2012年のMTBカタログの中で目立つのが、29er(トゥーナイナー)ラインナップが拡充されたこと。各モデルの29インチ化が進められ、26インチと共存しながらもその存在感を増している。また、FOX社の革新的なサスペンションAUTO-SAG(オートサグ)を搭載したバイクが登場。シクロクロスバイクCRUXはディスクブレーキに対応した。

往年の名機STUMPJUMPERがリニューアル

スペシャライズドの創業者マイク・シンヤード氏スペシャライズドの創業者マイク・シンヤード氏 photo:Kei Tsuji2012年は29erのラインナップを拡大。MTBラインナップだけを見ても、ベースモデルからS-WORKSまで多くのバイクの29インチバージョンが登場している。

スペシャライズドアドバイザーの竹谷賢二氏曰く「29インチのネガティブな点がなくなっている。29インチの登場から年月が経ち、すでにジオメトリー等が熟成されています。軽いホイールを使えば、26インチから乗り換えても違和感のないコントロール性。やはりスピードが乗ってからの伸び方が違います」。

STUMPJUMPER FSRに搭載されるAUTO-SAG(オートサグ)STUMPJUMPER FSRに搭載されるAUTO-SAG(オートサグ) photo:Kei Tsujiまた、スペシャライズドはS-WORKSのコンセプトをトップダウンでアルミバージョンに反映。アルミを使用することで価格を下げながら、専用設計を施すことで、S-WORKSの乗り味を表現している。竹谷氏も「S-WORKSとアルミフレームを同条件で乗り比べましたが、細かいことを抜きにすれば、乗り味は大差ない」と語る。ライダーの用途に応じた多種多様なバイクが揃った。

バイク設計において重視されているのはコントロール性、快適性、効率性という3つの要素。FSRサスペンションの重要なトピックとして、FOX社のAUTO-SAG(オートサグ)という革新的なサスペンションが登場した。これはショックユニットの空気圧とサグが自動的に適正値に設定されるというもの。ショック自体に空気を注入し、サドルに座ってボタンを押すだけ。2012年はSTUMPJUMPER FSR(スタンプジャンパー・エフエスアール)に採用されている。

リニューアルされたSTUMPJUMPER FSRリニューアルされたSTUMPJUMPER FSR photo:Kei Tsuji

Command Post BlackLite(コマンドポスト・ブラックライト)のコントロールレバーCommand Post BlackLite(コマンドポスト・ブラックライト)のコントロールレバー photo:Kei TsujiオールラウンドなトレイルバイクSTUMPJUMPER FSRがリニューアルオールラウンドなトレイルバイクSTUMPJUMPER FSRがリニューアル photo:Kei Tsuji

高い軽量性を誇るSTUMPJUMPER HT高い軽量性を誇るSTUMPJUMPER HT photo:Kei Tsuji他にもハンドル部のレバーでリモート調整が可能な3ポジションCommand Post BlackLite(コマンドポスト・ブラックライト)が多くのバイクに採用。これにより路面状況や登り、下りなどに応じて、走行しながらサドルの上下調整が可能にとなる。

M4アルミ合金製のハードテイル29er、CARVE(カーヴ)が新登場M4アルミ合金製のハードテイル29er、CARVE(カーヴ)が新登場 photo:Kei Tsuji数あるモデルの中でも、30年の伝統モデルとして知られるSTUMPJUMPER(スタンプジャンパー)の一新が目を引く。FACT IS 11Rカーボンを使用したフルサスペンションのSTUMPJUMPER FSR S-WORKSから、M5アルミ合金製ハードテイルのSTUMPJUMPER HTまで、トレイルライドに特化したバーサタイルなバイクが揃う。STUMPJUMPER HT S-WORKSは29インチながらフレーム重量が1100gを切っている。

世界初の女性用カーボンハードテイル29erとして登場したFATE(フェイト)世界初の女性用カーボンハードテイル29erとして登場したFATE(フェイト) photo:Kei Tsuji「もともとトレイルを楽しく走るというコンセプトで誕生したSTUMPJUMPERが新しくなりました。フロントのストロークが140mmで、CAMBER(キャンバー)との棲み分けがされています。AUTO-SAGなどのサスペンションの進化によって、走行性能や快適性能が上がっているのはもちろんですが、その高い性能を誰でも発揮できるような配慮が詰まっています。リモート調整が可能なCommand Post BlackLiteはただ激しいコースを攻めるためのものではなくて、より安全に、コントローラブルに走るために必要なもの。実際にシートを下げることで下りで余裕が生まれます」と竹谷氏。

また、STUMPJUMPER HTに手が届かないライダー向けに、29インチ専用モデルのCARVE(カーヴ)が登場した。M4アルミ合金製でスペック的には上位モデルに劣るが、名選手ネッド・オーバーエンドが現在愛用するなど、そのポテンシャルは高い。また、クロスカントリーで勝つためのバイク、EPIC(エピック)は29インチのフルサスながら、重量は10kg以下。UCIワールドカップで3勝を飾っている唯一のフルサス29erは確固たる地位を築いている。

世界初の女性用カーボンハードテイル29erとしてFATE(フェイト)がデビュー。無理なく29インチホイールを使用するためのジオメトリーが採用され、女性用にレイアップされたチューブセットによるFACT IS 8Mカーボンフレームは1200gを切る軽量性を誇る。2012年のラインナップを見るにつけ、もはや29erがスタンダードになっている感がある。


ディスクブレーキ搭載のシクロクロスバイク CRUX

アルミフレームで生まれ変わったCRUX(日本仕様とはカラーが異なります)アルミフレームで生まれ変わったCRUX(日本仕様とはカラーが異なります) photo:Kei Tsujiアメリカを中心にしたシクロクロスの人気を受け、シクロクロスバイクのCRUX(クラックス)がリニューアルされた。最大のトピックはディスクブレーキモデルがラインアップされたことだろう(日本仕様は完成車のみディスクマウント付き)。UCI(国際自転車競技連合)のルール変更に伴って、昨シーズンからディスクブレーキの使用が許されている。スペシャライズドはメジャーメーカーとして、いち早くルール変更に対応してきた。

フレームはE5アルミ合金製で、チェーンステーとヘッドチューブを短く設計したジオメトリー。フォークは定評のあるFACTカーボン製で、トップチューブは担ぎやすい特別設計。そしてバッドコンディションでもシフティング性能を維持するための内蔵式ケーブルルーティングが採用されている。フレーム単体販売は8万円とリーズナブル。すでにロードパーツ(コンポーネントやホイール)を持ち合わせているライダーは少ない投資でシクロクロスへの参戦が可能となる。

text&photo:Kei Tsuji in Monterey, USA