2011年10月15日、今年で105回目を迎えるジロ・ディ・ロンバルディア(UCIワールドツアー)が開催され、ゴール手前の登りで飛び出したオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック)がプロ初勝利を掴んだ。新城幸也(ユーロップカー)は序盤からの逃げに乗ったものの、ヨーロッパ最終戦はリタイアに終わった。

大都市ミラノをスタート大都市ミラノをスタート photo:Cor Vosヨーロッパのロードレースシーズンを締めくくる大一番、ジロ・ディ・ロンバルディア。「モニュメント」の一つに数えられる伝統レースであり、秋色に染まったイタリア北部を駆け抜けることから「落ち葉のクラシック」と呼ばれる。晴れ渡る秋空の下、25チーム・195名の選手たちがミラノをスタートした。

レースはハイスピードな幕開け。1時間近いアタックとカウンターアタックの攻防の末に、ユキヤを含む6名の逃げが決まる。以下の6名は、最大7分近いリードを得て逃げた。

逃げグループを形成した6名
新城幸也(日本、ユーロップカー)
ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)
ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)
クラウディオ・コリオーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
オマール・ベルタッツォ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)
アンドレア・パスクアロン(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)

序盤から100km以上にわたって逃げ続けた新城幸也(ユーロップカー)序盤から100km以上にわたって逃げ続けた新城幸也(ユーロップカー) photo:Riccardo Scanferla一方のメイン集団は、イヴァン・バッソ(イタリア)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の二枚看板を抱えるリクイガス・キャノンデールが徹底的にコントロール。レース中盤の「コルマ・ディ・ソルマーノ(平均勾配6.6%・登坂距離9.5km)」が近づくと、メイン集団の本格的なペースアップが始まった。

このコルマ・ディ・ソルマーノで逃げグループからイタリア人3選手が脱落し、アスタルロサ、ファンスーメレン、ユキヤの3名が1分10秒のリードを保って頂上をクリア。

しかしテクニカルな下りで後続のメイン集団は活性化する。地元ロンバルディア州出身のルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)がリードするグループがメイン集団から飛び出し、ゴールまで68kmを残してユキヤら3名をキャッチ。こうして新たに形成された先頭グループのメンバーは以下の通り。

コルマ・ディ・ソルマーノの下りで形成された先頭グループ
フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)
ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)
マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)
クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)
マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・ISD)
新城幸也(日本、ユーロップカー)
ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)
ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)

コモ湖畔の平坦路を進むコモ湖畔の平坦路を進む photo:Cor Vos先頭グループは35秒のリードでコモ湖沿いのワインディングロードを抜け、「マドンナ・デル・ギザッロ(平均勾配6.2%・登坂距離8.6km)」へ。最大勾配が14%に達するこの登りでニーバリが飛び出し、そのまま独走態勢に持ち込んでギザッロ教会を通過する。ゴールまで残り46km。ジルベールらを飲み込んだメイン集団は、1分40秒遅れでニーバリを追った。

下りを攻め、平坦路に入っても歯を食いしばって逃げたニーバリだったが、やがてその勢いに陰りが見え始める。BMCレーシングチームとチームスカイが牽引するメイン集団は、ペースの落ちたニーバリをラスト16km地点で飲み込む。

ギザッロ教会の前を独走で通過するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ギザッロ教会の前を独走で通過するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vos30名ほどのメイン集団は、ゴール9km手前に位置する最後の勝負どころ「ヴィッラ・ヴェルガノ(平均勾配7.4%・登坂距離3.3km)」に突入した。

登り前半の緩斜面でトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)がペースを上げると、優勝候補のダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)やサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が相次いで脱落。

ヴィッラ・ヴェルガノでアタックするオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック)ヴィッラ・ヴェルガノでアタックするオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック) photo:Cor Vos続いてイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がペースアップを図るとメイン集団は約10名に。ここから頂上1km手前の最大勾配15%区間でザウグがアタック。ジルベールやバッソが苦しむ中、ザウグは軽快なダンシングで細くて曲がりくねった石畳の急坂を駆け上がり、そのまま頂上をクリアする。ゴールまで9kmの下り&平坦区間に入った。

後続はホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)、バッソらがローテーション。しかしザウグとの20秒差が縮まらない。

今年新たにゴール地点に設定されたレッコの街に先頭で姿を現したザウグ。牽制も手伝ってペースが上がり切らない追走グループを振り切り、ザウグが独走のままゴールした。

独走でゴールに飛び込むオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック)独走でゴールに飛び込むオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック) photo:Riccardo Scanferla


緑の紙吹雪が舞う表彰式緑の紙吹雪が舞う表彰式 photo:Cor Vosザウグは身長170cm・体重56kgの小柄な部類に入るクライマー。2004年にサウニエルドゥバルでプロ入りし、以降ゲロルシュタイナーとリクイガス、そして現在レオパード・トレックでキャリア8年目を迎えている。

2008年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合11位に入っている実力者で、今年のブエルタでのチームタイムトライアル勝利を除けば、このロンバルディアがプロ初勝利。このロンバルディアが実質的にラストレースとなるレオパード・トレック(来季はレディオシャック社がメインスポンサー)に、シーズン最後のビッグタイトルを捧げた。

ロンバルディア表彰台の頂点に立ったオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック)ロンバルディア表彰台の頂点に立ったオリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック) photo:Riccardo Scanferla「自分はアシストとしてのキャリアを積んで来た。レースを始めた時から、ずっとエースに仕えるアシストだったんだ。でも今日は違った。コンディションが良かったので、チームがチャンスをくれたんだ。ロンバルディアのようなビッグレースで、ヤコブ(フグルサング)と一緒にチームを率いるのは誇らしかったよ」。ザウグはレース後のインタビューで語る。

「ヤコブが先頭グループに入ったとき、落ち着いて自分のチャンスを待つよう心がけた。チャンスは最後の登り。1週間ずっとイメージしていた通りのアタックが決まったんだ。小柄でスプリント力がないので、後続を突き放して、ゴールまで独走するのが勝ちパターン。自分が勝てる唯一のシナリオが上手くはまった。無線が壊れていたので、そこから全開で踏んでいくしかなかったんだ。こんな幸せな日はないよ」。

レース序盤から100km以上にわたって逃げ、登りで先頭グループに食らいつきながら逃げ続けたユキヤは、ギザッロの登りでメイン集団から脱落。ユーロップカーはメンバー全員がリタイアに終わっている。この日の完走者は195名中63名だった。

ユキヤはこのロンバルディアがヨーロッパ最終戦。日本に帰国し、翌週末のジャパンカップに備える。

選手コメントはレオパード・トレック公式リリースより。

ジロ・ディ・ロンバルディア2011結果
1位 オリバー・ザウグ(スイス、レオパード・トレック)             6h20'02"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)          +08"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
5位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・ISD)
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)+15"
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
9位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アックア・エ・サポーネ)
10位 リカルド・キアリーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ) 

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla