積雪のなか開催されたワールドカップ第6戦・ゾルダー大会。シクロクロスレースに戻ってきたラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)がパワフルな走りでニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)を下し優勝した。日本勢は完走ならず。

雪に覆われたコースを走る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)雪に覆われたコースを走る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanakaシクロクロス・ワールドカップ第6戦ゾルダー大会が12月26日、深い雪に覆われたF1サーキットで開催された。

コースはモーターサーキットのホームストレートをスタート/フィニッシュ地点とし、サーキット横の森やオフロードが巧みにコースに組み込まれたテクニカルなもの。急傾斜な下りや、オイリーなオンロードと、ただでさえ難易度の高いコースだが、さらに今回は膝まであるような積雪が選手たちを苦しめることとなる。

アルベールを引き離しにかかるラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)アルベールを引き離しにかかるラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vosレース当日は気温が上がり、表面の雪は溶け始めたが、凍ったままの轍では、真っ直ぐな道でもハンドルを取られてしまい落車する選手が相次いだ。試走を終えた段階で、有力選手のレースキャンセルが出るくらい、スリリングなコースでの開催だった。

今回注目を集めたのは、シクロクロス・オランダチャンピオン、ラース・ボーム(ラボバンク)の参戦だろう。

独走でゴールに飛び込むラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)独走でゴールに飛び込むラース・ボーム(オランダ、ラボバンク) photo:Cor Vos2008年の世界選手権を弱冠22歳で制し、その後ロードレースに転向、昨季はブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を飾った勢いのある若手選手だ。彼がオフトレーニングとして、久しぶりにシクロクロスのビッグレースに戻ってきたのだ。長身で恵まれた体型は、以前と比べてさらに大きくなったような印象を受ける。リラックスした笑顔を見せながらスタートラインに付いた。

後列からのスタートにも関わらず、序盤のオンロードで先頭に立ったボーム。1周目を終えた時点で後続の現ワールドカップランキング首位ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)や前年度覇者のケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)に13秒差で先行する。

モーターサーキットのホームストレートを駆け抜ける辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)モーターサーキットのホームストレートを駆け抜ける辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanakaその後は、先行するボームと追走するアルベールという状態でレースは続いていく。3周回目にメカトラでストップしたボームをアルベールが抜き去り、3周回目を終えた時点で今度はアルベールが13秒差で先行する。

しかし、ボームの勢いは止まらない。深い雪とは思えないほどのパワフルな走りと、難しいセクションを難なくこなす優れたテクニックで、5周回目、残り4周回目でアルベールを抜き返すとそのままゴールまで独走し、大勢の観客が詰めかけたホームストレートの中央で、両手を大きく広げた。

ランキング首位はアルベールがキープ。ワールドカップは年明けに2戦を残すのみ。2位のスヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)に66ポイント差をつけ、タイトル獲得に向けて、残り2戦に挑みたいと話す。

バイクを担いで坂をよじ上る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)バイクを担いで坂をよじ上る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka
一方、日本人選手は過酷な雪のコンディションに苦戦を強いられてしまった。レース前に小坂光(宇都宮ブリッツェン)が合流し、エリート男子が辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)と小坂、女子が豊岡英子(パナソニックレディース)の4選手で挑んだが、今年度より採用されている“80%ルール(首位通過者のラップタイプ+その80%以上の通過タイムで失格)”により、全選手完走できなかった。
雪に覆われたテクニカルな下りを進む竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)雪に覆われたテクニカルな下りを進む竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka雪に覆われたコースに苦しむ小坂光(宇都宮ブリッツェン)雪に覆われたコースに苦しむ小坂光(宇都宮ブリッツェン) photo:Sonoko Tanaka雪に覆われた下りでバイクを担ぐ豊岡英子(パナソニックレディース)雪に覆われた下りでバイクを担ぐ豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka

辻浦圭一のコメント
現地スタッフが日本チームをサポートしてくれる現地スタッフが日本チームをサポートしてくれる photo:Sonoko Tanaka「危ないコースだと言われていたけど、危なさはさほど気にならなかった。こういうコースがあっていいと思う。

今回は結果を出そうとして、全日本選手権の時と同じように空気圧を高めにしてしまっていた。守りに入っているようで守れていないし、攻められてもいない。自分の走りを見失っている部分もあり、そこに改めて気づけたのはいいことだと思う。

一面雪に覆われたコースを走る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)一面雪に覆われたコースを走る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka今後の課題はメカニックとの連係。今回シクロクロスに慣れていないメカニックが合流し、レース以外のことに神経を使いすぎて、集中しきれていなかった。悪いところは見つかったので、ここからいい方向に向かっていけばいいと思う。ここを出発点にしたい。

結果はよくなかったが、いろいろな意味で悪いレースではなかった。これまでは全てのレースで出し切ろうと思っていたけど、今年はシーズン通してピークを作っていく。目標は世界選手権だから、それまでにいい方向に持っていきたい。今日のレースは、走らなかった選手、ケガした選手がいたなか、無事に走れたことは良かった」

竹之内悠のコメント
「先週のワールドカップに比べて走れた感覚があった。10月、11月とベルギーのシクロクロスを走っていたときの、コレ、コレ、コレ!っていうフィーリングがあった。雪の轍は難しかったけど、泥のレースで覚えた走り方をカラダが覚えていた。近くの順位を走っている選手は、雪の区間では同順位だけど、オンロードのストレートで抜かされてしまう。追い込めるように調子を上げていきたい」

小坂光のコメント
「ある程度覚悟してベルギーに来たけど、想像以上のハードなテクニカルコースで、テクニックが足りなくて、踏みたくても踏めなかった。今回はケガしたくないと思って消極的だった部分もある。次はもっと思い切って走りたいと思う。これまでに出たエリートのレースは、残り2周くらいで降ろされてしまっていたので、今回の目標は完走できること。年明けに帰国するので残り4レース。周りのサポートに応えられるように走りたいです」

豊岡英子のコメント
「スタートのオンロードから転んでしまい、冷静さを失ってしまった。オンロードから落車が起こることは予想できていなかった。雪で前の人も真っ直ぐ走れていない。前の人はまっすぐ走るものと考えていたけど、ラインが読めず落車に巻き込まれることも。テクニックのなさがさらに冷静さを失うことになり悪循環になっていたと思う。冷静さをコントロールできるようになりたい。今回の結果は結果として受け止めるけど、落ち込むわけではなく気持ちを切り替えていきたい。」

エリート男子
1位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)        1h08'29"
2位 ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)          +13"
3位 バルト・ウェレンス(ベルギー、テレネット・フィデア)   +1'16"
4位 ヘルベン・デクネクト(オランダ、ラボバンク)       +1'45"
5位 スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)    +1'55"
-3laps 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)
-3laps 竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)
-5laps 小坂光(宇都宮ブリッツェン)

エリート女子
1位 キャサリン・コンプトン(アメリカ、プラネットバイク)   39'58"
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ネーデルランド・ブロイト)  +54"
3位 サンヌ・ファンパーセン(オランダ、ブレインウォッシュ)  +1'29"
4位 ダフニー・ファンデンブラント(オランダ、ZZPR)      +2'10"
5位 パブラ・ハブリコバ(チェコ、APBサイクリング)      +2'11"
-2laps 豊岡英子(パナソニックレディース)

text&photo:Sonoko Tanaka

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