2011/08/15(月) - 21:39
このバイク、EMX-5はその背景からしてただ者ではない。エディ・メルクスブランドがトム・ボーネンやシルヴァン・シャヴァネルらが所属する名門チーム「クイックステップ」のバイクスポンサーを2010年から務めていることは周知の通り。そのオフィシャルチームバイクがEMX-5だ。その期待高まる実力の程を紐解いてみよう。
エディ・メルクスというブランドは、ズバリ、「エディ・メルクス」という名選手が興したブランドであり、この辺りはスポーツサイクルに触れた経験のある人は少なからず知っていることだろう。氏は、現役時代驚くべき戦歴を残し、「人食い」とまで称された。その栄光には枚挙にいとまがない。
現役時代、機材にうるさい選手としても有名でだった。例えばウーゴ・デローザにフレーム制作を頼んでいた時期は、年間で50本以上のフレーム制作をしていた、という逸話が残っている。
現役レーサーの身を退いてからも、まだその情熱は冷めることなく、ロードバイク製造という道を選んだ。そして、数々の氏の繊細さを反映させたバイク作りと平行して、欧州トッププロチームのスポンサードも開始。自身もツール・ド・フランスで主催者A.S.O(アモリー・スポーツ・オルガニザシヨン)のアドバイザーをはじめ、ツアー・オブ・カタールなどのレースオルガナイザーとしてレースをバックアップしている。
その同社、現在のバイクラインナップは、カーボン素材を使ったEシリーズとアルミ素材を使ったAシリーズの2本立て。今回紹介するEMX-5は、カーボンを使ったバイクだ。
エディ・メルクス社自身ではカーボンの製造は行っておらず、航空宇宙産業にも従事する専門のサプライヤーから供給を受けている。熱意のあるサプライヤーということで、「豊富な知識と経験を持つサプライヤーは、我々が“正しい自転車を作るための、正しい素材を選択している”という自信を与えてくれます。」と語るほどだ。
この専門のサプライヤーと緊密な協力関係を保つことで、エディ・メルクスは品質の高いカーボン・バイクの提供を可能にしている。例えば、CL+/OSRテクノロジーという同社の代表する技術を導入しているこのEMXシリーズは、異なる繊維特性に対する深い知識と、それに基づいて選ばれた非常に特殊な素材をベースとしてデザインされている、という事だ。
CL+/OSR、それぞれについては、CL+はCARBON LAMINATE+の略で、カーボン繊維シートを重ね合わせながら作るフレーム成型時に、繊維の目を多方向に配する事で、最適な強度と耐久性・乗り心地を確保する、というもの。
OSRは、OPTIMIZED STRUCTURAL REINFORCEMENTの略で、高強度のカーボンと高弾性を持つカーボンを適材適所に使用する技術の事で、重量を抑えながら、高い剛性を確保する事が出来るという。その複数の技術を合わせたカーボンフレームは、基本的にモノコックスタイル。走行中フレームにかかる応力をコンピュータ解析し、上部がフラットなトライアングル形状のトップチューブにするなど、剛性アップと軽量化に最適なバランスを保持する、理想的なフォルムを完成させたという事だ。
エディ・メルクスらしいカーブドシートステーも見直しがされ、これにより横方向への堅さと粘り、上下の振動吸収を一層高めているという。ハンドリング周りではヘッドチューブに大型構造を取り入れ、アッパー側を1 1/8"、ロー側を1 1/5"とし、フロント回りの剛性を高め、スムーズで正確なライン取りをサポート。更に、大口径のベアリングがフロントホイールからダウンチューブに伝わる振動を吸収する働きもあり、結果的に滑らかな乗り味につながっているとの事だ。
フォークとシートステーは扁平のエアロ形状で、うしろに流れるように薄く作られており、空気抵抗の軽減を図っている。BB部も特徴的でボリュームのある大型の構造が、ペダリングパワーをロスなく推進力に変換するよう作られているという。
現在、ロードバイクの世界では主流となったカーボン素材を、名ライダー、エディ・メルクスがどのようにコントロールし味付けしたのか、気になるその実力を2人のインプレッションライダーに聞いてみよう。
—インプレッション
「軽快な走行感こそが、このフレーム最大の特徴」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
このバイクの第一印象は「踏み込んだ時の軽さ」。とにかく驚きました。特にペダルを踏み下ろす時の軽さは群を抜いて良かったです。あまりにも軽く、コンパクトクランクが付いているのではないかと、降りて確認してしまいました。ボリュームのあるBB付近とダウンチューブが要因だと思うのですが、上りでダンシングで踏み込んでもすぐに加速し、小気味よいペダリングが可能です。しかも、タレない。
ついつい足が前に出る、といった感じでした。新しく50HMカーボンを使い、繊維の向きを最適化させているのが、うまくペダリングに影響しているのかもしれませんね。去年のツールではシャバネルが逃げて、クイックステップは今年もやはり逃げで活躍していますが、逃げていて巡航している時でもどんどん推進力に変わる感じがして、とにかくペダリングが楽な、どんどん走りたくなるイメージを受けました。気持ちよく逃げているんだろうな、と彼らの気持ちが分かりますね(笑)。
素材が変わったことで剛性や特性も変わって、推進力にプラスに働くようになったのでしょうか。エディ・メルクス、凄い! という感じですね。カーボン特有の振動を抑えるようなところも良かったです。やっぱり剛性のバランスなのでしょうか。「カチカチ」「たわまない」ではなく、ガッシリすぎず程よい剛性。おそらくトップチューブなどで振動を逃がしていると思います。
乗り心地もすごく良かったですね。やはりこのBB付近、ダウンチューブ、チェーンステーといった下回りが効いているのだと思います。全体の印象も硬すぎず、ほどよい剛性感でバランスが取れていて、走りの軽さと快適性が融合されたフレームです。軽快な走行感こそが、このフレーム最大の特徴でしょう。
また、高速走行時やコーナーリングの安定性も高く、さらに路面の衝撃吸収性も比較的高いのは、特徴的なフロントフォークとベントしたシートステイが貢献しているのだと思います。
ルックスも、他にない感じがいいですね。クイックステップのカラーリングが鮮やかで新鮮なイメージに感じます。好みは分かれると思いますが、ぼくは格好いいと思います。ホリゾンタル・スタイルにも拘っているんでしょうね。こういった姿勢もありだと思います。デザイン的にも、常に先鋭的なデザインででおもしろいですね。
ジオメトリーは未だにメルクス自身が決めているそうですが、「レースにおける安全性第一で、軽すぎるバイクは作らない」というポリシーを持つとも聞きます。確かに安心して乗れる質実剛健さがあります。選んで間違いのない一台だと思います。
価格を気にする人はいるかもしれません。果たして値段が高いだけの事はあるのか? 結論は、「あります」。走りの効率性やレースバイクの性能を求める人には間違いなくマッチするバイクだと思います。特に悪いところが見当たらない、走りの良さで勧められるバイクです。レース志向の人には特に満足できる一台なのではないかな、と感じました。走ることが大好きな人には最高です。
「本領を発揮するのは長い距離&スピード域が高いレース」
白川賢治(YOUCAN リバーシティ店)
まず最初にひとこと。「すごく良かった」。これ、必須です。同時に試乗した同社のAMX-5と較べて、全く別の乗りものですね。本当に、「ロードレーサー」です。
でもだからといって、ガチガチに堅くてグイグイ進んでいくか、というと決してそういうでもない。ダンシングしてもフォークの剛性がしっかりしていて、その良さが際立ちます。ハンガー周りも剛性は高めに感じるんですが、逆に、踏んでなくてもきれいにペダリングすれば自転車が、感覚的には「踏んでる以上に進んで行く」。そういうキャラクターを持ったバイクです。
ただし、こういう特性なので、ガチャ踏みしちゃうとすぐに足にきちゃうかもしれませんね。きれいにペダリング出来るスキルがあると、もの凄い走ってくれるバイクです。なので、このバイクをうまく進めるには、ギア比に関係なく無理に踏みすぎないこと。トルクに変動のない滑らかなペダリングができればどんどんと進んでくれます。
ここでまたおもしろいのが、剛性が高いのでそこからでもさらに踏めてしまうんです。でも、そこで踏む必要はないんです。バイクが勝手に前に行ってくれるので(笑)。だから、踏まなければいけないレース、シチュエーションになれば、そこまで足を温存しておいて、勝負所でグンッと踏めばスパッと反応してくれる。こういった所にまさしく「レース用の自転車なんだな」という感覚を感じます。乗っていて楽しかったですね。
