エヴェネプールも出場したツール・ド・ロマンディは3.44kmの個人タイムトライアルで開幕。前日に出場を知らされたサムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がトップタイムを叩き出し、ワールドツアー初勝利を決めた。



パリ五輪金メダリストを表す、金色の装備で走るレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

春のクラシックシーズンが終わり、欧州の自転車ロードレースはグランツールに向けて動き出す。5月9日に開幕するジロ・デ・イタリアとの間を繋ぐように行われるのが、今年で78回目を迎えるツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)だ。

スイスのフランス語圏地域「ロマンディ」の名を冠する本大会は、スイスが舞台の6日間レース。初日のプロローグから丘陵、山岳、そして最終日の個人タイムトライアルとスプリンターには向かないレイアウト。そのため例年総合系の選手が集い、今年もレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)やジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)など、ワールドツアーにふさわし豪華メンバーが出場した。

ステージ優勝にはわずかに届かなかったイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:Tour de Romandie

大会初日はサン・ティミエに設定された3.44kmコースを走るプロローグ(個人タイムトライアル)。選手紹介の意味合いも持つこの戦いは、短くも直角&鋭角コーナーが連続するため、選手たちのバイクハンドリング技術が試された。短距離のためTTバイクかノーマルバイクかの選択も勝負の鍵になるなか、序盤スタート組のイバン・ロメオ(スペイン、モビスター)がトップタイムを叩き出す。

現U23のTT世界王者である21歳はノーマルバイクにディスクホイールをチョイスし、4分36秒でフィニッシュ。長らくホットシートに腰掛けるなか、昨年のプロローグ勝者であるマイケル・ゼイラート(オランダ、チューダー・プロサイクリング)は、好走見せるもロメオに0.26秒届かない。ロメオのタイムを上回ったのはわずか2名で、その1人がTTスペシャリストのイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)だった。

ステージ6位だったシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) photo:CorVos

TTバイクを選択したオリヴェイラは、直近に出場したジロ・ダブルッツォでの区間2勝を挙げた勢いそのままに、ロメオのタイムを3秒更新。オリヴェイラの記録した4分33秒のトップタイムには母国スイス出身のTTスペシャリストであるシュテファン・ビッセガー(デカトロンAG2Rラモンディアール)やシュテファン・キュング(グルパマFDJ)は及ばず、またTT世界王者かつパリ五輪金メダリストのエヴェネプールも4秒遅れでフィニッシュした。

しかし、初日のプロローグを制したのは今年グルパマFDJから移籍したサムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)だった。レース前日に大会出場が知らされた23歳は、TTバイクで快走を見せる。そしてオリヴェイラのタイムをわずか0.28秒上回った。

トップタイムを叩き出したサムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

ワールドツアー初勝利を掴んだサムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:Tour de Romandie

「勝利は予想していなかった結果。昨日までアンドラで練習しており、急遽スイス行きの飛行機に飛び乗ったんだ。そしてこの勝利を手に入れた。走っている間は痛みしかなかった。インタビューに応えるまで勝ったことを知らなかったので驚いたよ」と、ワトソンは喜びを語った。

昨年7月のツール・ド・ワロニー(UCI2.Pro)の最終第5ステージで、残り2km地点からのアタックを成功させ、プロ初勝利を飾ったワトソン。それに続く通算2勝目が、ワールドツアー初勝利となった。
ツール・ド・ロマンディ2025プロローグ結果
1位 サムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 4:33
2位 イヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
3位 イバン・ロメオ(スペイン、モビスター) +0:03
4位 シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
5位 マイケル・ゼイラート(オランダ、チューダー・プロサイクリング)
6位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)
7位 ティボー・ゲルナレック(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)
8位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:04
9位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) +0:05
10位 ヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツXRG)
個人総合成績
1位 サムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 4:33
2位 イヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
3位 イバン・ロメオ(スペイン、モビスター) +0:03
4位 シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール)
5位 マイケル・ゼイラート(オランダ、チューダー・プロサイクリング)
6位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) +0:04
7位 ティボー・ゲルナレック(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)
8位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
9位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) +0:05
10位 ヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツXRG)
その他の特別賞
ポイント賞 サムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
ヤングライダー賞 サムエル・ワトソン(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツXRG
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos