2026年ツール・ド・フランス第1周目の最終日となる逃げ向きの第9ステージで、4名の逃げ切りが決まる。マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)がメカトラブルに泣いたトーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)らを下し、自身3度目となるツールの区間優勝を掴んだ。
7月12日(日)第9ステージ
マルモー〜ウッセル 155km/獲得標高2,860m(丘陵)

いつでも大声援を受けるジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダープロサイクリング) photo:A.S.O. 
ポイント獲得を目論むマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)がスタートを待つ photo:A.S.O.
ピュアスプリンターが火花を散らした2日間を終え、2026年のツール・ド・フランス第1週目を締めくくるのはマルモーから中央山塊に入り、ウッセルに至る185.5kmの丘陵ステージだ。
ようやくやってきた逃げ屋向きのコースはノコギリの歯のようにアップダウンの連続だ。4つの山岳(3、2、3、4級)が登場し、2つ目の2級山岳「シュック・オ・メ」は距離3.8km/平均7.7%と重量級選手を振り落とすには十分な難易度を誇る。しかしこの日は通過するコレーズ県に熱波で最高レベルの警報であるレッド・アラートが発令。35℃から40℃という予報を受け、主催者A.S.O.はコースを序盤区間をカットして30.9km短縮する(総距離は155kmに)という決定を下した。

第9ステージ マルモー〜ウッセル image:A.S.O.
コース短縮は一方でレースの激化を意味する。パレード走行を経て0km地点を通過するや否や、この逃げ切りチャンスを待ち侘びていた選手たちが一斉にアタックを仕掛けた。しかしコース短縮によって44.9km地点から13.9km地点になった中間スプリントを目掛け、マイヨヴェールを着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)にポイントを獲らせるべくリドル・トレックが集団をまとめ上げ、ピーダスンは登坂区間途中に設置されたスプリントポイントを悠々と先頭通過して25ポイントを獲得。再びアタック頻発の乱戦状態となった集団からは、やがて16名がジャンプして先頭グループを形成した。
「(フィリプセンをアシストした)連日リードアウトしても脚の調子は上々。今日な大きな逃げグループが先行するはずなのでチャンスを窺いたい」とレース前に話していたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)のアタックをきっかけに生まれた16名の逃げ。トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)やクイン・シモンズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、ヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス)など、各チームのエースが逃げ切りチャンスに向けてギアを上げ、さらにシモンズとトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が抜け出しを試みるなど、この日のレースは一切落ち着くことがなかった。

序盤のスプリントポイントを先頭通過したマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.

逃げる16名。ここから抜け出しによって一旦8名に絞られた photo:A.S.O.
平均46km/hで飛ばす逃げグループは16名から8名に減り、3級と2級山岳ではどちらも「今日は脚に力があった」と言うピドコックがペースを上げて先頭通過。マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア)擁するUAEチームエミレーツXRGがコントロールするメイン集団は残り40kmで逃げとのタイム差を1分半でコントロールし、ここから逃げにメンバーを送り込まなかったネットカンパニー・イネオスが追撃を開始。しかし追われる立場の逃げグループも、このままメイン集団の追い上げを許すわけにはいかなかった。
最後の丘である4級山岳「モン・ベスー」(距離900m/平均7.3%)の麓でアタックしたのはファンデルプール。ヨハンネセンとピドコック、そして大会序盤にマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着たアレックス・ボーダン(フランス、EFエデュケーション・イージーポスト)が追従し、シモンズは脱落。後方からはシモンズ脱落の報せを受けたリドル・トレックが、なんとかアップダウンを耐えきったピーダスンでのステージ優勝を目指して猛然と集団牽引を開始した。

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)やトーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)がフィニッシュを目指す photo:A.S.O.

メイン集団ではネットカンパニー・イネオスが追走を試みたものの、人数を消耗してタイム差は縮まらない photo:A.S.O.
残り20km地点で、逃げるファンデルプール、ピドコック、ヨハンネセン、ボーダンと、追いかけるメイン集団のタイム差は52秒。牽引役が不足したため当初逃げに加わっていたデレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック)が集団に戻ってコントロールに加わったものの、残り10kmでは45秒、残り5kmでは40秒と思うように差は縮まらない。逃げる4名と、ぐっと人数を減らしたメイン集団はどちらも消耗しつつ、最終的に先頭4名の逃げ切りという結末を迎えることに。
最もスプリント力のあるファンデルプールが先頭、ピドコックがその番手からマークする状況でラスト1km。牽制によってガクンとペースを落としながら、ファンデルプールが右に左に進路を変えるその後方からは、視認可能な距離まで迫ったメイン集団からピーダスンが起死回生のロングスパートでかっ飛んでくる。しかしラスト200mからファンデルプールが一気に踏み込み、変速不良を抱えたピドコックに代わってスリップストリームに入ったヨハンネセンを横に並ばせることなく先頭をキープ。あらゆるタイトルを奪ってきた得意のスプリントで2021年、2025年に続く3回目のツール区間優勝を掴み取った。

