2011/04/07(木) - 07:05
多くのメーカーがアルミフレームをエントリーモデルと位置づけるなか、フォーカスでは今でも高品質なアルミモデルをリリースし続けている。ここに紹介するCULEBRO(クレブロ)は、そんなフォーカスが自信を持って放ったアルミの最高級モデルだ。その実力は想像以上のものだった。
高い精度で人気を誇るドイツのブランド、フォーカス。他の多くのメーカー同様、ハイエンドモデルはIZALCOやCAYOといったカーボンモデルがその役目を担っているが、今でも根強い人気を誇るアルミモデルでもしっかりと高品質なモデルを作り続けている。それがここに紹介するCULEBROだ。
フレームに使用される素材は、トリプルバテッド加工が施されたアルミチューブだ。3段階に肉厚が変化するチューブによって、効率的に剛性アップと軽量化という相反する要素を高次元で両立している。もちろん、フォーカスのために用意されたオリジナルチュービングである。
アルミはチューブの断面形状でその性格が大きく変化する。フォーカスでは様々な形状をテストし、もっとも少ない(=軽い)材料でもっとも剛性が出せるように最善の注意が払われている。トップチューブの外径がヘッド付近で太くなっているのは、そんな試行錯誤の結果だ。
アルミフレームの美点は、何といってもそのカチッとした乗り味だ。軽く・硬いという素材の特性から、スチールともカーボンとも違う乗り味が醸し出されるのだ。そんなアルミの特性を生かすべく、メイントライアングルはとても力強い作りとなっている。ボトムブラケットにBB30を採用しているのも、そんなフォーカスの心意気の表れだ。
一方、アルミフレームで問題となるのは振動吸収性の悪さだ。確かに1990年代頃のアルミフレームは振動吸収性が悪いものが多く、それを補うためにカーボンフォークが一気に普及したほどだった。しかし、現代の設計技術は、そんなアルミのネガティブな部分を消し去ることに成功している。
CULEBROではシートステーの形状を徹底的に追求し、横方向に緩やかにベントさせた独特な形状のシートステーを完成させた。これは「フレックス・チューブ・ウィング・デザイン」と名付けられており、CULEBROの最大のウリのひとつとなっている。このシートステーにより、CULEBUROはアルミとは思えないほどの振動吸収性の良さも獲得しているのだ。
リアエンドには、カーボンのハイエンドモデル・IZALCOなどの共通の「3Dドロップアウト」を採用する。IZALCOの場合、カーボンで一体成形されたものだが、もちろんCULEBROの場合はアルミの溶接で形作られている。その仕上がりは美しく、そして力強い。
さて、そんな魅力溢れるCULEBROをテストをしたのは、元プロサイクリストの三船雅彦とMTBクロスカントリーライダーの斉藤亮。果たして彼らの評価はどのようなものだったのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう!
