今年のジロ・デ・イタリアはもっともハードなグランツールだと言われる。もちろん異論は各種あるだろうが、ツールやブエルタに比べても、コースに未舗装が取り入れられたり、山岳ステージが多すぎたり、とくにステージ間の移動が多すぎたり。選手たちの愚痴を聞いてみよう。

関係車両がフェリーでシチリア島に渡る関係車両がフェリーでシチリア島に渡る photo:Kei Tsujiエトナ山での第9ステージを終えたジロ。トリノでジロをスタートさせてからイタリア半島をほぼ完全に南下し、シチリアへ渡った。そして今度は勝利した夜のうちに飛行機とバスを乗り継いで本土へ大きく引き返す。海岸線で3日間のステージを終えたら、3時間のドライブを経て木曜のステージへと移動する。

アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)は土曜にツィッターで「スタートまで1時間半、そしてレースは217km、そしてさらにホテルまで2時間」とつぶやいている。

その前日、マッダローニまでの移動には1時間47分かかった。コンタドールがエトナ山に登る前には、他の関係者は1時間半のドライブと1時間のフェリー移動を強いられている。関係者は第9ステージが終わると休息日を過ごすためにテルモリへと移動する。しかし、その移動には関係者たちは10時間のドライブを強いられた。

「そうなるのは分かりきっていたことだけど、ジロじゃ珍しいことじゃないね。自転車、徒歩、バス、フェリー、飛行機、すべての乗り物を使って皆が移動するのを見るのはちょっと面白い感じだね」。とマイケル・バリー(チームスカイ)は言う。

フェリーの乗船を待つフォトグラファーたちのモトフェリーの乗船を待つフォトグラファーたちのモト (c)Kei.TSUJIロバート・ハンター(南アフリカ、レディオシャック)は「年を重ねるごとに悪くなっていくな。ジロはいつもこうだ。改善する気なんて無いんだろうな。ハードなレースの一日のあとで、何時間もクルマのシートに座らなきゃいけないなんて、そして深夜まで食事はおあずけ。もうどうにでもなれって感じ。泣いたって何にもなりゃしない」と嘆く。

バリーは付け加えた。「肉体的にも精神的にも試されている感じ。止まらないね。僕らはどんなときだってヒマさえあれば休まなきゃならない」。

バリーは事態をポジティブに捉えている。「チームスカイをはじめ他のチームもラグジュアリーなチームバスを移動に使っている。細切れの時間を束ねて休めるようでなければ自転車選手は務まらない。さもないとホテルの個室を望むことになる」。

そしてジロに帯同するジャーナリストたちは例外なく10時間の移動ドライブを強いられた。実際僕もそうだ。ジロのレースディレクター、アンジェロ・ゾメニャンの理屈はこうだ。「9時間のクルマの運転は、途中で停まって休めるから自転車よりずっと楽だろう?」。

今年のジロにはまだまだ「つなぎ移動」がたっっぷり待ち構えている。エトナから本土への移動は困難なうちの一つだった。でもそうでなければ3週間でイタリアの17から20の地域をくまなく廻ることはできない。

フォトグラファー辻啓のフィアット500  午後8時、エトナ火山を出発し、カーフェリーへフォトグラファー辻啓のフィアット500 午後8時、エトナ火山を出発し、カーフェリーへ (c)Kei.TSUJIフォトグラファーの辻啓は、シチリアから夜のうちフェリーで移動したが、賢い方法だった。本土のサレルノまでフェリーを使うと、ドライブ1時間、フェリー8時間、ドライブ3時間でテルモリへ。陸路移動をメインにすれば、ドライブ1時間、メッシーナ海峡を渡るフェリー30分、ドライブ7時間でテルモリへ。

とにかく、ジロを追いかけるのは大変だ。グランツールを追うジャーナリストになりたい人は行動力を磨くこと。

text Gregor Brown in Termoli
translation:Makoto.AYANO
photo:Kei.TSUJI