世界選手権MTB競技のラストを飾る男女エリートXCOでトーマス・ピドコック(イギリス)とポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)が圧勝。ファンデルプールは落車リタイア、北林力はマイナス1ラップの76位に終わった。



女子エリート:フェランプレヴォが2年連続のXCO/XCC制覇

曇り時々雨。女子エリートレースがスタート photo:CorVos

チームリレーから始まったUCI自転車世界選手権大会のMTB競技もいよいよ最終日。XCO(クロスカントリーオリンピック)の男女エリートレースがスコットランド国境にある「グレントレスの森」の特設コース(1周3.5km/獲得145m)を舞台に開催された。

スタートループ+7周回で争われた女子エリートレースは序盤からロアナ・ルコント(フランス)とパック・ピーテルス(オランダ)が飛ばす展開でスタート。1周目でルコントが独走に持ち込み、後方からは2年連続、そしてXCC(ショートトラック)との連覇が掛かるポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)がプッシュ。序盤12位といいう遅い出だしだったものの、圧倒的な登坂力でポジションを上げてルコントに合流。2周目の登坂区間で独走に持ち込むと、それ以降誰もそのハイペースに追従することはできなかった。

圧倒的なペースで独走するポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス) photo:CorVos

2年連続のダブル優勝を叶えたポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス) photo:CorVos

MTB女子エリートXCO表彰台:2位ルコント、1位フェランプレヴォ、3位ピーテルス photo:CorVos

トップ選手で唯一ハードテールバイクを選んだフェランプレヴォは、最速ラップを叩き出し続けながらフィニッシュ。世界選手権で2年連続となるXCOとXCCのダブル制覇であり、XCO制覇は2015、2019、2020、2022年に続く5度目。圧倒的な走りで自身8度目の世界タイトルを掴み取った。

「登りで全開、下りで休むという作戦が完璧にハマった。良いスタートではなかったけれど、作戦を守り抜いた自分自身を本当に誇りに思う。とても幸せな気分」とフェランプレヴォ。1分14秒遅れでルコントが2位に入りフランスはワンツー勝利。3位はピーテルスが入っている。



男子エリート:シューターを破り、ピドコックが五輪に続くビッグタイトル獲得

後方からスタートを待つマチュー・ファンデルプール(オランダ) photo:CorVos

10度の世界王者にして連覇が掛かる37歳ニノ・シューター(スイス)を筆頭に、五輪王者トーマス・ピドコック(イギリス)、ロード世界選を制したばかりのマチュー・ファンデルプール(オランダ)、ペテル・サガン(スロバキア)、日本から唯一参加した北林力などが多数揃った男子エリートはスタートループ+8周回。比較的静かな滑り出しとなったが、スタートループを終えるタイミングで注目のファンデルプールが落車した。

簡単な右コーナーで前輪を滑らせ、ロードレースと同じ右半身から地面に叩きつけられたファンデルプールはリタイアを選択。シクロクロスとロードレースに続く今年3度目の世界タイトル獲得を狙ったファンデルプールだったが、五輪に続くMTBのビッグレースでまたしても結果なしに終わる。「簡単な場所でタイヤを滑らせてしまった。僕のミスだ。自分自身に怒っている」という言葉と共に会場を後にすることとなった。

猛烈な勢いでポジションを上げるトーマス・ピドコック(イギリス) photo:CorVos

登坂でシューターを振り切るトーマス・ピドコック(イギリス) photo:CorVos

シューターやジョーダン・サルー(フランス)といった世界王者経験者が積極的にペースを上げ、ポイント保有数から5列目スタートとなったピドコックは猛烈な勢いでポジションを上げ続けた。シューター、サルー、そしてロードではEFエデュケーション・NIPPO ディベロップメントチームに所属するアラン・ハースリー(南アフリカ)率いるトップグループに対し、五輪覇者はスタートから30分が経過したタイミングで合流を果たした。

「最初の5周回はとても速いペースだった。僕がいた場所からポジションを上げるのさえ苦労した」と言うピドコックだったが、全8周回の6周目にアタック。まずはハースリーを振り落とし、波状攻撃で粘るシューターをも脱落させる。こうしてフィニッシュまで続く独走体制に持ち込んだ。

ピドコックを追いかけるニノ・シューター(スイス) photo:CorVos

世界王者に輝いたトーマス・ピドコック(イギリス) photo:CorVos

諦めずに追うシューターや、XCC(ショートトラック)で勝利したサムエル・ゲイズ(ニュージーランド)らを寄せ付けず、ピドコックがフィニッシュラインに飛び込んだ。五輪覇者が母国開催の世界選手権で世界チャンピオンに輝くという、まさに圧巻の強さでの勝利。「すごくホッとしているよ。アタックしてすぐにディレイラーの調整が悪くなり、あまり負荷をかけないためにもいつものように走れなかったんだ。最後の数周回はかなりストレスを感じていた」と、メカトラブルを抱えながらの苦しい勝利だったことを話している。

MTB男子エリートXCO表彰台:2位ゲイズ、1位ピドコック、3位シューター photo:CorVos

2位はゲイズ、シューターはゲイズに引き離され3位。北林は先頭集団から毎ラップ1分ずつ失う苦しい展開で、最終ラップに入ることができずマイナス1ラップでレース終了。「応援ありがとうございました。目標としていたフルラップは叶いませんでしたが、もうすぐに気持ちを切り替えて、次のアジア選手権に向けて、気持ちと身体をつくって、また頑張っていきたいと思います」とコメントしている。
UCI世界選手権大会 MTB女子エリートXCO結果
1位 ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス) 1:24:14
2位 ロアナ・ルコント(フランス) +1:14
3位 パック・ピーテルス(オランダ) +1:27
4位 モナ・ミッターウォールナー(オーストリア) +1:31
5位 アレッサンドラ・ケラー(スイス) +2:23
6位 イヴィ・リチャーズ(イギリス) +2:39
7位 マルティナ・ベルタ(イタリア) +4:10
8位 グウェンダリン・ギブソン(アメリカ) +4:17
9位 ヨランダ・ネフ(スイス) +4:22
10位 サヴィリア・ブランク(アメリカ) +5:00
UCI世界選手権大会 MTB男子エリートXCO結果
1位 トーマス・ピドコック(イギリス) 1:22:09
2位 サムエル・ゲイズ(ニュージーランド) +0:19
3位 ニノ・シューター(スイス) +0:34
4位 ヴィクトール・コレツキー(フランス) +0:43
5位 ヴラッド・ダスカル(ルーマニア) +0:54
6位 アラン・ハースリー(南アフリカ) +1:07
7位 ルカ・ブライド(イタリア) +1:41
8位 ラース・フォースター(スイス) +1:45
9位 ルカ・シュワルツバウアー(ドイツ) +1:52
10位 アントン・クーパー(ニュージーランド) +1:53
text:So Isobe
photo:CorVos