追い込むメイン集団を背に、逃げ切った4名がスプリント勝負を開始 photo:CorVos

4名の勝負を制したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) photo:CorVos

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)とパートナーのロクサンさんが勝利を喜ぶ photo:CorVos
ヨハンネセンが2位、「レース中に右のシフトボタンが動かなくなったけど、ブラケットトップのボタン(ブラケットフード内側にあるボーナスボタン)は動くことに気づいた。スプリントでは下ハンドルを握ったけれど、そこからシフトにはハンドルを持ち替えなければいけなくて失速してしまった」と振り返るピドコックは3位。フィリッポ・ガンナ(イタリア、ネットカンパニー・イネオス)を先頭に飛び込んだメイン集団は僅か6秒届かなかった。
「とても厳しい1日だった。今大会の序盤はチームにとってうまくいかなかった。そんな状況でも冷静さを保ち、自分たちは良いチームで、いずれ流れは変わると皆で信じ続けていた」と振り返るファンデルプールは、フィニッシュ直後に待ち受けていたパートナーと勝利を喜んだ。ファンデルプールはツール開幕前に子供が2027年に1月に誕生予定であることを発表したばかりだった。

区間3勝目を飾ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.

危なげなく第1週を走りきったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O. 
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)は敢闘賞も獲得 photo:A.S.O.

ポイント賞リードを伸ばしたマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:A.S.O.
レース後半はステージ優勝を狙うチームに集団牽引を任せ、チームメイトたちと一緒に危なげなく集団内フィニッシュしたポガチャルはマイヨジョーヌ着用日数をもう一日伸ばすことに。ピーダスンは全体の6位でフィニッシュし、中間ポイントと合わせてポイント賞ランキングで2位ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)との差を広げることに成功している。
7月12日(日)第9ステージ
マルモー〜ウッセル 155km/獲得標高2,860m(丘陵)



ピュアスプリンターが火花を散らした2日間を終え、2026年のツール・ド・フランス第1週目を締めくくるのはマルモーから中央山塊に入り、ウッセルに至る185.5kmの丘陵ステージだ。
ようやくやってきた逃げ屋向きのコースはノコギリの歯のようにアップダウンの連続だ。4つの山岳(3、2、3、4級)が登場し、2つ目の2級山岳「シュック・オ・メ」は距離3.8km/平均7.7%と重量級選手を振り落とすには十分な難易度を誇る。しかしこの日は通過するコレーズ県に熱波で最高レベルの警報であるレッド・アラートが発令。35℃から40℃という予報を受け、主催者A.S.O.はコースを序盤区間をカットして30.9km短縮する(総距離は155kmに)という決定を下した。

コース短縮は一方でレースの激化を意味する。パレード走行を経て0km地点を通過するや否や、この逃げ切りチャンスを待ち侘びていた選手たちが一斉にアタックを仕掛けた。しかしコース短縮によって44.9km地点から13.9km地点になった中間スプリントを目掛け、マイヨヴェールを着るマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)にポイントを獲らせるべくリドル・トレックが集団をまとめ上げ、ピーダスンは登坂区間途中に設置されたスプリントポイントを悠々と先頭通過して25ポイントを獲得。再びアタック頻発の乱戦状態となった集団からは、やがて16名がジャンプして先頭グループを形成した。
「(フィリプセンをアシストした)連日リードアウトしても脚の調子は上々。今日な大きな逃げグループが先行するはずなのでチャンスを窺いたい」とレース前に話していたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)のアタックをきっかけに生まれた16名の逃げ。トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング)やクイン・シモンズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、ヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス)など、各チームのエースが逃げ切りチャンスに向けてギアを上げ、さらにシモンズとトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が抜け出しを試みるなど、この日のレースは一切落ち着くことがなかった。


