インスブルック(オーストリア)~キアヴェンナの244kmで行われたジロ・デ・イタリア2009第7ステージは、下りで形成された5名の小集団によるスプリントを、前日に引き続き切れのある走りを見せたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)が制した。

序盤にマウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ISD)らの逃げが決まる序盤にマウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ISD)らの逃げが決まる photo:CorVosスタート地点のインスブルックからマロヤ峠(標高1815m)まで徐々に高度を上げ、残りの36kmで標高差1500mを一気に下る。ここまで好天に恵まれてきたジロ・デ・イタリアだったが、この日は時折小雨がぱらつく天気。しかもゴール地点に向かうにつれて天候が悪化し、テクニカルなコーナーが連続する下りでは、冷たい雨と濡れた路面が選手達を苦しめた。

テクニカルなコーナーが連続するマロヤ峠の下りテクニカルなコーナーが連続するマロヤ峠の下り photo:Kei Tsujiこの日注目を集めたのがアスタナの選手が着用するジャージだ。胸からアスタナのロゴとカザフスタンのマークが消えていたのだ。いや、消えていたというのは語弊があるかもしれない。消えてはいないが、ロゴとマークの色が薄くなり、遠目に見ただけでは何もないシンプルなジャージに見える。先日、アスタナが財政上のトラブルを抱えているというニュースが流れたばかりだが、この日新しく支給されたジャージより、支払いが滞っているスポンサーの名前とロゴを薄くしたということだ。1カ月以内にUCIプロツアーライセンスを停止される可能性もあるというアスタナ。今後どのような解決策を模索するのか、動向に注目されるところだ。

マロヤ峠の下りで逃げたアレッサンドロ・ベルトリーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)マロヤ峠の下りで逃げたアレッサンドロ・ベルトリーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:CorVosレースは序盤から4名の逃げグループが形成された。第3ステージでも逃げに加わっていたマウロ・ファッチ(イタリア、クイックステップ)に加え、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ISD)、セルゲイ・クリモフ(ロシア、カチューシャ)、ウラディミール・イサイシェフ(ロシア、シャコベオ・ガリシア)の4名だ。
逃げのグループは、メイン集団に対し、最大9分以上のリードを得た。

終盤にエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)らの逃げが決まる終盤にエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)らの逃げが決まる photo:CorVosしかし、前日は逃げ切りを許したメイン集団も、ラストがテクニカルな下りであることから、ミルラムやガーミン・スリップストリーム、バルロワールドといったチームを中心にペースを上げ、早め早めに逃げグループを捕らえようとする動きに出た。
この結果、タイム差は徐々に詰まり、ファッチが最後の抵抗を見せるもかなわず、逃げの4名は山頂の手前でメイン集団に捕らえられることとなる。

両手を挙げてゴールするエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)両手を挙げてゴールするエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア) photo:Kei Tsuji危険な下りを集団前方でクリアしようとする動きで、集団が活性化される。ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)やイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)らが危険回避のために集団前方に上がってきた。

ステージ優勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)ステージ優勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア) photo:Kei Tsuji山岳ポイントを集団のまま通過したあとで、路面が濡れて視界も悪い下りで、1人の選手が集団から抜け出した。
ディキジョヴァンニのアレッサンドロ・ベルトリーニ(イタリア)だ。ベルトリーニは抜群のダウンヒルテクニックで、あっという間にリードを広げ、単独で逃げ始めた。

マリアローザを着続けるダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)マリアローザを着続けるダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) photo:Kei Tsuji集団は危険を冒してベルトリーニを追うというよりは、いかにトラブルなく下るかに重きを置き、ペースが上がらない。
そんな集団からパラパラと飛び出す選手が現れた。まずパヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)が飛び出し、ロバート・ハンター(南アフリカ、バルロワールド)が追いついた。続いてダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット)、エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア)が追いついた上で、先頭のベルトリーニと合流。5名が先頭グループを形成した。

さらに集団からアンドレー・グリブコ(ウクライナ、ISD)が飛び出すも、グリブコは先頭5名と後続集団との間を単独で走行することとなる。

そして先頭5名は40秒ほどのリードを保ったまま、残り3kmのアーチをくぐった。
逃げ切りを確信したのか、5名の中で牽制が始まる。
最初に動いたのはベルトリーニだ。一瞬でリードを広げたが、背後からブラットがつぶしにかかる。
4名が追いついて、ベルトリーニを先頭にゴール前に入ってきたそのとき、残り300mほどの地点でボアッソンが仕掛けた。
スプリンターのハンターが追うもリードは広がるばかり。ボアッソンは前日のステージに続き爆発的なスプリントを見せ、圧倒的な差をつけて上り基調のゴールスプリントを制した。満面の笑みを浮かべてガッツポーズでゴール。21歳の新鋭がグランツールのステージで優勝を飾った。

エドヴァルド・ボアッソン(チームコロンビア)はノルウェーのタイムトライアルチャンピオンに2度輝いた経歴を持つ。2009年4月8日に行われたヘント~ウェベルヘムでも、冷たい雨の中、混戦を制している。同郷のスプリンター、トル・フースホフト(イタリア、サーヴェロ・テストチーム)と比較されることも多いが、今後フースホフトに負けずとも劣らない活躍が期待される若手選手の1人だ。
5月17日に22歳の誕生日を迎えるボアッソンにとって、この大きな勝利は一足早い誕生日プレゼントとなった。

メイン集団はボアッソンより40秒遅れでゴールし、個人総合上位には変動はないままに終わった。何より危険なコンディションの中、目立ったトラブルなしに終わったことに安堵しているのは選手、チームばかりではないだろう。

ジロ・デ・イタリア第8ステージは2つの山岳ポイントが設定された中級山岳ステージだ。ラストは下り基調だが、ゴール3.4km手前の上りがどう影響するか。スプリンターが勝利するのか、それとも上りで飛び出す選手が現れるのか。ステージ優勝の行方から目が離せない。


ジロ・デ・イタリア2009第7ステージ結果
1位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア) 5h56'53"
2位 ロバート・ハンター(南アフリカ、バルロワールド) +0"
3位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) +0"
4位 ダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア、フジ・セルヴェット) +0"
5位 アレッサンドロ・ベルトリーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) +0"
6位 アンドレー・グリブコ(ウクライナ、ISD) +31"
7位 マシュー・ゴス(オーストラリア、サクソバンク) +40"
8位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ) +40"
9位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、ミルラム) +40"
10位 ベン・スウィフト(イギリス、カチューシャ) +40"

個人総合成績
個人総合順位
1位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) 28h08'48"
2位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) +5"
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +36"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +43"
5位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +50"
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'06"
7位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +1'16"
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、アスタナ) +1'17"
9位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +1'27"
10位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) +1'41"

ポイント賞 マリアチクラミーノ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

山岳賞 マリアヴェルデ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

新人賞 マリアビアンカ
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)

チーム総合成績
チームコロンビア