2026年のMTB世界王者はトーマス・ピドコック(イギリス)。試走での負傷をものともせず、自らレースを作ってエリートで2度目となるアルカンシエルを掴み取った。マチュー・ファンデルプール(オランダ)はまたも優勝争いに加わることができず30位に沈んだ。



試走の落車で身体を痛めていたというトーマス・ピドコック(イギリス) (c)Val di Sole Bike Land
マチュー・ファンデルプール(オランダ)を信仰するファンも登場 (c)Val di Sole Bike Land


MTB世界選手権を締めくくるXCO男子エリートレースがスタート (c)Val di Sole Bike Land

「太陽の谷」を意味するヴァル・ディ・ソーレを舞台とした、5日間に及ぶMTB世界選手権。そのラストを締めくくるのはクロスカントリーの男子エリートレースだ。

なんといっても注目は、2大会連続の五輪王者+2023年世界王者であるトーマス・ピドコック(イギリス)に、悲願のタイトルを目指すマチュー・ファンデルプール(オランダ)の参戦。スポット参戦ながら、いつも大一番で強いピドコックと、1週間前のW杯で2位に入ったファンデルプールに対する期待は非常に大きかった。

迎え撃つのは1週間前のW杯を制し、XCC(クロスカントリーショートトラック)も制した絶好調アドリアン・ボワシ(フランス)やルカ・マルタン(フランス)、チャーリー・アルドリッジ(イギリス)、ビョルン・ライリー(アメリカ)といった、新世代のMTB専業選手たち。2大会連続の世界王者で、ジェイコ・アルウラーの一員として今年のジロ・デ・イタリアを完走したアラン・ハザリー(南アフリカ)も優勝候補の筆頭であり、日本からはW杯を主戦場にするXCC+XCOアジア王者の北林力が、普段所属するUNNO FACTORY RACINGのサポートを得て参戦。日が少し傾いた現地時間15時15分に号砲が鳴らされた。

先頭グループへ合流するトーマス・ピドコック(イギリス) (c)Val di Sole Bike Land

マチュー・ファンデルプール(オランダ)とアラン・ハザリー(南アフリカ)。両者ともに勝負に絡めず沈んだ (c)Val di Sole Bike Land

ボワシ、マルタン、マティス・アザロといった強豪フランス勢が先頭を固め、ピドコックとファンデルプールは30番手付近でスタートループをクリアする。波に乗るボワシは1周目の登坂区間でペースアップを続け、2周目に入る頃にはフランス勢3名を含む8名の先頭グループが形成される。ピドコックは15秒ほど遅れた大集団の中で様子を伺い、ファンデルプールはその後方。試走での落車負傷を引きずっていたピドコックはやがて大集団を抜け出して単独追走を仕掛けた一方、「レースのかなり早い段階で自分の脚の状態が悪いことに気づいていた」と振り返るファンデルプールはそのままの位置で沈むこととなってしまう。

フランス勢3名と、アルドリッジ、マルティン・ヴィダウレ(チリ)、ダリオ・リロ(スイス)、そして開催国イタリアのシモーネ・アヴォンデットによる先頭グループに対してコール・プンチャード(カナダ)が追いつき、レース中盤には好調アルドリッジのペースアップによって分断が起きる。じわじわと距離を縮めていたピドコックも、およそ2周回を要して先頭グループまで追いついた。

アルドリッジを引き離すトーマス・ピドコック(イギリス) (c)Val di Sole Bike Land

ラスト1周半を独走するトーマス・ピドコック(イギリス) (c)Val di Sole Bike Land

先頭グループ内で数的優位を維持していたフランス勢はボワシ一人だけとなり、反対にイギリスはピドコックとアルドリッジの2人に。全8周回の6周目に入ると「残り2周回、差をつけられるかどうか見てみようと思った」と振り返るピドコックが登坂区間でアタックする。落車の影響を感じさせない断続的なペースアップでボワシをドロップさせ、7周目の登坂でヴィダウレを、時間を置いてチームメイトのアルドリッジも切れ味鋭いアタックで引きちぎる。こうして1周半を残してピドコックの独走が始まった。

最終周回を危なげなく走りきったピドコックは、ピットクルーとハイタッチを交わしてからフィニッシュラインへ。MTBでは2023年に続く2度目のエリート世界タイトルを掴み取った。

バイクを掲げてフィニッシュするトーマス・ピドコック(イギリス) (c)Val di Sole Bike Land

「今回の勝利を(レース中の事故で逝去した)フィン・ターリングと(その兄の)ジョシュに贈りたい。ブエルタに参戦したジョシュの姿を見て信じられない気持ちになったよ。彼と、彼の家族に捧げる勝利だ」と、イネオス時代にチームメイトだったターリング一家について、涙を浮かべながらインタビューで答えたピドコック。レースについては「一度でも限界を超えてはいけないコースだから、痛めた腰の具合を見ながらどこまでペースを上げられるか見ていたんだ。来年はもっとロードレースに照準を合わせるけれど、アルカンシエルを着る機会を探して楽しみたい。チャーリー(アルドリッジ)は凄い走りだったよ。彼の所属するキャノンデールチームは今季を通して素晴らしい成績を出していると思う」とコメントを残している。

敗れたアルドリッジにとって世界選キャリアハイの結果に。ダークホースのプンチャードが3位銅メダルを掴んだ一方、勝負どころで千切れていったフランス勢はボワシの5位+アザロの6位が最高位だった。

MTB世界選手権2026 XCO男子エリート表彰台 (c)Val di Sole Bike Land

また、ファンデルプールはスタート時点からポジションを上げることはできずに4分40秒遅れの30位でフィニッシュ。MTBでアルカンシエルを掴むという夢は今年も実現しなかった。「今日は脚に全く力が入らなかった。本当に調子が悪かった。先週と今週のトレーニングでは調子が良かったけれど、マウンテンバイクのコースは嘘をつかない。去年は力を発揮できない予感はあったけれど、今年は良い結果を期待していんだ。でも、もうどうすることもできない。残念だけどこういう日もある」と、昨年の29位に続く失速に失望を隠していない。

序盤から優勝候補たちが先頭グループを組んで逃げるという高速レースで、ハザリーは43位、北林はマイナス3ラップの66位で終了。シーズン一番のレースが閉幕した。
MTB世界選手権2026 XCO男子エリート結果
1位 トーマス・ピドコック(イギリス) 1:25:26
2位 チャーリー・アルドリッジ(イギリス) +0:17
3位 コール・プンチャード(カナダ) +0:31
4位 マルティン・ヴィダウレ(チリ) +0:59
5位 アドリアン・ボワシ(フランス) +1:06
6位 マティス・アザロ(フランス) +1:47
7位 ダリオ・リロ(スイス) +1:54
8位 フィリッポ・コロンボ(スイス) +2:02
9位 ファビオ・プントナー(スイス) +2:04
10位 デーヴィッド・リスト(ドイツ) +2:08
30位 マチュー・ファンデルプール(オランダ) +4:40
66位 北林力(UNNO FACTORY RACING) -3LAP
text:So Isobe

同じ製品カテゴリーの記事