「僅かな秒数で敗れるよりも、40秒の方が気が楽だ」と逆転負けを喫したトーマスは語り、ピノは「これほど過酷なコースはジロにしかない」と評した。ジロ・デ・イタリア第20ステージを選手のコメントで振り返ります。



区間2位&総合2位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

ログリッチから40秒遅れでマリアローザを手放したゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

頂上まで1.5kmのところから脚が動かなくなっていくのを感じた。僅か1秒や2秒で惜しくも敗れるより、40秒の方が気持ちは楽だ。プリモシュ(ログリッチ)にメカトラがあってこの差だからね。彼の走りを見事と称えるしかない。

体調不良でレースを走れなかった今年の2月や3月に「ジロで総合2位」という未来を伝えられていたら、きっと喜んだだろう。だがいまは大きく落胆している。歳を取った僕ががむしゃらにやるべきことを淡々こなし、ここまで調子を上げることができたことを心から誇りに思う。だが、チームメイトたちが一生懸命アシストしてくれたことを思うと本当に残念だ。

―バイクやヘルメット交換は非常にスムーズだったが、改善できるところはあったか?

ないね。プリモシュが僕よりも良い走りをしたまで。僕自身、最後まで脚が持たなかったからね。

メッセージを送ってくれた人たちを含め、応援してくれたすべての人に感謝を伝えたい。また現地イタリアのファンは最高だったよ。感動的な3週間だった。

区間3位&総合3位&マリアビアンカ(ヤングライダー賞) ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)

互いの健闘を称え合うログリッチとアルメイダ photo:RCS Sport

コースを進んでいくにつれ、調子が良くなっていった。自分の走りとこの結果に満足している。単純に上の2人が僕よりも強く、プリモシュは勝利に相応しい走りを見せた。だから彼を祝福したい。選手として毎年少しずつ向上し、今大会はとても満足できる走りができた。

区間5位&総合5位&マリアアッズーラ(山岳賞) ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)

マリアアッズーラのティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がクスのタイムを6秒更新 photo:CorVos

キャリア最高のタイムトライアルではなかったが、指折りの走りではあった。僕に適したレイアウトで、3週目に向けて徐々に調子が上がっていくのを感じていた。僕にとって最後のジロでのタイムトライアルだったので、力の限りを尽くしたかった。本当に厳しい登りで、こんなコースはジロしか登場しないだろう。身体的には、これまで最も良い形で締めくくることのできたグランツールだ。

ユンボ・ヴィスマのマルク・リーフ監督

念願のマリアローザに袖を通したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

長きに渡り、我々はこの瞬間のために努力してきた。素晴らしい走りで、感情がまるでジェットコースターのように乱高下した。プリモシュは一日を通して自信に満ちあふれていた。だから中間計測地点では最小限の情報しか与えなかった。

僕らは常に自分たちの能力を信じているものの、戦いは時として残酷だ。その辛い時期を乗り越え、栄光を掴み取ったプリモシュは本当に素晴らしい。今日はファンによる力が大きかった。彼ら、彼女たちがプリモシュを後押ししてくれたおかげで、この偉業が現実となったんだ。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos