ジロ・デ・イタリア2回目の休息日に今年限りの選手引退を発表したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)。「このジロを楽しめている。今年のツールで勝ちを狙う」とコメントしている。



キャリア最後のジロ・デ・イタリアに参戦しているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) photo:CorVos

ジロ・デ・イタリアにおける第2休息日の5月22日(月)に開催されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)の記者会見。前日に38歳の誕生日を迎えたばかりのイギリスチャンピオンは、用意した原稿を読みながら今年限りでの現役引退を発表した。

冒頭で誕生日のメッセージに感謝を述べ、続けてエミリア・ロマーニャ州の豪雨被害に対して思いを寄せたカヴェンディッシュ。体調不良や落車によって困難なジロとなったものの、素晴らしいチームと一緒に勝利を目指したいと話した後、引退についての言葉を少しずつ並べた。

「ここまで過酷なステージが続いているが、仲間のサポートのおかげで楽しめている」 photo:CorVos

「自転車競技は25年以上にわたり僕の人生そのものだったし、夢に生きることができた。自転車は僕に世界中を旅させてくれ、友と呼べる素晴らしい人々と繋ぎ合わせてくれた。君たちが想像する以上に僕はこのスポーツを愛し、この先も遠ざかろうとは思えない世界だ。それは確かなこと。

今日は息子キャスパーの5歳の誕生日。幸いなことに今日は休みで、誕生日を一緒に過ごすことができた。妻のペタと子供たち全員の誕生日に私が出席できることが今では重要だと考えているよ。彼らの学校のコンサートをすべて見ることができ、スポーツ大会で彼らをサポートできることが、何より僕にとって大切だ。また、怪我や病気を恐れることなく彼らと一緒に走り回れることもすごく大切なことだ。

サイクリストとして、そして一人の人間として、このレースは僕にとって重要なもの。初めてグランツールのステージ優勝を挙げたのも2008年ジロだったし、毎年僕を暖かく迎えてくれる。

この過酷なコンディションであっても、今年の大会は1km1kmを楽しみながら走ることができている。だからこそ、僕にとってこれが最後のジロ・デ・イタリアとなり、今年がプロとして走る最後のシーズンだと言う一番良いタイミングだと思った。長期的な予定について語るつもりはないが、引退してもサイクリストであり続けることは確かだ。今はこの25年間に渡り、僕を幸せにしてくれたレースを心の底から楽しみたい」。

記者会見を開き、現役引退を発表したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) photo:Astana Qazaqstan Team

2006年にTモバイルでプロデビューしたカヴェンディッシュ。ゴール手前の爆発的な加速力、そして屈強なスプリントトレインを武器に黄金期を築き、これまで積み上げてきた通算161勝は現役選手としては最多。しかしここ数年は絶えずチーム探しを強いられ、その都度引退が噂されてきた。

勝ちに恵まれず、キャリア続行が危ぶまれていた2021年(当時ドゥクーニンク・クイックステップ)は急遽サム・ベネットの代役でツール・ド・フランス出場を叶え、区間4勝と最強スプリンターの証であるマイヨヴェールを10年ぶりに射止めるという電撃カムバックを実現。エディ・メルクスがもつステージ34勝の最多記録に並んだものの、2022年は不選出となりチーム脱退。契約合意を交わしていたチームが活動継続を断念し、1月17日付けでアスタナへと移籍するという滑り込み契約を交わしていた。

カヴェンディッシュが狙うのは、現役最後となるツール・ド・フランスでのステージ優勝。「もし45勝していても更なる勝利を求めるはず。もし18勝であっても19勝目を狙う」と意欲的なコメントを残している。

text:So Isobe