「ホビーレーサーの甲子園」の異名を取るツール・ド・おきなわ市民レース。常夏の沖縄に用意された最高の舞台で、日頃の鍛錬の成果を見せるとき。”最強ホビーレーサー”高岡亮寛が狙うのは市民210kmの通算8勝目+2度めの3連覇。そして各クラスの頂点に立つ者はいったい誰だろうか?



■コースは昨年と同じ オリオン坂を下ってすぐのフィニッシュ

羽地の登りでは消耗の中でのアタック合戦となる photo:Makoto AYANO

国内長距離のロードレースがツール・ド・おきなわだ。シーズン最後のレースであり、アップダウンも激しい過酷な公道を使った長距離ロードレースとなる。

2年前の大会までの番越トンネルを抜けた時点で右折していたのを、新コースでは直進することになる

2つめの「うねり」を登り返すと勾配が緩み、平坦区間へ
左手にパノラマが開けると急勾配ダウンヒルに突入



市民210km、140km、100kmといった長距離レースのコースは昨年から使用されているルートとなる。フィニッシュまで残り9kmで大浦湾より登りはじめ、番越(ばんこし)トンネルを越えて羽地ダム方面へは向かわず、そのまま峠を登りつめてから下り、オリオンビール工場の裏手へと通じる長いダウンヒル。国道56号線へと出て、スタートした方向とは逆向きにフィニッシュする。

高岡選手を追う追走グループは20人ほどに絞られていく photo:Makoto AYANO

もはや「追走集団」ではなく完全に2位争いの集団になっていた photo:Makoto AYANO
脚を使いたくない選手・もう脚がない選手・落車やメカトラを抱えた選手が入り混じってローテは回らない photo:Makoto AYANO



昨年大会に出場しなかった人で、今年このコースに初めてチャレンジするという人は、昨年紹介した市民レースプレビュー+コース攻略ガイド記事を参考にして欲しい。

当日の天候は曇から雨模様の予報。気温は低くはないが、体感温度の低さから消耗戦になるだろう。そして雨で滑りやすい沖縄独特の路面に注意が必要になる。

普久川ダム補給ポイントでのメイン集団。ボランティアからドリンクの手渡しが受けられる photo:Makoto AYANO

大会オフィシャル提供の補給に関しては、昨年用いられたペットボトル方式ではなく、従来からの公式バイクボトルでの手渡しとなる。ボランティアスタップからの「水」「スポーツ(ドリンク)」の掛け声を聞き分けて受け取ると良いだろう。

■高岡亮寛の通算8勝目+2度めの3連覇なるか?

最後の東江原トンネルを抜けて名護市街へと向かう高岡亮寛(Roppong Express) photo:Makoto AYANO

市民レース210kmの優勝候補筆頭はもちろん高岡亮寛(Roppong Express)だ。昨年大会では奥のアップダウンでアタックし、2回目の与那の坂を単身クリアし、フィニッシュまで約75kmを独走して圧倒的な優勝を飾った。

「ミスターツール・ド・おきなわ」の呼び声高い高岡。今までに勝利した年を振り返ると、2007、2011、2015、2016、2017、2019、2022年と、15年の間にじつに7勝を挙げている。新型コロナの影響による大会中止で勝利年が飛ぶため分かりにくいが、今年は通算8勝目と「2回目の3連覇」がかかっている。そして昨年まで「直近の過去6回の大会で5回勝っている」(7回遡ると2014年は2位)という、驚異の勝率を誇っている。

2位以下に2分28秒差をつけて独走勝利を決めた高岡亮寛(ROPPONGI EXPRESS) photo:Makoto AYANO

そんな頭ひとつ抜けている印象がある高岡だが、今年もあらゆるジャンルのレースやチャレンジライドを重ねてきた。6月にはアメリカ・カンザスでのグラベルレース「アンバウンド・グラベル」や8月にはUCIグラベル世界選手権へ参戦。また8月には日本縦断のギネス記録を更新すべく鹿児島の佐田岬から2度めの日本縦断ライドに挑戦、しかし酷暑と体調不良により失敗に終わる。ロードレースではJBCFのE1クラスの年間総合優勝を飾った。前週の「しろさとTT」の200km個人タイムトライアルでは自己最高をマークし、上々の調子で沖縄に乗り込む。

市民210kmの表彰 優勝の高岡亮寛(Roppong Express)、2位北野普識(イナーメ信濃山形)、3位 南広樹(TeamZenko) photo:Makoto AYANO

マルチジャンルで意欲的に走り続ける高岡。果たして46歳という年齢はどう影響するだろうか?

高岡は言う。「おきなわは毎年優勝することしか考えていませんよ(笑)。前週のしろさとTTの結果を見る限り調子は良いと思ってます。そう信じて走ります。井上亮さんと中里仁さんが手強いと思います。あと天気が心配です。それが一番のキーかもしれません。いつも通りの準備をしたつもりなので、いつも通りに走るだけです」。

「このスプリントを1番争いでしたかった」悔しさがこみあげ、叫んでいた北野普識(イナーメ信濃山形) photo:Makoto AYANO

昨年、追走集団のスプリント合戦で頭を取り2位だったのは北野普識(イナーメ信濃山形)。年間通して好成績を出す安定した実力が光る。そんな北野の今年の目標は、もちろん順位を上げること=「優勝」だ。

北野「昨年のおきなわから今年の5月まで、ずっと調子が良く、JPTでも表彰台に上がれましたが、その後不調に悩まされました。しかしおきなわに向け今年最軽量となり、上がり調子が来たので楽しみです。抱負は、自分の入らない優勝候補の逃げは許さず、ハードな展開に持ち込みたい。雨予報のため、雨天のテクニックと経験が問われ、早逃げと落車が去年のように展開を左右するのではないかと思っています」。

2019年に2位だった松木健治(VC VELOCE) photo:Makoto AYANO

例年表彰台争いに加わる松木健治(VC VELOCE)も、おきなわの勝利を渇望する一人だ。

松木「昨年は直前の体調不良により不本意な走りしかできなかったんですが、今年は右肩上がりに身体の状態が良くなっているので、今年の中ではベストな走りができると思います。若手の強い選手がたくさん参加し、例年以上にレベルが高いレースとなりそうですが、これまでの経験を上手く使って得意な展開に持ち込めたらと思います。目標はもちろん優勝目指して走ります。そして年齢に抗って走り続ける同年代のおっさん同士の熱い戦いも楽しみにしてます(笑)」。

有銘からの上りでペースを上げる井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Makoto AYANO

昨年、大事な局面でのチェーン外れにより脱落を喫し、12位に終わった井上亮(Magellan Systems Japan)は、高岡が名指しで警戒する一人だ。

井上「最後は結局いつものメンツ(+ロードで実績のある人)の戦いになりそうだな、と思っています。どうなるか分からないけど、自分は挑戦者として挑み、力と力をぶつけ合って観る人を楽しませられるようなレースができたらと思っています。楽しみです」。

昨年はコロナ対策により203人にエントリー数が絞られたが、今年は238人に増員となった。もちろん人数が増えればアベレージスピードは上がり、ダークホースも紛れ込むことだろう。高岡が下馬評通り勝利を重ねるのか、それとも強力な対抗馬が現れるのか。市民レース最高の栄誉をものにするのはいったい誰だろうか。

2022年大会の市民210kmトップ10

1位 高岡亮寛(Roppong Express) 5時間14分54秒
2位 北野普識(イナーメ信濃山形) +2分28秒
3位 南広樹(TeamZenko)
4位 池川辰哉(VC VELOCE/EMU)
5位 佐々木遼(TeamGOCHI )
6位 佐藤文彦(ロードレース男子部)
7位 道堀裕介 (Team Kermis Cross) +2分29秒
8位 中村俊介(Route365)
9位 兼松大和(Infinity Style) +3分15秒
10位 原田将人(Infinity Style)

2022年の各クラス優勝者たち

市民レース140kmオープン
1位 井上和郎 3時間45分29秒

市民レース140kmマスターズ
1位 小川剛司 3時間55分53秒

市民レース100kmオープン
1位 小林亮 2時間49分20秒

市民レース100kmマスターズ
1位 左迫間昭一 2時間48分06秒

中学生レース50km
1位 中尾涼介 1時間20分02秒

市民レディースレース50km
1位 南芙美子 1時間26分29秒

市民レース50kmオープン
1位 石倉龍二 1時間15分08秒

市民レース50kmフォーティ
1位 宮澤崇史 1時間18分11秒

市民レース50kmフィフティー
1位 水町勝彦 1時間18分54秒

市民レース50kmオーバー60
1位 小野忠 1時間20分15秒

チャレンジレース50km
1位 東江熙 1時間26分20秒

小学生レース10km
1位 富樫悠太郎 16分22秒

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