バイクとライダーの3つの接点である手・骨盤・足に着目し、人間工学に基づいたサドル、グリップ、ハンドルバーなどを開発するドイツのバイクパーツ・アクセサリーブランド、SQlab。同社が手掛けるロードバイクサドル「612 Ergowave S-Tube」をテストしていく。



SQlab 612 Ergowave S-Tube photo:Makoto AYANO

ドイツに拠点を構えるSQlabは、バイクとライダーの3つの接点である手・骨盤・足に特化し、人間工学に基づいたサドル、グリップ、ハンドルバーなどをラインアップするバイクパーツ・アクセサリーブランド。SQlabというブランド名は、古代ギリシャ神話に登場するアスクレピオス(ドイツ語ではアスクーラップ)「医術を司る癒しの神」に由来しており、人体に優しい製品を開発するブランドであることを表現している。

そんなSQlabがラインアップするサドルは、男性と女性の解剖学的構造や医学的な観点から体重を正しく分散させ、血流・神経への圧迫を避ける設計になっている。人間工学に基づくサドルを人間とマッチングさせる必要があることから、SQlabは座骨間隔を計測してサドルサイズを選択するというフィッティングプロセスを世界で初めて考案したという。

サドル中央部にくぼみを設けることでデリケートゾーンの圧迫感を軽減 photo:Makoto AYANO

座面はノーズ部分が低く、後部にかけて波のように盛り上がっていき、後部は高くなっている photo:Gakuto Fujiwara

今回ピックアップするのはロードバイク向けサドルの612シリーズのスタンダードモデルである「612 Ergowave S-Tube」。座面に組み合わせられているのはスリムな見た目の固めのパッド。一見するとオーソドックスな形状ではあるものの、座面はノーズ部分が低く、後部にかけて波のように盛り上がり、高くなっているデザイン。

水平に低くされたサドル前半部のデザイン、そしてサドル中央部に設けられたくぼみによって、男女を問わずデリケートな部分への圧迫感を軽減し、血流阻害による様々な障害を未然に防止してくる。一方、後部を高くすることで、より背面部へのサポート力を高め、効率的な動力伝達を実現している。

レールはS-tubeレールを採用 photo:Makoto AYANO

実測値:188g photo:Michinari TAKAGI

軽量な金属素材のS-tubeレールを採用し、サドルへの最大荷重は90kgまでとなっている。サドル幅は12cm、13cm、14cm、15cmと1cm刻みの4種で、自身の座骨幅に合ったサドルを見つけられる。価格は23,100円(税込)で、取り扱いはウインクレルだ。それではインプレッションに移ろう。



―編集部インプレッション

座骨幅を測定するCW編集部員の高木 photo:Naoki Yasuoka

SQlab 612 Ergowave S-Tubeのインプレッションを担当するのはCW編集部員の高木三千成。20種類以上のサドルを試すほどの「サドル沼」にハマってしまったこともあり、サドル選びは慎重に行なっている。現在は、頻繁に着座位置を前後にずらすライドスタイルにマッチし、かつ体に合った形のスペシャライド S-WORKS ROMIN EVOを使用中だ。

SQlabのサドルは座骨幅を測定し、最適なサドルサイズを選ぶというコンセプトを世界で初めて導入したブランドで、今回テストを行うロードサドル「SQlab Saddle 612 Ergowave S-Tube」では12cm、13cm、14cm、15cmと4つのサイズが展開されている。

測定を終えると専用のシートで照らし合わせていく photo:Naoki Yasuoka

サドル幅の説明を受ける photo:Naoki Yasuoka

計測結果に合わせて、TTポジションでは+0cm、下ハンドルを握る深い前傾姿勢のポジションが基準となる場合は+1cm、上半身が起きてブラケットを握るライドポジションでは+2~3cmといったように、ライドフォームによって追加で調整され、より精密に合うサドル幅を選ぶこようになっていることがSQlabの特徴。

筆者もSQlabの測定機に座り、座骨幅を測定した結果12cm幅のサドルが最適という結果が出た。ブレーキブラケットを握るシーンが多いため+2cmとなり、今回はロードサドル「SQlab Saddle 612 Ergowave S-Tube」の14cm幅のモデルをテストしていくことに。

