「まさかキャリア初の独走勝利がツールになるなんて」とグローブスは、劇的な勝利を喜ぶ。四度目の総合優勝を確実にしたポガチャルは「今年は別次元だった」と、最終日を前に、過酷な3週間を振り返った。



ステージ優勝 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)

残り16.8kmで飛び出し、独走態勢に入ったカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.

本当に多くの感情が湧いてくる勝利。チームはヤスペルとマチューを中心に数多くのプランを用意して臨み、最終的に僕にチャンスが巡ってきた。今大会はチームとしてうまく行かなかったことも多かったが、今日は脚の調子がよかった。そして苦しみながらフィニッシュを目指していたら、その先にツールのステージ優勝が待っていた。

ここ数日はチームが各選手に自由を与えてくれた。今日は明日のために力を温存するか、それとも勝利を狙いに行くのか自分の中で定まっていなかった。しかし冷たい雨の中では調子が良くなるんだ。でもまさかキャリア初の独走勝利がツールでだなんて信じられない。

キャリア初の独走勝利を決めたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

─子どもの頃からの夢が叶ったと?

自転車競技を始めるのが遅かったため、ここでの勝利を夢見る少年ではなかった。だけどこのツールに向けて大きなプレッシャーを感じていた。ジロやブエルタで勝利していた僕には、「ツールで勝つ力はあるのか」という疑問を投げかけられていたからだ。そして今日、その答えを結果で証明することができた。

登り基調のスタートには苦労したが、自分の特徴を活かすべく、序盤の動きに反応した。逃げ集団に入り、ジョーゲンソンとウェレンスは互いをマークし合うだろうと読んだ。勝つには彼らから離れなければならないと考えていた。そして(ロメオらの)落車直後にファンデンブルークが全力でアタックした。それに食らいつき、今度はファンデンブルークとジェイク・スチュワートが牽制し合った。だから残り16km地点で仕掛けた、残り200mまで全力で踏み込んだ。

涙を拭うカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.

今はこの勝利を喜び、今夜はチームメイトと祝いたい。そして明日のレースを楽しみたい。

ステージ2位 フランク・ファンデンブルーク(オランダ、ピクニック・ポストNL)

グローブスの勝利を祝うフランク・ファンデンブルーク(オランダ、ピクニック・ポストNL) photo:CorVos

グローブスとスチュワートと共に先頭に立った時点で、勝利は難しいと分かっていた。なぜなら2人はスプリントのある選手だから。スチュワートがグローブスとの差を詰めなかった瞬間、僕も追わないことを決めた。どうせスプリントになっても勝てないと思ったから。結果として2位が、今日掴める最高の結果だったと思う。後悔はない。チームとしても素晴らしい大会になり、今日また上位でフィニッシュできたことを誇りに思う。

ステージ6位 ジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック)

(ファンデンブルークが追走に協力しなかったのは)僕と一緒に走りたくなかったからだろう。僕らはステージのトップ3を目指し走っており、後続に追いつかれる可能性も低かった。単純に僕とカーデンにスプリントでは勝てないと思ったのだろうが、フィニッシュ手前の丘まで行き、そこで僕ら2人を引き離すという戦略も取れたはず。彼にはそれができる脚があったように思う。

仮にそういう展開になったとしても、僕もそう易々と独走を許すつもりもなかった。勝つには負ける覚悟が必要だ。そんな中でも彼はステージ2位に入った。彼にはあっぱれと言うしかないが、フラストレーションは溜まるレースとなった。僕が描いた理想的な展開は、3名でフィニッシュまで行き、スプリントで勝利することだった。

ステージ10位&敢闘賞 ハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト)

単独先頭に立ったハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

今大会は主にベン(ヒーリー)のアシストに徹してきたが、昨夜の時点で、今日のステージがチャンスになるだろうと思った。勝てず残念だ。登りでジェガットに追いつき、協力して逃げ続けられると思った。しかし実際には彼に力は残っておらず、その時「間違った動きに反応してしまった」と思った。だけどそのまま突き進んだものの、勝利には届かなかった。あの時、違う選手に反応していたらと思うよ。

─しかし、同じオーストラリア人が勝利した。

カーデンは僕の親友の1人。明日、共に走るパリは最高に楽しくなるだろう。でも彼の喜ぶ姿と涙を見ると、ビタースイートな感情になるよ。今大会で僕ができる走りを見せることができたものの、勝利への渇望がさらに高まった。

マイヨジョーヌ&マイヨアポワ(山岳賞)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)

総合優勝を事実上、確定させたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)を祝福するヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

毎年のように「これまでで一番過酷なツールだった」や、「人生で最も辛かった」なんて言っているが、正直、今年は別次元の厳しさだったと感じている。ツール全体のパワーデータを見返してみても、少し楽に感じた日があったとすれば、せいぜい1日だけ。それぐらい本当に信じられないほどタフな大会だった。(総合争いが事実上終わった)今日ですら、スタートからフィニッシュまでほぼ全開だった。

それでも楽しむことができたツールだ。個人的にコンディションが良く、脚の調子も良かったからね。明日の最終日が楽しみだよ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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