―インプレッション
「ぜひレースで使ってみたい!」
三船雅彦(元プロサイクリスト)
個人的にはアルミフレームというのはどうも苦手で、現役時代はスチールかチタン、カーボンをメインに乗ってきた。私のペダリングにアルミの特性はあまり合っていなかったのだ。しかし、このCULEBROに乗って驚いた。上りでもスプリントでもグイグイと面白いほど加速してくれて、私の脚質にもピッタリの感じなのだ。「アルミフレームもここまで進化したんや!」と目から鱗が落ちる思いだった。
踏み出しの加速感はとても軽快だ。ペダルにグッと力をかけると、フレームがそれをしっかりと受け止めて推進力に変換してくれるフィーリングである。硬いアルミだからこそ醸し出せる乗り味だと言えるだろう。
上りでギヤをかけて踏み込んでみると、このフレームの魅力がハッキリとしてくる。パワーの伝達効率が良いので、驚くほど気持ち良くスーッと上ってくれる印象なのだ。クルクルと回すペダリングで上るよりも、大きなギヤでグイグイと上るのに合っているフレームである。そうった点で、レース向きの味付けであると言えるだろう。このフレームを50×34Tのコンパクトで乗るのはもったいない。ぜひ53×39Tのノーマルギヤで乗りたいフレームだ。
アルミなのでぜんぜん期待していなかったのだが、振動吸収性が驚くほど良かった。ベンドしたシートステーがしっかりとバックからの衝撃を吸収してくれる。これならば、多少荒れた路面を走っても、何ら問題なく走破することができる。
ハンドリングもとても良い。力強いカーボンフォークとの相性も良く、タイトなコーナーから下りのハイスピードなカーブまで、どんなシチュエーションでも何の緊張感もなくハンドルを切ることができる。初心者にも自信を持ってオススメできる安全なハンドリングだ。
アルミというと最近はエンドリーモデルばかりになってきたが、このCULEBUROならばレースでも十分に使える実力を持つ。個人的にも、ぜひレースで使ってみたいと思った。スプリントのかかりの良さなど、大きな武器となるだろう。
「気持ちの良い加速感が楽しめる」
斉藤 亮(MTBクロスカントリーライダー、チーム・コラテック)
最近はカーボンのハイエンドモデルばかり乗っているので、正直言ってアルミのCULEBUROにはあまり期待していなかった。しかし、ひと踏みして驚いた。「これがアルミなのか!」と思わず叫んでしまうほどの加速感の良さなのだ。
さらに踏み込んでみると、なんのよどみもなくグイグイとスピードに乗ってくれる。低速域から中速域への伸びだけでなく、中速域から高速域への伸びもとても良い。私のアルミに対する誤解は一気に氷解した。「これはイイ!」と素直に認められる気持ちの良い乗り味だ。
上りのフィーリングも悪くなかった。わざと重たいギヤにして踏み込んでみても、フレームが負けることがないので、力強く上ってくれる。上りでアタックがかかった時など、このフレームならば、簡単に反応できそうだ。
下りの安定感はピカイチだ。ヘッドチューブからフォークの根本にかけての剛性が高いので、ハイスピードのコーナリングやフルブレーキングでも姿勢が崩れることがまったくないのだ。ドイツのメーカーらしいカッチリとした下り性能だ。
驚いたのは、振動吸収性の良さである。アルミというと、乗り味はパリッとしているけど、振動吸収性がイマイチというイメージが強かったのだが、このCULEBUROはヘタなカーボンフレームが真っ青になるほどの振動吸収性の良さなのだ。「アルミも確実に進化しているんだなぁ」と素直に感心させられた。
オススメしたいのは、ずばりレース指向の人だ。この加速感の良さやカッチリとした乗り味は、速度変化の大きいレースで使うと武器になるだろう。初心者がロングライドなどで使っても別に問題となる部分はないのだが、ぜひトレーニングを積んでこのフレームのオイシイ部分を楽しんで欲しい。そんな気にさせられる一台である。
フォーカス CULEBRO 1.0
フレーム:トリプルバテッドアルミニウム、BB30
フォーク:フォーカス・カーボン
サイズ:50、52、54、56cm
カラー:ポーラーホワイト、ダイアモンドグレー
価格:
アルテグラコンパクト完成車(ジャーマン・アッセンブリー) 271,950円
6750アルテグラ、レーシング5完成車 261,450円
5750 105、レーシング7完成車 219,450円
フレームセット 135,450円
インプレライダーのプロフィール
三船雅彦(元プロサイクリスト)
9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム
斉藤 亮(MTBクロスカントリーライダー、チーム・コラテック)
2007年春までクロスカントリースキー競技をやっていた異色のライダー。クロスカントリースキーではジュニア時代から世界を舞台として戦っており、数々の優勝・入賞を果たしている。2003~2006年ワールドカップに4シーズン連続参戦。2005年にはドイツ世界選手権大会日本代表に選ばれる。2001~2005年全日本選手権天皇杯リレー5連覇。2008年シーズンにMTBクロスカントリーに転向。2009年には念願の表彰台も手中に収めた。2009年ジャパンシリーズ第2戦八幡浜エリートクラス3位、ジャパンナショナルランキング6位、ジャパンシリーズランキング6位など、MTBでも輝かしい戦歴を収めている。
text:Takashi.NAKAZAWA
photo:Makoto.AYANO
高い精度で人気を誇るドイツのブランド、フォーカス。他の多くのメーカー同様、ハイエンドモデルはIZALCOやCAYOといったカーボンモデルがその役目を担っているが、今でも根強い人気を誇るアルミモデルでもしっかりと高品質なモデルを作り続けている。それがここに紹介するCULEBROだ。
フレームに使用される素材は、トリプルバテッド加工が施されたアルミチューブだ。3段階に肉厚が変化するチューブによって、効率的に剛性アップと軽量化という相反する要素を高次元で両立している。もちろん、フォーカスのために用意されたオリジナルチュービングである。
アルミはチューブの断面形状でその性格が大きく変化する。フォーカスでは様々な形状をテストし、もっとも少ない(=軽い)材料でもっとも剛性が出せるように最善の注意が払われている。トップチューブの外径がヘッド付近で太くなっているのは、そんな試行錯誤の結果だ。
アルミフレームの美点は、何といってもそのカチッとした乗り味だ。軽く・硬いという素材の特性から、スチールともカーボンとも違う乗り味が醸し出されるのだ。そんなアルミの特性を生かすべく、メイントライアングルはとても力強い作りとなっている。ボトムブラケットにBB30を採用しているのも、そんなフォーカスの心意気の表れだ。
一方、アルミフレームで問題となるのは振動吸収性の悪さだ。確かに1990年代頃のアルミフレームは振動吸収性が悪いものが多く、それを補うためにカーボンフォークが一気に普及したほどだった。しかし、現代の設計技術は、そんなアルミのネガティブな部分を消し去ることに成功している。
CULEBROではシートステーの形状を徹底的に追求し、横方向に緩やかにベントさせた独特な形状のシートステーを完成させた。これは「フレックス・チューブ・ウィング・デザイン」と名付けられており、CULEBROの最大のウリのひとつとなっている。このシートステーにより、CULEBUROはアルミとは思えないほどの振動吸収性の良さも獲得しているのだ。
リアエンドには、カーボンのハイエンドモデル・IZALCOなどの共通の「3Dドロップアウト」を採用する。IZALCOの場合、カーボンで一体成形されたものだが、もちろんCULEBROの場合はアルミの溶接で形作られている。その仕上がりは美しく、そして力強い。
さて、そんな魅力溢れるCULEBROをテストをしたのは、元プロサイクリストの三船雅彦とMTBクロスカントリーライダーの斉藤亮。果たして彼らの評価はどのようなものだったのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう!
―インプレッション
「ぜひレースで使ってみたい!」
三船雅彦(元プロサイクリスト)
個人的にはアルミフレームというのはどうも苦手で、現役時代はスチールかチタン、カーボンをメインに乗ってきた。私のペダリングにアルミの特性はあまり合っていなかったのだ。しかし、このCULEBROに乗って驚いた。上りでもスプリントでもグイグイと面白いほど加速してくれて、私の脚質にもピッタリの感じなのだ。「アルミフレームもここまで進化したんや!」と目から鱗が落ちる思いだった。
踏み出しの加速感はとても軽快だ。ペダルにグッと力をかけると、フレームがそれをしっかりと受け止めて推進力に変換してくれるフィーリングである。硬いアルミだからこそ醸し出せる乗り味だと言えるだろう。
上りでギヤをかけて踏み込んでみると、このフレームの魅力がハッキリとしてくる。パワーの伝達効率が良いので、驚くほど気持ち良くスーッと上ってくれる印象なのだ。クルクルと回すペダリングで上るよりも、大きなギヤでグイグイと上るのに合っているフレームである。そうった点で、レース向きの味付けであると言えるだろう。このフレームを50×34Tのコンパクトで乗るのはもったいない。ぜひ53×39Tのノーマルギヤで乗りたいフレームだ。
アルミなのでぜんぜん期待していなかったのだが、振動吸収性が驚くほど良かった。ベンドしたシートステーがしっかりとバックからの衝撃を吸収してくれる。これならば、多少荒れた路面を走っても、何ら問題なく走破することができる。
ハンドリングもとても良い。力強いカーボンフォークとの相性も良く、タイトなコーナーから下りのハイスピードなカーブまで、どんなシチュエーションでも何の緊張感もなくハンドルを切ることができる。初心者にも自信を持ってオススメできる安全なハンドリングだ。
アルミというと最近はエンドリーモデルばかりになってきたが、このCULEBUROならばレースでも十分に使える実力を持つ。個人的にも、ぜひレースで使ってみたいと思った。スプリントのかかりの良さなど、大きな武器となるだろう。
「気持ちの良い加速感が楽しめる」
斉藤 亮(MTBクロスカントリーライダー、チーム・コラテック)
最近はカーボンのハイエンドモデルばかり乗っているので、正直言ってアルミのCULEBUROにはあまり期待していなかった。しかし、ひと踏みして驚いた。「これがアルミなのか!」と思わず叫んでしまうほどの加速感の良さなのだ。
さらに踏み込んでみると、なんのよどみもなくグイグイとスピードに乗ってくれる。低速域から中速域への伸びだけでなく、中速域から高速域への伸びもとても良い。私のアルミに対する誤解は一気に氷解した。「これはイイ!」と素直に認められる気持ちの良い乗り味だ。
上りのフィーリングも悪くなかった。わざと重たいギヤにして踏み込んでみても、フレームが負けることがないので、力強く上ってくれる。上りでアタックがかかった時など、このフレームならば、簡単に反応できそうだ。
下りの安定感はピカイチだ。ヘッドチューブからフォークの根本にかけての剛性が高いので、ハイスピードのコーナリングやフルブレーキングでも姿勢が崩れることがまったくないのだ。ドイツのメーカーらしいカッチリとした下り性能だ。
驚いたのは、振動吸収性の良さである。アルミというと、乗り味はパリッとしているけど、振動吸収性がイマイチというイメージが強かったのだが、このCULEBUROはヘタなカーボンフレームが真っ青になるほどの振動吸収性の良さなのだ。「アルミも確実に進化しているんだなぁ」と素直に感心させられた。
オススメしたいのは、ずばりレース指向の人だ。この加速感の良さやカッチリとした乗り味は、速度変化の大きいレースで使うと武器になるだろう。初心者がロングライドなどで使っても別に問題となる部分はないのだが、ぜひトレーニングを積んでこのフレームのオイシイ部分を楽しんで欲しい。そんな気にさせられる一台である。
フォーカス CULEBRO 1.0
フレーム:トリプルバテッドアルミニウム、BB30
フォーク:フォーカス・カーボン
サイズ:50、52、54、56cm
カラー:ポーラーホワイト、ダイアモンドグレー
価格:
アルテグラコンパクト完成車(ジャーマン・アッセンブリー) 271,950円
6750アルテグラ、レーシング5完成車 261,450円
5750 105、レーシング7完成車 219,450円
フレームセット 135,450円
インプレライダーのプロフィール
三船雅彦(元プロサイクリスト)
9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム
斉藤 亮(MTBクロスカントリーライダー、チーム・コラテック)
2007年春までクロスカントリースキー競技をやっていた異色のライダー。クロスカントリースキーではジュニア時代から世界を舞台として戦っており、数々の優勝・入賞を果たしている。2003~2006年ワールドカップに4シーズン連続参戦。2005年にはドイツ世界選手権大会日本代表に選ばれる。2001~2005年全日本選手権天皇杯リレー5連覇。2008年シーズンにMTBクロスカントリーに転向。2009年には念願の表彰台も手中に収めた。2009年ジャパンシリーズ第2戦八幡浜エリートクラス3位、ジャパンナショナルランキング6位、ジャパンシリーズランキング6位など、MTBでも輝かしい戦歴を収めている。
text:Takashi.NAKAZAWA
photo:Makoto.AYANO
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