中村誠(宇都宮ブリッツェン)5952
6位 鈴木真理(シマノレーシング)5425
7位 GAROFALO Vincenzo (マトリックスパワータグ)4850
8位 初山翔(宇都宮ブリッツェン)4779
9位 青柳憲輝(シマノレーシング) 4552
10位 栂尾大知(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)4401

photo&text:高木秀彰
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出版社: TCエンタテインメント