平均46km/hで飛ばす逃げグループは16名から8名に減り、3級と2級山岳ではどちらも「今日は脚に力があった」と言うピドコックがペースを上げて先頭通過。マイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア)擁するUAEチームエミレーツXRGがコントロールするメイン集団は残り40kmで逃げとのタイム差を1分半でコントロールし、ここから逃げにメンバーを送り込まなかったネットカンパニー・イネオスが追撃を開始。しかし追われる立場の逃げグループも、このままメイン集団の追い上げを許すわけにはいかなかった。
最後の丘である4級山岳「モン・ベスー」(距離900m/平均7.3%)の麓でアタックしたのはファンデルプール。ヨハンネセンとピドコック、そして大会序盤にマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着たアレックス・ボーダン(フランス、EFエデュケーション・イージーポスト)が追従し、シモンズは脱落。後方からはシモンズ脱落の報せを受けたリドル・トレックが、なんとかアップダウンを耐えきったピーダスンでのステージ優勝を目指して猛然と集団牽引を開始した。


残り20km地点で、逃げるファンデルプール、ピドコック、ヨハンネセン、ボーダンと、追いかけるメイン集団のタイム差は52秒。牽引役が不足したため当初逃げに加わっていたデレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック)が集団に戻ってコントロールに加わったものの、残り10kmでは45秒、残り5kmでは40秒と思うように差は縮まらない。逃げる4名と、ぐっと人数を減らしたメイン集団はどちらも消耗しつつ、最終的に先頭4名の逃げ切りという結末を迎えることに。
最もスプリント力のあるファンデルプールが先頭、ピドコックがその番手からマークする状況でラスト1km。牽制によってガクンとペースを落としながら、ファンデルプールが右に左に進路を変えるその後方からは、視認可能な距離まで迫ったメイン集団からピーダスンが起死回生のロングスパートでかっ飛んでくる。しかしラスト200mからファンデルプールが一気に踏み込み、変速不良を抱えたピドコックに代わってスリップストリームに入ったヨハンネセンを横に並ばせることなく先頭をキープ。あらゆるタイトルを奪ってきた得意のスプリントで2021年、2025年に続く3回目のツール区間優勝を掴み取った。



ヨハンネセンが2位、「レース中に右のシフトボタンが動かなくなったけど、ブラケットトップのボタン(ブラケットフード内側にあるボーナスボタン)は動くことに気づいた。スプリントでは下ハンドルを握ったけれど、そこからシフトにはハンドルを持ち替えなければいけなくて失速してしまった」と振り返るピドコックは3位。フィリッポ・ガンナ(イタリア、ネットカンパニー・イネオス)を先頭に飛び込んだメイン集団は僅か6秒届かなかった。
「とても厳しい1日だった。今大会の序盤はチームにとってうまくいかなかった。そんな状況でも冷静さを保ち、自分たちは良いチームで、いずれ流れは変わると皆で信じ続けていた」と振り返るファンデルプールは、フィニッシュ直後に待ち受けていたパートナーと勝利を喜んだ。ファンデルプールはツール開幕前に子供が2027年に1月に誕生予定であることを発表したばかりだった。




レース後半はステージ優勝を狙うチームに集団牽引を任せ、チームメイトたちと一緒に危なげなく集団内フィニッシュしたポガチャルはマイヨジョーヌ着用日数をもう一日伸ばすことに。ピーダスンは全体の6位でフィニッシュし、中間ポイントと合わせてポイント賞ランキングで2位ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)との差を広げることに成功している。
ツール・ド・フランス2026第9ステージ結果
| 1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) | 3:27:51 |
| 2位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
| 3位 | トーマス・ピドコック(イギリス、ピナレロQ36.5プロサイクリング) | |
| 4位 | アレックス・ボーダン(フランス、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
| 5位 | フィリッポ・ガンナ(イタリア、ネットカンパニー・イネオス) | +0:06 |
| 6位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
| 7位 | マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) | |
| 8位 | ニコラ・ブルイヤール(フランス、トタルエネルジー) | |
| 9位 | ジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー) | |
| 10位 | ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
| 1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 32:17:04 |
| 2位 | ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +2:42 |
| 3位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | +3:27 |
| 4位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +3:30 |
| 5位 | フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) | +3:34 |
| 6位 | ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) | +3:55 |
| 7位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +4:00 |
| 8位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:21 |
| 9位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +4:57 |
| 10位 | エガン・ベルナル(コロンビア、ネットカンパニー・イネオス) | +9:12 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
| 1位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | 268pts |
| 2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) | 223pts |
| 3位 | ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 213pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
| 1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 28pts |
| 2位 | ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 19pts |
| 3位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 16pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
| 1位 | イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) | 32:20:31 |
| 2位 | フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) | +0:07 |
| 3位 | ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) | +0:28 |
チーム総合成績
| 1位 | リドル・トレック | 96:40:41 |
| 2位 | UAEチームエミレーツXRG | +27:08 |
| 3位 | ヴィスマ・リースアバイク | +36:22 |
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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