先日閉幕したドーフィネをもって現役を引退したロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)。ツール・ド・フランス総合2位やマイヨアポワの獲得など、14年に渡る現役生活を振り返ると共に、レース後に語ったコメントを紹介する。



ハミルトンと肩を抱き合いながら、現役ラストレースを終えたロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL) photo:A.S.O.

「ジロ・デ・イタリアの前から、ここに向けて準備を進め、レースに出場してきた。それはとても楽しい期間だった」。 現役ラストレースを終えたバルデは、笑顔でインタビューにそう答えた。

沿道から声援を送るファンたちの姿を目にし、バルデは「壮大なフィナーレだ」と感じたという。「溢れ出る感情を抑え込むのが大変だったぐらい」とも。「友人や皆と共にフィニッシュすることができ、本当に幸せだ。これで最後にもう一度、みんなと一緒に山を下ることができる」と、フィニッシュ後に麓のチームバスを目指し、仲間たちと共に山を下る最後の瞬間を待ち望む様子は、まさにバルデらしい表現だった。

フランスの期待を背負ったキャリア初期

2016年ツールで総合2位に入ったバルデ photo:TDWsport/Kei Tsuji

ドーフィネ第3ステージのスタート地点でもあったフランス・ブリウド出身のバルデにとって、この大会での引退は特別な意味を持っていた。2012年にAG2Rラモンディアール(現デカトロンAG2Rラモンディアール)でプロデビューを果たすと、瞬く間にフランス期待の星として注目を集めることになる。プロ2年目の2013年、初出場したツール・ド・フランスで総合15位に入り、翌年には総合6位まで順位を上げる。そして2015年に自身初のステージ優勝を達成。長らく低迷するフランスの自転車界に新たな希望の光を灯した。

バルデのキャリアにおいて、最も輝かしいシーズンとなったのが2016年だった。山岳フィニッシュだった第19ステージで2勝目を挙げると、総合でも2位という好成績を残す。そのため1985年のベルナール・イノー以来となるフランス人のツール総合優勝への期待が、この時から本格的に高まっていった。

2016年ツール第19ステージで勝利したバルデ photo:TDWsport/Kei Tsuji

2019年はマイヨアポワを獲得 photo:Makoto.AYANO

その後、2017年には総合3位、2018年は6位と、常に上位争いを演じ続けたバルデ。2019年のツールでは総合15位と順位を落としたものの、マイヨアポワ(山岳賞)を獲得。しかし、翌2020年、不運な落車による脳震盪でツールを途中リタイアすることになり、これがキャリアの転換点となった。

オランダチームでの新たな挑戦

ワンツーフィニッシュを決めたファンデンブルークとバルデ photo:CorVos

2021年に9年間所属したAG2Rを離れ、オランダ籍のチームDSM(現ピクニック・ポストNL)に移籍したバルデ。8年連続で出場し続けたツールから離れ、初めてジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャという新たな舞台に挑戦した。

この移籍は単なる環境の変化以上の意味を持ち、総合エースとしての重圧から解放されたバルデは、逃げからのステージ優勝を狙う新しいスタイルを模索し始める。その成果は早速現れ、2021年のブエルタでは見事に逃げから勝利を掴んだ。

そして2024年6月、バルデは翌年での現役引退を発表した。そして臨んだ11回目にして最後のツール・ド・フランス。初日のステージで9名の逃げに加わったバルデは、残り50km地点で渾身のアタックを仕掛ける。チームメイトのフランク・ファンデンブルーク(オランダ)と共に逃げ切りを決め、自身4度目となるステージ勝利を達成した。

悲願のマイヨジョーヌを着用したロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) photo:CorVos

そして何より特別だったのは、これまで一度も袖を通したことのなかったマイヨジョーヌの着用だった。レース後バルデは、「長年追い続けてきた夢が形なった」と喜び、涙を流した。

引退後のバルデには、すでに新しい挑戦が待っている。レース後にラピエールのグラベルバイクを手渡された。チームのサポートを受けながらグラベルレースに挑戦する予定で、10月に開催されるUCIグラベル世界選手権への出場も視野に入れている。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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