メルクスの信条として軽いバイクを作らないと言いますが、ぼくも自分のバイクの重量を計ったことが一度もなく、何kgか知りません。レーサーはバイク重量、というものを気にしませんし、計った重量でなくて走って軽いバイクということが重要なのであって、その点、このバイクは実際に登りなどのシチューエーションでそれを身体で感じることができました。ダンシングはそんなに多用しないとしても、フロント周りの剛性が高く、非常に軽くバイクを振れて、走りの軽さを感じます。
ジオメトリーはメルクス自身が決めているということですね。フロントフォークがストレート形状だということもあるのかもしれませんが、意外と切れ込むところもあります。そこはちょっとクセはあるかな、と。すぐに慣れてしまう範囲ではありますが。全体のジオメトリーも妙にフロント周りがクイックな感覚はないので、集団の中で変にフラフラして気を遣ってしまうバイクではありません。
ターゲットとしてはずばり、ロード選手・レースでしょうね。ホビーではなくて(例えホビーでも)長距離を走る人です。本当にロードレースを走りたい、という人向け。本領を発揮するのは長い距離&スピード域が高いレースだと思います。
エディ・メルクス EMX-5
カラー:ブラック、レッド、クイックステップ
チューブ:CARBON 50HM HS1K
サイズ:480、500、520mm(プロ・ジオメトリー)
重量:1,450g(フレーム、フォーク)
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8" ボトム:1-1/5"
価格:フレームセット 418,000円(税込)
インプレライダーのプロフィール
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
ウェア協力:MAVIC
text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
エディ・メルクスというブランドは、ズバリ、「エディ・メルクス」という名選手が興したブランドであり、この辺りはスポーツサイクルに触れた経験のある人は少なからず知っていることだろう。氏は、現役時代驚くべき戦歴を残し、「人食い」とまで称された。その栄光には枚挙にいとまがない。
現役時代、機材にうるさい選手としても有名でだった。例えばウーゴ・デローザにフレーム制作を頼んでいた時期は、年間で50本以上のフレーム制作をしていた、という逸話が残っている。
現役レーサーの身を退いてからも、まだその情熱は冷めることなく、ロードバイク製造という道を選んだ。そして、数々の氏の繊細さを反映させたバイク作りと平行して、欧州トッププロチームのスポンサードも開始。自身もツール・ド・フランスで主催者A.S.O(アモリー・スポーツ・オルガニザシヨン)のアドバイザーをはじめ、ツアー・オブ・カタールなどのレースオルガナイザーとしてレースをバックアップしている。
その同社、現在のバイクラインナップは、カーボン素材を使ったEシリーズとアルミ素材を使ったAシリーズの2本立て。今回紹介するEMX-5は、カーボンを使ったバイクだ。
エディ・メルクス社自身ではカーボンの製造は行っておらず、航空宇宙産業にも従事する専門のサプライヤーから供給を受けている。熱意のあるサプライヤーということで、「豊富な知識と経験を持つサプライヤーは、我々が“正しい自転車を作るための、正しい素材を選択している”という自信を与えてくれます。」と語るほどだ。
この専門のサプライヤーと緊密な協力関係を保つことで、エディ・メルクスは品質の高いカーボン・バイクの提供を可能にしている。例えば、CL+/OSRテクノロジーという同社の代表する技術を導入しているこのEMXシリーズは、異なる繊維特性に対する深い知識と、それに基づいて選ばれた非常に特殊な素材をベースとしてデザインされている、という事だ。
CL+/OSR、それぞれについては、CL+はCARBON LAMINATE+の略で、カーボン繊維シートを重ね合わせながら作るフレーム成型時に、繊維の目を多方向に配する事で、最適な強度と耐久性・乗り心地を確保する、というもの。
OSRは、OPTIMIZED STRUCTURAL REINFORCEMENTの略で、高強度のカーボンと高弾性を持つカーボンを適材適所に使用する技術の事で、重量を抑えながら、高い剛性を確保する事が出来るという。その複数の技術を合わせたカーボンフレームは、基本的にモノコックスタイル。走行中フレームにかかる応力をコンピュータ解析し、上部がフラットなトライアングル形状のトップチューブにするなど、剛性アップと軽量化に最適なバランスを保持する、理想的なフォルムを完成させたという事だ。
エディ・メルクスらしいカーブドシートステーも見直しがされ、これにより横方向への堅さと粘り、上下の振動吸収を一層高めているという。ハンドリング周りではヘッドチューブに大型構造を取り入れ、アッパー側を1 1/8"、ロー側を1 1/5"とし、フロント回りの剛性を高め、スムーズで正確なライン取りをサポート。更に、大口径のベアリングがフロントホイールからダウンチューブに伝わる振動を吸収する働きもあり、結果的に滑らかな乗り味につながっているとの事だ。
フォークとシートステーは扁平のエアロ形状で、うしろに流れるように薄く作られており、空気抵抗の軽減を図っている。BB部も特徴的でボリュームのある大型の構造が、ペダリングパワーをロスなく推進力に変換するよう作られているという。
現在、ロードバイクの世界では主流となったカーボン素材を、名ライダー、エディ・メルクスがどのようにコントロールし味付けしたのか、気になるその実力を2人のインプレッションライダーに聞いてみよう。
—インプレッション
「軽快な走行感こそが、このフレーム最大の特徴」
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
このバイクの第一印象は「踏み込んだ時の軽さ」。とにかく驚きました。特にペダルを踏み下ろす時の軽さは群を抜いて良かったです。あまりにも軽く、コンパクトクランクが付いているのではないかと、降りて確認してしまいました。ボリュームのあるBB付近とダウンチューブが要因だと思うのですが、上りでダンシングで踏み込んでもすぐに加速し、小気味よいペダリングが可能です。しかも、タレない。
ついつい足が前に出る、といった感じでした。新しく50HMカーボンを使い、繊維の向きを最適化させているのが、うまくペダリングに影響しているのかもしれませんね。去年のツールではシャバネルが逃げて、クイックステップは今年もやはり逃げで活躍していますが、逃げていて巡航している時でもどんどん推進力に変わる感じがして、とにかくペダリングが楽な、どんどん走りたくなるイメージを受けました。気持ちよく逃げているんだろうな、と彼らの気持ちが分かりますね(笑)。
素材が変わったことで剛性や特性も変わって、推進力にプラスに働くようになったのでしょうか。エディ・メルクス、凄い! という感じですね。カーボン特有の振動を抑えるようなところも良かったです。やっぱり剛性のバランスなのでしょうか。「カチカチ」「たわまない」ではなく、ガッシリすぎず程よい剛性。おそらくトップチューブなどで振動を逃がしていると思います。
乗り心地もすごく良かったですね。やはりこのBB付近、ダウンチューブ、チェーンステーといった下回りが効いているのだと思います。全体の印象も硬すぎず、ほどよい剛性感でバランスが取れていて、走りの軽さと快適性が融合されたフレームです。軽快な走行感こそが、このフレーム最大の特徴でしょう。
また、高速走行時やコーナーリングの安定性も高く、さらに路面の衝撃吸収性も比較的高いのは、特徴的なフロントフォークとベントしたシートステイが貢献しているのだと思います。
ルックスも、他にない感じがいいですね。クイックステップのカラーリングが鮮やかで新鮮なイメージに感じます。好みは分かれると思いますが、ぼくは格好いいと思います。ホリゾンタル・スタイルにも拘っているんでしょうね。こういった姿勢もありだと思います。デザイン的にも、常に先鋭的なデザインででおもしろいですね。
ジオメトリーは未だにメルクス自身が決めているそうですが、「レースにおける安全性第一で、軽すぎるバイクは作らない」というポリシーを持つとも聞きます。確かに安心して乗れる質実剛健さがあります。選んで間違いのない一台だと思います。
価格を気にする人はいるかもしれません。果たして値段が高いだけの事はあるのか? 結論は、「あります」。走りの効率性やレースバイクの性能を求める人には間違いなくマッチするバイクだと思います。特に悪いところが見当たらない、走りの良さで勧められるバイクです。レース志向の人には特に満足できる一台なのではないかな、と感じました。走ることが大好きな人には最高です。
「本領を発揮するのは長い距離&スピード域が高いレース」
白川賢治(YOUCAN リバーシティ店)
まず最初にひとこと。「すごく良かった」。これ、必須です。同時に試乗した同社のAMX-5と較べて、全く別の乗りものですね。本当に、「ロードレーサー」です。
でもだからといって、ガチガチに堅くてグイグイ進んでいくか、というと決してそういうでもない。ダンシングしてもフォークの剛性がしっかりしていて、その良さが際立ちます。ハンガー周りも剛性は高めに感じるんですが、逆に、踏んでなくてもきれいにペダリングすれば自転車が、感覚的には「踏んでる以上に進んで行く」。そういうキャラクターを持ったバイクです。
ただし、こういう特性なので、ガチャ踏みしちゃうとすぐに足にきちゃうかもしれませんね。きれいにペダリング出来るスキルがあると、もの凄い走ってくれるバイクです。なので、このバイクをうまく進めるには、ギア比に関係なく無理に踏みすぎないこと。トルクに変動のない滑らかなペダリングができればどんどんと進んでくれます。
ここでまたおもしろいのが、剛性が高いのでそこからでもさらに踏めてしまうんです。でも、そこで踏む必要はないんです。バイクが勝手に前に行ってくれるので(笑)。だから、踏まなければいけないレース、シチュエーションになれば、そこまで足を温存しておいて、勝負所でグンッと踏めばスパッと反応してくれる。こういった所にまさしく「レース用の自転車なんだな」という感覚を感じます。乗っていて楽しかったですね。
メルクスの信条として軽いバイクを作らないと言いますが、ぼくも自分のバイクの重量を計ったことが一度もなく、何kgか知りません。レーサーはバイク重量、というものを気にしませんし、計った重量でなくて走って軽いバイクということが重要なのであって、その点、このバイクは実際に登りなどのシチューエーションでそれを身体で感じることができました。ダンシングはそんなに多用しないとしても、フロント周りの剛性が高く、非常に軽くバイクを振れて、走りの軽さを感じます。
ジオメトリーはメルクス自身が決めているということですね。フロントフォークがストレート形状だということもあるのかもしれませんが、意外と切れ込むところもあります。そこはちょっとクセはあるかな、と。すぐに慣れてしまう範囲ではありますが。全体のジオメトリーも妙にフロント周りがクイックな感覚はないので、集団の中で変にフラフラして気を遣ってしまうバイクではありません。
ターゲットとしてはずばり、ロード選手・レースでしょうね。ホビーではなくて(例えホビーでも)長距離を走る人です。本当にロードレースを走りたい、という人向け。本領を発揮するのは長い距離&スピード域が高いレースだと思います。
エディ・メルクス EMX-5
カラー:ブラック、レッド、クイックステップ
チューブ:CARBON 50HM HS1K
サイズ:480、500、520mm(プロ・ジオメトリー)
重量:1,450g(フレーム、フォーク)
カーボンフォーク:トップ: 1-1/8" ボトム:1-1/5"
価格:フレームセット 418,000円(税込)
インプレライダーのプロフィール
二戸康寛(なるしまフレンド立川店)
なるしまフレンド神宮店販売チーフを経て現在は立川店勤務。かつて実業団チーム日本鋪道(昨年までのチームNIPPO)に所属してツール・ド・北海道をはじめとした国内外のトップレースを走った経験を持つ。高校時のインターハイ2位を始めツールド北海道特別賞(堅実なアシストに贈られる賞)やツールド東北総合4位等の実績を持つ。なるしまフレンドに入社後もレース活動を欠かさない36歳にしていまだ現役のJPTレーサー。ショップではレースから得た経験を通じ自転車の魅力と楽しさをより多くの人に伝えられるよう日々自分磨きに勤しんでいる。現在の愛車はタイム・RXインスティンクト。
なるしまフレンド
白川賢治(YOU CAN リバーシティ店)
2010年4月に山梨県中央市にOPENしたYOUCANリバーシティ店の店長。高校時代から20代後半まで競技に打ち込み、現役時代にはツール・ド・北海道総合スプリント賞や全日本選手権100kmチームタイムトライアル優勝、全日本選手権ポイントレース3位等の成績を収める。実業団レースを走った経験や、輸入代理店において広報車両のセットアップを担当した経験を生かしながら、自身の「自転車大好き」な気持ちで一生つき合える自転車の楽しみを提供できるショップを目指している。普段はキャノンデール・スーパーシックスHI-MODに乗る。
YOU CAN
ウェア協力:MAVIC
text:Harumichi SATO
photo:Makoto AYANO
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