中盤の山岳がスプリンターを退けたツール・ド・ポローニュ第5ステージで、プロ2年目のマライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)が勝利。またフィニッシュ手前の落車や、カメラモトと観客が衝突するなど混沌のステージとなった。



地元ファンからの熱烈な応援を受けるミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

第80回ツール・ド・ポローニュの第5ステージはプシュチナからビエルスコ・ビャワまでの198.8km。コース中央に設定された2級、1級、1級山岳を越え、ラストはビエルスコ・ビャワに設定された7.4kmコースを3周する。

獲得標高差3,000m超えと逃げに有利なレイアウトのため、この日は序盤から激しいアタック合戦が繰り広げられた。そして”逃げ屋”のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)ら5名がエスケープ。今週末のロード世界選手権にオランダ代表として選出されたミック・ファンダイケ(ユンボ・ヴィスマ)など強力なメンバーが入った逃げグループは、メイン集団に最大5分差をつけた。

トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)ら5名が飛び出す photo:CorVos

プロトンはバーレーン・ヴィクトリアスがコントロール photo:CorVos

逃げ集団は残り13kmで吸収された photo:CorVos

順調に距離を消化していく逃げ集団だったが、リーダーチームであるバーレーン・ヴィクトリアスが先導するプロトンは次々と逃げを捉え、最後まで粘ったデヘントとマルクス・フールゴー(ノルウェー、リドル・トレック)を残り13kmで吸収。前日にスプリントを繰り広げたオラフ・コーイ(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)やサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)らスプリンターが脱落したメイン集団は、ビエルスコ・ビャワに設定されたコースの最終周回に突入した。

ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)で勝負したいイネオス・グレナディアーズが50名程度に絞られたのペースを作り、ゲラント・トーマス(イギリス)が先頭でフラムルージュ(残り1km)を通過する。そしてパヴェル・シヴァコフ(フランス)の牽引が終わった残り250m地点で、イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)やジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)が集団の中盤で落車した。

残り150mからスプリントを開始し、先頭に立ったマライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

圧巻のスピードを披露したマライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

落車の混沌を回避した集団前方では、残り150mからマライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)がスプリントを開始。その後ろにマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)がついたものの、前日にスプリンターのコーイに迫ったファンデンベルフのトップスピードには敵わず、オランダ出身の24歳が5日目の勝者に輝いた。

「絶好調だった。昨日は(スプリンターを含む)集団スプリントにもかかわらず2位に入り、今日は僕に適した終盤のレイアウトだった。僕の直後にフィニッシュしたのが総合首位の選手(モホリッチ)だった事実が、更にこの勝利を特別なものにしてくれた。ポーランドでは2019年と21年にも勝っている場所。だからツール・ド・ポローニュで勝つことができて本当に嬉しい」とファンデンベルフは喜んだ。

グルパマFDJの下部チーム出身でツール・ド・ラブニールでも勝利を挙げているファンデンベルフは24歳。2022年にEFエデュケーション・イージーポストでプロデビューを果たし、今年1月のトロフェオ・アルクディアでプロ初勝利をマーク。そしてこれが念願のワールドツアー初勝利となった。

強豪2人を退け、ワールドツアー初勝利を飾ったマライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

なお、レース終盤にカメラマンを載せたモトバイクが子ども2名を含む4名の観客と接触するアクシデントが発生。レース主催者は病院に搬送された観客4名に大きな怪我はなかったと伝え、またモトバイクの運転手とカメラマンはフランス出身者で共にワールドツアーで何年も経験を積んでいるのだという。

翌日の第6ステージは16.6kmの個人タイムトライアル。最終日が集団スプリントが濃厚な平坦ステージのため、このTTで総合優勝の行方がほぼ決定する。
ツール・ド・ポローニュ2023第5ステージ結果
1位 マライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) 4:51:27
2位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)
4位 ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)
5位 フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド、UAEチームエミレーツ)
6位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー)
7位 セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 ルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)
9位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
10位 マルチン・ブジンスキー(ポーランドナショナルチーム)
個人総合成績
1位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) 22:29:32
2位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:12
3位 ラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツ) +0:16
4位 ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ) +0:18
5位 オスカー・オンレー(イギリス、DSM・フィルメニッヒ) +0:26
6位 エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)
7位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
8位 サムエーレ・バティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)
9位 シルヴァン・モニケ(ベルギー、ロット・デスティニー)
10位 レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ)
その他の特別賞
ポイント賞 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)
山岳賞 ジャコポ・モスカ(イタリア、リドル・トレック)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos