2010年7月22日、ツール・ド・フランス第17ステージがピレネー山岳ステージで行なわれ、霧に包まれたトゥールマレー峠の頂上ゴールでアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が激突。両者一歩も譲らない攻防の末、アンディがステージ優勝、コンタドールがマイヨジョーヌを守った。

雨のピレネーで7名がエスケープ

逃げグループを形成するフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)ら逃げグループを形成するフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)ら photo:Makoto Ayanoトゥールマレー峠に向かって、休息日前の第16ステージとは逆方向に走る第17ステージ。レース前半に1級山岳マリーブランク峠と1級山岳スロール峠が設定されており、最後は今大会最大の目玉である超級山岳トゥールマレー峠の頂上ゴールが登場する。

前日から天候は荒れ模様。レース前夜の雷雨は落ち着きを見せたが、快晴&高温の前々日とは打って変わって一日中小雨が降り続く低温のコンディション。荒れたレースを予感させた。

単独で追走し続けたカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)単独で追走し続けたカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) photo:Cor Vosスタート後すぐにアタックを成功させたのはレミ・ポリオル(フランス、コフィディス)やフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)、アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)、マークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)ら7名。

メイン集団ではカウンターアタックが掛かり続けたが、総合3位のサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が落車するハプニングも手伝ってペースダウン。逃げに乗り遅れたカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)が飛び出し、単独で先頭7名を追走した。

メイン集団内でトゥールマレー峠に向かう新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)メイン集団内でトゥールマレー峠に向かう新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano56km地点の1級山岳マリー・ブランク峠通過時で、サストレは先頭グループから1分20秒遅れ。しかし次の1級山岳スロール峠までの平坦区間でタイム差は4分45秒まで広がってしまう。圧倒的な登坂力を誇るサストレの合流を阻止しようと、先頭7名はペースを落とさずに逃げ続けた。

メイン集団はマイヨジョーヌ擁するアスタナや、サストレの総合ジャンプアップを阻止したいオメガファーマ・ロットがコントロール。先頭グループとのタイム差を常に10分以下に抑え込んだ。

1級山岳スロール峠で羊の群れがメイン集団に乱入!1級山岳スロール峠で羊の群れがメイン集団に乱入! photo:Cor Vos逃げ7名&追走サストレが先行していたため、1級山岳マリー・ブランク峠とスロール峠ではメイン集団内の選手たちに山岳ポイントは与えられず(1級山岳では8位通過の選手までポイント付与)。アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)はマイヨアポワキープに向けて着実に駒を進めた。

120kmに渡って単独で追走したサストレは、結局先頭グループに追いつくことなくゴール25km手前でメイン集団に吸収。メイン集団はサクソバンク、ラボバンク、アスタナの3チームがペースを上げ、先頭グループとのタイム差を詰めながらトゥールマレー峠の上りに向かった。


霧のトゥールマレーで繰り広げられた一進一退の攻防

トゥールマレー峠に向かってメイン集団のペースを上げるマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)トゥールマレー峠に向かってメイン集団のペースを上げるマッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク) photo:Cor Vos最後に待ち構えるのは登坂距離18.6km・平均勾配7.5%の超級山岳トゥールマレー峠。上りを進むにつれて先頭7名の協調体制が崩れ、アタックを成功させたロシアチャンピオンのコロブネフの独走を開始した。

メイン集団はサクソバンクが主導権を握り、オグレディ、ブレシェル、カンチェラーラ、セレンセンを段階的に切り離しながら、ハイペースを維持してトゥールマレー峠を登坂。このサクソバンク勢の攻勢にアスタナは苦戦し、アシスト役のヴィノクロフやナバーロが脱落してしまう。

先頭でバトルを繰り広げるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)先頭でバトルを繰り広げるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vos最終アシストのフグルサングが力尽きると、ついに有力選手たちの闘いが始まった。

ゴールまで10kmを残した急勾配でカルロス・バレード(スペイン、クイックステップ)やピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)がアタックを仕掛け、これに乗じる形で総合2位・8秒遅れのアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)が飛び出した。

強烈なアタックを仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)強烈なアタックを仕掛けるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos一気にペースを上げてメイン集団を粉砕したアンディには、マイヨジョーヌの王者コンタドールのみが合流。ハイペースでトゥールマレー峠を駆け上がるこの総合トップツーは、それまで逃げていたコロブネフを抜いて先頭に。正真正銘、マイヨジョーヌを懸けた一騎打ちが繰り広げられた。

視界が50mに満たないような霧の中、ひたすら前を見てペースを上げ続けるアンディと、しっかりとマークするコンタドール。後方では総合3位以下の選手たち(サンチェス、メンショフ、ファンデンブロック)が追走グループを形成したが、先頭2名とのタイム差は広がるばかり。

霧のトゥールマレー峠でバトルを繰り広げるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)霧のトゥールマレー峠でバトルを繰り広げるアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosゴールまで3.8kmを残してコンタドールが強烈なアタックを仕掛けたが、アンディが食らいついてアタックを封じ込める。アンディの加速にもコンタドールは反応。両者一歩も譲らない攻防が続き、2人のままラスト1kmに突入した。

肩を突き合わせてゴールに向かうアンディとコンタドール。最後はコンタドールがアンディに先頭を譲り、ガッツポーズを繰り出すアンディを先頭に霧のトゥールマレーにゴールした。

ステージ優勝はアンディ、マイヨジョーヌはコンタドールの手に。

アンディは第8ステージに続く今大会2勝目。しかし本当に欲しかったのはマイヨジョーヌだ。

コンタドールが先頭を譲り、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がガッツポーズでゴールコンタドールが先頭を譲り、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がガッツポーズでゴール photo:Makoto Ayano

マイヨジョーヌを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)マイヨジョーヌを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Makoto Ayano「ステージ優勝に満足している。でも出来ればマイヨブランからマイヨジョーヌに衣替えしたかった。今日は自分を信じて、上りでリズムを変えたり、最善を尽くしてみた。でも2人の力が拮抗していたんだ。攻撃を続けた僕にアルベルトは勝利を譲ってくれた。チャンピオンとしての彼の行ないに敬意を表したい(レース公式サイトより)」

今大会最大の山岳ステージを終え、総合1位コンタドールと総合2位アンディの総合タイム差は8秒のまま。2人の総合争いは第19ステージの個人タイムトライアルで決着が付けられる。

28分17秒遅れでゴールした新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)28分17秒遅れでゴールした新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto AyanoTT能力で勝るコンタドールを推す声が強いが、近年TTの走りを改善させているアンディも侮れない。8秒は一つのトラブルで簡単にひっくり返るタイム差。近年稀に見る小さなタイム差での総合争いは個人TTで決着する。

この日は総合10位までの順位が変動。リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)とヴィノクロフが総合トップ10圏外に陥落し、代わってホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が総合7位、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)が総合8位、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)が総合9位、クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)が総合10位に浮上している。表彰台争いはサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)とデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)が21秒差で競り合う展開に。

マイヨアポワはシャルトー、マイヨヴェールはトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)がキープ。残りの3ステージにはカテゴリー山岳が1つも設定されていないため、シャルトーの山岳賞獲得が確定的に。フースホフトを中心としたポイント賞争いは最終日までもつれ込むことになりそうだ。

多くのスプリンターたちが早々に脱落する中、新城幸也(Bboxブイグテレコム)はマリー・ブランク峠とスロール峠をメイン集団内でクリア。最後のトゥールマレー峠でペースの上がったメイン集団から脱落し、グルペットに入ることなく28分17秒遅れで霧のトゥールマレーにゴールした。ピレネー山脈を乗り越えたことで、ユキヤの2年連続ツール完走が現実的に。パリ・シャンゼリゼまで残すところ3ステージだ。


ツール・ド・フランス2010第17ステージ結果
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)      5h03'29"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         +1'18"
4位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)    +1'27"
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)        +1'32"
6位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)            +1'40"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)     +1'45"
9位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+1'48"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)          +2'14"
100位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)            +28'17"

第17ステージ敢闘賞
アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)       83h32'39"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)        +08"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)        +3'32"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)            +3'53"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+5'27"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)          +6'41"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         +7'03"
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)    +9'18"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)          +10'12"
10位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック)    +10'37"
112位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)           +3h09'56"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)  191pts
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)        187pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)162pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)    143pts
2位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ)       128pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)      116pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)     83h32'47"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)         +6'33"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)         +10'04"

チーム総合成績
1位 レディオシャック   250h44'40"
2位 ケースデパーニュ     +8'30"
3位 ラボバンク       +33'39"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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