ツール・ド・フランスの前哨戦ことクリテリウム・デュ・ドーフィネが開幕。逃げ切り目前のヘレホーツをフィニッシュ手前25mでクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)が捉え、初日勝者に輝いた。



ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)とクリストフ・ラポルト(フランス)が揃って出場したユンボ・ヴィスマ photo:CorVos

妻であるマリオン・ルッス氏と共にスタートを待つジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2023第1ステージ コースプロフィール image:A.S.O.


ツール・ド・フランスの前哨戦として知られるクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)。シャンボン・シュル・ラックを発着する158kmで行われた初日は5つの4級山岳が詰め込まれたアップダウンコースで、獲得標高差は3,000mに迫る。後半は4級山岳ロシェ・ド・レーグル(距離1km/平均7.3%)を含む23kmコースを3周するため、決してスプリンター向きではない。

スタートして僅か10kmで逃げグループは形成された。ドリアン・ゴドン(AG2Rシトロエン)とドナヴァン・グロンダン(アルケア・サムシック)という地元フランスの2人が逃げ、そこにベルギー出身の3人が加わる計5名がエスケープ。グロンダンがカテゴリー山岳を連続でトップ通過しながら、ボーラ・ハンスグローエやユンボ・ヴィスマが牽引するメイン集団に最大2分40秒のリードを築いた。

ツール前哨戦であるドーフィネがスタート photo:CorVos

序盤に逃げ集団を形成した5名 photo:CorVos

雨が降っては止むを繰り返したこの日は、濡れた路面に残り81km地点で落車が発生する。巻き込まれたユーゴ・パージュ(フランス、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が棄権を選び、この日の優勝候補であったイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)も2度の落車でレースを去った。

グロンダンとファビオ・ファンデンボッセ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が遅れ、3名となった逃げグループは残り2周回目に突入。それを追うプロトンは集団スプリントに持ち込みたいボーラ・ハンスグローエが牽引していたものの、そのエーススプリンターであるサム・ベネット(アイルランド)が遅れ、続いてディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)も脱落した。

最終周回に入り、メイン集団先頭ではジュリアン・アラフィリップ(フランス)を擁するスーダル・クイックステップが人数を集め、ユンボ・ヴィスマは新加入のハンガリー王者アッティラ・ヴァルテルを牽引に送る。その後プロトンは目視できるまで逃げ集団との差を詰めたものの、唯一ルネ・ヘレホーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がそれに抗った。

この日は雨が降っては止むを繰り返した photo:CorVos

雨の中、逃げ続けるルネ・ヘレホーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)ら3名 photo:CorVos

プロトンはアッティラ・ヴァルテル(ハンガリー)らユンボ・ヴィスマが中心に追走した photo:CorVos

一時は6秒差まで迫られたヘレホーツだったが、アップダウンを巧みに利用してタイム差を1秒ずつ積み重ねる。一方のメイン集団はスプリンターを失ったチームが牽引に加わらなかったため、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)の安全確保とクリストフ・ラポルト(フランス)でのスプリント勝利を目指すユンボが牽引を継続する。そのためヘレホーツの差は思うように縮まらず、フラムルージュ(残り1km地点)を14秒差で通過した。

今年からアンテルマルシェに加入し、勝てば金星となる24歳のヘレホーツは単独で残り150mからの最終ストレートに突入。その後方ではヴィンゲゴーのリードアウトからラポルトがスプリントを開始し、ラポルトとマッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)がフィニッシュ手前25mでヘレホーツをキャッチ。そのままラポルトは先頭でフィニッシュラインを通過し、ドーフィネ初日勝者に輝いた。

フィニッシュ直前でヘレホーツを捉え、勝利したクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

マイヨジョーヌに袖を通したクリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

「難しく緊張感のあるステージだった。ヘレホーツが逃げ続ける中での下りは危険だったが、チームは僕とヨナス(ヴィンゲゴー)を集団先頭で守ってくれた。ヨナスのリードアウトは素晴らしく、最高の形で大会をスタートすることができた」と、ラポルトは今季3勝目を喜んだ。

一方、勝利を目前に敗れたヘレホーツは「全力を尽くしたので後悔はない。ユンボ・ヴィスマはすべてを賭けて勝利を狙ってきた。もちろんヴィンゲゴーのリードは余計だったが(笑)、区間3位とヤングライダー賞ジャージは嬉しい。でも、あと少しだけ力が残っていれば!」と、悔しさを素直に表現している。

翌日も3級と4級山岳を2つずつ越える丘陵ステージ。最後の4級山岳(距離1km/平均8%)がフィニッシュ手前8.7kmに登場するためピュアスプリンターには厳しいレイアウトのため、再び逃げとプロトンとの駆け引きが期待される。


クリテリウム・デュ・ドーフィネ2023第1ステージ結果
1位 クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) 3:43:30
2位 マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)
3位 ルネ・ヘレホーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
4位 アクセル・ジングレ(フランス、コフィディス)
5位 マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)
6位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)
8位 フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 ロバート・スタナード(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
10位 マルコ・ブレンナー(ドイツ、チームDSM)
個人総合成績
1位 クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ) 3:43:20
2位 マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ) +0:04
3位 ルネ・ヘレホーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) +0:06
4位 アクセル・ジングレ(フランス、コフィディス) +0:10
5位 マキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)
6位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 アンドレア・バジオーリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)
8位 フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 ロバート・スタナード(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)
10位 マルコ・ブレンナー(ドイツ、チームDSM)
その他の特別賞
ポイント賞 クリストフ・ラポルト(フランス、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 ドナヴァン・グロンダン(アルケア・サムシック)
ヤングライダー賞 ルネ・ヘレホーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos