2009年のUCIプロツアー第2戦にあたる第93回ロンド・ファン・フラーンデレンが、4月5日ベルギー・フランドル地方で開催される。16の急坂が待ち受ける260kmのコースは過酷そのもの。盤石の体制を誇るクイックステップの連覇なるか、それともライバルが一矢報いるか。ビッグタイトルを狙って世界中からハンターが集う。

フランス語で「ツール・デ・フランドル」、現地で「ロンド・ファン・フラーンデレン」と呼ばれるこのワンディクラシックは、UCIプロツアー第2戦、ならびにUCIワールドカレンダー第5戦にあたる。世界を代表する5つのワンディクラシック「モニュメント」の中でもひと際大きな存在で、そのステータスは世界一。特に自転車競技熱の高いフランドル人にとって特別なレースであり、沿道は熱狂的なファンで埋め尽くされる。

16の急坂が待ち受ける260kmのロングコース
ロンド・ファン・フラーンデレン2009コースマップロンド・ファン・フラーンデレン2009コースマップ photo:rvv.be珠玉のクラシックと呼ばれる由縁は、レース後半に連続する石畳と急坂だ。毎年少しずつコースは変更が加えられ、今大会のコース全長は260kmに。登場する急坂は16カ所で、そのうち10カ所は石畳に覆われている。

レースを決めるのはタフな急坂だけでなく、吹き付ける強風、刻々と変化する気象条件(昨年は雪も降った!)、そしてテクニカルなコーナー。一日で勝負が決するだけに、一瞬たりとも気が抜けない緊張感に包まれる。

コッペンベルグ(190km地点)石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600mコッペンベルグ(190km地点)石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m photo:rvv.beスタート地点は今年も世界遺産の街ブルージュで、内陸のニノベに向かって、蛇行を繰り返しながら急坂をクリアしていく。前半は比較的平坦だが、コースが折り返し地点を通過すると様子は一変。131km地点の「モーレンベルグ」を皮切りに、後半は16の急坂が絶え間なく登場する。

フランドル地方の急坂は道幅が狭いのが特徴で、集団後方に下がった状態で急坂に突入すれば、その時点でレースが終了する可能性も。そのため重要な急坂の手前では激しいポジション争いが繰り広げられる。急坂毎にペースアップが図られ、次第に選手が絞られていくサバイバルレースだ。

ミュール・カペルミュール(245km地点)石畳 平均9.3% 最大19.8% 長さ475mミュール・カペルミュール(245km地点)石畳 平均9.3% 最大19.8% 長さ475m photo:rvv.be急坂シリーズ前半の山場は「オウデ・クワレモント」「パテルベルグ」「コッペンベルグ」の3つ。いずれも石畳に覆われた急勾配の上りで、ここで集団は絞り込まれるだろう。中でも昨年補修工事を終えて復活した「コッペンベルグ」は荒い石畳で有名。しかも最大勾配が22%に達する激坂であり、天候が崩れて路面が濡れればトラクションを得られずに歩く選手も現れる。

その後も容赦ない急坂の洗礼は続き、レース最大の勝負ポイントはラスト15kmで姿を現す。「ミュール・カペルミュール」だ。今年で登場30回目のこの激坂は最大勾配が20%近く、ゴールまで近いため決定的なアタックが決まる可能性は高い。

続く「ボスベルグ」は距離が長く、攻撃を仕掛ける最後のチャンス。連続する急坂が縮小した集団から、この2つの上りで飛び出した選手がゴールまで逃げ切るか、それとも小集団のスプリント勝負に持ち込まれるか。最後まで手に汗握るバトルが繰り広げられるだろう。

登場する16の急坂
1 131km地点 モーレンベルグ 石畳 平均7% 最大14.2% 長さ463m
2 140km地点 ウォルヘンベルグ アスファルト 平均7.9% 最大17.3% 長さ645m
3 180km地点 オウデ・クワレモント 石畳 平均4.0% 最大11.6% 長さ2200m
4 183km地点 パテルベルグ 石畳 平均12.9% 最大20.3% 長さ360m
5 190km地点 コッペンベルグ 石畳 平均11.6% 最大22% 長さ600m
6 195km地点 シュテインビークドリシュ 石畳 平均5.3% 最大6.7% 長さ700m
7 198km地点 ターインベルグ 石畳 平均6.6% 最大15.8% 長さ530m
8 203km地点 エイケンベルグ 石畳 平均6.2% 最大10% 長さ1100m
9 208km地点 バレント 石畳 平均5% 最大10% 長さ900m
10 213km地点 レベルグ アスファルト 平均4.2% 最大13.8% 長さ950m
11 218km地点 ベレンドリシュ アスファルト 平均7% 最大12.3% 長さ940m
12 223km地点 バルケンベルグ アスファルト 平均8.1% 最大12.8% 長さ540m
13 230km地点 テンボシュ アスファルト 平均6.4% 最大8.7% 長さ455m
14 235km地点 エイケンモレン アスファルト 平均5.9% 最大12.5% 長さ610m
15 245km地点 ミュール・カペルミュール 石畳 平均9.3% 最大19.8% 長さ475m
16 249km地点 ボスベルグ 石畳 平均5.8% 最大11% 長さ980m


クイックステップvs.ライバルの様相
昨年独走でミュールを駆け上がるステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)昨年独走でミュールを駆け上がるステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vos昨年ラスト25kmのエイケンモレンでアタックを成功させ、激しいマークにあうチームメイトのトム・ボーネン(ベルギー)をおいて独走勝利を飾ったのはステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)。今年もこのクイックステップを中心にレースは展開する。

過去に2勝しているチームリーダーのボーネンは今大会優勝の最有力候補。今シーズンはツアー・オブ・カタール総合優勝に続き、セミクラシックのクールネ〜ブリュッセル〜クールネで優勝。完全にこのフランドルに照準を合わせており、ヨハン・ムセーウ(ベルギー)に続く史上5人目のフランドル3勝を目指す。

3勝目を狙うトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)3勝目を狙うトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vosボーネンの優勝をお膳立てするのは強力なクイックステップのアシストたち。中でも昨年の優勝者デヴォルデルと、新加入シルヴァン・シャヴァネル(フランス)は展開によってはエースになりうる。ドワーズ・ドア・フラーンデレンを制したケヴィン・ファンインプ(ベルギー)もチームに尽くす。最終局面でメンバーを残していることは大きなアドバンテージになる。

そんなボーネンを1週間前のE3プライス・フラーンデレンで破ったのがフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)。前哨戦KBCデパンヌ3日間レース初日を制すなど好調。セルゲイ・イワノフ(ロシア)とともに、初の表彰台、初のフランドル制覇を目論む。

1週間前のE3プライスでボーネンを破ったフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)1週間前のE3プライスでボーネンを破ったフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ) photo:Cor Vosシーズン序盤から目立った活躍を見せているのがハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)。ツアー・オブ・カタール総合2位に始まり、ヴォルタ・アオ・アルガルヴェステージ2勝、パリ〜ニースステージ優勝、そしてミラノ〜サンレモ2位。

前哨戦のセミクラシックでも果敢にクイックステップに対決を挑み、ドワーズ・ドア・フラーンデレンで4位に入っている。まだフランドルでの経験は浅く「フランドルは別物」との声も聞かれるが、注目したい選手の一人。2005年2位のアンドレアス・クリアー(ドイツ)がハウッスラーを援護射撃する。

セミクラシックで果敢にアタックを繰り返すハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)セミクラシックで果敢にアタックを繰り返すハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ) photo:Cor Vos昨年2位のニック・ナイエンス(ベルギー)は昨年3位のフアンアントニオ・フレチャ(スペイン)とラボバンク合流。昨年デヴォルデルの両脇を囲んだ2人が、クイックステップの牙城を崩すべくアタックを繰り返すだろう。

過去に3回2位に甘んじているレイフ・ホステ(ベルギー、サイレンス・ロット)は、今年フィリップ・ジルベール(ベルギー)という強力なアタッカーを従えての出場。スプリント力のあるフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)も揃っており、ホステは今年こそ「4度目の正直」なるか。

昨年の2位ニック・ナイエンス(ベルギー)と3位フアンアントニオ・フレチャ(スペイン)は今年ラボバンクで走る昨年の2位ニック・ナイエンス(ベルギー)と3位フアンアントニオ・フレチャ(スペイン)は今年ラボバンクで走る photo:Cor Vos2006年3位のジョージ・ヒンカピー(アメリカ、チームコロンビア)は本命パリ〜ルーベの前に好成績を残しておきたい。チームにはマークス・ブルグハート(ドイツ)が揃い、チームの好調の波に乗れるか。

落車や体調不良で調子の上がらないファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)も出場。まだまだ本調子ではないため、カルステン・クローン(オランダ)にエースを託す可能性も。2007年覇者のアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)はウイルス性感染症により療養中。しかし2年前のタイトルとアルカンシェルに敬意を表してスタートラインには並ぶ予定だ。

そして日本から別府史之(スキル・シマノ)が出場。前哨戦のセミクラシックで手応えを掴んだフミがどこまで闘えるか。フミはフランドル、ヘント〜ウェベルヘム、パリ〜ルーベ連戦だ。