アドリア海に面したトルトレートのスタート地点は「果たしてコンタドールはマリアローザをライバルたちに明け渡すのか?」という話題で持ち切りだった。アルデンヌ・クラシックのような起伏に富んだ第11ステージで、ライバルチームは攻勢に出た。

閑散としたトルトレートのビーチ閑散としたトルトレートのビーチ photo:Kei Tsujiどれだけアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)が強くても、こんな早い時期からマリアローザを保持していれば、必然的にアシストたちを消耗させることになる。重要なドロミテ山岳3連戦を前にアシストがヘトヘトになっていては元も子もない。

少ないタイム差でライバルを先行させ、マリアローザを「プレゼント」するのは充分にあり得ることだ。

トレーニング仲間のユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)と別府史之(日本、レディオシャック)トレーニング仲間のユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)と別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji特にこの日のステージはマルケ州で、ゴール地点カステルフィダールドはミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)の故郷から25kmほどしか離れていない。ステージ優勝争いに総合争いが絡み合う複雑でスリリングなレースになるのは目に見えていた。

別府史之(レディオシャック)はスタート地点の近くのホテルから自走でやってきた。午前中に50km離れたアスコリ・ピチェーノの歯医者に出向き、前日のエスケープ中に外れた歯の詰め物を治したという。

スタートを待つデーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)らスタートを待つデーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)ら photo:Kei Tsuji詰め物のない歯で前夜のご飯を食べれたのか聞くと「問題のない反対側の歯で噛んだから大丈夫です」と答える。レディオシャックのマッサーのリッチーは「フミは新しい歯を手に入れてパワーアップした。もうなんにも問題ない」とおどける。

前日の逃げで更に知名度を上げたフミが、観客をかき分けてスタート位置についた。山岳3連戦に向けて体力温存かと思いきや「今日も逃げたいですね。チャンスがあれば序盤から行きます」との宣言。前日に147km逃げたことを全く感じさせない元気な姿を見せた。

トルトレートに登場したピンクのステージに釘付けトルトレートに登場したピンクのステージに釘付け photo:Kei Tsujiスタートラインの最前列の数メートル前に、デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)がいた。「昨日のアタック、かっこ良かったよ」と伝えると「驚いたか?サプライズアタックだ。周りを驚かすああいう動きが好き。今日も最初から動いて行く」。

第3ステージで上位に入り、イギリス人選手として初めて全てのグランツールでリーダージャージを着たミラー。この日は有言実行のエスケープを試みたが、落車によって遅れてしまう。集団から脱落したミラーは10分遅れでカステルフィダールドにゴールした。

マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)が登場マリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)が登場 photo:Kei Tsuji第3ステージで失った命、ワウテル・ウェイラントの葬儀に合わせた1分間の黙祷の後、ビーチリゾートのトルトレートをスタート。レース序盤はラジオコルサ(競技無線)が鳴りっぱなしで、「アタック」と「吸収」の繰り返し。

逃げ切りが決まりやすいコースレイアウトだけにどのチームも躍起になっていて、しかもそこに総合に関連した動きも絡むことから、逃げが決まらない。アップダウンコースにも関わらず、最初の1時間の平均スピードは43.7km/に達した。

サクソバンク・サンガードがコントロールするメイン集団が2分遅れで登場サクソバンク・サンガードがコントロールするメイン集団が2分遅れで登場 photo:Kei Tsuji66km地点でようやく決まった逃げグループに、リクイガス・キャノンデールとランプレ・ISDはそれぞれ選手を送り込んだ。逃げグループの中には総合3位・1分19秒遅れのクリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)の姿も。ルメヴェルはこのステージを「マリアローザを着る最後のチャンス」と捉え、果敢に集団から飛び出した。

ガーミン・サーヴェロのミラーがコンタドールに「ルメヴェルへのマリアローザの移動」を願い出たと言われている。しかし総合上位の選手を擁する他のチームや、ステージ優勝狙いアンドローニ・ジョカトリやファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリが集団牽引に興味を示したことで、逃げグループとのタイム差は縮小する。

メイン集団から飛び出したジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)が、ラスト250mでダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)に迫るメイン集団から飛び出したジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)が、ラスト250mでダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)に迫る photo:Kei Tsujiフランス人がジロで最後にマリアローザを着たのは、今から12年も前の話。1999年のローラン・ジャラベール以来、久々のフランス人マリアローザが誕生するかと思われたが、メイン集団とのタイム差は縮まるばかり。ペースを落とさないメイン集団の追撃により、ルメヴェルの野望は敢え無く断たれた。

結果、コンタドールはマリアローザを守った。コンタドールは記者会見の冒頭に「昨日は記者会見に姿を現さなくてすまなかった」と謝罪した。ステージ優勝者やマリアローザ着用者はレース後の記者会見への出席が義務づけられていて、それを破ったコンタドールには1000スイスフラン(約93000円)の罰金が科せられている。

ラスト4km地点の落車で足止めを食らった別府史之(日本、レディオシャック)が1分49秒遅れでゴールを目指すラスト4km地点の落車で足止めを食らった別府史之(日本、レディオシャック)が1分49秒遅れでゴールを目指す photo:Kei Tsuji「このジロで勝ちたい(総合優勝したい)のなら、冷静に考えると今マリアローザを着ているべきじゃない。マリアローザを手放すことも考えている。でも明日はスプリンター向きの平坦ステージだから総合成績は動きそうにない」。

コンタドールはマリアローザを着て山岳3連戦に挑むことになる。「プレッシャーへの対処には慣れている。ここ数年のゴタゴタで精神的に強くなった」。コンタドールの言葉は自信に溢れている。

フミは1分49秒遅れのグループでゴール。暑さもあり、アップダウンコースで集団から脱落したのかと思ったが、ラスト3〜4kmで発生した落車で集団から遅れてしまったと言う。「今日は暑くてボトルを何度も運んで、みんなの喉を潤した。序盤からアタックとアップヒルが続き、ハイペースの展開だったけど、ずっとメイン集団に位置して走った」。

すでにジロはレースの折り返し地点に差し掛かっているが、フミの安定感は変わらない。翌日の第12ステージで、レディオシャックはマヌエル・カルドソ(ポルトガル)のスプリント勝利を目指す。

text&photo:Kei Tsuji in Castelfidardo, Italy
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