“海外最終レース”としてツアー・ダウンアンダーに出場するランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)が、レース開幕前日の1月15日に記者会見を開催。レースの意気込みを語ったが、記者からはドーピング捜査に関する質問が集中した。

記者会見に登場したランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)記者会見に登場したランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vos現在、アメリカ食品医薬品局(FDA)がアームストロングのドーピング捜査に乗り出している。事の発端は、元チームメイトのフロイド・ランディスによる告発だ。昨年4月、ランディスは、アームストロングがツール・ド・フランスで圧倒的な力を示していた7年の間、ドーピングが常習化していたと告発した。

アームストロングはドーピング捜査が普段の生活に何も影響していないと語る。そして、自身の潔白さを改めて主張する。

ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)にはドーピングや給与支払に関する質問が飛ぶランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)にはドーピングや給与支払に関する質問が飛ぶ photo:Cor Vos「ドーピング捜査の生活への影響はゼロだ。悩んで眠りにつけないなんてことはない」アームストロングは記者会見でそう言い切った。本格化するドーピング捜査に対処するため、アームストロングは法定代理人マーク・ファビアーニ氏と弁護士にブライアン・デリー氏を雇っている。

「自分の口からはこれ以上言えない。自分には5人の子どもを育て、(リブストロング)基金を率い、ロードレースに打ち込む使命がある。(ドーピング捜査に)時間を割くわけにはいかない。対応は専門家に任せている。ネットの掲示板を根気よくスクロールしても真実は見えて来ない」

ランディスはFDAの捜査官であるジェフ・ノヴィツキー氏にEメールを送り、アームストロングのドーピングの手口を説明したとされている。ノヴィツキー氏は当時のチームメイトであるヤロスラフ・ポポヴィッチ、ケヴィン・リヴィングストン、タイラー・ハミルトンを連邦大陪審で証言させ、その後スペイン、フランス、イタリアに出向いて現地当局と情報交換を行なった。長期に渡ってアームストロングとスポンサー関係にあるナイキ社、オークリー社、トレック社も情報提供を行なったとされている。

ノヴィツキー氏には、陸上競技選手のマリオン・ジョーンズ(シドニー五輪で5つのメダルを獲得したが、のちに剥奪)や、メジャーリーガーのバリー・ボンズに対して捜査を行なった経歴がある。ジョーンズはステロイド使用の疑いで禁固6ヶ月の実刑。ボンズは薬物疑惑に関して嘘の証言を行なったとして起訴されている。

これまでも数々のドーピング疑惑がかけられてきたアームストロングだが、実際にドーピング検査で陽性反応が検出されたことは一度もない。「1999年以降、ずっと矢面に立たされ続けている。だが告発されるようなことは何一つとしてしていない。そう断言出来る。10何年も、何かを隠し通せるような世の中ではない」

アームストロングは8月にコロラド州で初開催されるステージレースでキャリアに幕を下ろす予定だ。

text:Gregor Brown in Adelaide, Australia
translation:Kei Tsuji
photo:Cor Vos