独特な形状や固めのパッドを採用している photo:Gakuto Fujiwara

現在のサドル高のままでSQlab Saddle 612 Ergowave S-Tubeに入れ替えると、変更前と同じセッテイングにしてみるとどうにも合わない。骨盤の下部にある座骨が支えられてしっくりと感じるスイートスポットに座るとサドルは低く遠く感じてしまうため、サドルを1mmずつ上げていき、前に出して微調整していく。

前乗りのポジションやニュートラルなポジション、そしてサドル後部に座り、座骨が安定する位置の3ポジションのバランスを重視してセッティングをしていく。サドル自体のハイト(厚み)が低いこともあり、5mm上げるセッティングとなった。着座位置に関してはやや前乗り仕様にすると調子がよさそうだ。

サドルのスタックハイトが低く、5mmほどサドルを上げることに photo:Gakuto Fujiwara

サドルの角度については実走で使用し、スイートスポットに坐骨を乗せたときに上半身を支える体幹への荷重とペダリングのしやすさの「ちょうどいいバランス」が取れる角度を探す。結果的にはサドルのノーズ部分を地面と平行にしたセッテイングが乗りやすいように感じた。

ノーズ部分は長めの設計となっているが、細身の形状のためペダリングしやすいのが特徴。高ケイデンスなペダリングでも、サドルに腿が引っかかることなくスムーズなペダリングができる。一方で、スイートスポットに合わせるとノーズが長いせいか、バイクを大きく振るダンシングをした時に腰やお尻にサドルが擦れてしまうため、少し前荷重のダンシングをするように工夫することに。

座骨をしっかりとサポートしてくれる photo:Gakuto Fujiwara

淡々と踏んでいく場面で安定したペダリングができる photo:Gakuto Fujiwara

平地や登りでは、座るポジションをサドル後部にお尻をスライドし、サドル後部の盛り上がった部分の骨盤や座骨を支えられるポジションで走っていく。座骨の安定はペダリングの安定に直結する。膝の軌道がぶれずにまっすぐ落とすことができるため、パワフルかつスムーズなペダリングができる。

サドル先端はワイドであるため、前乗りポジションでもデリケートゾーンが痛くなることなく快適に使用できる。ノーズ部分が長いおかげで、細かく前乗りのポジションを調整しながらライドできるのも大きなメリット。とれるポジションの幅も広く、走るシーンに合わせて微調整できることも強みだ。

軽快なダンシングができる photo:Gakuto Fujiwara

重量は188gとロードサドルの中ではスタンダードな重量といえるだろう。ダンシングしてもサドル自体の重量はそこまで重く感じなかった。ダンシングをした時の振りの軽さを重視する方は612シリーズの上位グレードでカーボンレールを使用したモデルを選ぶことをお勧めしたい。

パッドは硬めのフォームでお尻が痺れてきそうな気がするが、実際に座ってみると適度なクッション感で痺れや痛みが起きることもほぼ無い。さらに硬めのパッドはサポート力も高めで、座骨が支えられるスイートスポットでの安定感が高くなるように感じる。

前乗りポジションでも快適であった photo:Gakuto Fujiwara

穴あきサドルではないが、サドルの中央部に大きな窪みを設けることで穴あきサドルのようにデリケートゾーンの圧迫感を軽減してくれるため、痺れや痛みは無く快適にライドすることができた。さらにサドルにかかる体圧を分散し血流や神経への圧迫を避ける設計のおかげで、6時間を超えるトレーニングライドでもストレスを感じることなく集中することができた。

今回、SQlab 612 Ergowave S-Tubeをテストしてきて、これまでに使用してきたサドルとは一線を画すサドルだと感じた。医学的なアプローチから設計されているため、多くのライダーにフィットしやすいハズ。サドル沼にハマっている自転車乗りにとって救世主となる可能性が高い一品ではないだろうか。座骨神経痛など、サドル周りの身体のトラブルで悩んでいるサイクリストにはぜひ試してもらいたい。



SQlab 612 Ergowave S-Tube
カラー:ブラック
レール:S-tubeレール
サドル幅:12cm、13cm、14cm、15cm
最大荷重:90kg
価格:23,100円(税込)

text:Michinari Takagi
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